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番外編
いついかなる状況でも、萌えポイントは見逃せない 中編
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「・・・と言う訳で、今回の任務については、無かったこととする。対内部、外部を問わず任務の存在自体を否定。転移者の召集は各地の結界起動装置の一斉確認のため。いいな。」
バーベンベルク城急襲から三日が過ぎた。
あの晩、酸欠で朦朧とした魔導師団は、団長に一纏めにされ、一瞬で魔導師団本部の会議室に放り込まれたらしい。連絡を受けた医務員たちが駆け付けた時、私たちは意識を失ったまま、一人一人が外せないよう魔術封印付きの縄でくくられ転がっていたそうだ。
私自身、気が付いたら医務室のベッドの上で、もうその日の夕方近くなっていた。何個か先のベッドではテレーゼが寝てたから、みんな似たようなものだったらしい。
そのまま、連絡を受けるまで医務室待機命令が出て三日。
やっと招集が掛かり、やれやれと顔を出した会議室では、団長の副官を務めるエルンスト上級魔導師殿が、今回の任務の位置づけと今後の対応をかいつまんで説明してくれた。
それによると、今回、団長の失踪そのものが無かったことにされるらしい。
隣国ロンヌの王太子帰国に当たり、親しくなった王太子との名残が尽きず、国境まで見送ることにしたが、うっかり誰にも言わずに出て来たため、魔導師団を始め王宮中が先走って探し回ってしまった、という公式見解が、近く出されるとか。
あの団長が、男とそんなに仲良くなるはずがない。しかも、誰にも言わずに出ても、三日くらいなら、普段なら誰も探さないと思うんだよね。今回は結界消失と言う異常事態が発生したから、団長がいないと大騒ぎになったんだし。
ツッコミどころが多すぎて、どうしていいか分からない。
私の思いは団員共通だったらしい。あちこちから、失笑や不満の声が上がっている。
でも、まあ、私自身は特に問題ないかな。存在しない任務って言ってもあれだけ大規模な召集が掛かったわけだし、仲間内でこそこそ噂話をするくらいは黙認されるだろう。
あの奇跡をこの目で見ることはが出来たのだ。後はこの感動を仲間と分かち合えればそれで、、、。
次の会合はいつかな、どんなふうに発表しようかな、、、。軽く考えて話を聞き流していた私に爆弾が投下されたのは、次の瞬間だった。
「よって、本件については、公式の見解以外を、口にすること、念写すること、その他考えうる公表手段を取ることは一切禁止。この場で全員に魔術誓約を行ってもらう。」
「えーー!!」
思わず叫んで立ち上がる、、、。ハッとするもすでに遅かった。
私以外の人々にとっては想定内の事だったらしい。驚いたような視線を一身に受け、私は倒れ込むように腰を落と
すと、真っ赤になって机に突っ伏した。
そのままショックのあまり意識が飛んでしまったらしい。
「・・・ティちゃん、レティちゃん。」
聞き覚えのある声にハッと顔を上げると、目の前でかがんで声を掛けてくれた人に思いっきり額をぶつけてしまった。
「あたた・・・すみません。」
涙目になりながら謝ると、向こうも苦笑しながら返してくれた。
「いいよ、僕ものぞき込んでいたから。それより、魔術誓約、残ってるのレティちゃんだけなんだけど。」
「え・・?」
周りを見回すと、確かに誰もいない。テレーゼまで私を置いて行ったの?なんて薄情な、、、。フルフルしていると、また別の声が掛かった。
「君、さっき魔術誓約をします、って言ったら叫んだよね?なんでか、聞いても良い?」
見上げると、エルンスト副官が腕組みをして立っていた。ちょっと怖い目つきだ。
「あ、いえ・・・」
あの奇跡の場面を念写して残したい、て言ってもいいんだろうか?それとも、その瞬間忘却魔法で今回の事への参加そのものを消されるんだろうか?そんなことになるなら、一人胸にあの奇跡を秘めていたい。
私の逡巡をどう受け止めたのか・・・始めに声を掛けてくれた人が、エルンスト副官に話しかけている。
「この子、例の念写の子だよ。確かこの子もあの場にいたんだろう?きっと良いもの見たんじゃないのかい?」「あの場の混乱を記録されるなんて、おぞけがふるうよ。・・・貴重な場面はあったよ。正直、ほとぼりが冷めたら研究棟に持ち込みたいような・・・でもお前だって酸欠からの記憶ないんだろ。こんな女の子に記憶が残ってるわけないさ。」
「まあそうだけど。でも、聞くだけ聞いてみたら。ほら、もうここにいるの僕たちだけだし・・・」
この人、エルンスト副官にため口なんて、結構エラい人なんだな。誰なんだろう。
声は聞いたことある気がする、、、考えていると、不意に二人がこっちを見た。
「話、聞いてた?」
全く。ブンブン首を振ると、二人にそろってため息を吐かれた。
エルンスト副官がやれやれと言った風で口を開く。
「オリヴィエが言うにはさ、君はきっと残したかった貴重な記憶があるはずだって言うんだ。もしそうなら、魔術の発展の為にも、特例を作るのはやぶさかではないんだけど。」
だからとにかく何を見たのか話してご覧。エルンスト副官のご親切なお言葉は、始めの一言でスルーされた。
「オリヴィエさん!貴方が!」
「この間は真夜中の任務で、みんなフードかぶってたからね。僕がオリヴィエだよ。よろしく。」
再び叫んだ私に、激しく脱力したエルンスト副官と違い。オリヴィエさんはにこやかに言った。
!なんて、なんて胡散臭そうな笑みなの!腹黒さがにじみ出ている・・・ガチで好みど真ん中だ。
まずい!鼻血ふきそう。いや、今は大事な話をしていたはず。戻ってこい、私の理性、、、!
鼻を抑えながら念じていると、脱力したままのエルンスト副官に代わり、オリヴィエさんが話を続けてくれた。
「君があの場で、そうだな・・・近衛の連中が空中を舞った以降で、見たものってなに?」
よし、会話をすることで落ち着こう!あの場所で見たことは、、、。
「エルンスト副官が懐から出された幼女が何かを指で描き、近くにいた魔導師の一人にかぶせると、急に苦しみだしました。その後、幼女は次々と何かをかぶせていき、その度にかぶせられた人は苦しみだして。自分の番が来て、分かりました。急に息が出来なくなったのです。息苦しさに気が遠くなりながら、顔の周りをかきむしると、なんとなく違和感がありました。急に空気の流れが変わるような・・・。」
あの時の混乱と恐怖を思い出し、身体中を震えが走る。エルンスト副官がため息をついた。
「あれは空気のない空間を顔の周りに作っていたんだ。箱をかぶせるような感じでな。単純だが効果的な術式だった。」
やっぱり無理だよ、エルンスト副官が言うのに構わず先を続ける。
「その後、少し気を失っていたように思います。フッと息が出来るようになり、顔を上げると、少年が腕を伸ばした先に、あの幼女がいて、なぜか腕が幼女を通り越してました。」
「そこ、記憶あるのか!?念写してみろ!」
エルンスト副官がいきなり大声を出す。うるさいな、もう。念写、ここでするのかしら?
私は言われるがまま、渡された紙、、、どうでもいいけど、今回の会議資料の裏紙だった、、、に、指示された場面を念写した。
「これは・・・」
「すごいね、対象だけじゃなくて、周りの状況も克明だ。噂には聞いていたけど・・・」
「顔を隠せばいけるね。」「あ、ああ・・・」
二人が食い入るように私の念写した場面を見つめる。
「この後は?どこまで記憶がある?」
「えーっと、、、。」逡巡すると、オリヴィエさんが悪い顔で頷いた。ま、いいか。
「・・・辺境伯夫妻のご帰還と、その後発光した幼女が団長の処置により元の状態に戻り、伯の腕に渡され・・・」
「念写して!」
言われるがままに裏紙に念写する。あまりの速さに少しクラクラして「これ以上はちょっと・・・」と言ったら。
「よし、特例を認めよう!!素晴らしい!君、ほんとによくやった!!」
エルンスト副官の食い気味の声がした。ウキウキしている。
「落ち着いたら研究棟から連絡させるから、思う存分念写してくれ!いや~よかった。これで今回のくそ任務にも、素晴らしい魔術の貢献があったという事だな!うん。」
大声で叫んで私の肩をバシバシ叩いた、この人、こんなに暑苦しい人だったんだ、、、。
思いつつ、不図視線を感じるとオリヴィエさんが私を見ていた。目が合って口が開く、と、耳元で囁き声がした。
「報酬をお願いしてごらん。」
びっくりして目をぱちぱちさせてしまう。オリヴィエさんは可笑しそうに笑いながらもう一度同じことをすると口を閉ざした。
何だかよく分からないけど。せっかくだし、言ってみるか。
「エルンスト副官殿?」
「なんだ?どうした?」
「私がこの念写でお役に立つとしても、任務が無かったことになるのであれば、仕事の評価にはなりません。その分、何らかの報酬・・・ご褒美を頂けませんか?」
わー、言っちゃった。図々しいって思われたらどうしよう。
自分で言って引いていると。
「確かにそうだな。」思いもかけない返答が来た。
「君はあの困難な状況で素晴らしい結果を残してくれたのに・・・どんな報酬が欲しいんだ。俺の一存で可能なことなら・・・いや、無理でも何とかして・・・」首をひねって、頭を掻いて考えてくれる。
いい人なんだな。暑苦しいけど。
でも、何かって、私の欲しいのはこの念写だし・・・考えてると、またまた耳元で囁き声がした。
「念写、自分でもしたいんでしょう?頼んじゃいなよ。口添えしてあげる。」
またしてもオリヴィエさんの声。見上げるとまたまた悪い顔で頷いた。よし、言うだけ言ってみるか。
「じ、じゃあ、今回の場面、私のプライベートでも念写していいですか?もちろんちょっと個人的に見たいだけです。まあ何人か友達には見せるかもしれませんが・・・その場合は個人を特定出来ないよう加工するので・・・」
無理かな、辺境伯がらみだもんね、怒られる前に取り下げようか・・・。悩んでると、オリヴィエさんが言った。
「良いんじゃない、エル。彼女も魔導師なんだから、こんなすごいもの、自分でゆっくり見たいだろうし。友人に見せるって言っても、顔は出さないんだろ・・・?魔導師なら、こんな研究材料、興味あるに決まってる。」
「うーん。魔導師ならな・・・」ちょっと迷うエルンスト副官。あれ?押せば行ける?
私も一生懸命言ってみた。
「念写を披露したいのは、魔導師団内での同好会なんです。他には出しません。自由精神研究会って言って、何物にもとらわれない自由な発想と精神で対象を見、その見方の是非を徹底的に話し合うんです・・・エルンスト副官?」
「・・・っす・素晴らしい!」
いきなり肩をガシッと掴まれた。ブンブン揺さぶられる。地味に辛い。
「君は本当に魔導師の鑑だな。自由な発想、偏見のない物の見方、徹底した討論・・・っくう。俺は泣けてくるよ。あんないい加減な団長の下、こんな真面目で熱心な若手が育っているなんて・・・。よし、君に特例を与えよう。今回の件、魔導師団や近衛騎士団に不利益を与えないこと、商業的な目的で行わないこと、他人に見せる際は個人の特定を避ける事を条件に、個人的な念写を許可しよう。」
「え・・・」
いいの?本当に?
自分から言っておいて、あまりの好待遇に戸惑う私に、オリヴィエさんが悪い顔で言った。
「よかったね。レティちゃん。お仲間もきっと喜ぶよ。」
その時、その時やっと、私は悟ったのだ。オリヴィエさんは、おそらく、私の真の目的を知っていると、、、。
バーベンベルク城急襲から三日が過ぎた。
あの晩、酸欠で朦朧とした魔導師団は、団長に一纏めにされ、一瞬で魔導師団本部の会議室に放り込まれたらしい。連絡を受けた医務員たちが駆け付けた時、私たちは意識を失ったまま、一人一人が外せないよう魔術封印付きの縄でくくられ転がっていたそうだ。
私自身、気が付いたら医務室のベッドの上で、もうその日の夕方近くなっていた。何個か先のベッドではテレーゼが寝てたから、みんな似たようなものだったらしい。
そのまま、連絡を受けるまで医務室待機命令が出て三日。
やっと招集が掛かり、やれやれと顔を出した会議室では、団長の副官を務めるエルンスト上級魔導師殿が、今回の任務の位置づけと今後の対応をかいつまんで説明してくれた。
それによると、今回、団長の失踪そのものが無かったことにされるらしい。
隣国ロンヌの王太子帰国に当たり、親しくなった王太子との名残が尽きず、国境まで見送ることにしたが、うっかり誰にも言わずに出て来たため、魔導師団を始め王宮中が先走って探し回ってしまった、という公式見解が、近く出されるとか。
あの団長が、男とそんなに仲良くなるはずがない。しかも、誰にも言わずに出ても、三日くらいなら、普段なら誰も探さないと思うんだよね。今回は結界消失と言う異常事態が発生したから、団長がいないと大騒ぎになったんだし。
ツッコミどころが多すぎて、どうしていいか分からない。
私の思いは団員共通だったらしい。あちこちから、失笑や不満の声が上がっている。
でも、まあ、私自身は特に問題ないかな。存在しない任務って言ってもあれだけ大規模な召集が掛かったわけだし、仲間内でこそこそ噂話をするくらいは黙認されるだろう。
あの奇跡をこの目で見ることはが出来たのだ。後はこの感動を仲間と分かち合えればそれで、、、。
次の会合はいつかな、どんなふうに発表しようかな、、、。軽く考えて話を聞き流していた私に爆弾が投下されたのは、次の瞬間だった。
「よって、本件については、公式の見解以外を、口にすること、念写すること、その他考えうる公表手段を取ることは一切禁止。この場で全員に魔術誓約を行ってもらう。」
「えーー!!」
思わず叫んで立ち上がる、、、。ハッとするもすでに遅かった。
私以外の人々にとっては想定内の事だったらしい。驚いたような視線を一身に受け、私は倒れ込むように腰を落と
すと、真っ赤になって机に突っ伏した。
そのままショックのあまり意識が飛んでしまったらしい。
「・・・ティちゃん、レティちゃん。」
聞き覚えのある声にハッと顔を上げると、目の前でかがんで声を掛けてくれた人に思いっきり額をぶつけてしまった。
「あたた・・・すみません。」
涙目になりながら謝ると、向こうも苦笑しながら返してくれた。
「いいよ、僕ものぞき込んでいたから。それより、魔術誓約、残ってるのレティちゃんだけなんだけど。」
「え・・?」
周りを見回すと、確かに誰もいない。テレーゼまで私を置いて行ったの?なんて薄情な、、、。フルフルしていると、また別の声が掛かった。
「君、さっき魔術誓約をします、って言ったら叫んだよね?なんでか、聞いても良い?」
見上げると、エルンスト副官が腕組みをして立っていた。ちょっと怖い目つきだ。
「あ、いえ・・・」
あの奇跡の場面を念写して残したい、て言ってもいいんだろうか?それとも、その瞬間忘却魔法で今回の事への参加そのものを消されるんだろうか?そんなことになるなら、一人胸にあの奇跡を秘めていたい。
私の逡巡をどう受け止めたのか・・・始めに声を掛けてくれた人が、エルンスト副官に話しかけている。
「この子、例の念写の子だよ。確かこの子もあの場にいたんだろう?きっと良いもの見たんじゃないのかい?」「あの場の混乱を記録されるなんて、おぞけがふるうよ。・・・貴重な場面はあったよ。正直、ほとぼりが冷めたら研究棟に持ち込みたいような・・・でもお前だって酸欠からの記憶ないんだろ。こんな女の子に記憶が残ってるわけないさ。」
「まあそうだけど。でも、聞くだけ聞いてみたら。ほら、もうここにいるの僕たちだけだし・・・」
この人、エルンスト副官にため口なんて、結構エラい人なんだな。誰なんだろう。
声は聞いたことある気がする、、、考えていると、不意に二人がこっちを見た。
「話、聞いてた?」
全く。ブンブン首を振ると、二人にそろってため息を吐かれた。
エルンスト副官がやれやれと言った風で口を開く。
「オリヴィエが言うにはさ、君はきっと残したかった貴重な記憶があるはずだって言うんだ。もしそうなら、魔術の発展の為にも、特例を作るのはやぶさかではないんだけど。」
だからとにかく何を見たのか話してご覧。エルンスト副官のご親切なお言葉は、始めの一言でスルーされた。
「オリヴィエさん!貴方が!」
「この間は真夜中の任務で、みんなフードかぶってたからね。僕がオリヴィエだよ。よろしく。」
再び叫んだ私に、激しく脱力したエルンスト副官と違い。オリヴィエさんはにこやかに言った。
!なんて、なんて胡散臭そうな笑みなの!腹黒さがにじみ出ている・・・ガチで好みど真ん中だ。
まずい!鼻血ふきそう。いや、今は大事な話をしていたはず。戻ってこい、私の理性、、、!
鼻を抑えながら念じていると、脱力したままのエルンスト副官に代わり、オリヴィエさんが話を続けてくれた。
「君があの場で、そうだな・・・近衛の連中が空中を舞った以降で、見たものってなに?」
よし、会話をすることで落ち着こう!あの場所で見たことは、、、。
「エルンスト副官が懐から出された幼女が何かを指で描き、近くにいた魔導師の一人にかぶせると、急に苦しみだしました。その後、幼女は次々と何かをかぶせていき、その度にかぶせられた人は苦しみだして。自分の番が来て、分かりました。急に息が出来なくなったのです。息苦しさに気が遠くなりながら、顔の周りをかきむしると、なんとなく違和感がありました。急に空気の流れが変わるような・・・。」
あの時の混乱と恐怖を思い出し、身体中を震えが走る。エルンスト副官がため息をついた。
「あれは空気のない空間を顔の周りに作っていたんだ。箱をかぶせるような感じでな。単純だが効果的な術式だった。」
やっぱり無理だよ、エルンスト副官が言うのに構わず先を続ける。
「その後、少し気を失っていたように思います。フッと息が出来るようになり、顔を上げると、少年が腕を伸ばした先に、あの幼女がいて、なぜか腕が幼女を通り越してました。」
「そこ、記憶あるのか!?念写してみろ!」
エルンスト副官がいきなり大声を出す。うるさいな、もう。念写、ここでするのかしら?
私は言われるがまま、渡された紙、、、どうでもいいけど、今回の会議資料の裏紙だった、、、に、指示された場面を念写した。
「これは・・・」
「すごいね、対象だけじゃなくて、周りの状況も克明だ。噂には聞いていたけど・・・」
「顔を隠せばいけるね。」「あ、ああ・・・」
二人が食い入るように私の念写した場面を見つめる。
「この後は?どこまで記憶がある?」
「えーっと、、、。」逡巡すると、オリヴィエさんが悪い顔で頷いた。ま、いいか。
「・・・辺境伯夫妻のご帰還と、その後発光した幼女が団長の処置により元の状態に戻り、伯の腕に渡され・・・」
「念写して!」
言われるがままに裏紙に念写する。あまりの速さに少しクラクラして「これ以上はちょっと・・・」と言ったら。
「よし、特例を認めよう!!素晴らしい!君、ほんとによくやった!!」
エルンスト副官の食い気味の声がした。ウキウキしている。
「落ち着いたら研究棟から連絡させるから、思う存分念写してくれ!いや~よかった。これで今回のくそ任務にも、素晴らしい魔術の貢献があったという事だな!うん。」
大声で叫んで私の肩をバシバシ叩いた、この人、こんなに暑苦しい人だったんだ、、、。
思いつつ、不図視線を感じるとオリヴィエさんが私を見ていた。目が合って口が開く、と、耳元で囁き声がした。
「報酬をお願いしてごらん。」
びっくりして目をぱちぱちさせてしまう。オリヴィエさんは可笑しそうに笑いながらもう一度同じことをすると口を閉ざした。
何だかよく分からないけど。せっかくだし、言ってみるか。
「エルンスト副官殿?」
「なんだ?どうした?」
「私がこの念写でお役に立つとしても、任務が無かったことになるのであれば、仕事の評価にはなりません。その分、何らかの報酬・・・ご褒美を頂けませんか?」
わー、言っちゃった。図々しいって思われたらどうしよう。
自分で言って引いていると。
「確かにそうだな。」思いもかけない返答が来た。
「君はあの困難な状況で素晴らしい結果を残してくれたのに・・・どんな報酬が欲しいんだ。俺の一存で可能なことなら・・・いや、無理でも何とかして・・・」首をひねって、頭を掻いて考えてくれる。
いい人なんだな。暑苦しいけど。
でも、何かって、私の欲しいのはこの念写だし・・・考えてると、またまた耳元で囁き声がした。
「念写、自分でもしたいんでしょう?頼んじゃいなよ。口添えしてあげる。」
またしてもオリヴィエさんの声。見上げるとまたまた悪い顔で頷いた。よし、言うだけ言ってみるか。
「じ、じゃあ、今回の場面、私のプライベートでも念写していいですか?もちろんちょっと個人的に見たいだけです。まあ何人か友達には見せるかもしれませんが・・・その場合は個人を特定出来ないよう加工するので・・・」
無理かな、辺境伯がらみだもんね、怒られる前に取り下げようか・・・。悩んでると、オリヴィエさんが言った。
「良いんじゃない、エル。彼女も魔導師なんだから、こんなすごいもの、自分でゆっくり見たいだろうし。友人に見せるって言っても、顔は出さないんだろ・・・?魔導師なら、こんな研究材料、興味あるに決まってる。」
「うーん。魔導師ならな・・・」ちょっと迷うエルンスト副官。あれ?押せば行ける?
私も一生懸命言ってみた。
「念写を披露したいのは、魔導師団内での同好会なんです。他には出しません。自由精神研究会って言って、何物にもとらわれない自由な発想と精神で対象を見、その見方の是非を徹底的に話し合うんです・・・エルンスト副官?」
「・・・っす・素晴らしい!」
いきなり肩をガシッと掴まれた。ブンブン揺さぶられる。地味に辛い。
「君は本当に魔導師の鑑だな。自由な発想、偏見のない物の見方、徹底した討論・・・っくう。俺は泣けてくるよ。あんないい加減な団長の下、こんな真面目で熱心な若手が育っているなんて・・・。よし、君に特例を与えよう。今回の件、魔導師団や近衛騎士団に不利益を与えないこと、商業的な目的で行わないこと、他人に見せる際は個人の特定を避ける事を条件に、個人的な念写を許可しよう。」
「え・・・」
いいの?本当に?
自分から言っておいて、あまりの好待遇に戸惑う私に、オリヴィエさんが悪い顔で言った。
「よかったね。レティちゃん。お仲間もきっと喜ぶよ。」
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