ゲームの世界に召喚されたせいで告白の返事が聞けねえ

篠崎汐音

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プロローグ

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「おい北澤、何だよこのゲーム。マジでウケるな」

「うるせえな。てめえには配慮とかプライバシーの概念が存在しねーのかよ」

 北澤貴也は屈辱的な気分を味わっていた。同じ大学の友人である相田が、爆笑しながら北澤の自作ゲームをプレイしているのだ。
 そのゲームは上スクロールのアクションゲームなのだが、プログラムに欠陥があり、操作キャラが一歩進む毎に数秒間画面が止まってしまう代物だった。敵も避けれねーじゃんとぼやきながらも、相田は持ち前の反射神経と集中力を駆使して、ゲームを力業で進めていく。

「お邪魔しまーす。お二人、喧嘩してないかい?」

 北澤の親友兼相田の友人である岡庭大志が、パソコンの前に陣取る二人の狭間を覗き込む。今日はこの三人で格闘ゲームをする予定だった。

「岡庭おーっす! 今さ、北澤の自作ゲームやってんの。これやべえよ、数秒ごとに止まるんだぞ」

「うるっせえんだよ、相田てめえ……。大志、鍵閉めといてくれたか?」

「もちろん。自作ゲームって、一年くらい前に作ってた奴?」

「そう。プログラミングの勉強のために作ってた奴な。バグと欠陥まみれでまともに動きやしねえ。相田がわざわざ掘り出しやがったんだ」

「貴ちゃんってこういうの凝りそうなのに、結構すぐ投げ出したよね」

「作るのとやるのは別の話だからな」

 岡庭と北澤は、中学時代から親密な友情を育んでいた。とりわけ趣味のゲームに関しては、人様に見せられないような習作についても話すくらい、お互いのことを知り尽くしている。
 北澤がゲームをやりだしたのは岡庭の影響だった。中学時代、岡庭が楽しそうに趣味の話をするので、自分もやってみたくなったのだ。
 けれど、当時の北澤は、ゲームを買ったりやったりすることが許される環境になかった。完璧主義の母親が、そのような娯楽を毛嫌いしていたからだ。北澤自身も当時は内気な性格だったので、岡庭の家に招いてもらって二人でゲームをすることが唯一の楽しみだった。その頃の経験のおかげか、今では立派なゲーム好きだ。

「北澤って格ゲーもシューティングも、ゲームだったら全部上手いもんな。でも、ゲーム製作は別物かあ……っと、これボスか? グラフィックも雑だな。緑の鏡餅にしか見えねえぞ」

「そんだけ言うなら自分で作ってみろや」

「はいはいどうどう。貴ちゃんも相田も落ち着きなよ」

 元々、こんなゴミみたいな欠陥ゲームを相田にプレイさせるつもりはなかった。絶賛発売中の格闘対戦ゲームで、相田をボコボコに叩きのめしてやる予定だった。
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