帝国最強(最凶)の(ヤンデレ)魔導師は私の父さまです

波月玲音

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帝都のひと夏

いざ、出陣です

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「そう言えば、今日ディーと話すの初めてだな?式典に参加してくれてありがとう。」
廊下をぞろぞろ歩きながら、オスカー兄上が話しかけてきた。
「兄上は朝早い出立でしたもの。式典、素敵でした。特に兄上が輝いてました!跪いて陛下の剣を受ける姿も、最後の、皆さまを代表して誓いを仰る姿も、凛々しくて。しかも、騎士の装束は兄上の為にあるみたい。とってもよく似合ってる。カッコいいわ!」
私がにこにこしながら帝国騎士団の正装を見上げると、兄上は優しく目を細めた。
「ありがとう。ディーに褒められるのが一番嬉しいよ。」
あらそんな。
会えないうちにいつの間にか立派なオトナになってしまった兄上にそんなことを言われると、照れてちょっと頬が熱くなってしまう。
そんな私を見て、兄上は益々目を細めた。
「ディーは相変わらず可愛いけど、そのドレスを着ているといつもより大人っぽくて美人さんになるね。私の小さなディーでは無いみたいだ。これは、私の友人に紹介するのは危険かな?」
「なにを仰ってるんだか。私はまだ兄上の小さいディーよ?」
ふふっとお互い笑いあう。
オスカー兄上はフィン兄さまのように時間があれば遊んで下さるわけでも、ルー兄さまのようにきちんと叱って下さるわけでも無いけれど、末っ子の私が良いように扱われてないか気にかけてくれているの、ちゃんと知ってるのよ?
「でも、ドレスは確かに今までのと全然違うの。」
私は兄上に向けてスカートを少し広げてみせた。
白のシルクを使ったシンプルなドレスだ。
少女の昼のドレスだから、基本同じような、体型を強調しない形になるけれど、外付けのフリフリとしたフリルやレースはほとんどない。
代わりに、デコルテから首元まで、刺しゅうを施したシルクオーガンジーを使っているから刺繍越しに微かに肌が透けるのが涼し気なの。
肩口からは同じシルクオーガンジーでゆったりとした袖が付いている。上が切れているけれど、肘の上で細いシルクリボンの蝶結びで留めてるから、よっぽど大きく腕を動かさない限り二の腕はほとんど見えない。
肘の先はたっぷりとした同じ生地のレースとなっている。
腰のすぐ下からは、シンプルな白のシルクのスカートが四つに切れていて、それぞれが白のシルクリボンで結ばれた中に、シルクオーガンジーが幾重にも重なってスカートをふんわりとさせている。
白いシルク部分はごてごてしない程度の刺繍が一面に施されているけれど、その色は白金と銀糸なので、光を受けるときらきらするけど、色を主張しないから、一見すると白の濃淡だけで出来たドレスみたいなの。
「これ、オルロー商会のマダムが直々にデザインして下さったのよ。」
兄上はオルロー商会ご存じ?と尋ねると、もちろん、と頷いた。
「今帝都で一番流行りの商会だな。お祖母様のお気に入りだから、そっちから頼んだのかい?」
「いやいや、頼んだのは私だよ。」
いつから会話を聞いていたのか、口を挟んできたのは伯父さまだった。
「伯父上が?それは有難うございます。素敵なドレスですね。」
オスカー兄上がにこやかにお礼を言うと、
「いやいや、レディのドレスを選ぶなんて久しぶりでね。楽しませてもらったよ。」
伯父さまも、今は穏やかな笑顔で返してくれる。
「採寸を貰ってすぐにマダムを呼んだんだけど、私もオリヴィエもディーちゃんの顔は分からないからね。困ってアルフを呼んだら、マダムの頭に直接ディーちゃんの姿を念写したらしい。紙で起こして私に見せてくれたっていいのにねぇ?」
「それは・・・父上らしいと言うべきか・・・」
兄上が困った顔で笑う。
「でも、マダムには充分だったみたいで、その後は素敵なデザインをいくつも考えてくれたから、色を考えながら、私とオリヴィエで選ぶだけだったけどね。」
ほら、蒼とか緑とか金とか、下手に使うと、誰かの瞳の色だとか、髪の色だとか、変に勘繰られるの嫌だろう?
ディーちゃんは取り敢えず高根の花路線で行くから、そう言うの排除しなくちゃね。
伯父さまは上機嫌で続ける。
「おや?父上はそこには居なかったので?」
「居たけどね、アルフの関心はいかに肌を見せないか、だから。少女のドレスのデザインはどれも合格らしい。どれでも似合う、何でもいい、早く帰りたい、という禁句を連発してかましてくれたよ。」
「ああ、それは確かに場が凍りますよね。後のフォローが大変だ。」
「だろう?」
同意の後、少し沈黙があり、、、二人を見上げると、伯父さまは目をキラッとさせて、兄上は妙に取り澄ました顔をしていた。
「おや?おやおや?」
ああ、何か始まったらしい。伯父さまの表情を見て何となく察する。
「オスカー君。大学の騎士科を首席で卒業、学園から大学まで精錬実直、品行方正の名を欲しいままにした君も、することはしているってことかな?社交界の方では無いね?それなら私かオリヴィエの耳に必ず入るから。」
「私には何のことか・・・」
「いやいや、とがめてないよ。むしろ無い方がまずいだろう?伯父さんは喜んでるんだよ!今度一緒に飲もうじゃないか。」
「いえ、暫くは騎士団の新人訓練で、門限のある宿舎生活なので、お気持ちだけ・・・」
「なに言ってる?私を誰だと思ってるんだ?宰相閣下だよ?その筋に一言言っておくから、大丈夫。いやぁ、楽しみだねえ!」
「・・・はい。」
上機嫌に上機嫌が重なった伯父さまと、ややうなだれた感のある兄上。勝負は着いたのかしら?
そんな事を思っていると。
前を歩いていた皇宮の侍従の方が突き当りの扉の前で立ち止まった。
「こちらでございます。」

「ルーファス、ディアナ、挨拶頑張ってね。私も見守ってるから。」
いつの間にか復活したオスカー兄上が、私たちにニコッと微笑むと、一歩下がる。
ルー兄さまを見ると、既にきりっとした顔でまっすぐ前を向いていた。
うん。私も頑張る。
フンッと鼻息も荒く前を向くと。
「大丈夫、二人とも気負わないで。ここから先は、伯父さまの支配する世界だ。」
何があっても任せておきなさい。さあ行くよ。

その一言に合わせ扉が開き。

私達は一歩を踏み出した。
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