乙女ゲーのガヤポジションに転生したからには、慎ましく平穏に暮らしたい

茶坊ピエロ

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四章

叫く雷撃!何者も時間に適わない

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 張り巡らせる雷撃の魔力がミライの周りを埋め尽くし、近寄れば感電してしまいかねない。
 しかし事実は異なりこの雷の魔力は、あくまで魔力のため感電することはない。
 雷の魔力が色濃く出てしまいそう見えるだけ。
 しかし<狂戦士の襟巻き>を装備したリアスにそれを知る術はない。
 知能がないにも等しいのだ。
 速度こそ速いが、雷撃を避けながらの移動でキレがなかった。
 
「ライトニングスピア!」

 リアスに指を向けてミライはそう言ったことで、ミライの指を注視したリアスだったが、一向にライトニングスピアが放たれる様子がない。
 リアスは不発と思い攻勢に出ようとしたが、次の瞬間全身に電流が駆け抜ける。
 ライトニングスピアが後方からリアスの肩を穿つ。
 <狂戦士の襟巻き>の効果により肉体の回復力も強化されているため、すぐに傷は塞がるがそれでもダメージはある。

「ガァ!?」

「普段のキミなら、多分避けれたよ!ライトニングスピア!」

 またしても射出されないライトニングスピアを警戒して今度は動きを止めたリアスだったが、それもミライの狙い通りだった。
 <狂戦士の襟巻き>をつけたリアスの精神はまったく別物であるが、身体まではそうはいかない。
 無意識に身体に刷り込まれた癖や行動はどうしても出てしまうのだ。
 そして小さい頃からその癖を知ってるミライは的確にこの戦場を支配する。
 ライトニングスピアを今度は起動しない。

「流石リアスくん。でも身体は正直だー」

 止まったところで天雷を首元を狙う。
 もちろん<狂戦士の襟巻き>を狙っての行動だった。
 天雷の速度はいくら強化されているリアスと言えど防げない。
 本来、雷神の魔法天雷はそういうものなのだ。
 今までの敵が極端に雷対策をしていただけで、そう簡単に対応出来ないのが雷の強さ。
 全属性で最も強力な魔法属性の一つ。

「シャラァア!」

「さすがに良い意味でもリアスくんの肉体だ」

 リアスは咄嗟に後方に風の魔法で前進して攻撃をすれすれで避ける。
 魔力に当たる覚悟をして突っ込んだが、そこにはダメージと言うものが発生してなかったため気にすることを辞めた。
 そしてその勢いのままミライに拳を向けて突撃してくる。
 
「ボクのこの張り巡らされた魔力は、伊達でもなんでもないよ!」

 頭に流れてくる使い方。
 ミライは今まさに細君支柱フィアンコネクトの力を自在に使えていた。
 それは先ほどからリアスに対して魔法を当てることができたことからも明らかだった。

「ウォーターヴェール!」

 張り巡らされた魔力から魔法が生成されているのだ。
 逆に言えば、自分の指先から魔法を放つ必要がない。
 その状態で魔法を構築して放てば良いだけの話だったから。
 だからミライの目の前にまさに迫るというところで、水圧で吹き飛ばされていくリアス。
 雷の魔力が色濃く出ていたとしてもそれはミライのれっきとした魔力であり、水属性の魔法も放つことは可能だった。
 そして効率が悪いだけで、ほぼすべての魔法が使えるのが神話級の精霊を父に持ち、風神を師に持つミライの実力だ。

「なニぃ!?」

「驚くのも無理ないよね」

 ただのウォーターヴェールだったらリアスも吹き飛ばされなかっただろう。
 しかし雷の魔力が色濃く表れるミライの魔力から作り出したウォーターヴェールは、水に雷が含まれており身体が痺れて痙攣したのだ。
 複合魔法とは違い、魔力の属性が二つある魔法。

「これは雷属性が混じる双生魔法!」

 まるで魔法が感電しているようだ。
 すべてにおいて雷属性が混じるこの魔法は、初見殺しと言っても良いだろう。
 何故なら殺傷能力が比較的に低い水属性の魔法が、感電すると死に至る可能性のある人間にとっては強力な魔法となっているからだ。
 さすがにリアスを殺そうとはミライは思って居ない。
 助けるつもりで加減はしている。
 しかし強力な回復力がある以上、足止めは足止めにならない。
 だからこその工夫だった。

「乾ク・・・貴様ノ血がオレノ渇きヲ満たしテクレるぅうううう!」

 その巻き舌で発しているような叫びがこの場にいる全員の耳をキリキリとさせ痛めつける。
 <狂戦士の襟巻き>は呪いに近い制作方法で作られた物だ。
 リアスの精神が汚染されていると言うよりも、肉体の主導権が脳ではなくこの装備に移行されているような状態だ。
 そしてクレセントの予想通り知性を身につけていた。
 今までこの襟巻きを装備したリアスは、ただ人を殺すだけの平気に近かったが今は違う。
 リアスは前方に手を向ける。

「え?まさか・・・」

 魔力が指先から感じられる。
 まるで魔法でも放とうとしてるかのような。

『ミライ!避けなさい!!』

「ライとにンぐスピあ」

 それはかなりぎこちない発音だったが、たしかにライトニングスピアと言ったのだ。
 そして魔法は起動される。
 しかしそれはライトニングスピアとは名ばかりの・・・天雷だった。
 
「天雷!?」

 さすがのミライも予想外だったため、少しだけ遅れてしまう。
 <狂戦士の襟巻き>にはリアスの前世の知識からデメリットがあったのだ。
 それは魔法が使えないこと。
 知性が極端に落ちるためだ。
 しかし今の襟巻きの知性には、魔法を放つ程度の知性はあった。
 そしてリアスの肉体は魔力調節に関しては、神話級の精霊のクレセントやミライをも凌ぐ。
 更に<狂戦士の襟巻き>により強化された魔力はただでさえ高い魔力を持つリアスだから膨大なモノだ。
 魔法を放った瞬間リアスの内包している魔力の半分が消えた。
 つまり天雷と遜色はないが、それだけの魔力を込めたライトニングスピアだった。
 それはミライの天雷なんか目じゃないほどの威力となっている。

「シールド!」

 クレセントは避けろと言っていたがシールドを貼るミライ。
 天雷だってシールドを貫くことがあると言うのに、それ以上の魔法がシールドを貫かないと確実に言える人間はいない。

『ミライッ!』

 悲痛の叫びを上げるクレセントは、ミライを庇おうと動き出すが速度で追いつくことは適わない。
 ミライはライトニングスピアに貫かれて、確実に命を落とすことだろう。
 しかしミライの目は驚きこそしたものの、笑っていた。

「リアスくんの魔力が強力なのは知ってるよ!だからさ」

 シールドはミライに対して直角気持ち斜めに展開されていて、ほんの少しだけそらすことに成功していた。
 そしてそれだけじゃ終わらない。
 ライトニングスピアの進む方向にどんどんシールドを展開していく。
 カーブを描くのように展開していきやがて、リアスに直接返すことに成功した。
 シールドはそれなりに強力な防御魔法であり、反らすだけに注視を置けばいくら今のリアスの魔法でも砕くことは難しい。
 しかしほんの少しだけ反らすにはシールドはかなりいる。
 これだけシールドを展開すればいくら固定の魔力しか食われない魔法でもガス欠を起こす。

「リアスくんはボクを相手にしただけで不利なんだよ!」

 しかしミライは契約精霊でもあった。
 つまり、魔力が無くなればリアスから補充される。
 実質リアスとの戦闘中は魔法を無制限に打つことが出来、更に魔力も減らすことで戦力も削ぐことが出来る。
 そしてこのライトニングスピアを打ち消すためには、シールドではなく同じくらいのライトニングスピアを放たなければいけないわけだ。
 しかし半分ほど魔力を使ったこの魔法は雷の混じったシールドで反らされたためほとんど威力が落ちていない。
 つまりもう半分で魔法を返さなければいけないのだが、ミライに魔力を使われていたためいくら魔力の回復速度が速くても間に合わなかった。
 ライトニングスピアを辛うじて放ち威力こそ殺せたが、リアスは吹き飛んでいく。
 
『す、すごい・・・』

「あんた、もう少し信じてやりなよ。あんたの親友の娘だろ?」

『くっ、あんな奴親友じゃ・・・』

 クレセントは雷神、インテグラルのことは疎ましいと思って居た。
 しかしインテグラルの死を知ったとき、とてつもない虚無感に囚われ何もすることができなかった。
 スノーの言うとおり、クレセントはインテグラルを疎ましくも好ましいと感じていたのだろう。
 そしてその忘れ形見であるミライを全力で守ろうと決めていた。
 リアスとミライに結契を結ばせたのも、ミライを守るためだった。
 その想いは昇華され、リアスがミライをミライがリアスを全力で守る関係へと変化している。
 
「まぁいいさね。今ので彼から感じる強大な魔力は観測出来るくらいにまで減少している」

『ここからは近接戦闘になりますか』

「彼はカムイの仇敵で、話を聞いた感じじゃ寧ろ肉弾戦のが得意だろう。援護する準備をしておきな」

『言われなくても』

 結果的に魔力は空っぽになったリアス。
 いくら魔力回復速度が速くても、ここまで減れば魔力はこの闘い中魔法を使い続ける限り戻らない。
 それはミライが魔法を続けることで魔力は消費されるからだ。
 そしてそれを本能で感じ取ったリアスもとい襟巻きの自我は、すぐに肉弾戦へと切り替える。

「カワキヲぉぉ!」

「わかってる。君は元々肉体に付く血を見て高揚するみたいだからね」

 それは初めてリアスが襟巻きを装備したときにみた光景からも明らかだった。
 魔法が使えると言うことはかなりの脅威だ。
 だからこそ魔力を減らすことが出来たことは僥倖だった。
 そして半ば知性を身につけてしまったことで、失われてしまっているモノもある。

「襟巻き、君は知性を身につけたから強力になった。そう思ってるみたいだけど・・・」

「ッ!?」

 知性を身につけたと言うことは、判断能力が生まれたと言うこと。
 そして100%の判断能力と言うモノはない。
 だからフェイントというモノが役に経つ。
 本能で動いていた時にはミライは絶対にしない行動。
 ミライも前へと踏み出すことで、虚をついた。
 この情態で本能のまま、ぶつかり合えばミライは確実に吹っ飛ばされてしまい肉塊へと変わっただろう。
 しかし知性半ば持ったため、何かあると躊躇してしまった。
 止まっても処理出来ると思ってしまった。
 そこが彼の命取りとなる。

「君は、殺そうとしていた相手に負けるんだよ」

「さすがですミライ様!」

 上から空高く跳躍してきたイルミナが、リアスの元へ向かって来る。
 ミライは索敵も怠っておらず、イルミナが来ることを把握していた。
 ボロボロだったはずのイルミナは、服はボロボロだったが肉体に目立った損傷はない。
 襟巻きはここでイルミナが来る展開を予測出来なかった。
 しかしリアスはイルミナと何度も対峙しているためか、反応出来てしまった。
 イルミナの右足とリアスの左手がぶつかり合う。
 
「サセないっ!」

「反応出来てしまうとは。ですけど、わたしも囮・・・だとは思いませんでしたか?」

 後ろからそっと襟巻きを掴む影がある。
 それは先ほどまで鬼神に怯えていたリリィだった。

「もぉぉ!わたし怖いんだからさっさと正気に戻りなさいよぉ!」

 しかしリリィはビビってることもあり、イルミナほど速くは動けない。
 襟巻きを外されないために、開いている右手で襟巻きを掴もうとするリアスだったがそれは峰打ちで彼の右腕を弾く者がいなければ出来た話だ。

「わりぃな。まさかここまで上手くいくとは思わなかったけどよ」

 グランベルがリアスの右腕を弾いた。
 先ほど二人が消えたとミライが思ったのは、イルミナが二人を抱えて離脱したから。
 しかし離脱したのは逃走するためではなく、反撃の機会を待つため。
 イルミナはリリィの聖魔法で傷を治療してもらい万全を備えた。
 そしてこのチャンスで飛び出した。
 本来はイルミナ一人で完遂するはずの計画だったが、保険に二人にもこういう行動を取るようにイルミナが指示を出していた。
 もし自分が防がれるなら高確率で左腕を出すと思って居たイルミナは右腕を一瞬だけでも押さえるためにグランベルを配置した。
 リリィはビビっているため上手くいかない可能性もあったからの配慮であり、それは功を成す。

「最後の最後で、君の成長は自分の首を絞めたようだ。首を絞めるのが君の専売特許なのにね」

 これはすべて知性があったからこそ招いたことだった。
 クレセントは知性があると言うことを脅威に思って居たが、それは中途半端な知性の場合はそう上手くいかない。
 努力という時間に才能だけじゃ適わないようにリアスとミライの絆には、知性が生まれて間もない時間は高性能の肉体を持ってしても適わなかったのだ。

「もう君とは二度と会いたくないよ」

「グォラアアアあああああああああああああああ!」

 そしてリアスから襟巻きは剥がされる。
 その瞬間リアスの中から、襟巻きの自我はなくなった。
 倒れ込むリアスをグランベルが支え、ミライは細君支柱フィアンコネクトを解き、イルミナが肩を貸した。

「ふぅ、ナイスイルミナ。それにリリィとグランベルも」

「恐縮です」

 ミライとイルミナがハイタッチをして、二人に微笑むミライ。
 二人は苦笑いしながら応える。

「もうこんなことごめんだぜ?」

「はぁ、怖かった~!ってまだSランクの魔物達も相手しないといけないんだった!」

 しかし当のカムイや鬼神、チーリン達は口を開けたままこちらを見ている。
 スノーとクレセントは、ホッと息を吐く。

「やりおった!」

『まったくあの三人は・・・一歩間違えれば死んでいたのですよ』

 イルミナはともかく、リリィとグランベルはリアスと知り合ってから日が浅い。
 見捨てる選択肢をしてもおかしくはなかったのだ。
 だけど彼等は怯えながらも助けた。

(一度は敵対はしましたが、彼等も根はいいのかもしれません)

 リリィとグランベルは、前世の日本の記憶を元に動いていた。
 陥れる気があったし悪気もあった2人だったが、自身の行動を省みることができる人間だった。
 リアス達に味方はまだまだ少ない。
 クレセントは彼女達がリアス達の味方になってくれることを願って、彼等を見つめる。

「鬼神の、カムイの。もういいだろ?彼等は人間とは違う。闘いは終わりよ」

 スノーのその言葉により、鬼神は刀を鞘に納め、カムイはリアスをそっと抱き上げた。
 彼等も敵対する気はなかったのだ。

「悪かったなメス」

「謝り方が獣ですね。まぁいいです。貴方とはまだ対峙したく無い」

 敵同士ですぐ仲をとりなすとはならなかったが、一先ず戦いが集結した瞬間だった。
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