乙女ゲーのガヤポジションに転生したからには、慎ましく平穏に暮らしたい

茶坊ピエロ

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四章

ゲームと現実に向き合う

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 ジノアの話を聞いて俺は頭を抱えている。
 セバスさん、いやセバスが裏切っていたことは確実にわかったし、彼が馬車の手綱を握っていたから、転倒させた時にジノアとグレシアの写真を撮ることも可能だ。
 よくよく考えたら、セバスは隠居暮らししてたんだから情報を持ってること自体おかしいんだ。
 セバスが裏切っていたこともそうだが、それ以上に困る事態になっている可能性があるのがめんどうだ。

「セバスはたしかにシロツメクサって言ったんだな?」

「うん。言ってた」

 間違いない。
 この世界にシロツメクサという単語はない。
 原作者の意向か、はたまた別の理由かは知らないけど、シロツメクサは正式名称がクローバーになってる。
 つまりシロツメクサは前世の、日本固有の名称だ。
 そこから導き出されるのは、セバスが転生者という事に他ならない。
 あー、マジかヨォ!
 ニコラが複合魔法使いって単語を出した時点でセバスと敵対する覚悟は出来てたけど、それでも俺が無意識に敵対したくないって思った本能は正しかった!

「リアスは何で頭抱えてるの?」

「リアスくんって結構独り言多いよジノア。ボク的にはそれはそれで愛おしいし可愛いと思うけど」

「ミライ、それは殿方にとって嬉しいことではないと思うのだけれど」

「いいんじゃね?形はどうあれ相思相愛ならよ。お前とアルバートは形はどうあれお互いを嫌いあってたし、ある意味この二人は理想の一つじゃないか?」

 お前ら言いたい放題言うよな。
 こっちはそれどころじゃないって言うのに。
 そうだ、セバスの二つ名赤い悪魔って言ったら、誕生日プレゼントにミラからもらった本も赤い悪魔ってタイトルだったな。
 俺は収納魔法で本を取り出す。

「ん?それは?」

「聞いて驚くな?これはミラからの誕生日プレゼントだ。赤い悪魔ってタイトルだ」

「へぇ、懐かしいもんを出したもんだな。俺がガキんときは、よくその本を読んだもんだ」

「ホウエルって本を読むタイプだったんだ・・・」

「ジノア様ぁ、そりゃないぜ。俺だって本くらい読むっつの。なぁそれ、結構脚色されてるよな?赤い悪魔、セバスの奴は結局皇帝を討つことは出来なかったしなぁ」

「本当に読んでるんですわね。頭のお花畑だと思ってましたのに」

「うるせぇ!」

 照れ臭そうに吠えるホウエル。
 そう、これは事実ではないフィクションだ。
 
「赤い悪魔は未だに血に飢えた恨みを抱えている。彼の言動から確実に」

「それは単語の件からかな?」

「わかるのか?」

「表情の機微はこれでも養ってきたつもりだからね」

 俺はジノアと向き合わないといけない。
 だってジノアに話していないことがあるから。

「ジノア、俺はお前に話さないといけないことがある」

「何かな?とは言ってもセバスが去り際にある単語を口にしたから何となく予想がつくけど」

 セバス、何か余計なことを吹き込んでいなければいいけど。
 とりあえずジノアには話しといた方がいいと思った。
 クレも反対してないみたいだし、大丈夫だよな?

「俺はリアスとは別の人間の人生の記憶があるんだ」

「輪廻転生。つまりリアスは転生者ってこと?」

 ジノアと他の奴らとは反応が違った。
 他のみんなに話した時は、テンセイシャとはっきり言えた人間はいない。
 つまりジノアは転生者と言う単語を知っているってことで------

「驚かないんだな」

「いやセバスに言われたんだよ。転生者には気を付けろってさ。ていうかみんなの反応を見るに、知らなかったのは僕だけかな?いやホウエルもか」

「あぁ、他のみんなは全員そのことを知ってる」

 セバスがどうしてそんなことを?
 彼の行動が本当ならガランになりすまして、ジノアを陥れようとしたことは間違いないが------

「やっぱ信用されてなかったかー!結構一緒に居て信頼を勝ち取れたと思ったのになぁ」

「軽蔑するか?俺は我が身可愛さに、自分のことは話さなかったし、これからも多分そうする」

 俺達の中でトップシークレットは二つある。
 一つはミラが精霊とのハーフという事。
 そしてもう一つは俺が転生者という事。
 グレイやグレシアは聖獣と契約していて、聖獣達は何故か風神や雷神の存在がわかるみたいだから話してる。

「どうかな。僕には何を信じたらいいかわからないよ。近しい人間が裏切っていたからね」

 当然だ。
 こんなの今更打ち明ける事じゃない。
 ジノアは切羽詰まってたとはいえ、俺に対して過去の出来事を曝け出してくれて、信用してくれてる。
 ある意味裏切りに近い行為だ。
 ついさっき、幼少期の側近から裏切られたばかりの奴に言う事じゃない。

「でも僕個人としては、リアスのことは信じたいと思ってる」

「なんでだ?」

「僕がそうしたいからだよ。」

 その言葉に、皇族としての器はでかい様な気がした。
 そう、俺より遥かに。

「ありがとな。俺はお前のことをきちんと向き合ってはいなかったと思う。お前のことを疑っていた。その情報がどこかから漏れるかも知れないと」

 別にジノアのことをゲームでの登場人物と重ねていたわけじゃない。
 グレシアだってゲームの登場人物だったキャラとは別人だとちゃんと認識してるし、信用だってしてる。
 でも結局のところ、皇族という立場で嵌められてしまったジノアをどこか本当に信頼を置けるだろうかと思ってしまったんだ。

「皇族なのに裏切られたり嵌められたりしてるから?」

 更に自覚まであるし、それを自分自身が悪いようにバツの悪い笑みを浮かべてる。
 ジノアは悪くない。
 結局のところ俺も、腐った貴族至上主義の貴族どもと同じで価値観というものに囚われていた事に気付かされた。
 何故なら、その弱い部分は臣下や民が支え補っていけばいいからな。

「最悪の気分だよ。俺も結局は貴族の端くれってことだ。価値観を捨てきれないんだからさ」

 日本で育ったから仕方ない?
 いや、あの毒親どもに育てられて今世でも毒親に近い人間に育てられたんだ。
 だからこそ俺は自分自身でその事に気づかないといけなかったのに。
 示し合わせていないが、剣呑で暗い空気が漂い始める。
 そう思って顔を俯かせていたら、ミラが俺の顔を覗き込んできた。
 ミラはにっこりと微笑んだ。

「でもさ、お互いに気づくことができたんだからそれでいいんじゃない?」

 そして俺のジノアの手を掴んで強引に握手させる。

「人はさ、間違えて間違えて、それで成長すると思うんだよ。ボク的にはね」

「ミラ・・・」

「ここでボクも隠し事をしてるのはフェアじゃないよね。ボクは雷神を父に持つ雷神ミライ。リアスくんと結契してる精霊だよ」

『ミライ!?どういうつもりですか!?』

 おいおい、どうしてここでそれをバラすんだ!?
 たしかにジノアは信用してるけど、ここにはホウエルだっているんだぞ!?
 
「え、えっと・・・ちょっと頭が追いつけないんだけど・・」

「ミラ!どうし------」

 ミラは俺の頬をパチンと叩いてこちらをじっと見つめる。

「リアスくんはまた間違える気?お互いが信用してるなら隠し事はなるべく無くしていこうよ!」

 そうか。
 俺はジノアに転生者ということを話したのに、後ろめたい気持ちが残っていたんだ。
 まだ隠し事をしていたから。
 自分も危険が増すって言うのに、俺のために自ら打ち明けてくれたんだ。

「リアスがリリィに負けただけで動揺してた人とは思えないわね」

「ですね。ミライ様も、リアス様がリリィに落とされた時かなり動揺してポンコツでしたものね」

 グレシアとイルミナがミラを揶揄う様に、そして俺達への免罪符を与えてくれる。
 いや言い訳だな。
 三人は俺たちに言い訳をくれた。
 俺とジノアは顔を見合わせ、そして笑い合う。

「ふふっ、僕達って情けないね」

「あぁ、でもさっきまでの最悪の気分はあんまりなくなった」

「何だよお前ら!」

 グレイが俺とジノアの肩に思い切り組んできた。
 それはちょっとウザくて、でも何だか払いたくなくて。

「ミライもそうだけど、お前らは頭が硬いんだよ。ここは一言ごめんなさい、それで済むだろ?取り返しが付かない状態でもないんだからよ!」

 グレイが至極まともなこと言ってるよ。
 ミラも苦笑いだ。
 もう少し早く言ってたらかっこよかったのに残念だな。

「おせぇよ馬鹿」

「本当グレイは昔から馬鹿だねぇ」

「え!?俺なんか変なこと言ったか!?なぁおい!」

 グレイはほっといて本題に入ろう。

「まぁとりあえずこっからが本題だ」

「セバスが恨みを抱えてるんだよね。僕はシロツメクサって単語を知らないからわからないけど、一体何があると言うんだい?」

「四葉のクローバーの花言葉は幸福だ。それは前世でも今世でも変わらない。けど前世ではシロツメクサの花言葉には、復讐と言う意味もあるんだ」

 俺も前世で妹から聞いた話だけどな。
 ひょんなことで喧嘩した時に、帰りに四葉のクローバーを見つけたから仲直りに持っていったらすごい怒られたのを覚えてる。
 
「シロツメクサは復讐・・・つまりセバスは転生者ってこと?」

「そこまではわかんねぇな。転生者かも知れないし、近しい人間が転生者なのかも知れないし。少なくともこの世界には俺以外にあと8人転生者がいるはずだ」

 月は9つあって、それは今も健在だ。
 だからあと8人は転生者がいる。
 これは間違いないはずだ。

「それならリリィも転生者かも知れないよ。ボクのこと転生者って言ってきたし」

「マジかよ」

「それにレアンドロって人が知り合いらしいんだけど、処女を奪われたとか聞いてきたから多分、女たらしじゃないかな?」

 ミラの処女を奪う!?
 舐めとんのかそいつ!
 俺が怒りを沸々と湧き上がらせようとしたのも束の間、ジノアによって怒りが霧散する。

「レアンドロ!?」

 机をバンッと叩いてジノアが声を荒げる。
 急なことでびっくりした。

「いきなりどうしたジノア。レアンドロなんて珍しい名前でもないだろう」

「女たらしでレアンドロって言ったら、ヒャルハッハにいる神話級の精霊と契約した男のことでしょ!なんで知らないんだよ」

「いや名前まで男爵程度の爵位に情報なんか回ってこんわ!」

 それもそうかと、ジノアは再び落ち着きを取り戻し席につく。

「気が動転してたよ」

「あぁ。子供の頃からの一緒にいた人の裏切りは辛いだろうけど、それでお前が崩れたら思う壺だ」

「そうだ!それにレアンドロについてはリリィが目を覚ましたら直接聞けばいいだろ?」

 グレイの言う通り今そっちは話しても解決することじゃない。
 実際にセバスの後ろにレアンドロがあるなら話は変わるけど、そうと決まったわけじゃないしな。

「セバスの復讐、そっちの方が先決だろ?」

「それについては心当たりがあるよ」

「俺の知る限りだと、赤い悪魔の本がほとんどノンフィクショ------本当の話だとするなら、陛下の兄上が仇を討ったことを面白く思わないだろうな。そこで皇族を狙ったならまぁ頷ける。やり方もただ殺すと言うわけじゃなく、生き地獄みたいなまどろっこしいことをしてるし」

 実際、話の最後にある敵討ちが成功してないとすれば、それは復讐の失敗に他ならない。

「それもあるけど、それだけじゃないと僕は思う」

「それだけじゃない?」

「私もジノア様と同意見だわ」

「グレシアまで?なにか他にも心当たりがあるのか?」

 赤い悪魔が根本ではフィクションだろうし、調べてもいなかったからわからない。
 他にも皇族との確執でもあるのか?

「お話中失礼するよ!」

 馬車の扉を開けて入ってきたのは真紅の髪を靡かせる女性。
 エルーザ陛下だった。

「へ、陛下!?」

「母上」

「そんなに驚くことないだろ。アタシが来ていたのは確認しているだろう?」

 それはそうだけど、いきなり馬車に入ってくるとは思わないだろう。
 というか施錠してたのにどうやってあげたんだ?
 結構特殊な鍵使ってんだぞ!?

「むしろアタシのが驚いたよ。なんだいこの馬車は!まるで個室じゃないか!」

 そりゃ俺の夢と希望が詰まってるからな。
 要するにロマンの馬車だ。

『ご主人、騒ぎすぎにゃー』

 こいつしゃべってるところ初めてみた。
 普段は寝転がってるもんなぁ。
 でも言葉がわかるってことは精霊か?
 魔物の言葉は俺にはわかんないし。

「母上!みんなが困ってます!」

「おっとすまんすまん。ついこの馬車が珍しくてな」

 気に入ってくれたなら作れなくもないですけど?
 でもまぁ、馬引けないけど。

「何か話していたのならすまないね。こっちもヒャルハッハ王国に訪問するところだったから急いでてね」

「いや、まずどうやって馬車を開けたんですか?」

「そりゃ、付与魔法のついたこいつ、解錠魔法マスターキーで開けたに決まってるだろ」

 マスターキー!?
 なんだよそれ、こわっ!

「これは特殊な魔法だから、皇族の血を受け継ぐ者にしか使えないから安心しておいてくれ」

「いやおたくの息子さんのうちの二人が信用ならないんですけど・・・」

 ジノアはともかく、アルバートとガランがマスターキーなんて持ったら、確実に悪用するに決まってる。
 あいつらは今までの行動から明らかにするだろうことがわかる。

「そうだな。アルバートは信用できないだろうがジノアはそうでもないだろう?」

 いやガランもだよ?
 ん?待てよ?
 セバスは一体いつからガランと入れ替わっていたんだ?
 ガランの側近のホウエルが気づいたのが最近だとしたら以前は違った?

「ガランのことか?」

「申し訳ありません。顔に出てましたか?」

「うむ。そのこともあってこの馬車に入ってきたのもあるな」

 いきなり馬車に凸してきたと言うことは、ガランにも動きがあったってことだよな。

「ガランについてだが、先に結論を言うと二度と自分の足で立つことはできなくなった。いやそれどころかもう二度と、死ぬまで目覚めることはないだろう」

 それは薬漬けにされたか、半殺しにされたか。
 それがセバスがしたのか、はたまた逃走に失敗したか。
 どっちにしても、そういうということはガランと会うことはないだろう。
 側近のホウエルだけは、顔を青くして俯いている。

「兄上が・・・そうですか」

「ガランは宮廷で発見された。ガランの行動があまりにもおかしいと、臣下やそこのホウエルに言われて部屋を捜査しようとしたんだよ」

 いや捜査に踏み切るのが遅い。
 この人は父親や旦那よりはいい統治能力を持っているのだろう。
 けど詰めが甘いところがあるし、付け込みやすいし情報にも踊られやすいよな。
 もしかしたら本人も自覚があるから、前皇帝に任せたのかもしれない。
 結果として最悪の方向に転び、それにジノアはそれによって苦しんだ。
 
「すまないジノア。ガランの部屋に残された数々の情報から、ジノアが嵌められたことは明白だった」

「ッ!何を言って・・・いるのですか」

 本当は激昂したかっただろう。
 せめて母親である陛下にだけは、信じてほしくて、味方になって欲しかった。
 そう言いたかったのを飲み込んだ。
 すごいなこいつ。
 俺より人生経験が遥かに少ないのに、感情に流されることなく想いを飲み込めるなんて。

「すまない。母としても皇帝としてもアタシは失格だ。ダメな息子に期待を抱いて、優秀な息子には辛く当たってしまった」

 魔法がある世界で証拠を作り上がるのは難しい。
 幻惑魔法だって解除を全員ができれば、証言を取ることもできるけど、セバスの様な例が皇族にもまかり通るんだ。
 ジノアの顔を見ると、怒っていると言うよりも愛おしそうに、そして寂しそうな目で陛下を見つめていた。

「もっと早く聞きたかったよ、母上」

「・・あぁ、すまない」

 都合の良い話なのはお互いわかってるんだろう。
 でも間違いを間違いと認めない方がもっとダメだからこれでいいのだろう。
 ガランがどうして二度と立てない状態になったかと、証拠って奴をどうしてセバスが処分しなかったかが気になるな。
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