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第一章 拠点作り
第10話:名付けの楔、あるいは契約の吐息
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――名付けの楔、震える聖霊――
作業台の上で、剥ぎ取られた黒鋼樺の木屑が舞い上がり、淡い燐光を帯びて渦を巻いた。光の粒子は収束し、粘り気を持つ液体のように形を成していく。
そこから這い出すように現れたのは、あどけない少女の姿だった。
しかし、その透き通るような肌の奥には、脈動する魔力の奔流が見える。
幼い体躯にはあまりに不釣り合いなほど、その瞳は潤んだ熱を湛え、獲物を見定める獣のような、あるいは情欲に沈む雌のような色を帯びていた。
「お前は……一体何者だ?」
ケンタロウは、まだ現実味の薄い光景に、数歩後ずさりながら問いかけた。
48年の人生において、自ら作り上げた道具が人の形を成し、実体化するなど、想像の範疇を超えている。
「ふふっ……あるじ。そんなに怯えては、妾(わらわ)が悲しむではないか。妾をこの世に引きずり出したのは、他でもない、あるじのその『熱い指先』なのだぞ?」
少女は作業台に腰掛けたまま、無防備に、誘うように脚を組み替えた。
その拍子に、まだ産毛の残るしなやかな太ももが、窓から差し込む月光にさらされる。
彼女の身体から立ち上るのは、森の若葉の清涼感と、熟れきって皮の弾けた果実が混ざり合ったような、鼻腔を麻痺させるほど濃厚な「雌」の香りだ。その香りは夜の工房を瞬く間に満たし、ケンタロウの理性をじわじわと削り取っていく。
「とんでもないものを……生み出してしまったな」
ケンタロウは額に浮かんだ汗を拭い、目の前の存在を直視しようと努めた。
職人として最高の品を、ただ純粋に追い求めた結果が、この妖艶な聖霊だというのか。
少女はふらりと立ち上がると、重力に逆らうような足取りでケンタロウの胸元に寄り添った。そして、木の節のように硬く、大きなケンタロウの手を、自身の熱を帯びた小さな掌で包み込んだ。
「あるじよ……。妾にはまだ、この世界を縛る『名』がない。貴様の執念が妾を産んだのなら、貴様の言葉で、妾に永遠の鎖を繋いでみせよ」
彼女はケンタロウを見上げ、首筋に熱い吐息を吹きかけた。
その吐息は、湿った囁きとなって彼の鼓膜を震わせる。それは自身の存在をすべて彼の色で塗り潰してほしいという、淫らな、そして魂を削るような懇願だった。
ケンタロウは、彼女の核である『黒鋼樺』の、あの鉄をも凌ぐ強固なしなりと、ディアの革が見せた銀の光沢を思い浮かべた。
そして、かつて現実の工房の庭で、彼が最も愛し、気高くも鮮やかに咲き誇っていた紫の花の名を、静かに口にした。
「……お前の名は、アイリスだ」
その瞬間、少女の身体が落雷を浴びたようにビクンと大きく跳ね、背中から見えない「弦」が一本、ピンと張り詰め、空気を震わせた。
「あ、あああっ……! アイリス……アイリスか! 良い名だ……あるじ。その名で呼ばれるたびに……妾の奥底が、あるじの熱いもので貫かれるような……抗いがたい愉悦を感じるわ……っ!」
アイリスは陶然とした表情で、自らの胸元をかきむしり、その場に崩れ落ちた。
ケンタロウが与えた「名」という名の楔が、彼女の霊的な中心を容赦なく突き刺したのだ。
「いいぞ、もっと呼べ……。その声で妾を縛り、愛で、妾のすべてを……中まで暴き尽くしてほしいのだ。……あるじ、妾を……アイリスを、早くその身体で受け入れておくれ……っ」
少女の形をした弓の聖霊は、涙で潤んだ瞳でケンタロウを誘惑するように、悶えながら微笑んだ。
辺境の静かな夜。
一人の職人と、淫らな宿命を背負わされた聖霊との間に、誰にも解けない「契約」の結び目が、硬く、熱く結ばれた。それは、この仮想世界を揺るがす、現実の理すら変容させかねない程の、始まりの合図だった。
【ケンタロウのスキル熟練度】
• レザークラフト:Lv.18 (40/100)
• 解体:Lv.10 (70/100)
• 木工:Lv.11 (20/100)
• 鍛冶:Lv.5 (60/100)
• 採取・伐採:Lv.5 (65/100)
• キャンプ:Lv.2 (45/100)
• 弓術マスタリー:Lv.2 (50/100)
• 短剣:Lv.1 (40/100)
• 建築:Lv.1 (80/100)
• 料理:Lv.2 (10/100)
• 追跡:Lv.1 (45/100)
• 体力向上:Lv.2 (60/100)
• 目利き:Lv.3 (80/100)
• 接着・加工:Lv.2 (65/100)
• 道具鑑定:Lv.2 (90/100)
• 素材との対話:Lv.4 (80/100) [+50]
• 魔力感知:Lv.2 (50/100) [+40]
• 感覚研磨:Lv.1 (60/100)
• 聖霊同調(真名同調):Lv.1 (50/100) [+30]
• 魂の付与:Lv.2 (20/100) [+40] Level Up!
• 命名(真名):Lv.1 (10/100) [新規取得]
• 誘惑耐性:Lv.1 (35/100) [+25] ※アイリスの濃厚な「雌」の香りに抗う
【設定データ・状況確認】
• 命名完了: 弓の聖霊が「アイリス」としての真名を得て、ケンタロウと霊的に結合。
• アイリスの反応: 名を呼ばれることに極上の悦びを感じる特異な体質。第一形態ながら、その誘惑の力は凄まじい。
作業台の上で、剥ぎ取られた黒鋼樺の木屑が舞い上がり、淡い燐光を帯びて渦を巻いた。光の粒子は収束し、粘り気を持つ液体のように形を成していく。
そこから這い出すように現れたのは、あどけない少女の姿だった。
しかし、その透き通るような肌の奥には、脈動する魔力の奔流が見える。
幼い体躯にはあまりに不釣り合いなほど、その瞳は潤んだ熱を湛え、獲物を見定める獣のような、あるいは情欲に沈む雌のような色を帯びていた。
「お前は……一体何者だ?」
ケンタロウは、まだ現実味の薄い光景に、数歩後ずさりながら問いかけた。
48年の人生において、自ら作り上げた道具が人の形を成し、実体化するなど、想像の範疇を超えている。
「ふふっ……あるじ。そんなに怯えては、妾(わらわ)が悲しむではないか。妾をこの世に引きずり出したのは、他でもない、あるじのその『熱い指先』なのだぞ?」
少女は作業台に腰掛けたまま、無防備に、誘うように脚を組み替えた。
その拍子に、まだ産毛の残るしなやかな太ももが、窓から差し込む月光にさらされる。
彼女の身体から立ち上るのは、森の若葉の清涼感と、熟れきって皮の弾けた果実が混ざり合ったような、鼻腔を麻痺させるほど濃厚な「雌」の香りだ。その香りは夜の工房を瞬く間に満たし、ケンタロウの理性をじわじわと削り取っていく。
「とんでもないものを……生み出してしまったな」
ケンタロウは額に浮かんだ汗を拭い、目の前の存在を直視しようと努めた。
職人として最高の品を、ただ純粋に追い求めた結果が、この妖艶な聖霊だというのか。
少女はふらりと立ち上がると、重力に逆らうような足取りでケンタロウの胸元に寄り添った。そして、木の節のように硬く、大きなケンタロウの手を、自身の熱を帯びた小さな掌で包み込んだ。
「あるじよ……。妾にはまだ、この世界を縛る『名』がない。貴様の執念が妾を産んだのなら、貴様の言葉で、妾に永遠の鎖を繋いでみせよ」
彼女はケンタロウを見上げ、首筋に熱い吐息を吹きかけた。
その吐息は、湿った囁きとなって彼の鼓膜を震わせる。それは自身の存在をすべて彼の色で塗り潰してほしいという、淫らな、そして魂を削るような懇願だった。
ケンタロウは、彼女の核である『黒鋼樺』の、あの鉄をも凌ぐ強固なしなりと、ディアの革が見せた銀の光沢を思い浮かべた。
そして、かつて現実の工房の庭で、彼が最も愛し、気高くも鮮やかに咲き誇っていた紫の花の名を、静かに口にした。
「……お前の名は、アイリスだ」
その瞬間、少女の身体が落雷を浴びたようにビクンと大きく跳ね、背中から見えない「弦」が一本、ピンと張り詰め、空気を震わせた。
「あ、あああっ……! アイリス……アイリスか! 良い名だ……あるじ。その名で呼ばれるたびに……妾の奥底が、あるじの熱いもので貫かれるような……抗いがたい愉悦を感じるわ……っ!」
アイリスは陶然とした表情で、自らの胸元をかきむしり、その場に崩れ落ちた。
ケンタロウが与えた「名」という名の楔が、彼女の霊的な中心を容赦なく突き刺したのだ。
「いいぞ、もっと呼べ……。その声で妾を縛り、愛で、妾のすべてを……中まで暴き尽くしてほしいのだ。……あるじ、妾を……アイリスを、早くその身体で受け入れておくれ……っ」
少女の形をした弓の聖霊は、涙で潤んだ瞳でケンタロウを誘惑するように、悶えながら微笑んだ。
辺境の静かな夜。
一人の職人と、淫らな宿命を背負わされた聖霊との間に、誰にも解けない「契約」の結び目が、硬く、熱く結ばれた。それは、この仮想世界を揺るがす、現実の理すら変容させかねない程の、始まりの合図だった。
【ケンタロウのスキル熟練度】
• レザークラフト:Lv.18 (40/100)
• 解体:Lv.10 (70/100)
• 木工:Lv.11 (20/100)
• 鍛冶:Lv.5 (60/100)
• 採取・伐採:Lv.5 (65/100)
• キャンプ:Lv.2 (45/100)
• 弓術マスタリー:Lv.2 (50/100)
• 短剣:Lv.1 (40/100)
• 建築:Lv.1 (80/100)
• 料理:Lv.2 (10/100)
• 追跡:Lv.1 (45/100)
• 体力向上:Lv.2 (60/100)
• 目利き:Lv.3 (80/100)
• 接着・加工:Lv.2 (65/100)
• 道具鑑定:Lv.2 (90/100)
• 素材との対話:Lv.4 (80/100) [+50]
• 魔力感知:Lv.2 (50/100) [+40]
• 感覚研磨:Lv.1 (60/100)
• 聖霊同調(真名同調):Lv.1 (50/100) [+30]
• 魂の付与:Lv.2 (20/100) [+40] Level Up!
• 命名(真名):Lv.1 (10/100) [新規取得]
• 誘惑耐性:Lv.1 (35/100) [+25] ※アイリスの濃厚な「雌」の香りに抗う
【設定データ・状況確認】
• 命名完了: 弓の聖霊が「アイリス」としての真名を得て、ケンタロウと霊的に結合。
• アイリスの反応: 名を呼ばれることに極上の悦びを感じる特異な体質。第一形態ながら、その誘惑の力は凄まじい。
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