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第四章 やりたい事……。
第84話: 断罪の回廊、鏡合わせの影
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中ボスを撃破した余韻を振り払うように、健太郎たちはさらに神殿の深部へと足を進めた。
第一層の広間を抜け、螺旋状に下る石階段を下りきると、そこは第二層――『断罪の回廊』と呼ばれるエリアだった。
第一層の静寂とは一転し、回廊の壁一面には巨大な鏡のような黒い鉱石が埋め込まれ、三人の姿を歪に映し出している。
そこから溢れ出すのは、第一層よりもさらに濃密で、肺にまとわりつくようなねちょりとした重い魔力だ。
「健太郎さん……鏡の中に、変なものが映ってます。私たちの姿……じゃないみたい」
結衣が『索敵・分析』の精度を最大に上げ、鏡面を睨む。
鏡に映る三人の影は、まるで独自の意思を持っているかのように、本体の動きから数秒遅れてうねうねと不気味に蠢いていた。
「……なるほど。二層目は、侵入者の『負の側面』を素材にするというわけか。アイリス、お前の聖なる光を少しだけ抑えろ。光が強すぎると、逆に影が濃くなる」
「うむ……承知した。あるじ、この回廊は妾の光をも飲み込もうとしておる。主の『把握』だけが頼りじゃぞ」
アイリスが第五形態のまま、健太郎の腕をきゅうっと掴み、自身の魔力を内へと収束させる。健太郎は聖弓アイリスを握り直し、職人の眼で鏡の奥を見据えた。
不意に、鏡の中から三人の「影」が剥がれ落ちるように這い出してきた。
健太郎と同じ体躯を持ち、黒い霧の弓を構える「影の健太郎」。
アイリスと同じ豊満な肢体を持ち、淫靡な笑みを浮かべる「影のアイリス」。
そして、結衣と同じ姿で、絶望に顔を歪めた「影の結衣」。
「……自分自身を『解体』しろというわけか。悪趣味なことだ」
「影の結衣」が、ぬるりとした影の触手を伸ばし、結衣の防具の隙間に滑り込ませようとする。それを見た健太郎の怒りが、静かに、しかし激しく爆発した。
「俺の伴侶に、偽者の手で触れさせるかよ。アイリス、行くぞ!」
「おう! 主の意志こそが妾の真実じゃ!」
健太郎は、自分と全く同じ動作で弓を引き絞る「影の健太郎」に対し、あえて射撃ではなく、聖弓の弦を打楽器のように指先で弾いた。
びぃぃぃん……!
『聖灰の調律』を応用した超高周波の魔力振動。
それが回廊全体を震わせ、鏡合わせの影たちを内側から掻き回す。
【共鳴する虚像、真実の穿孔】
健太郎が放った聖弓の震動波が、回廊の空気をびりびりと震わせる。
超高周波の魔力は、実体のない影の構成組織を直接揺さぶり、鏡から這い出た偽物たちの輪郭をどろどろに溶かしていく。
「ガ、アアァ……ッ!」
「影の健太郎」が苦悶の声を上げ、膝を突く。その顔面がぐちゅりと崩れ、中から黒いヘドロのような魔力が溢れ出した。
影の結衣も、影のアイリスも、自身の存在を維持できず、水たまりのように床へと広がっていく。
「今だ! 二人とも、偽物の影を自分の『光』で塗り潰せ!」
「うむ! 妾を騙った報い、たっぷり受けさせてやろうぞ!」
「はい、健太郎さん……! 私の心は、誰にも真似させないから!」
アイリスが聖弓に再び魔力を流し込み、結衣がその光を『聖灰の調律』で増幅させる。
三人の絆が一点に集約され、回廊を埋め尽くす鏡の壁に向かって放たれた。
パリンッ!! ガシャァァンッ!!
割れたのは影のコピーだけではない。回廊の壁一面に埋め込まれていた「断罪の鏡」が、健太郎の放つ正道な魔力振動に耐えきれず、一斉に粉砕された。
砕け散った鏡の破片は、空中でキラキラと輝く砂へと変わり、その奥に隠されていた真の通路――神殿の心臓部へと続く「深淵の階段」が姿を現した。
「……健太郎さん、見てください。鏡が割れた跡に、何か綺麗な石が……」
結衣が指差した先、砕けた鏡の基部には、虹色の光を放つ小さな結晶がいくつも埋まっていた。
「……『真実の晶石』か。虚像を打ち破った者にしか見つけることのできない、極上の触媒だ」
健太郎はその結晶を一つ、また一つと丁寧に採取し、ポーチへと収めた。
ふと見ると、アイリスと結衣が、戦いの緊張から解かれた安堵と、健太郎の圧倒的な頼もしさに当てられ、熱っぽい視線で彼を見つめている。
「あるじ……今の振動、妾の魂の芯までびりびりと響いたわい。……影を解体するその手つき、後で妾の身体でもじっくり試してほしいものじゃな」
アイリスがじゅるりと舌を出し、健太郎の首筋に甘い吐息を吹きかける。
「健太郎さん……私も、さっきの光で……なんだか、身体の奥がすごく熱くて……」
結衣もまた、火照った顔で健太郎の腕にしがみつく。
健太郎は二人の伴侶を力強く抱き寄せ、神殿のさらなる深淵――最下層へと続く階段を見据えた。
「ああ、分かっている。神殿の主(あるじ)を『解体』した後は、お前たちのその熱、一滴も残さず俺が受け止めてやる。……行くぞ」
【日没の玉座、深淵の神域解体】
螺旋状の階段を下りるにつれ、空気は粘り気を増し、もはや気体というよりは液体の闇を泳いでいるような感覚へと変わっていった。
健太郎の靴が、濡れた岩肌のような床を叩くたび、べちゃり……と、現実のものとは思えない不浄な音が響く。
「……健太郎さん、ここ、もう空間自体が歪んでいます。私の索敵が……正常な距離を返してくれません。まるで、一歩進むごとに、数キロメートル先へ飛ばされたり、逆に元の場所に戻されたりしているみたいで……っ!」
結衣が必死にディスプレイを操作するが、彼女の視界を覆うウィンドウはノイズで埋め尽くされている。健太郎は無言で彼女の肩を抱き寄せ、その震えを抑えるように力を込めた。
「気にするな、結衣。空間が歪んでいるなら、その歪みの『継ぎ目』を見ればいい。……アイリス、前を照らせ」
「うむ。……妾の光が、これほどまでに押し戻されるとはな。主よ、この先にいるのは、ただの魔物ではないぞ。神域のシステムそのものを食い破り、独自の『理(ことわり)』を築いた……バグの権化のような存在じゃ」
アイリスが第五形態の肢体から放つ白銀の輝きが、闇の壁にじゅっ……じゅわぁぁ……と音を立てて削り取られていく。
やがて、三人の前に巨大な空洞が広がった。
そこは、天井のない、どこまでも続く星のない夜空の下に鎮座する『日没の玉座』。
中央に鎮座するのは、巨大な「黒い太陽」を背負った、異形の神――『忘却の王・エクリプス』であった。
その姿は、全身が黒い包帯のような影の布で巻かれたミイラのようでありながら、その背後から伸びる数千の触手は、神殿の壁や床を貫き、建物そのものを自身の肉体として取り込んでいた。
「……久しいな。我が理(ことわり)を侵し、影の司祭を解体した職人よ」
王の言葉は、空気の振動ではなく、健太郎たちの脳内に直接「泥を流し込むような」不快な響きとして伝わってきた。
「職人……か。お前も、元は何かを『作る』側だったようだな。だが、お前が今やっているのは、ただの浪費だ。素材を、命を、この腐った影に溶かして何が残る」
【真説】日没の玉座、クリエイターの残滓と「理」の解体
螺旋階段の最下層、そこは物理的な空間を超越し、剥き出しのシステムコードが黒い霧となって蠢く「デバッグルーム」の成れの果てだった。
玉座に座る『忘却の王・エクリプス』。その影の包帯が解け、素顔が露わになる。それは、かつてこの世界を構築した開発者の一人であり、自らも「究極の生産職」を自負しながら、神域の完成を見ずにこの闇に呑まれた男の怨念であった。
「……愚かな。戦闘職の力を借りず、女二人を連れた弓使い如きが、私の『完成された世界』に何用だ」
王の声は、システムログのように無機質に響く。
王が指を鳴らすと、神殿の壁からうねうねと無数の「未完成の武具」が突き出し、自動追尾の弾幕となって襲いかかる。だが、健太郎は動かない。
「……完成された、だと? 笑わせるな。お前の作るものは、どれも『中身』が空っぽだ」
健太郎の『職人の眼』は、王が繰り出す攻撃のすべてに共通する「構造的欠陥」を看破していた。
【理(ことわり)の矛盾】
エクリプスは、神域の全スキルを無効化する【絶対不変の外殻】を纏っている。しかし、それは「生産・強化プロセス」が介在しない攻撃に限られた。
「アイリス、結衣! 奴の攻撃は、素材の『特性』を無視して無理やり形にしただけのバグだ。……俺が奴の『接合部(コード)』を抉じ開ける。そこへ、お前たちの熱を流し込め!」
健太郎はポーチから、道中で得た『影糸の織物』を指先で編み上げ、即席の「絶縁体」を作り出した。
それを聖弓の弦に絡め、王が放つ影の魔力を逆に「吸収」して矢へと変える。
「な……っ!? 私の魔力を……その場で『素材』として再構築しているというのか!?」
「職人なら当然だ。……いくぞ!」
健太郎が放った一矢は、王の胸部、異なる魔力が繋ぎ合わされた「ポリゴンの継ぎ目」を正確に穿った。
ぐちゅりっ……!!
「ガ、アアァ……ッ!! 馬鹿な、私の不変の鎧が……っ!」
「お前の鎧は、外面だけを整えた『未加工品』だ。……結衣、今だ! 奴のシステムの隙間に、お前の聖灰を『目地材』として叩き込め!」
「はいっ! 健太郎さん!!」
結衣が放つ聖灰の光が、王の鎧の亀裂にぬるりと入り込み、内側から膨張して影の鎧を粉砕していく。
剥き出しになった王の心臓部。そこには、この神殿を維持するためのエネルギー源にして、王の絶望が結晶化した『陽光の魔石』が、黒い粘液に塗れて埋め込まれていた。
「……それは、燃料だ。お前のような亡霊が抱えていいもんじゃない」
健太郎はアイリスを本体の弓へと戻し、本来の力を解き放つ。
「アイリス、あの石を『解体』して、俺たちの力にするぞ!」
「心得た! 主よ、妾のすべてを……その汚れた石の奥まで、激しく突き立てておくれ……っ!!」
健太郎が放つ「神域解体の一撃」が、王の胸から魔石を引き抜くように貫いた。
王の肉体は、自らが構築した歪なシステムの崩壊に耐えきれず、白銀の粒子となって霧散していく。
「……そうか。私は……温もりのある『手入れ』を知らぬまま……。職人よ、お前なら……この先を……」
クリエイターの残滓は、最後に満足げな微笑を残し、完全に消滅した。
後に残されたのは、浄化され、至高の熱量を放ち続ける『陽光の魔石』。
健太郎はそれを拾い上げ、熱気に震える二人の伴侶を抱きしめた。
【健太郎(三神健太郎) スキル熟練度】
■生産系カテゴリー
• レザークラフトマスタリー Lv.58:(20/100)
• 神具メンテナンス Lv.46:(20/100)
• 慈愛の加工 Lv.46:(30/100)
• 魔力振動による精密解体 Lv.5:(10/100)
• 【神域の解体師】 Lv.1:(50/100)
■戦闘・サバイバル系カテゴリー
• 弓術マスタリー Lv.99:(30/100)
• 魔力操作 Lv.71:(20/100)
• 【聖弓の咆哮(極)】 Lv.1:(50/100)
■身体強化系
• 性技(手入れ) Lv.45:(30/100)
• 絶倫 Lv.38:(30/100)
• 全生命力の解放 Lv.10:(30/100)
■特殊スキル
• 家長としての威厳 Lv.51:(20/100)
• 【聖霊の伴侶(神誓)】 Lv.30:(20/100)
• 【三位一体の真・福音】 Lv.1:(20/100)
• 【神をも解体する手】 Lv.1:(10/100)
【結衣(早川結衣) スキル熟練度】
• 感度上昇 Lv.60:(10/100)
• 【奉仕マスタリー】 Lv.35:(10/100)
• 【正妻の余裕】 Lv.50:(10/100)
• 索敵・分析 Lv.25:(10/100)
• 聖灰の調律 Lv.15:(10/100)
【設定データ/状況確認】
• 状況:元クリエイターのボスを「生産職の視点」から解体・撃破。
• キーアイテム:『陽光の魔石』(炉の燃料)。
第一層の広間を抜け、螺旋状に下る石階段を下りきると、そこは第二層――『断罪の回廊』と呼ばれるエリアだった。
第一層の静寂とは一転し、回廊の壁一面には巨大な鏡のような黒い鉱石が埋め込まれ、三人の姿を歪に映し出している。
そこから溢れ出すのは、第一層よりもさらに濃密で、肺にまとわりつくようなねちょりとした重い魔力だ。
「健太郎さん……鏡の中に、変なものが映ってます。私たちの姿……じゃないみたい」
結衣が『索敵・分析』の精度を最大に上げ、鏡面を睨む。
鏡に映る三人の影は、まるで独自の意思を持っているかのように、本体の動きから数秒遅れてうねうねと不気味に蠢いていた。
「……なるほど。二層目は、侵入者の『負の側面』を素材にするというわけか。アイリス、お前の聖なる光を少しだけ抑えろ。光が強すぎると、逆に影が濃くなる」
「うむ……承知した。あるじ、この回廊は妾の光をも飲み込もうとしておる。主の『把握』だけが頼りじゃぞ」
アイリスが第五形態のまま、健太郎の腕をきゅうっと掴み、自身の魔力を内へと収束させる。健太郎は聖弓アイリスを握り直し、職人の眼で鏡の奥を見据えた。
不意に、鏡の中から三人の「影」が剥がれ落ちるように這い出してきた。
健太郎と同じ体躯を持ち、黒い霧の弓を構える「影の健太郎」。
アイリスと同じ豊満な肢体を持ち、淫靡な笑みを浮かべる「影のアイリス」。
そして、結衣と同じ姿で、絶望に顔を歪めた「影の結衣」。
「……自分自身を『解体』しろというわけか。悪趣味なことだ」
「影の結衣」が、ぬるりとした影の触手を伸ばし、結衣の防具の隙間に滑り込ませようとする。それを見た健太郎の怒りが、静かに、しかし激しく爆発した。
「俺の伴侶に、偽者の手で触れさせるかよ。アイリス、行くぞ!」
「おう! 主の意志こそが妾の真実じゃ!」
健太郎は、自分と全く同じ動作で弓を引き絞る「影の健太郎」に対し、あえて射撃ではなく、聖弓の弦を打楽器のように指先で弾いた。
びぃぃぃん……!
『聖灰の調律』を応用した超高周波の魔力振動。
それが回廊全体を震わせ、鏡合わせの影たちを内側から掻き回す。
【共鳴する虚像、真実の穿孔】
健太郎が放った聖弓の震動波が、回廊の空気をびりびりと震わせる。
超高周波の魔力は、実体のない影の構成組織を直接揺さぶり、鏡から這い出た偽物たちの輪郭をどろどろに溶かしていく。
「ガ、アアァ……ッ!」
「影の健太郎」が苦悶の声を上げ、膝を突く。その顔面がぐちゅりと崩れ、中から黒いヘドロのような魔力が溢れ出した。
影の結衣も、影のアイリスも、自身の存在を維持できず、水たまりのように床へと広がっていく。
「今だ! 二人とも、偽物の影を自分の『光』で塗り潰せ!」
「うむ! 妾を騙った報い、たっぷり受けさせてやろうぞ!」
「はい、健太郎さん……! 私の心は、誰にも真似させないから!」
アイリスが聖弓に再び魔力を流し込み、結衣がその光を『聖灰の調律』で増幅させる。
三人の絆が一点に集約され、回廊を埋め尽くす鏡の壁に向かって放たれた。
パリンッ!! ガシャァァンッ!!
割れたのは影のコピーだけではない。回廊の壁一面に埋め込まれていた「断罪の鏡」が、健太郎の放つ正道な魔力振動に耐えきれず、一斉に粉砕された。
砕け散った鏡の破片は、空中でキラキラと輝く砂へと変わり、その奥に隠されていた真の通路――神殿の心臓部へと続く「深淵の階段」が姿を現した。
「……健太郎さん、見てください。鏡が割れた跡に、何か綺麗な石が……」
結衣が指差した先、砕けた鏡の基部には、虹色の光を放つ小さな結晶がいくつも埋まっていた。
「……『真実の晶石』か。虚像を打ち破った者にしか見つけることのできない、極上の触媒だ」
健太郎はその結晶を一つ、また一つと丁寧に採取し、ポーチへと収めた。
ふと見ると、アイリスと結衣が、戦いの緊張から解かれた安堵と、健太郎の圧倒的な頼もしさに当てられ、熱っぽい視線で彼を見つめている。
「あるじ……今の振動、妾の魂の芯までびりびりと響いたわい。……影を解体するその手つき、後で妾の身体でもじっくり試してほしいものじゃな」
アイリスがじゅるりと舌を出し、健太郎の首筋に甘い吐息を吹きかける。
「健太郎さん……私も、さっきの光で……なんだか、身体の奥がすごく熱くて……」
結衣もまた、火照った顔で健太郎の腕にしがみつく。
健太郎は二人の伴侶を力強く抱き寄せ、神殿のさらなる深淵――最下層へと続く階段を見据えた。
「ああ、分かっている。神殿の主(あるじ)を『解体』した後は、お前たちのその熱、一滴も残さず俺が受け止めてやる。……行くぞ」
【日没の玉座、深淵の神域解体】
螺旋状の階段を下りるにつれ、空気は粘り気を増し、もはや気体というよりは液体の闇を泳いでいるような感覚へと変わっていった。
健太郎の靴が、濡れた岩肌のような床を叩くたび、べちゃり……と、現実のものとは思えない不浄な音が響く。
「……健太郎さん、ここ、もう空間自体が歪んでいます。私の索敵が……正常な距離を返してくれません。まるで、一歩進むごとに、数キロメートル先へ飛ばされたり、逆に元の場所に戻されたりしているみたいで……っ!」
結衣が必死にディスプレイを操作するが、彼女の視界を覆うウィンドウはノイズで埋め尽くされている。健太郎は無言で彼女の肩を抱き寄せ、その震えを抑えるように力を込めた。
「気にするな、結衣。空間が歪んでいるなら、その歪みの『継ぎ目』を見ればいい。……アイリス、前を照らせ」
「うむ。……妾の光が、これほどまでに押し戻されるとはな。主よ、この先にいるのは、ただの魔物ではないぞ。神域のシステムそのものを食い破り、独自の『理(ことわり)』を築いた……バグの権化のような存在じゃ」
アイリスが第五形態の肢体から放つ白銀の輝きが、闇の壁にじゅっ……じゅわぁぁ……と音を立てて削り取られていく。
やがて、三人の前に巨大な空洞が広がった。
そこは、天井のない、どこまでも続く星のない夜空の下に鎮座する『日没の玉座』。
中央に鎮座するのは、巨大な「黒い太陽」を背負った、異形の神――『忘却の王・エクリプス』であった。
その姿は、全身が黒い包帯のような影の布で巻かれたミイラのようでありながら、その背後から伸びる数千の触手は、神殿の壁や床を貫き、建物そのものを自身の肉体として取り込んでいた。
「……久しいな。我が理(ことわり)を侵し、影の司祭を解体した職人よ」
王の言葉は、空気の振動ではなく、健太郎たちの脳内に直接「泥を流し込むような」不快な響きとして伝わってきた。
「職人……か。お前も、元は何かを『作る』側だったようだな。だが、お前が今やっているのは、ただの浪費だ。素材を、命を、この腐った影に溶かして何が残る」
【真説】日没の玉座、クリエイターの残滓と「理」の解体
螺旋階段の最下層、そこは物理的な空間を超越し、剥き出しのシステムコードが黒い霧となって蠢く「デバッグルーム」の成れの果てだった。
玉座に座る『忘却の王・エクリプス』。その影の包帯が解け、素顔が露わになる。それは、かつてこの世界を構築した開発者の一人であり、自らも「究極の生産職」を自負しながら、神域の完成を見ずにこの闇に呑まれた男の怨念であった。
「……愚かな。戦闘職の力を借りず、女二人を連れた弓使い如きが、私の『完成された世界』に何用だ」
王の声は、システムログのように無機質に響く。
王が指を鳴らすと、神殿の壁からうねうねと無数の「未完成の武具」が突き出し、自動追尾の弾幕となって襲いかかる。だが、健太郎は動かない。
「……完成された、だと? 笑わせるな。お前の作るものは、どれも『中身』が空っぽだ」
健太郎の『職人の眼』は、王が繰り出す攻撃のすべてに共通する「構造的欠陥」を看破していた。
【理(ことわり)の矛盾】
エクリプスは、神域の全スキルを無効化する【絶対不変の外殻】を纏っている。しかし、それは「生産・強化プロセス」が介在しない攻撃に限られた。
「アイリス、結衣! 奴の攻撃は、素材の『特性』を無視して無理やり形にしただけのバグだ。……俺が奴の『接合部(コード)』を抉じ開ける。そこへ、お前たちの熱を流し込め!」
健太郎はポーチから、道中で得た『影糸の織物』を指先で編み上げ、即席の「絶縁体」を作り出した。
それを聖弓の弦に絡め、王が放つ影の魔力を逆に「吸収」して矢へと変える。
「な……っ!? 私の魔力を……その場で『素材』として再構築しているというのか!?」
「職人なら当然だ。……いくぞ!」
健太郎が放った一矢は、王の胸部、異なる魔力が繋ぎ合わされた「ポリゴンの継ぎ目」を正確に穿った。
ぐちゅりっ……!!
「ガ、アアァ……ッ!! 馬鹿な、私の不変の鎧が……っ!」
「お前の鎧は、外面だけを整えた『未加工品』だ。……結衣、今だ! 奴のシステムの隙間に、お前の聖灰を『目地材』として叩き込め!」
「はいっ! 健太郎さん!!」
結衣が放つ聖灰の光が、王の鎧の亀裂にぬるりと入り込み、内側から膨張して影の鎧を粉砕していく。
剥き出しになった王の心臓部。そこには、この神殿を維持するためのエネルギー源にして、王の絶望が結晶化した『陽光の魔石』が、黒い粘液に塗れて埋め込まれていた。
「……それは、燃料だ。お前のような亡霊が抱えていいもんじゃない」
健太郎はアイリスを本体の弓へと戻し、本来の力を解き放つ。
「アイリス、あの石を『解体』して、俺たちの力にするぞ!」
「心得た! 主よ、妾のすべてを……その汚れた石の奥まで、激しく突き立てておくれ……っ!!」
健太郎が放つ「神域解体の一撃」が、王の胸から魔石を引き抜くように貫いた。
王の肉体は、自らが構築した歪なシステムの崩壊に耐えきれず、白銀の粒子となって霧散していく。
「……そうか。私は……温もりのある『手入れ』を知らぬまま……。職人よ、お前なら……この先を……」
クリエイターの残滓は、最後に満足げな微笑を残し、完全に消滅した。
後に残されたのは、浄化され、至高の熱量を放ち続ける『陽光の魔石』。
健太郎はそれを拾い上げ、熱気に震える二人の伴侶を抱きしめた。
【健太郎(三神健太郎) スキル熟練度】
■生産系カテゴリー
• レザークラフトマスタリー Lv.58:(20/100)
• 神具メンテナンス Lv.46:(20/100)
• 慈愛の加工 Lv.46:(30/100)
• 魔力振動による精密解体 Lv.5:(10/100)
• 【神域の解体師】 Lv.1:(50/100)
■戦闘・サバイバル系カテゴリー
• 弓術マスタリー Lv.99:(30/100)
• 魔力操作 Lv.71:(20/100)
• 【聖弓の咆哮(極)】 Lv.1:(50/100)
■身体強化系
• 性技(手入れ) Lv.45:(30/100)
• 絶倫 Lv.38:(30/100)
• 全生命力の解放 Lv.10:(30/100)
■特殊スキル
• 家長としての威厳 Lv.51:(20/100)
• 【聖霊の伴侶(神誓)】 Lv.30:(20/100)
• 【三位一体の真・福音】 Lv.1:(20/100)
• 【神をも解体する手】 Lv.1:(10/100)
【結衣(早川結衣) スキル熟練度】
• 感度上昇 Lv.60:(10/100)
• 【奉仕マスタリー】 Lv.35:(10/100)
• 【正妻の余裕】 Lv.50:(10/100)
• 索敵・分析 Lv.25:(10/100)
• 聖灰の調律 Lv.15:(10/100)
【設定データ/状況確認】
• 状況:元クリエイターのボスを「生産職の視点」から解体・撃破。
• キーアイテム:『陽光の魔石』(炉の燃料)。
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ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
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旧校舎の地下室
守 秀斗
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