帝国最強(最凶)の(ヤンデレ)魔導師は私の父さまです

波月玲音

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帝都のひと夏

控室のお話しを整理しました。

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「ディアナ、色々驚いただろう・・・上手く助けられなくてごめんね。」
扉が閉まった途端、オスカー兄上に抱き締められた。
「頑張ってくれてありがとう。」
「うん。兄上達の足手まといになってなければいいけど。」
「何を言うんだい。とっても役に立ってくれたよ。ディーは社交が上手だね。」
オスカー兄上に褒められると、とてもうれしい。
ぎゅうッと抱き返しながら、こういう時いつも割って入って来るフィン兄さまが静かなのに気付く。
見上げると、フィン兄さまは黙って唇を噛んでいた。
「フィン兄さま・・・」
「ああ、ディー。すぐに帰してあげられなくてごめんね。」
そう言いながらも、いつもはにこにこかえしてくれるのに、今はフッと視線を外される。
いつもと違う雰囲気に、それ以上声を掛けられずにいると、オスカー兄上が苦笑いした。
「全くお前ときたら。苦手な人となるとすぐ黙り込む癖はいつになったら直すんだ?来年には成人だぞ?」
「良いんだ。僕は大学を出たらバーベンベルクに籠るから。苦手な人には兄上が会ってくれる。」
「頼ってくれるのは嬉しいんだが・・・。私は暫く帝都か地方で騎士団務めだ。今までみたいに、そうそうお前の助けになってあげられないよ?」
「どうしようもなくなったら転移して迎えに行く。」
「おいおい、どこの駄々っ子だい?天才魔導師君。」
会場に戻る廊下を歩きながら、オスカー兄上がフィン兄さまを窘めている。
一人は騎士、一人は魔導師の正装に身を固めた長身のイケメン二人が、顔を寄せ合って話す内容とは思えない。
私はオスカー兄上に手を引かれながら黙って歩いていたけれど、思い切って聞いてみた。
「ねえ、兄上。ステファンさんは王子って身分を隠して留学しているんじゃなかったの?私、さっき庭で会った時はロンヌの伯爵の弟って聞いたのよ?」
「ああ。そうだよね。あれは私もちょっとびっくりしたよ。」
オスカー兄上が言えば、
「あいつ、国での立場が微妙だから、敢えて普段は隠してるのに。帝国への留学も、シヴレー伯の弟、で届けてる筈なんだけど。」
フィン兄さまが忌々しげに言う。
「ディーに良いところを見せたかったのかな?」
人気者だね~、とオスカー兄上は笑うけど、、、きっと隠してることがあるんだろうな。
「大使館、伺うことになっちゃったね。」
大丈夫?と今度は聞いてみる。
一瞬二人の兄は顔を見合わせ、、、今度はフィン兄さまが笑ってくれた。
「もちろんさ!ロンヌ大使館のバラ園は確かに有名なんだ。楽しみにしておいで。」
「まあ、あそこで話して貰えれば手っ取り早かったんだけど。でも、カレンブルク侯が来てしまっては、フィンは黙るしかないからね。」
オスカー兄上がからかうように言うと、フィン兄さまは向きになった。
「仕方ないだろう?僕が嫌ってるんじゃなくて向こうが父上に似た僕らを嫌ってるんだから。」
「どういうこと?」
驚いてフィン兄さまを見上げると、兄二人はしまった、と言う顔をした。
「あー、ディー、これは・・・」
「兄さま。教えて。だって私、お話している間中、あの伯父さまからちょっと意地悪な感じを受けていたんだもの。」
そうよ、気のせいじゃなかった。やっぱり何かあるんだ。
私がじーっと見つめると、兄二人はやっぱり顔を見合わせ、、、溜め息を吐いた。
「いいよ。話そう。でも、誰かに聞かれないよう、そうだな・・・今晩、僕の部屋においで。」
フィン兄さまが小指を差し出したので、指切りをする。私たちの家族だけの、奇妙な約束のおまじないだ。
「じゃあ、取り敢えず、コンラートの伯父上のところに戻ろうか?」
「そうだね。でも、戻って挨拶したら、無理せず退出させてもらおう。ディーもだいぶ疲れただろう?」
「うん。ちょっとだけね。」
本当はとっても疲れたけど。そう言うと、夜のお話を延ばされちゃうかもしれないから。
私は兄二人と手を握って、お茶会の部屋に戻って行った。
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