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帝都のひと夏

いつの間にか近くまで来てました

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ゆっくり、とは言っても、少し休んだら今度はお仲間の高位貴族と挨拶兼打ち合わせがあるのよね。
伯父さまはきれいな色の発泡酒のグラスを傾けつつ、小さく彩りの良い前菜をいくつか摘まむと、これも小さく切り分けられた主菜を上品に手早く食べ終えた。
私は氷の入った果実水を飲みながら、前菜とデザートを摘まむ。お化粧を直す時間が無いから、とにかく口元を汚さないようにしないと!
「美味しいわ!」
お腹が空いてるのもあるけれど、どれも目に美しく味も良い。
私が声を上げると、伯父さまがにこにこした。
「うん、この規模の割には良いレベルを保ってる。まあ合格だね。」
ふふ。まあ合格って。食通の宰相閣下おじさまは普段の会合では、もっと美味しいものを召し上がっているの?
そう思ったら、ふと、殿下の招待状を思い出した。
『こっちの方が食い物が上手いぞ』だっけ?そう言えば、場所も建物の奥の庭だったな、、、。
目の前には花畑が広がり、小径が木立の奥まで続いている。
「ねえ、伯父さま。このお庭、全然人が来ないでしょう?でも花壇も小径もきれいに作ってあって・・・この先は別の宮殿にでも繋がっているの?」
何となく、思い出したついでに聞いてみただけだったのだけど。
「ああ、ここは控室の方に続いているんだけど、途中で二股になってて・・・確か脇道の先は小さい四阿があるはずだよ。」
ほら、皇帝一家が全員出る式典もあるからね。ぐずる子供が人目に付かず、警備をしやすく遊べるよう作ってあるんだ。
「・・・まあ。」
殿下の招待状にあった四阿って、きっとそこね。殿下は来ているか分からないけど、お茶の支度をしているなら、給仕の人はいるはず。
今からでも行って、遅くなってごめんなさい、でもまだ挨拶が残ってるのでさようなら、って言うべき?
考えていたからボーっとして見えたみたい。
「ディーちゃん疲れた?なんならもう控室に帰って休んでもいいよ?」
気付くと伯父さまが心配そうに顔を覗き込んでいた。
「後は何人か仲のいい高位貴族に会うだけだから。なんなら今度屋敷に呼んでも良いし。」
え、そうなの。
どうしよう。殿下の招待状のこと、言ってみようかな。よし、言っちゃえ!
「あの・・・」
「宰相閣下、少し宜しいでしょうか?」
え?
気が付くと皇室の侍従が来ていて。伯父さまに慇懃に頭を下げていた。
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