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帝都のひと夏
カレンブルク邸のお茶会へようこそ(ドナドナされました)
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「この茶会は、帝都社交界に不慣れな君たちに少しでも帝都に慣れて欲しくて開いたんだ。それなのに楽しんでもらえなかったとしたら、悲しいね。」
「そんな、私たちはただ・・・」
「いいんだよ、謝らなくても。慣れないと戸惑うし、不安から不快になることもあるだろうしね?」
「いえ、ですから私たちは・・・」
「エティエンヌ殿下、折角の貴方の好意は、デビュー前の私の姪っ子にとってはちょっと驚くものだったようですね。どうでしょう、もっと子どもでも受け止められるような示し方をしては?」
「あの・・・」
「そのようですね、カレンブルク侯。愛らしく可憐な御令嬢を驚かせてしまうとは、私もまだまだ未熟者です。」
「そう言えば、殿下には飛び切り美しい・・・」
「ああ、そうだ、お誘いしてみようか。きっと御令嬢なら楽しんで下さる・・・」
流石凄腕の外交官だわ。カレンブルクの伯父さまは、あっと言う間に私たちのことを、社交界に慣れなくて『ちょっとわがままを言っている子供たち』にしてしまった。
穏やかに私の話をしながら、決して私を会話に入れてくれない、この茶会の権力者たち。
ダメだわ。
そっとルー兄さまへ視線を向けると、いつになく難しい顔をしていた。どうしよう、帰れなさそう?父さまを呼んだ方がいいのかな?でも、父さまたちも別の会に出ているから、迷惑かもしれないし、、、。
「・・・ですか、ディアナ嬢。」
「はい?」
一瞬考え込んでしまったところへ、エティエンヌ殿下の声で呼ばれた。慌てて返事をすると。
「良かった!じゃあ早速行きましょう!」
ご案内しますからエスコートは僕で。
にこやかに言うと同時に、エティエンヌ殿下は、私の手を再び、今度はしっかりと掴んだ。
「え?」
何?何が起こってるの?
驚いて、取りあえず手を引き抜こうとするけど、びくともしない。
「待って下さい、殿下。ディアナは行くとは一言も・・・!」
連れ去られようとする私の反対の手を掴みながら抗議するルー兄さまに、今度は伯父さまが、良い笑顔でのたまった。
「せっかくロンヌ大使館の見事な薔薇園にお誘い頂いたのに、なんでそう警戒するんだね?ルーファス君。そんなに非礼な態度では、それこそ外交問題に発展するよ?帝都に慣れない妹が心配なら、君も連れて行って頂けばいいだろう?いかがです、殿下?」
結構強引で嫌味な展開なのに、伯父上が腕を広げてにこやかに、聞き分けのない子を諭すように言うものだから、何だかこっちがわがままを言っている雰囲気になってしまった。
「もちろん構わないとも、御令嬢を不安にさせるのは良くないからね。小さな兄上と、その後ろの侍従の君も一緒にどうぞ?身近な人がいれば、ディアナ嬢もゆっくり僕の自慢の薔薇を愛でることが出来るだろう?」
僕は薔薇を愛でる貴女を愛でさせてもらうよ。
片目をつぶって言われても、ちょっと、いえかなり引いてしまうだけなんですけど!
蒼ざめた私を気にせず、さっさと広間を出ようと歩き出すエティエンヌ殿下に。
「お待ち下さい、殿下。それなら、ぜひ僕もご一緒させて下さい。」
「え・・・え?それなら私も是非!」
振り返ると。
マティルデ嬢を離して、テーブルを回ってこちらに駆け寄ろうとするジキスムント君と、それを慌てて追いかけて来るマティルデ嬢がいて。
意外にもエティエンヌ殿下は笑顔で頷いた。
「いいとも。ロンヌの人間は恋の情熱を尊ぶからね。そちらの小さい御令嬢も僕の薔薇園で是非頑張って欲しいね。」
でも、ディアナ嬢は僕が独り占めさせてもらうからね。
エティエンヌ殿下に、にこやかに言われても全然嬉しくないもの。ついでに、お洒落に小さく手を振る伯父さまが恨めしい。
「ディー、取り敢えず行くしかない。俺も付いて行くから。」
ルー兄さまに言われて頷いたけど、私は今、絶対涙目になっている。
わーん、もう転移してお家に帰りたいよー。父さまを非難していたけど、父さまもこんな気分になるのかしら、、、?
「そんな、私たちはただ・・・」
「いいんだよ、謝らなくても。慣れないと戸惑うし、不安から不快になることもあるだろうしね?」
「いえ、ですから私たちは・・・」
「エティエンヌ殿下、折角の貴方の好意は、デビュー前の私の姪っ子にとってはちょっと驚くものだったようですね。どうでしょう、もっと子どもでも受け止められるような示し方をしては?」
「あの・・・」
「そのようですね、カレンブルク侯。愛らしく可憐な御令嬢を驚かせてしまうとは、私もまだまだ未熟者です。」
「そう言えば、殿下には飛び切り美しい・・・」
「ああ、そうだ、お誘いしてみようか。きっと御令嬢なら楽しんで下さる・・・」
流石凄腕の外交官だわ。カレンブルクの伯父さまは、あっと言う間に私たちのことを、社交界に慣れなくて『ちょっとわがままを言っている子供たち』にしてしまった。
穏やかに私の話をしながら、決して私を会話に入れてくれない、この茶会の権力者たち。
ダメだわ。
そっとルー兄さまへ視線を向けると、いつになく難しい顔をしていた。どうしよう、帰れなさそう?父さまを呼んだ方がいいのかな?でも、父さまたちも別の会に出ているから、迷惑かもしれないし、、、。
「・・・ですか、ディアナ嬢。」
「はい?」
一瞬考え込んでしまったところへ、エティエンヌ殿下の声で呼ばれた。慌てて返事をすると。
「良かった!じゃあ早速行きましょう!」
ご案内しますからエスコートは僕で。
にこやかに言うと同時に、エティエンヌ殿下は、私の手を再び、今度はしっかりと掴んだ。
「え?」
何?何が起こってるの?
驚いて、取りあえず手を引き抜こうとするけど、びくともしない。
「待って下さい、殿下。ディアナは行くとは一言も・・・!」
連れ去られようとする私の反対の手を掴みながら抗議するルー兄さまに、今度は伯父さまが、良い笑顔でのたまった。
「せっかくロンヌ大使館の見事な薔薇園にお誘い頂いたのに、なんでそう警戒するんだね?ルーファス君。そんなに非礼な態度では、それこそ外交問題に発展するよ?帝都に慣れない妹が心配なら、君も連れて行って頂けばいいだろう?いかがです、殿下?」
結構強引で嫌味な展開なのに、伯父上が腕を広げてにこやかに、聞き分けのない子を諭すように言うものだから、何だかこっちがわがままを言っている雰囲気になってしまった。
「もちろん構わないとも、御令嬢を不安にさせるのは良くないからね。小さな兄上と、その後ろの侍従の君も一緒にどうぞ?身近な人がいれば、ディアナ嬢もゆっくり僕の自慢の薔薇を愛でることが出来るだろう?」
僕は薔薇を愛でる貴女を愛でさせてもらうよ。
片目をつぶって言われても、ちょっと、いえかなり引いてしまうだけなんですけど!
蒼ざめた私を気にせず、さっさと広間を出ようと歩き出すエティエンヌ殿下に。
「お待ち下さい、殿下。それなら、ぜひ僕もご一緒させて下さい。」
「え・・・え?それなら私も是非!」
振り返ると。
マティルデ嬢を離して、テーブルを回ってこちらに駆け寄ろうとするジキスムント君と、それを慌てて追いかけて来るマティルデ嬢がいて。
意外にもエティエンヌ殿下は笑顔で頷いた。
「いいとも。ロンヌの人間は恋の情熱を尊ぶからね。そちらの小さい御令嬢も僕の薔薇園で是非頑張って欲しいね。」
でも、ディアナ嬢は僕が独り占めさせてもらうからね。
エティエンヌ殿下に、にこやかに言われても全然嬉しくないもの。ついでに、お洒落に小さく手を振る伯父さまが恨めしい。
「ディー、取り敢えず行くしかない。俺も付いて行くから。」
ルー兄さまに言われて頷いたけど、私は今、絶対涙目になっている。
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