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帝都のひと夏
カレンブルク邸のお茶会へようこそ(貴方もここでしたか)
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「チッ」
隣でルー兄さまが小さく舌打ちをしたのが聞こえた。
お行儀悪いけど、でも私もそんな気持ちよ。手を取られたこの距離では、流石に出来ないけれど。
「失礼致しました。エティエンヌ殿下。お会い出来て光栄ですわ。」
今日の僕は王子です、なんて大上段に振りかぶられてしまっては、小細工せずに受け止めるしか無い。
私はルー兄さまの腕からそっと手を外すと、片手でも優雅に見えるよう、精一杯のカーテシーをした。
「気にしないで、ディアナ嬢。麗しく可憐な貴女を見かけて、つい呼び止めてしまったのは僕なんだから。」
言いながら指先にそっと口付ける。そのまましばらく動かないから、周りの貴族たちがチラチラと見始めた。
「あれは、バーベンベルクの・・・」
「黄金の瞳の・・・」
「先日皇太子殿下にお目見えして、大層気に入られたとか・・・」
「そんな御令嬢に堂々と近づくなんて、あれは一体・・・」
「そう言えばお忍びで例のロンヌの王子殿下が・・・」
「では、もしやあの方が・・・?」
好奇の眼差しと囁き声に、私やルー兄さまはうんざり気味だけど、エティエンヌ殿下は全く動じていない。むしろ関心を持たれることを期待していたように微笑んで、歯の浮く台詞を囁いて来る。ちょっと引いてしまうんですけど。
それに、いい加減、手を離してほしい。
いつもなら、父さまやフィン兄さまたちがさっさと、若しくはさりげなく取り返してくれる手は、未だにエティエンヌ殿下に指先を捉えられている。
離そうと少し力を入れたら、かえってしっかり掴まれてしまった。
「殿下・・・」
少し強い視線で訴えてみるけれど、全く動じない微笑が胡散臭くて、、、でもここまで注目されていると振り払うわけにもいかない。
兄さまが出ようとしてくれたけど、腕に触れて止める。
お忍びとはいえ隣国の王子相手に辺境伯の子供では、相手にしてもらえないもの。
私は誰かいないかとサッと辺りを見回した。
すぐそばのテーブルの椅子が一つ、引かれたままになっている。どうやら、エティエンヌ殿下は近くを通る私を見かけて席を立ったらしい。
王子の周りの席なら、高位貴族に違いない。誰かこのちょっと非常識な好意を止めてくれないかな。
空いてる席の隣はリューネブルク侯夫人、、、は無理ね。その隣は、、、
「お祖母さま!」
良かった!社交界は長幼の序も重んじるから、お祖母さまが一言注意してくだされば、隣国の王子とはいえ言うことを聞くでしょう。
そう思って一生懸命目で訴えたのに。
「あらあら、エティエンヌ殿下まで虜にしてしまうなんて、私の孫娘は何て罪作りなんでしょう!」
ふふふ、と扇の影で上機嫌に笑うお祖母さま。お転婆を心配してましたけど、杞憂だったわね。などと、訳の分からないことを言っている。
駄目だ。社交界でちやほやされて過ごしてきたお祖母さまは、こういう甘ったるい囁きとか、恋物語とか、大好きな方だった!
がっくりした私の耳は、ディアナ嬢、、、!と言う聴き慣れた声を拾った。
声の向きに視線を向けると、テーブルに手をつき、立ち上がって今にもこちらへ来そうなジキスムント君。
ああ、ここにいたのね、助けようとしてくれるのね。本当に君は誠実でいい子だね。
一瞬ほっこりした私は、でも次の瞬間、一気に視線が冷えてしまった。
だって、立ち上がろうとしたジキスムント君の腕には変わらずマティルデ嬢が縋り付いていて。その手は小さなお菓子を摘んで口元に差し出していたのだもの。
幼馴染って言ってたから、家族と一緒に仲良くお茶しててもおかしくはないけれど。
さっき、すぐ戻るって言ってたのに。
そりゃあ、待っていても来ないはずですよ!
隣でルー兄さまが小さく舌打ちをしたのが聞こえた。
お行儀悪いけど、でも私もそんな気持ちよ。手を取られたこの距離では、流石に出来ないけれど。
「失礼致しました。エティエンヌ殿下。お会い出来て光栄ですわ。」
今日の僕は王子です、なんて大上段に振りかぶられてしまっては、小細工せずに受け止めるしか無い。
私はルー兄さまの腕からそっと手を外すと、片手でも優雅に見えるよう、精一杯のカーテシーをした。
「気にしないで、ディアナ嬢。麗しく可憐な貴女を見かけて、つい呼び止めてしまったのは僕なんだから。」
言いながら指先にそっと口付ける。そのまましばらく動かないから、周りの貴族たちがチラチラと見始めた。
「あれは、バーベンベルクの・・・」
「黄金の瞳の・・・」
「先日皇太子殿下にお目見えして、大層気に入られたとか・・・」
「そんな御令嬢に堂々と近づくなんて、あれは一体・・・」
「そう言えばお忍びで例のロンヌの王子殿下が・・・」
「では、もしやあの方が・・・?」
好奇の眼差しと囁き声に、私やルー兄さまはうんざり気味だけど、エティエンヌ殿下は全く動じていない。むしろ関心を持たれることを期待していたように微笑んで、歯の浮く台詞を囁いて来る。ちょっと引いてしまうんですけど。
それに、いい加減、手を離してほしい。
いつもなら、父さまやフィン兄さまたちがさっさと、若しくはさりげなく取り返してくれる手は、未だにエティエンヌ殿下に指先を捉えられている。
離そうと少し力を入れたら、かえってしっかり掴まれてしまった。
「殿下・・・」
少し強い視線で訴えてみるけれど、全く動じない微笑が胡散臭くて、、、でもここまで注目されていると振り払うわけにもいかない。
兄さまが出ようとしてくれたけど、腕に触れて止める。
お忍びとはいえ隣国の王子相手に辺境伯の子供では、相手にしてもらえないもの。
私は誰かいないかとサッと辺りを見回した。
すぐそばのテーブルの椅子が一つ、引かれたままになっている。どうやら、エティエンヌ殿下は近くを通る私を見かけて席を立ったらしい。
王子の周りの席なら、高位貴族に違いない。誰かこのちょっと非常識な好意を止めてくれないかな。
空いてる席の隣はリューネブルク侯夫人、、、は無理ね。その隣は、、、
「お祖母さま!」
良かった!社交界は長幼の序も重んじるから、お祖母さまが一言注意してくだされば、隣国の王子とはいえ言うことを聞くでしょう。
そう思って一生懸命目で訴えたのに。
「あらあら、エティエンヌ殿下まで虜にしてしまうなんて、私の孫娘は何て罪作りなんでしょう!」
ふふふ、と扇の影で上機嫌に笑うお祖母さま。お転婆を心配してましたけど、杞憂だったわね。などと、訳の分からないことを言っている。
駄目だ。社交界でちやほやされて過ごしてきたお祖母さまは、こういう甘ったるい囁きとか、恋物語とか、大好きな方だった!
がっくりした私の耳は、ディアナ嬢、、、!と言う聴き慣れた声を拾った。
声の向きに視線を向けると、テーブルに手をつき、立ち上がって今にもこちらへ来そうなジキスムント君。
ああ、ここにいたのね、助けようとしてくれるのね。本当に君は誠実でいい子だね。
一瞬ほっこりした私は、でも次の瞬間、一気に視線が冷えてしまった。
だって、立ち上がろうとしたジキスムント君の腕には変わらずマティルデ嬢が縋り付いていて。その手は小さなお菓子を摘んで口元に差し出していたのだもの。
幼馴染って言ってたから、家族と一緒に仲良くお茶しててもおかしくはないけれど。
さっき、すぐ戻るって言ってたのに。
そりゃあ、待っていても来ないはずですよ!
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