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皇宮での邂逅

夜明けの噴水庭園にて

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起きた時にはまだ薄暗かったのに、着替えて顔を確認し、魔道士団の中庭から小道を抜けて行くうちに、薄い膜が取り払われるように段々明るくなってきた。
噴水の庭への転移門である、初代魔道士団長の像のところまできた頃には、小鳥のさえずりも聞こえ始めた。
「指定された時間に遅れちゃうかな?」
まあ、『出来れば夜明けの時間に噴水の庭に来て欲しい』と言うのは、強制されたものじゃないから、遅れてもお咎めは無いだろうけど。
そうは思いながらも、私は急いで像の台座の石板に指先を当てて、目を瞑り、噴水とその周りの景色を思い浮かべた。

フッと浮き上がる感じがして。
次の瞬間、私は噴水の脇にある大木の下に立っていた。

「お、来たか?」
声の方を振り返ると、皇太子殿下が二振りの模擬剣を携えて庭の中程に立っていた。
「お早うございます、殿下。」
侍従見習いらしい、腰の低い挨拶をすると、
「言っただろ、今は殿下はやめろよ。早く顔も上げろ。」
ちょっと不満そうな声がする。
言われるがまま顔を上げると、ちょうど今日初めての日の光が木立の向こうから差してきて、殿下の金髪をキラキラと輝かせた。
「すみません。」
取り敢えず謝っておこうかな。
でも、名前呼びはちょっとトラウマになってしまったし、、、。
うーん。
私の表情は悩ましげだったみたい。
殿下はちょっと焦ったような顔をして、
「いや、別に名前呼びを無理強いしてないから。」
と言い出した。

良かった。正直、しばらく殿下の名前は呼びたくない。
「ありがとうございます。まだ少し緊張するので。」
そう言えば、殿下はうんうん頷いた。
「慣れてからでいい。取り敢えず今日は殿下でいいから。」
へぇ、結構気持ちを汲んでくれるところもあるんじゃない。
私がホッとしていると。
「時間も無いし、さっさと始めるか。」
気を取り直したらしい殿下が、ポイッと模擬剣を一本放ってよこした。

危なげなく受け取って、間合いまで近寄る私に、
「俺が昨日サシで頼んだとは言え、魔道師団長殿は、よくお前を出してくれたな。」
正直来ない可能性の方が高いと思っていた。
今さらなことを言ってくる。
「そりゃあもう、あの後、本当に本当に大変でしたよ。」
私、閉じ込められかけて、封印されてた魔力が覚醒しちゃいましたよ。
まあ、言って詮索されるのは面倒なので、これは声に出さずにおきますけどね!

「あの怖さは、サシで話した殿下なら分かるでしょう?」
視線を向ければ、殿下は意外そうな顔をした。
「確かに俺はさ、昨日は、ここで俺の命も終わりか、と思ったけど。お前にまで怖いとは思えないけどな?」
どっちかって言うと、甘々で心配だから、出したく無いって言い出すかと思った。

殿下、いい線いってますよ。
て言うか、初対面の殿下にも分かるの?危険性に気付かないの、私だけ?

「甘々が昂じると怖いこともあると、昨日知りました。」
思わず溜め息を漏らしながら、間合いを図って模擬剣を構える。
「そ、そうなのか?大変な思いをさせて、悪いな。」
ただならぬ様子を感じたのか、ややたじろいだ殿下が、同じく間合いを図って模擬剣を構えながら、謝ってきた。
びっくりして顔を見つめると、
「先日の件は本当に反省してるんだ。と、友には悪いと思ったら、そう言う事にした。」
文句あるか、と言いながら視線が泳いでる。
私はプッと吹き出してしまった。
「すみません、殿下って・・・」
素直じゃない、と言おうとして、いくらなんでも不敬かと、言葉を止める。
「な、なんだよ」
「いえ・・・それより、始めませんか?」
さっと表情を改めて促すと、殿下は一瞬不満げな顔をしたが、すぐに表情を改めた。

「魔道師団長殿には、改めて、お前をここに寄越してくれたことへの感謝を伝える。」
「お前も、大変だったのに来てくれてありがとう・・・始めようか。」
真剣な表情で模擬剣を構える。

殿下は、本気なんだ。私も本気でやらないと。
「・・・先ずは打ち込んで来てください。貴方の剣筋が見たい。」
そう言うと、殿下はしっかり頷いた。
「まだまだお前には及ばない。指導を頼む・・・行くぞ。」

後は、真剣な稽古の時間。
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