ゲームの世界に召喚されたせいで告白の返事が聞けねえ

篠崎汐音

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 岡庭とぎこちない別れの挨拶を交わした後、北澤は一人ベッドに身を投げ出した。

 告白に対して岡庭がどう思ったのか、結局読みとれなかった。あんな曖昧な態度を取られては、期待する気持ちも出てきてしまう。脈がないなら、はっきりと断ってほしかった。
 岡庭は考えさせてくれと言っていたが、考えて変わるような答えなのだろうか?

 明日から、どんな顔をして話せば良いんだろう。そもそも、顔を合わせて話してくれるだろうか。いつ返事がもらえるのだろうか。審判を待つ恐れの中、腕に閉じ込めた岡庭の温もりと感触はまだ残っている。

 思ったよりも細かったな、とか。肌が柔かったな、とか。どうせなら、もっと近づいて、首筋に顔を埋めてやれば良かった、とか。
 もしかしたら今後、岡庭に触れることも、話すことも、会うことも叶わなくなるかもしれない。その恐れが、余計に思考をエスカレートさせていく。想いを遂げられないなら、もっと長い間抱きしめていたかった。あれが最後になるのなら、キスの一つや二つ、しておけばよかった。

 悔やむのは簡単だ。惜しむことも。虚しい思いに胸を支配されながら時計を見ると、時刻は五時だった。
 どっと疲れが出た。何かをする気になれない。後悔ばかりが頭を埋め尽くす。先に晩飯をどうにかしないといけないけれど、何も食べたくない。
 落ちていく瞼を押しとどめることもできず、北澤は意識を手放す。胸に渦巻く不快さとは対照的に、体の疲労から来る微睡みは心地良い。

 早く告白の返事を聞きたい。
 せめて夢の中で、もう一度岡庭に会いたい。彼の嬉しそうな笑顔を見て、安心したかった。


 
***


 背中からじわりと温かさを感じて、意識が浮上する。
 開いた瞼の先には、雲一つないパステルカラーの青空が広がっている。まるで、ペイントのバケツツールでキャンバスを一面塗りたくったような均一な色合いだ。作り物めいている。太陽も見当たらず、どこの色味も同じで、変化が感じられない。

 変わった夢だな、と北澤は思っていた。少なくとも、今まで見た夢とは種類が違う。小学校の階段の踊り場で落下しかけるとか、街を低空飛行するとか、歯が全部一気に抜けるといった内容の夢しか北澤は見たことがなかった。
 ――いや、もう一つあった。岡庭と温かい陽光の中で笑い合って、手を触れ合わせる夢。意気地なしの北澤では、夢の中でさえその先へ進むことができなかった。そう思うと、勢いとはいえ岡庭に告白できたことは、北澤にとって奇跡と言っても良いのかもしれない。結果と返事は相手次第だが。

 気分が少し晴れてきたので、周りの状況に関心が向いて、北澤は起き上がる。初めに目に入ったのは、真っ黒な――地面というよりも、深淵のように暗い漆黒の――床だった。ところどころ、正方形の緑の草地が不規則に点在しているが、生命の息吹は感じられない。手を伸ばして草に触れると、触れた先から光の粒を発して消滅していった。

「なんだこりゃ……」

 辺りを見回しても、黒い床と緑しか視界に入らない。
 この夢は何だ? 何を意味している?

「やっぱり忘れてるよな。ここは、お前が作ったゲームの世界だよ」

 脳内に溢れる疑問に答えた、聞きなれない変声期前の少年の声に振り返ると、北澤は目を疑った。
 身長一五〇センチ程度の痩せ型、長い前髪、黒縁メガネから覗く陰気で敵意に満ちた瞳。過去の自分の写し姿が、北澤を睨みつけていた。

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