204 / 241
帝都のひと夏
控室のお話しを整理しました。
しおりを挟む
「ディアナ、色々驚いただろう・・・上手く助けられなくてごめんね。」
扉が閉まった途端、オスカー兄上に抱き締められた。
「頑張ってくれてありがとう。」
「うん。兄上達の足手まといになってなければいいけど。」
「何を言うんだい。とっても役に立ってくれたよ。ディーは社交が上手だね。」
オスカー兄上に褒められると、とてもうれしい。
ぎゅうッと抱き返しながら、こういう時いつも割って入って来るフィン兄さまが静かなのに気付く。
見上げると、フィン兄さまは黙って唇を噛んでいた。
「フィン兄さま・・・」
「ああ、ディー。すぐに帰してあげられなくてごめんね。」
そう言いながらも、いつもはにこにこかえしてくれるのに、今はフッと視線を外される。
いつもと違う雰囲気に、それ以上声を掛けられずにいると、オスカー兄上が苦笑いした。
「全くお前ときたら。苦手な人となるとすぐ黙り込む癖はいつになったら直すんだ?来年には成人だぞ?」
「良いんだ。僕は大学を出たらバーベンベルクに籠るから。苦手な人には兄上が会ってくれる。」
「頼ってくれるのは嬉しいんだが・・・。私は暫く帝都か地方で騎士団務めだ。今までみたいに、そうそうお前の助けになってあげられないよ?」
「どうしようもなくなったら転移して迎えに行く。」
「おいおい、どこの駄々っ子だい?天才魔導師君。」
会場に戻る廊下を歩きながら、オスカー兄上がフィン兄さまを窘めている。
一人は騎士、一人は魔導師の正装に身を固めた長身のイケメン二人が、顔を寄せ合って話す内容とは思えない。
私はオスカー兄上に手を引かれながら黙って歩いていたけれど、思い切って聞いてみた。
「ねえ、兄上。ステファンさんは王子って身分を隠して留学しているんじゃなかったの?私、さっき庭で会った時はロンヌの伯爵の弟って聞いたのよ?」
「ああ。そうだよね。あれは私もちょっとびっくりしたよ。」
オスカー兄上が言えば、
「あいつ、国での立場が微妙だから、敢えて普段は隠してるのに。帝国への留学も、シヴレー伯の弟、で届けてる筈なんだけど。」
フィン兄さまが忌々しげに言う。
「ディーに良いところを見せたかったのかな?」
人気者だね~、とオスカー兄上は笑うけど、、、きっと隠してることがあるんだろうな。
「大使館、伺うことになっちゃったね。」
大丈夫?と今度は聞いてみる。
一瞬二人の兄は顔を見合わせ、、、今度はフィン兄さまが笑ってくれた。
「もちろんさ!ロンヌ大使館のバラ園は確かに有名なんだ。楽しみにしておいで。」
「まあ、あそこで話して貰えれば手っ取り早かったんだけど。でも、カレンブルク侯が来てしまっては、フィンは黙るしかないからね。」
オスカー兄上がからかうように言うと、フィン兄さまは向きになった。
「仕方ないだろう?僕が嫌ってるんじゃなくて向こうが父上に似た僕らを嫌ってるんだから。」
「どういうこと?」
驚いてフィン兄さまを見上げると、兄二人はしまった、と言う顔をした。
「あー、ディー、これは・・・」
「兄さま。教えて。だって私、お話している間中、あの伯父さまからちょっと意地悪な感じを受けていたんだもの。」
そうよ、気のせいじゃなかった。やっぱり何かあるんだ。
私がじーっと見つめると、兄二人はやっぱり顔を見合わせ、、、溜め息を吐いた。
「いいよ。話そう。でも、誰かに聞かれないよう、そうだな・・・今晩、僕の部屋においで。」
フィン兄さまが小指を差し出したので、指切りをする。私たちの家族だけの、奇妙な約束のおまじないだ。
「じゃあ、取り敢えず、コンラートの伯父上のところに戻ろうか?」
「そうだね。でも、戻って挨拶したら、無理せず退出させてもらおう。ディーもだいぶ疲れただろう?」
「うん。ちょっとだけね。」
本当はとっても疲れたけど。そう言うと、夜のお話を延ばされちゃうかもしれないから。
私は兄二人と手を握って、お茶会の部屋に戻って行った。
扉が閉まった途端、オスカー兄上に抱き締められた。
「頑張ってくれてありがとう。」
「うん。兄上達の足手まといになってなければいいけど。」
「何を言うんだい。とっても役に立ってくれたよ。ディーは社交が上手だね。」
オスカー兄上に褒められると、とてもうれしい。
ぎゅうッと抱き返しながら、こういう時いつも割って入って来るフィン兄さまが静かなのに気付く。
見上げると、フィン兄さまは黙って唇を噛んでいた。
「フィン兄さま・・・」
「ああ、ディー。すぐに帰してあげられなくてごめんね。」
そう言いながらも、いつもはにこにこかえしてくれるのに、今はフッと視線を外される。
いつもと違う雰囲気に、それ以上声を掛けられずにいると、オスカー兄上が苦笑いした。
「全くお前ときたら。苦手な人となるとすぐ黙り込む癖はいつになったら直すんだ?来年には成人だぞ?」
「良いんだ。僕は大学を出たらバーベンベルクに籠るから。苦手な人には兄上が会ってくれる。」
「頼ってくれるのは嬉しいんだが・・・。私は暫く帝都か地方で騎士団務めだ。今までみたいに、そうそうお前の助けになってあげられないよ?」
「どうしようもなくなったら転移して迎えに行く。」
「おいおい、どこの駄々っ子だい?天才魔導師君。」
会場に戻る廊下を歩きながら、オスカー兄上がフィン兄さまを窘めている。
一人は騎士、一人は魔導師の正装に身を固めた長身のイケメン二人が、顔を寄せ合って話す内容とは思えない。
私はオスカー兄上に手を引かれながら黙って歩いていたけれど、思い切って聞いてみた。
「ねえ、兄上。ステファンさんは王子って身分を隠して留学しているんじゃなかったの?私、さっき庭で会った時はロンヌの伯爵の弟って聞いたのよ?」
「ああ。そうだよね。あれは私もちょっとびっくりしたよ。」
オスカー兄上が言えば、
「あいつ、国での立場が微妙だから、敢えて普段は隠してるのに。帝国への留学も、シヴレー伯の弟、で届けてる筈なんだけど。」
フィン兄さまが忌々しげに言う。
「ディーに良いところを見せたかったのかな?」
人気者だね~、とオスカー兄上は笑うけど、、、きっと隠してることがあるんだろうな。
「大使館、伺うことになっちゃったね。」
大丈夫?と今度は聞いてみる。
一瞬二人の兄は顔を見合わせ、、、今度はフィン兄さまが笑ってくれた。
「もちろんさ!ロンヌ大使館のバラ園は確かに有名なんだ。楽しみにしておいで。」
「まあ、あそこで話して貰えれば手っ取り早かったんだけど。でも、カレンブルク侯が来てしまっては、フィンは黙るしかないからね。」
オスカー兄上がからかうように言うと、フィン兄さまは向きになった。
「仕方ないだろう?僕が嫌ってるんじゃなくて向こうが父上に似た僕らを嫌ってるんだから。」
「どういうこと?」
驚いてフィン兄さまを見上げると、兄二人はしまった、と言う顔をした。
「あー、ディー、これは・・・」
「兄さま。教えて。だって私、お話している間中、あの伯父さまからちょっと意地悪な感じを受けていたんだもの。」
そうよ、気のせいじゃなかった。やっぱり何かあるんだ。
私がじーっと見つめると、兄二人はやっぱり顔を見合わせ、、、溜め息を吐いた。
「いいよ。話そう。でも、誰かに聞かれないよう、そうだな・・・今晩、僕の部屋においで。」
フィン兄さまが小指を差し出したので、指切りをする。私たちの家族だけの、奇妙な約束のおまじないだ。
「じゃあ、取り敢えず、コンラートの伯父上のところに戻ろうか?」
「そうだね。でも、戻って挨拶したら、無理せず退出させてもらおう。ディーもだいぶ疲れただろう?」
「うん。ちょっとだけね。」
本当はとっても疲れたけど。そう言うと、夜のお話を延ばされちゃうかもしれないから。
私は兄二人と手を握って、お茶会の部屋に戻って行った。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
わんこ系婚約者の大誤算
甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。
そんなある日…
「婚約破棄して他の男と婚約!?」
そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。
その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。
小型犬から猛犬へ矯正完了!?
手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない
みずがめ
恋愛
宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。
葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。
なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。
その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。
そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。
幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。
……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる