帝国最強(最凶)の(ヤンデレ)魔導師は私の父さまです

波月玲音

文字の大きさ
72 / 241
皇宮での邂逅

単なるお仕置きでは有りませんでした。

しおりを挟む
父さまの執務室に戻って報告をすると、フィン兄さまは帰ってしまった。
「その代わり、明日また迎えに来る。今日は早く帰って、ディーが来てもいい様に、ちょっと片付けをしておくよ。」

明日はディーを連れてくからな、とフィン兄さまが父さまに言うと、意外にあっさり頷かれた。
「昨日もうるさいのが魔導師団ここの入り口でチョロチョロしたからな。暫くは一人ではどこにも出したくないから、つまらないだろう。ディー、気晴らししておいで。」
それに。
フィン兄さまに視線を向ける。
「お前なら、ディーに変な虫を付けることもないだろう?」
小首を傾げる父さまに、兄さまはフンっと鼻息も荒く答えた。
「当たり前だ!そんな事したら、ディーがバーベンベルクからいなくなってしまうじゃないか!」
僕の夢はディーと二人で辺境伯兄上付きの魔導師になる事なんだから。

え、そうなの?私、聞いてない、、、。
私の驚きに気付かず、兄さまは私に向き直り、嬉々として続けた。
「来年帰ったら、ディーの勉強は全部僕が見てあげる。学園の三年は上位貴族の義務だから仕方ないけど、大学部は行かなくても魔導師認定試験に問題ないよ。僕の知識で充分だって分かったからね。」

だから。

「心配しなくても、お前の面倒は、一生兄さまがちゃんとみるからな。」
ぎゅーって抱きしめてから、コツンと額を合わせてきた。

父さまと同じサラサラの黒髪。うなじで揃えてる父さまと違って、長く伸ばして右肩に垂らした髪が、少しほつれて私の頰をくすぐる。父さまそっくりの整った人形のような顔立ちのフィン兄さまは、瞳だけ、お祖父様の灰色だ。
目が合うと、その瞳が優しく細められた。
体型も顔立ちも性格も父さまとよく似たフィン兄さま。徹底的に違うのは、表情の豊かさなんだよね。

「ありがとう、兄さま。」
わたしもニッコリする。
昔から、兄さまはいつもこう言って、私を気遣ってくれるけど。
多分、あの時の暴走が原因なんだろうな、て今なら分かるけど。

大丈夫。
兄さまにそんな迷惑掛けないよ。

「私、頑張って結婚してくれる人を探すから、兄さまは心配しなくて大丈夫よ?」
安心してステキな女の人と幸せになってね。

そう言うと、フィン兄さまは、がっくり項垂れて帰って行った。

私の言い方、不味かった?



お昼になると、父さまはエルンストさんに二言三言話しかけて、私を手招いた。

近づくとローブの中に入れられる。
内緒で行きたいから姿を隠したいんだって。
「ちょっと政務宮に行こう。ディーは着いたら伯父様とオリヴィエにちゃんとお礼を言うんだよ。」

ほんと、そう言えば、昨日あんなに迷惑を掛けたのに、まだお礼を伝えてなかったわ。
「はい、父さま。」

見上げると、頭をポンポンとされた。
父さまは表情は無いけど。
キチンと言葉や態度で示してくれるから、愛情は充分感じられるの。



転移したら、宰相閣下の執務室では、補佐官さんがみんな出ていくところだった。

伯父さまとオリヴィエ兄さまを残して扉が閉まると同時に、姿を現わす。

「わあ、驚かせないでよ!叔父さん!」
オリヴィエ兄さまはムッとした表情になったけど、私がローブの陰から出ると、表情を和らげた。

「やあ、今日はもう元気かい?」
「ディーちゃんと毎日会えるのは嬉しいね。」
伯父さまも、執務机を回ってこっちに来る。
私は一歩下がってきちんと礼をした。

「昨日は突然ご迷惑をお掛けしました。お陰様さまで、すっかり元気になりました。」
ごめんなさい。と言って頭を上げると、二人はニコニコしていた。

「ディーちゃんが大丈夫ならそれでいいよ。」
優しいな、オリヴィエ兄さま。
「うん、君に意地悪をした彼らは、伯父さま達の方でちゃんと懲らしめておいたからね。なあ、アルフ?」
いい笑顔黒い笑顔の伯父さま。

え? 昨日の今日で、懲らしめ
な、何をしたんだろう?
咄嗟に父さまを見るも、知らん顔している。

怖すぎる、、、。
皇子殿下やジキスムント君は、どんな目に合ってしまったのかしら?
「そんな、ただのちょっとした子ども同士の揉め事で・・・」
慌てて伯父さまに訴えるも。
「いやいや、将来国を率いたり守ったりする者が、立場の弱い者を私情で傷付けるのは良くない。ここでキチンと指導するべきだと、宰相としては思うんだな。」
いやいや、それを言うなら、宰相が身内びいきで私刑しちゃダメでしょ!?

「でも、私も侍従見習いの分際で、殿下?をやっつけてしまいましたし。」
貴人なら、腹を立てるのが当たり前だと思うの。
「うん、アルフから聞いたよ。一瞬だったそうだね。殿下の教育にはそれなりに剣の訓練を組み込んでるのに、情けない。」
真面目に取り組んでない証拠だ。とそこは本当に顔をしかめた。
えーっ、そっちに行くの?

バーベンベルク我が家は騎士の家系なので。私も訓練場が遊び場でしたし・・・」
よく分からないけど、取り敢えずフォローしなくちゃ。
アワアワし始めた私を見て、伯父さまは楽しそうに笑った。

「ディーちゃんはいいね、本当にあいつ等には勿体無いんだけど。」
でも、宰相としてはお勧めせざるを得ないんだよな、、、と独りごちる。

何のこと?首をかしげる私と違い、今まで無言だった父さまが、グイッと前に出た。

「そこは今でも変わらないのですか、兄上?」
私は益々反対です。ときっぱり言って、ふいっと横を向く父さま。
あ、ちょっと怒ってる?

でも。苦笑いしながらも伯父さまは頷いた。
「変わらないね。昨日、揺れの件で陛下に拝謁した際、事情は説明した。私としては、今の時点で無理に会わない方が良いのでは、せめて時を置いて、と言ってみたんだけど。何としても頼むと言われてしまってね。」

何の話だか、全く分からない。今度はオリヴィエ兄さまを見つめてみる。
あ、視線を逸らされた!
私のことなのね。アヤシイ、、、。

「だからこそ、昨晩の状況が知りたいんだ。君のお仕置きの内容と、彼らの反応を教えて欲しい。」

「ジキスムントが初めてだったので、様子見がてら、ロイス侯爵家あいつ等の忠義が意味するところをはっきり教えてやりました。」
伯父さまと父さまが話し始めた。
む!さっきは知らん顔されたけど、やっぱり昨日の夜、父さまがなんかしたのね!

黙って聞き耳をたてる。
「・・・取り敢えず切り刻んでやったら、絶叫して飛び起きました。同じ感じで、皇子は一人にさせて何人かに殴らせてみたら、こっちも絶叫して、侍従に起こされていました。あれは効いてるようです。兄上の言った通りですね。」

「切り刻んだ?!殴らせた?!」

ギョッとして思わず叫んでしまう。
父さまを睨みつけると、慌てて言い訳してきた。
「夢だから、ディー。ちょっと夢をいじっただけだから!」

夢?

「夢ってあの、寝てる時に見る?」

「そうなんだよ、ディーちゃん。」
今度は伯父さまが嬉々として説明を始めた。
「夢なら実害はないけれど精神的なダメージは大きいだろう?しかも悪夢を見たと訴えても、他人はそんなに同情しないし、騒げば自分が恥ずかしい思いをするだけだ。」
プライドの高いあの子たちなら、一人で悩むだろう。

なんて酷い!父さまは眠らないと言っていたから、正直、この話の酷さは分からないだろう。伯父さまは悪魔だわ!!

私が思わず反論しようとすると。

「上手くこっちの意図する夢が見せられるなら、ここであの子たちがどんな時にどう出るかを知る事で、気質なんかも見定められるだろう?」

伯父さまは思わぬ事を言い出した。

流石、皇宮の裏ボスだわ。
単なるお仕置きでは無かったのね、、、。
しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり

鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。 でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

処理中です...