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皇宮での邂逅
皇太子宮の執務室にてⅤ(終)(2021.05.26改)
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その晩、就寝前にマルティンを呼んだ俺は、ジキスムントとの話をかいつまんで説明した。
マルティンは表情は穏やかなまま、僅かに首を傾げた。
「確かにお血筋はそうなりますね。ただ、そのような関係でいらしたとは、私も存じ上げませんでした。」
おそらく、陛下も宰相も知らないだろうと続ける。
俺は話を聞いてから漠然と考えていたことを言ってみた。
「あれは、本当に好意を持っている感じだった。俺みたいに、皇家の事情とか、皇太子の地位がかかって、何とか手に入れようってのとは全然違うんだ。」
前バーベンベルク辺境伯夫妻の後ろ盾もあるなら、俺の出る幕も無いだろうし、この際皇家の義務は次世代に持ち越しては?
思い切って聞いてみるが、マルティンはやんわりと首を振った。
「ジキスムント様のお気持ちは否定しませんが・・・前バーベンベルク辺境伯ご夫妻のご推薦は、かえってジキスムント様の足を引っ張るものでしょう。」
「?そうなのか?」
「ええ。前バーベンベルク辺境伯の名前を出した瞬間、彼は魔導師団長によって婚約者候補から排除されるかと。」
意外だな。普通、一族のことって親族の年長者が強かったりしないか?
そりゃ、娘だけどさ、前バーベンベルク辺境伯の意向より、婿の魔導師団長の意向が優先されるって、どうなんだ?
そこはどんなに仲のいい夫婦でも、一族のことだし、夫より親の意見を聞きそうだけどな。
そう言うと、老執事は、一般的にはそうですが、、、と言いつつ、先を濁した。
「なんだよ、気になるじゃないか。お前はあの家の何を知ってるんだ?」
ジキスムントのためにも、俺の今後の動きのためにも、聞かなければ。
先を促すと、マルティンは珍しく逡巡してから「これは私見ですが・・・」と続けた。
どうやらバーベンベルク辺境伯は、先代との間に密かな確執があるらしい。
彼女は騎士として孝養も重んじるから表立ってどうこうと言う事は無いが、魔導師団長の態度ははっきりしており、代替わり以降、両者の間に形式以上の交流は無いそうだ。
「恐らく、辺境伯の地位を譲られてから、先代がご夫妻でバーベンベルクの地を踏まれたことはほとんど無いかと。」
「そうか。とすると・・・」
俺は考えをめぐらす。
もしジキスムントがディアナ嬢との仲を進展させたとして、、、このまま俺が求婚者の場合、いざ婚約、と言う話になると、皇帝の邪魔が入る。
あいつの父親は、皇家の盾ロイス家の当主として皇帝には絶対服従だろうから当てにできない。
その時頼れるのは辺境伯家の年長者でもある伯父、、、でも、伯父が出てきたところで魔導師団長の邪魔が入る、と。
じゃあ俺が求婚しない場合は、と考えると、俺の弟を出されて同じことになる。
仮に弟が出なくても、コンラート一門のヘイリーやカーティス、果てはオリヴィエなんかが出てくる可能性があるんだよな。
「うーん。」
うなる俺に、マルティンは相変わらずの穏やかな微笑みで促してくる。
「結局、ジキスムント様のお気持ちを多少なりとも応援されるのであれば、殿下がこのまま皇家の代表として求婚されるほうが、陛下との関係上よろしいのではないでしょうか?」
それに、実際に会われたら、殿下のお気持ちも変わるかもしれませんし。
ご令嬢のお気持ちがどなたに行かれるかも分かりませんし。
俺やディアナ嬢の気持ちは一旦置いておくとして。確かに俺がこのまま求婚した方が、何かとややこしくなくて済むのか、な、、、?
「分かった。俺はこのまま皇家の思惑に乗って求婚しよう。ただし、ジキスムントには、俺もあいつと同じ候補に過ぎないってことは伝える。そうしないとロイス侯爵があいつを止めるし、あいつは友人として近づく事さえ躊躇うかもしれないからな。オリヴィエや双子の条件も同じにして、これを陛下と宰相に認めさせよう。出来るか?」
マルティンは表情を変えずに一礼した。
「もちろんで御座いますとも。恐らくバーベンベルク側も同じような希望をお持ちでしょうし。お任せください。」
では、時間も無いので早速、、、と退出しようとするマルティンを目線で見送っていると。
ああ、そう言えば、と、老執事は振り向いた。
「魔導師団の見習侍従ライムンド殿、本日付けで退職されましたよ。」
「え?」
「お遊びの時間は終わりと言う事でしょう。辺境伯殿も予定より早く、明日夕刻には帝都に入られるとか。騎士団の任命式まであと五日。殿下もどう動かれるか考えてくださいませ」
言うだけ言って、さっさと退室する。
俺はそのまま執務室のソファに倒れ込んだ。
そっか、もう遊びの時間は終わりか、、、。
確かに、これ以上仮の姿のディアナ嬢と会っても、意味無いしな。
しかし、結局俺は、俺より強くて、傲慢皇子くらいに思われていて、信頼してる友人が本気で好意を持ってる相手に求婚するのか。
うーん、マルティンに上手いこと言いくるめられてしまった気がする。
ジキスムントが羨ましい。俺は本物のディアナ嬢に会うのがますます憂鬱になってきたよ、、、。
マルティンは表情は穏やかなまま、僅かに首を傾げた。
「確かにお血筋はそうなりますね。ただ、そのような関係でいらしたとは、私も存じ上げませんでした。」
おそらく、陛下も宰相も知らないだろうと続ける。
俺は話を聞いてから漠然と考えていたことを言ってみた。
「あれは、本当に好意を持っている感じだった。俺みたいに、皇家の事情とか、皇太子の地位がかかって、何とか手に入れようってのとは全然違うんだ。」
前バーベンベルク辺境伯夫妻の後ろ盾もあるなら、俺の出る幕も無いだろうし、この際皇家の義務は次世代に持ち越しては?
思い切って聞いてみるが、マルティンはやんわりと首を振った。
「ジキスムント様のお気持ちは否定しませんが・・・前バーベンベルク辺境伯ご夫妻のご推薦は、かえってジキスムント様の足を引っ張るものでしょう。」
「?そうなのか?」
「ええ。前バーベンベルク辺境伯の名前を出した瞬間、彼は魔導師団長によって婚約者候補から排除されるかと。」
意外だな。普通、一族のことって親族の年長者が強かったりしないか?
そりゃ、娘だけどさ、前バーベンベルク辺境伯の意向より、婿の魔導師団長の意向が優先されるって、どうなんだ?
そこはどんなに仲のいい夫婦でも、一族のことだし、夫より親の意見を聞きそうだけどな。
そう言うと、老執事は、一般的にはそうですが、、、と言いつつ、先を濁した。
「なんだよ、気になるじゃないか。お前はあの家の何を知ってるんだ?」
ジキスムントのためにも、俺の今後の動きのためにも、聞かなければ。
先を促すと、マルティンは珍しく逡巡してから「これは私見ですが・・・」と続けた。
どうやらバーベンベルク辺境伯は、先代との間に密かな確執があるらしい。
彼女は騎士として孝養も重んじるから表立ってどうこうと言う事は無いが、魔導師団長の態度ははっきりしており、代替わり以降、両者の間に形式以上の交流は無いそうだ。
「恐らく、辺境伯の地位を譲られてから、先代がご夫妻でバーベンベルクの地を踏まれたことはほとんど無いかと。」
「そうか。とすると・・・」
俺は考えをめぐらす。
もしジキスムントがディアナ嬢との仲を進展させたとして、、、このまま俺が求婚者の場合、いざ婚約、と言う話になると、皇帝の邪魔が入る。
あいつの父親は、皇家の盾ロイス家の当主として皇帝には絶対服従だろうから当てにできない。
その時頼れるのは辺境伯家の年長者でもある伯父、、、でも、伯父が出てきたところで魔導師団長の邪魔が入る、と。
じゃあ俺が求婚しない場合は、と考えると、俺の弟を出されて同じことになる。
仮に弟が出なくても、コンラート一門のヘイリーやカーティス、果てはオリヴィエなんかが出てくる可能性があるんだよな。
「うーん。」
うなる俺に、マルティンは相変わらずの穏やかな微笑みで促してくる。
「結局、ジキスムント様のお気持ちを多少なりとも応援されるのであれば、殿下がこのまま皇家の代表として求婚されるほうが、陛下との関係上よろしいのではないでしょうか?」
それに、実際に会われたら、殿下のお気持ちも変わるかもしれませんし。
ご令嬢のお気持ちがどなたに行かれるかも分かりませんし。
俺やディアナ嬢の気持ちは一旦置いておくとして。確かに俺がこのまま求婚した方が、何かとややこしくなくて済むのか、な、、、?
「分かった。俺はこのまま皇家の思惑に乗って求婚しよう。ただし、ジキスムントには、俺もあいつと同じ候補に過ぎないってことは伝える。そうしないとロイス侯爵があいつを止めるし、あいつは友人として近づく事さえ躊躇うかもしれないからな。オリヴィエや双子の条件も同じにして、これを陛下と宰相に認めさせよう。出来るか?」
マルティンは表情を変えずに一礼した。
「もちろんで御座いますとも。恐らくバーベンベルク側も同じような希望をお持ちでしょうし。お任せください。」
では、時間も無いので早速、、、と退出しようとするマルティンを目線で見送っていると。
ああ、そう言えば、と、老執事は振り向いた。
「魔導師団の見習侍従ライムンド殿、本日付けで退職されましたよ。」
「え?」
「お遊びの時間は終わりと言う事でしょう。辺境伯殿も予定より早く、明日夕刻には帝都に入られるとか。騎士団の任命式まであと五日。殿下もどう動かれるか考えてくださいませ」
言うだけ言って、さっさと退室する。
俺はそのまま執務室のソファに倒れ込んだ。
そっか、もう遊びの時間は終わりか、、、。
確かに、これ以上仮の姿のディアナ嬢と会っても、意味無いしな。
しかし、結局俺は、俺より強くて、傲慢皇子くらいに思われていて、信頼してる友人が本気で好意を持ってる相手に求婚するのか。
うーん、マルティンに上手いこと言いくるめられてしまった気がする。
ジキスムントが羨ましい。俺は本物のディアナ嬢に会うのがますます憂鬱になってきたよ、、、。
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