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帝都のひと夏
収拾してくれたのは
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結局、この場を収拾してくれたのは、オスカー兄上だった。
「伯父上、ディアナは初めて帝都の社交界に顔を出してだいぶ疲れたようです。伯父上とご挨拶が出来ていないからと留まっていましたが、この場でそれもかないました。早めに失礼してもよろしいでしょうか?」
言いながら、固まった私のそばまで来てくれる。
カレンブルク侯は、その様子を面白そうに眺めながら、もちろん良いとも、とにこやかに答えた。
「びっくりさせて悪かったね、ディアナ嬢。バーベンベルクしか知らないご令嬢には緊張する時間だったろう?帰ってゆっくり休みたまえ。ああ、うちの双子にはもう会った?まだなら今度屋敷に招待しよう。」
なんだか棘を感じなくも無いけど、私は精一杯にっこり微笑んだ。
「・・・ありがとうございます。カレンブルク侯爵様。」
「そんなよそよそしく呼ばないでおくれ。僕に似た色は無くとも、黄金の瞳がある以上、君は確かにコンラートの姫君だし、半分しか血は繋がってないとは言え、僕は君の父親の兄だからね。伯父と呼んでもらっても構わないよ。」
棘を感じても、引きつっても、取り敢えず笑顔は必要だよね。
「・・・はい、伯父さま。」
「伯父上、では、ここで失礼します。」
オスカー兄上は穏やかな態度のまま私の手を握ると、フィン兄さまに目配せした。そのまま今度はエティエンヌ殿下に向き直る。
殿下は、一部始終を興味深げに眺めていたけれど、私たちが帰ると知っても席を立たなかった。ソファに座ったまま足を組み替え、オスカー兄上を黙って見上げる。
そんな殿下に、兄上は恭しく礼をした。
「エティエンヌ殿下にもここで失礼を致します。そして・・・ご招待、謹んでお受けいたします。折角ですからバラ園をゆっくり楽しみたいのですが、殿下のお時間は頂けるのでしょうか?」
「ああ、もちろん。なんなら屋敷も案内するよ。そうそう、ディアナ嬢にはとっておきのショコラを用意するからね?」
今度は余所行きの笑みで答える殿下。
私たちは別れの挨拶を交わすと、すぐに部屋を出た。
「伯父上、ディアナは初めて帝都の社交界に顔を出してだいぶ疲れたようです。伯父上とご挨拶が出来ていないからと留まっていましたが、この場でそれもかないました。早めに失礼してもよろしいでしょうか?」
言いながら、固まった私のそばまで来てくれる。
カレンブルク侯は、その様子を面白そうに眺めながら、もちろん良いとも、とにこやかに答えた。
「びっくりさせて悪かったね、ディアナ嬢。バーベンベルクしか知らないご令嬢には緊張する時間だったろう?帰ってゆっくり休みたまえ。ああ、うちの双子にはもう会った?まだなら今度屋敷に招待しよう。」
なんだか棘を感じなくも無いけど、私は精一杯にっこり微笑んだ。
「・・・ありがとうございます。カレンブルク侯爵様。」
「そんなよそよそしく呼ばないでおくれ。僕に似た色は無くとも、黄金の瞳がある以上、君は確かにコンラートの姫君だし、半分しか血は繋がってないとは言え、僕は君の父親の兄だからね。伯父と呼んでもらっても構わないよ。」
棘を感じても、引きつっても、取り敢えず笑顔は必要だよね。
「・・・はい、伯父さま。」
「伯父上、では、ここで失礼します。」
オスカー兄上は穏やかな態度のまま私の手を握ると、フィン兄さまに目配せした。そのまま今度はエティエンヌ殿下に向き直る。
殿下は、一部始終を興味深げに眺めていたけれど、私たちが帰ると知っても席を立たなかった。ソファに座ったまま足を組み替え、オスカー兄上を黙って見上げる。
そんな殿下に、兄上は恭しく礼をした。
「エティエンヌ殿下にもここで失礼を致します。そして・・・ご招待、謹んでお受けいたします。折角ですからバラ園をゆっくり楽しみたいのですが、殿下のお時間は頂けるのでしょうか?」
「ああ、もちろん。なんなら屋敷も案内するよ。そうそう、ディアナ嬢にはとっておきのショコラを用意するからね?」
今度は余所行きの笑みで答える殿下。
私たちは別れの挨拶を交わすと、すぐに部屋を出た。
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