4 / 241
番外編
いついかなる状況でも、萌えポイントは見逃せない 前編
しおりを挟む
お気に入り登録1000件突破記念小話です。
本編とほぼ同時進行の別視点です。
とっても下らないですが、個人的にはこういうのが好きです。
私は、見た。
見てしまった。
禁忌の瞬間だった。一瞬だったが、突然の酸欠に苦しんだ脳が見せた幻かとも思ったが・・・この魔導師団魔術科屈指の念写の技術を持つ私が、あの瞬間を見間違えるはずがない。
「何という奇跡!何という感動!何としても生き延びて帝都に、みんなの下にたどり着いて、この出来事を・・・!!」
それが、その場での、私の最後の記憶だった。
我々帝国魔導師団に、副団長から極秘命令が下ったのは、団長が急に姿を消して三日目の日没後の事だった。
『転移魔術の出来るものは、現時点の任務を一旦置いて、目立たぬよう、至急本部の天究の塔の最上階に集まること。』
使い魔たちが慌ただしく行きかう中で、メモの一つを眺めながら上司が私の方を見た。
「おい、お前も呼ばれてるぞ。」
「へ?」
思わず素っ頓狂な声をあげてしまう。私、、、名乗るほどのものでも無いですが、レティって言います、、、は、念写の技術の高さだけで、この間中級魔導師になったばかり。転移なんてセンスの必要な魔術、とても使えない。
「私、転移魔術使えません。ご存じですよね?なんで私が呼ばれるんでしょうか・・・?」
恐る恐る問い返すも、上司は首をすくめてメモをひらひらふっただけだった。
「俺が知るか?大方お前の特殊技術が要るんじゃないのか?こっちはいいから、取り合えず行ってこい。」
イヤです、なんて、言えるはずもない小心者の私は、慌てて作業室から飛び出した。
天究の塔は皇城のみならず皇都で最も高い塔だ。魔導師団でも一部の研究者が天体の観察に籠もる場所であり、基本的に立ち入りは禁止。研究者は上級魔導師がほとんどで転移の術が使えるから、つまり、、、。
「これを、登るの・・・?」
普通の人が唯一使えるのが、内部を延々と壁際に沿って登っていく螺旋階段だった。
ひたすら、ひたすら、階段を登っていく。普段作業室に籠もりきりの運動不足の身としては、きついなんてもんじゃない。フラッときて危うく真っ逆さまに転げ落ちそうになったことが、何度あったか。
言葉通り、死ぬ思いで最上階に辿り着いてみれば、、、、、。
「遅い。どこの部署だ、打ち合わせはもう終わって、一旦解散だぞ。」
神経質そうな眼鏡を掛けた魔導師が、細かく記載された紙を見ながら冷たく言い放った。
そ、そんな、、、。
へなへなとその場に座り来む。所属と名前を言わなければいけないと分かっていても、その気力さえ出ない。
泣きそうだ、いや、もうすでに眦には涙が滲んでる。もう少し冷たいことを言われたら、ワァワァ泣いてしまいそうだ。
そう思った時。
「レティじゃない。なんであんたここに居るの?」
思わぬ知人の声がして、私はハッと顔を上げた。
「テレーゼ・・・」
それは、趣味を介して知り合った、上級魔導師だった。
流石上級魔導師。テレーゼはこの眼鏡野郎、、、もとい、眼鏡のお兄さんの事も知っていた。
「この眼鏡は副団長の副官のゲイリー・グレゴール。ゲイリー、この子はレティ。魔術科で念写を専門にやってる子よ。」
「ああ、こいつが例の。」
眼鏡、、、だってテレーゼも言ってたもん、、、が下らないものを見るような眼をしながら言った。
なによう、例のって。
「中級に上がったばっかりなんだから、転移なんて出来ないに決まってるでしょ。分かって呼んでるんならちゃんと足も用意しなきゃ。」
親しい仲なのか、ずけずけ言ってくれる。ああ、やっぱり趣味のお友達って結束固くていいわあ。などと思っていると。
眼鏡はフンっと鼻で笑った。
「こいつは念写の技術だけで呼ばれた。つまり、魔道具と一緒だ。打ち合わせの内容を教える必要もない。ちょうどいい時にご到着だ。」
な、なんですってぇ~!
やっと立ち上がった足が、怒りと、、、疲れでブルブルしている。
文句を言おうと口を開ける前に、かぶせるように言われてしまった。
「お前は、目的地に着き目標を確保したら、捜索隊に加わり、言われた通りに念写すればいい。簡単だろ。転移を使えないお前のために、上級魔導師を一人付けるんだ。せいぜいしっかりお役目を果たすんだな。」
言うだけ言い捨てて屋外に出ると、、、塔の天辺は小さい作業スペースの他は、美しくレンガ張りされた広いバルコニーだけだった、、、眼鏡はスイっと消えてしまった。
「え・・・?」
気が付くと、たどり着いた時には結構いた他の魔導師もいなくなり、ここには私とテレーゼしかいない。
ぽかんとしていると、テレーゼが言った。
「次の集合は今晩の真夜中少し前なの。こんな何もないところに居ても仕方ないわ。さっさと地上に戻りましょ。」
えー!今度はあれを降りるの。もう、ここで夜中まで待とうかな、、、。
休めるスペースが無いか見回す私の腕をテレーゼがぐっと掴んだ。
「友達の誼で、送り迎えくらいしてあげるわよ。」
テレーゼ!なんていい人!!
「その代わり・・・」いい笑顔。
「?」
「今度いい設定の念写が出来たら、優先して回してね。」そっちか、、、。良いけど。友情って、、、。
私はちょっとがっくりした。
真夜中までは間があったので腹ごしらえを済ませ、仮眠を取る。良い念写には睡眠が不可欠。これ、私の持論である。
待ち合わせ場所に急ぐとテレーゼはとっくに来ていた。
「レティ、遅いわよ。私の時間が終わっちゃうわ!」
さっと腕を掴まれる。フッと視界が暗くなると、そこは天空の塔の天辺の下にあった広間だった。
「あれ、天辺に直接は出ないんだ・・・」
魔道具の灯りで薄暗い広間を見回す。端に一人の魔導師が居るだけのがらんとした空間。
「あんな人混みの中に団長でもないのに転移出来る訳ないでしょ。この広さでも怪しい奴等だっているんだから。」
テレーゼはフンっと言って、端の魔導師へ声を掛けた。
「遅くなって申し訳ありません。魔導師管理部のテレーゼ・ギルフォード、到着しました。魔術科念写係のレティ・イニスを同伴してます。」
「ご苦労。上に上がってくれ。」
声と同時にぽうっ、と壁の一か所が光った。階段が浮かび上がる。なんて便利な!夕方はどこに出たのか分からず、暗い中一周壁を回って階段を見つけたのに、、、まあ、良いけど。
テレーゼと二人、短い階段を駆け上がる。
そこには、相変わらずの(私もだけど)黒づくめの魔導師が十人ほどと、、、なぜか緋色の騎士服も眩い近衛騎士様が数人いた、、、?なんで?
そう言えば、どこに、何しに行くのか、私何にも聞いてなかった、、、やばいことに首突っ込んで無いよね、、、、。
青ざめてテレーゼの方を向くと、彼女はとっくに他の人と話していた。
「時間、そろそろだけど・・・」
「ああ、驚いたことに、向こうは結界が維持されているらしい。解除したら連絡が来るから、それまで待機だ。」
「!こんな状況で?もしや団長はやっぱりバーベンベルクに籠もって・・・?」
「しっ。近衛騎士団がいるのに、滅多なこと言うなよ。辺境伯家は否定してるんだから。」
「あ・・・そうね。ごめんなさい。」
なになに!私はこれからバーベンベルクに行くの?北の果てだよね?騎士団の早駆けで十日、乗合馬車ならどうかすると一月掛かるってところだよね。ビールと腸詰がおいしくて背の高い美人がたくさんいるっていう、、、わぉ!
盛り上がっていると、テレーゼがやれやれと言った体でこっちを向いた。
「今の話を聞いて何を考えてるのか大体分かるけど。」厳しい顔をして腕を組む。
「私たちの任務は近衛騎士団を連れてバーベンベルクを急襲し、辺境伯夫妻が不在の中、辺境伯代行を務めている跡取りのオスカー様を皇城にお連れすること。意思にかかわらず、ね。意味、分かるよね?」
「急襲・・・意思にかかわらず・・・それってバーベンベルクと・・・」
「そう、あの鉄壁の守り、鋼の軍隊と呼ばれるバーベンベルクを相手にする可能性もあるってこと。」
死にに行けって、ことですか?
「わ、私、急に用事を思い出して・・・田舎のおばあちゃんが熱を・・・いや、腰を悪くして・・・」
まずい、まずいよ。私。まだ死にたくない。
じりじり後ずさろうとした私を後ろから誰かが呼んだ。
「おい、この辺に魔術科から呼んだレティってのが来てないか?騎士の方の隊長が呼んでるんだけど。」
ビクッとすると、テレーゼがニヤッと笑ってがしっと腕を掴む。
「観念するんだね、呼ばれてるよレティちゃん。・・・おい、ここにレティいるぞ。」
そ、そんな、、、。友情って、、、。
私は呆然としながら騎士団の方へと引きずられて行った。
狭い作業スペースである。数歩のところに近衛騎士団は集まっていた。すでに円陣を組んで指示を受けているようだ。
私をその中に放り込むと、引っ張ってきた魔導師はそのまま円陣のすぐわきで留まった。こっちの要員らしい。
何人もの目に不審そうに見つめられて小さくなりながら、私は自分の所属と職位を告げる。
「魔術師団魔術科念写係、中級魔導師のレティ・イニスです。」
「遅いぞ。」
間髪を入れず叱責を受け一層縮こまる。声の主は偉そうに円陣の中心に立つ若い騎士だった。
「す、すみま・・・」
「お前は俺の後ろを邪魔にならないよう付いてこい。そして、あの化け物、アルフレート・グンダハールを見つけ次第、念写する。その際、ねつ造の言いがかりを付けられないよう、周りを含め完璧に念写するんだ。
あいつは一瞬で転移するから、機会も一瞬だ。いいな。」
え、えっと、、、。化け物?アルフレート・グンダハール?誰の事、、、?
盛大にはてなマークを飛ばす私を置いて、訓示は進んでいったようで。
ふと気づくと。
「では、これより近衛騎士団第一小隊と魔導師団混成チームは作戦を開始する。目的地、バーベンベルク城主塔、目標、辺境伯代行の確保。行動は隠密扱いとし、極力先方との接触を避けるが、敵対時には抜刀を許可。魔導師も同様、攻撃を受けた場合は戦闘魔術の使用を許可する。」
「座標最終確認終わりました。」
「使い魔視界との同期、完了。」
「よし!・・・出発!」
あの隊長のお兄さんの声とともに、ガシッと腕を掴まれた。ギョッと振り向くとさっき私を騎士たちのところへ連れてきた魔導師がいる。そっと耳元で囁かれた。
「だいぶ混乱してるね。君が念写しろと言われたのは、うちの団長だよ。あいつ等、団長はバーベンベルクに籠もってると思ってるんだ。」
「・・・!」
「まあ、時間も無いし、今はあのお兄さんに付いて行くとしようか。ああ、僕が君の転移の補助者だよ。オリヴィエって呼んでね、レティちゃん。」
「ひ、ひえ~。」
ニコッと胡散臭げに微笑まれると同時に転移され、私は情けない叫び声を帝都の夜空に残し、怒涛の一晩へと連れ出されたのであった。
本編とほぼ同時進行の別視点です。
とっても下らないですが、個人的にはこういうのが好きです。
私は、見た。
見てしまった。
禁忌の瞬間だった。一瞬だったが、突然の酸欠に苦しんだ脳が見せた幻かとも思ったが・・・この魔導師団魔術科屈指の念写の技術を持つ私が、あの瞬間を見間違えるはずがない。
「何という奇跡!何という感動!何としても生き延びて帝都に、みんなの下にたどり着いて、この出来事を・・・!!」
それが、その場での、私の最後の記憶だった。
我々帝国魔導師団に、副団長から極秘命令が下ったのは、団長が急に姿を消して三日目の日没後の事だった。
『転移魔術の出来るものは、現時点の任務を一旦置いて、目立たぬよう、至急本部の天究の塔の最上階に集まること。』
使い魔たちが慌ただしく行きかう中で、メモの一つを眺めながら上司が私の方を見た。
「おい、お前も呼ばれてるぞ。」
「へ?」
思わず素っ頓狂な声をあげてしまう。私、、、名乗るほどのものでも無いですが、レティって言います、、、は、念写の技術の高さだけで、この間中級魔導師になったばかり。転移なんてセンスの必要な魔術、とても使えない。
「私、転移魔術使えません。ご存じですよね?なんで私が呼ばれるんでしょうか・・・?」
恐る恐る問い返すも、上司は首をすくめてメモをひらひらふっただけだった。
「俺が知るか?大方お前の特殊技術が要るんじゃないのか?こっちはいいから、取り合えず行ってこい。」
イヤです、なんて、言えるはずもない小心者の私は、慌てて作業室から飛び出した。
天究の塔は皇城のみならず皇都で最も高い塔だ。魔導師団でも一部の研究者が天体の観察に籠もる場所であり、基本的に立ち入りは禁止。研究者は上級魔導師がほとんどで転移の術が使えるから、つまり、、、。
「これを、登るの・・・?」
普通の人が唯一使えるのが、内部を延々と壁際に沿って登っていく螺旋階段だった。
ひたすら、ひたすら、階段を登っていく。普段作業室に籠もりきりの運動不足の身としては、きついなんてもんじゃない。フラッときて危うく真っ逆さまに転げ落ちそうになったことが、何度あったか。
言葉通り、死ぬ思いで最上階に辿り着いてみれば、、、、、。
「遅い。どこの部署だ、打ち合わせはもう終わって、一旦解散だぞ。」
神経質そうな眼鏡を掛けた魔導師が、細かく記載された紙を見ながら冷たく言い放った。
そ、そんな、、、。
へなへなとその場に座り来む。所属と名前を言わなければいけないと分かっていても、その気力さえ出ない。
泣きそうだ、いや、もうすでに眦には涙が滲んでる。もう少し冷たいことを言われたら、ワァワァ泣いてしまいそうだ。
そう思った時。
「レティじゃない。なんであんたここに居るの?」
思わぬ知人の声がして、私はハッと顔を上げた。
「テレーゼ・・・」
それは、趣味を介して知り合った、上級魔導師だった。
流石上級魔導師。テレーゼはこの眼鏡野郎、、、もとい、眼鏡のお兄さんの事も知っていた。
「この眼鏡は副団長の副官のゲイリー・グレゴール。ゲイリー、この子はレティ。魔術科で念写を専門にやってる子よ。」
「ああ、こいつが例の。」
眼鏡、、、だってテレーゼも言ってたもん、、、が下らないものを見るような眼をしながら言った。
なによう、例のって。
「中級に上がったばっかりなんだから、転移なんて出来ないに決まってるでしょ。分かって呼んでるんならちゃんと足も用意しなきゃ。」
親しい仲なのか、ずけずけ言ってくれる。ああ、やっぱり趣味のお友達って結束固くていいわあ。などと思っていると。
眼鏡はフンっと鼻で笑った。
「こいつは念写の技術だけで呼ばれた。つまり、魔道具と一緒だ。打ち合わせの内容を教える必要もない。ちょうどいい時にご到着だ。」
な、なんですってぇ~!
やっと立ち上がった足が、怒りと、、、疲れでブルブルしている。
文句を言おうと口を開ける前に、かぶせるように言われてしまった。
「お前は、目的地に着き目標を確保したら、捜索隊に加わり、言われた通りに念写すればいい。簡単だろ。転移を使えないお前のために、上級魔導師を一人付けるんだ。せいぜいしっかりお役目を果たすんだな。」
言うだけ言い捨てて屋外に出ると、、、塔の天辺は小さい作業スペースの他は、美しくレンガ張りされた広いバルコニーだけだった、、、眼鏡はスイっと消えてしまった。
「え・・・?」
気が付くと、たどり着いた時には結構いた他の魔導師もいなくなり、ここには私とテレーゼしかいない。
ぽかんとしていると、テレーゼが言った。
「次の集合は今晩の真夜中少し前なの。こんな何もないところに居ても仕方ないわ。さっさと地上に戻りましょ。」
えー!今度はあれを降りるの。もう、ここで夜中まで待とうかな、、、。
休めるスペースが無いか見回す私の腕をテレーゼがぐっと掴んだ。
「友達の誼で、送り迎えくらいしてあげるわよ。」
テレーゼ!なんていい人!!
「その代わり・・・」いい笑顔。
「?」
「今度いい設定の念写が出来たら、優先して回してね。」そっちか、、、。良いけど。友情って、、、。
私はちょっとがっくりした。
真夜中までは間があったので腹ごしらえを済ませ、仮眠を取る。良い念写には睡眠が不可欠。これ、私の持論である。
待ち合わせ場所に急ぐとテレーゼはとっくに来ていた。
「レティ、遅いわよ。私の時間が終わっちゃうわ!」
さっと腕を掴まれる。フッと視界が暗くなると、そこは天空の塔の天辺の下にあった広間だった。
「あれ、天辺に直接は出ないんだ・・・」
魔道具の灯りで薄暗い広間を見回す。端に一人の魔導師が居るだけのがらんとした空間。
「あんな人混みの中に団長でもないのに転移出来る訳ないでしょ。この広さでも怪しい奴等だっているんだから。」
テレーゼはフンっと言って、端の魔導師へ声を掛けた。
「遅くなって申し訳ありません。魔導師管理部のテレーゼ・ギルフォード、到着しました。魔術科念写係のレティ・イニスを同伴してます。」
「ご苦労。上に上がってくれ。」
声と同時にぽうっ、と壁の一か所が光った。階段が浮かび上がる。なんて便利な!夕方はどこに出たのか分からず、暗い中一周壁を回って階段を見つけたのに、、、まあ、良いけど。
テレーゼと二人、短い階段を駆け上がる。
そこには、相変わらずの(私もだけど)黒づくめの魔導師が十人ほどと、、、なぜか緋色の騎士服も眩い近衛騎士様が数人いた、、、?なんで?
そう言えば、どこに、何しに行くのか、私何にも聞いてなかった、、、やばいことに首突っ込んで無いよね、、、、。
青ざめてテレーゼの方を向くと、彼女はとっくに他の人と話していた。
「時間、そろそろだけど・・・」
「ああ、驚いたことに、向こうは結界が維持されているらしい。解除したら連絡が来るから、それまで待機だ。」
「!こんな状況で?もしや団長はやっぱりバーベンベルクに籠もって・・・?」
「しっ。近衛騎士団がいるのに、滅多なこと言うなよ。辺境伯家は否定してるんだから。」
「あ・・・そうね。ごめんなさい。」
なになに!私はこれからバーベンベルクに行くの?北の果てだよね?騎士団の早駆けで十日、乗合馬車ならどうかすると一月掛かるってところだよね。ビールと腸詰がおいしくて背の高い美人がたくさんいるっていう、、、わぉ!
盛り上がっていると、テレーゼがやれやれと言った体でこっちを向いた。
「今の話を聞いて何を考えてるのか大体分かるけど。」厳しい顔をして腕を組む。
「私たちの任務は近衛騎士団を連れてバーベンベルクを急襲し、辺境伯夫妻が不在の中、辺境伯代行を務めている跡取りのオスカー様を皇城にお連れすること。意思にかかわらず、ね。意味、分かるよね?」
「急襲・・・意思にかかわらず・・・それってバーベンベルクと・・・」
「そう、あの鉄壁の守り、鋼の軍隊と呼ばれるバーベンベルクを相手にする可能性もあるってこと。」
死にに行けって、ことですか?
「わ、私、急に用事を思い出して・・・田舎のおばあちゃんが熱を・・・いや、腰を悪くして・・・」
まずい、まずいよ。私。まだ死にたくない。
じりじり後ずさろうとした私を後ろから誰かが呼んだ。
「おい、この辺に魔術科から呼んだレティってのが来てないか?騎士の方の隊長が呼んでるんだけど。」
ビクッとすると、テレーゼがニヤッと笑ってがしっと腕を掴む。
「観念するんだね、呼ばれてるよレティちゃん。・・・おい、ここにレティいるぞ。」
そ、そんな、、、。友情って、、、。
私は呆然としながら騎士団の方へと引きずられて行った。
狭い作業スペースである。数歩のところに近衛騎士団は集まっていた。すでに円陣を組んで指示を受けているようだ。
私をその中に放り込むと、引っ張ってきた魔導師はそのまま円陣のすぐわきで留まった。こっちの要員らしい。
何人もの目に不審そうに見つめられて小さくなりながら、私は自分の所属と職位を告げる。
「魔術師団魔術科念写係、中級魔導師のレティ・イニスです。」
「遅いぞ。」
間髪を入れず叱責を受け一層縮こまる。声の主は偉そうに円陣の中心に立つ若い騎士だった。
「す、すみま・・・」
「お前は俺の後ろを邪魔にならないよう付いてこい。そして、あの化け物、アルフレート・グンダハールを見つけ次第、念写する。その際、ねつ造の言いがかりを付けられないよう、周りを含め完璧に念写するんだ。
あいつは一瞬で転移するから、機会も一瞬だ。いいな。」
え、えっと、、、。化け物?アルフレート・グンダハール?誰の事、、、?
盛大にはてなマークを飛ばす私を置いて、訓示は進んでいったようで。
ふと気づくと。
「では、これより近衛騎士団第一小隊と魔導師団混成チームは作戦を開始する。目的地、バーベンベルク城主塔、目標、辺境伯代行の確保。行動は隠密扱いとし、極力先方との接触を避けるが、敵対時には抜刀を許可。魔導師も同様、攻撃を受けた場合は戦闘魔術の使用を許可する。」
「座標最終確認終わりました。」
「使い魔視界との同期、完了。」
「よし!・・・出発!」
あの隊長のお兄さんの声とともに、ガシッと腕を掴まれた。ギョッと振り向くとさっき私を騎士たちのところへ連れてきた魔導師がいる。そっと耳元で囁かれた。
「だいぶ混乱してるね。君が念写しろと言われたのは、うちの団長だよ。あいつ等、団長はバーベンベルクに籠もってると思ってるんだ。」
「・・・!」
「まあ、時間も無いし、今はあのお兄さんに付いて行くとしようか。ああ、僕が君の転移の補助者だよ。オリヴィエって呼んでね、レティちゃん。」
「ひ、ひえ~。」
ニコッと胡散臭げに微笑まれると同時に転移され、私は情けない叫び声を帝都の夜空に残し、怒涛の一晩へと連れ出されたのであった。
0
あなたにおすすめの小説
隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり
鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。
でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
幼馴染の許嫁
山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。
彼は、私の許嫁だ。
___あの日までは
その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった
連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった
連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった
女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース
誰が見ても、愛らしいと思う子だった。
それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡
どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服
どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう
「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」
可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる
「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」
例のってことは、前から私のことを話していたのか。
それだけでも、ショックだった。
その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした
「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」
頭を殴られた感覚だった。
いや、それ以上だったかもしれない。
「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」
受け入れたくない。
けど、これが連の本心なんだ。
受け入れるしかない
一つだけ、わかったことがある
私は、連に
「許嫁、やめますっ」
選ばれなかったんだ…
八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。
昼寝部
キャラ文芸
俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。
その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。
とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。
まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。
これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。
小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!
竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」
俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。
彼女の名前は下野ルカ。
幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。
俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。
だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている!
堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる