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159(グレン視点)

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 呪法の解除方法は二つある。
 一つは、術者が自ら解除すること。
 そしてもう一つは、ルルの用に昇華した魔装で解除してもらうかだ。

「ミネルヴァ!」

『解析完了!呪法ヲ解除シマス!』

「聖なる光よ。我に幸あれ」

 驚いたカインも呪法を解除する手段を持っているのか。
 二人とも何事もなかったかのように動き出した。
 しかし次の瞬間、二人とも身体を脱力させる。

「流石と言っておこう。俺様の呪法をすぐに解除するとは。だが、俺様の呪法は魔法と組み合わせた呪法でね」

「魔法と組み合わせた呪法だって?」

「この呪法は魔力と組み合わせることで解除しやすくなってしまった。だがその代わり、本人以外が無理やり解除すると本人の魔力が抜けていくのさ!」

「厄介なもん使いやがって!こっちが本命かよ」

「さて、俺様は悠々自適にここを脱出させてもらおうか。兵士と民間兵の争いもまだまだ続くだろうし、ある程度結果を出せた」

 また言霊縛りをされたらたまったもんじゃないからな。
 俺は黙ってドナルドの前に立ちはだかる。

「わかってる。お前だけは俺様の呪法を回避した上に、勝ち筋が確実じゃない。だから退く選択肢を取るんだ」

「本気で逃げれるとでも思ってんのかよ」

「もちろんだ。俺様はお前の性格を把握しているつもりだよ?」

 確かにあいつの魔法は強力だが防げない事はねぇ。
 魔法を放つ前にヴァルカンの加速でこいつを無力化すりゃいい!

「速い!」

「行けグレン・イガラシぃ!」

「わかってるんだよそんな事」

 俺が蹴りを入れる瞬間あいつの手の動きが変わった!?
 まさか狙いはーーー

「ちっ!フレイムーーー」

 俺はカインとマルグリットの前に即座に移動した。
 くそったれ!
 俺のはルルの時みたいな噴射での移動じゃなくて筋力強化の移動なんだぞ。
 そう何度も使えねぇのに。

「バリスティック!」

「グレン・イガラシ、お前」

 フレイムバリスティックで超級魔法を押し返し霧散させるが、気がつくとドナルドとピートの姿がなかった。
 まんまと逃げられちまった。

「カイン、これで貸し借りは無しだ」

 俺はカインに手を差し伸べ、カインは笑いながらその手を掴んだ。
 立ち上がり方がバランス悪いな。
 脱力感はしばらくは抜けないぽいな。

「やるじゃんか。流石はルルの彼氏だ」

「まだ彼氏じゃねぇよ」

「ダメだぜ、好きな奴にはちゃんと好きって伝えろよ。まぁ伝えてても死に別れする時はあるけどな」

 そうか、コイツは確かディーラの婚約者でもうディーラは死んでいるんだもんな。

「いやー、向こうのが少し上手だったね」

「お前はついでだ馬鹿。それよりこの現状どうにかしろよ」

「僕もまだ一人じゃ立てないんだけど!?」

「じゃあ貸し二つだ。仇で返すんじゃねぇぞ」

 マルグリットにも手を差し伸べる。
 自分でも甘いやつだと思うが、こいつにはもう敵意がないように見えた。

「はいはい。まぁこの惨状の後始末は僕がするとして、別で動いてるぽいマヤ様は大丈夫なのかい?」

「何でそこまで把握してんだよ、怖えな」

「そりゃ僕にも君と同じで愛しの旦那様がいるからね。愛する人はマルグリット商会の会長なんだ。ホウ・マルグリットって言ってね」

「それってお前の名前じゃねぇのか?だがまぁ商会のなまえをだしたってことは、少なくとも国内の情報は把握してるってことか」

「理解が早くて助かるよ。流石は王国随一の商会の息子だね。改めて僕の名前は新垣一彩あらがきひいろ日本出身の異世界人さ」

 異世界人、つまりコイツは勇者ってことか。
 まさか今世の勇者に会えるとは。

「マリと同じ異世界人か」

「マリ?」

「ゴールドマリーだよ。覚えてねぇか?」

「アイツも勇者なのか?」

「勇者?いやアイツは聖女だが」

 そうか、勝手に勘違いしていたが異世界人がこの世界に迷い込むのは一人だけかと思ってたけど何人も迷い込んでくるんだな。

「へぇ、聖女も日本人なんだ。それはいい情報を聞いた。でもまぁグレンは早くマヤ様と合流した方がいいよ」

「マヤもかなり強くなってるから問題ないとは思うが、さっきの奴みたいのがいたらちと厳しいか」

「マヤ様に死なれると困るんだ。僕はこの国を統べるつもりだからね。カルロスの血筋はこの国の正当な血筋だからね。それに僕の旦那もだし」

「やり方が汚いけどな」

「あれ?帝国は僕の計画を知ってるような口振りだね。旦那しかこの事は知らないのに」

「まぁこちらも情報収集能力は高いと言う事だ。グレン、ルルに伝えろ。この女と夫がこの国を統べる分には何も問題ないから帝国は侵攻は取りやめる。そして次に危険なのは王国だ。おそらく今はゴールドマリーと共闘してリリノアールを迎え撃ってるところだろう」

「は!?て言うかなんでそんなことわかんだよ」

「それもルルに言えばわかる。それとあの時は悪かったって伝えてくれ」

「あの時?」

「シュナイダーに協力した時のことさ」

 やはりあのときにはもう記憶が戻っていたのか。
 
「わかった伝えとく。それとディーラの事、ルルも泣いていたからあまり恨まないでくれ」

「アホか。ルルがディラを一番大切に思っていたぜ。じゃあな」

 そう言うとカインは空高く飛び上がって消えていった。
 俺もマヤのことを探すか。
 
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