[R18]2度目の人生でスローライフ?ハーレムだっていいじゃないか

白猫 おたこ

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第九章 ライバル達

第209話: 【蕾】再誕の少年と、職人の矜持

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 光の粒子が収まり、実体を得たハルト。その姿はかつてよりも清らかで、その瞳には新しい命の輝きが宿っていた。
 感極まってハルトを抱きしめる茉莉。
そんな彼女を、健太郎は荒くなった呼吸を整えながら静かに見守っていたが、やがて無造作に口を開いた。

「……茉莉。ハルトは今、『第一形態』だ。忘れんなよ」

 その言葉に、茉莉はハルトを腕の中に置いたまま、不思議そうに健太郎を見上げた。

「第一形態……? でも旦那、ハルトは前よりもずっと、霊力が澄んでる気がしますえ?」

「ああ。以前の『形』を一度壊して、アラクネの生体糸と世界樹の魔力で組み直したからな。純度は上がったが、今のハルトは生まれたての赤ん坊と同じだ。……ここからどう染め上げ、どう育てていくかは、お前次第だぞ」

 健太郎は一歩歩み寄り、ハルトの頭に無骨な手を置いた。

「ハルト。お前の主は、この泣き虫な染め師だ。しっかり支えてやれよ」

「……はい! 健太郎様、ありがとうございます。ボク、茉莉様と一緒に、世界で一番の色を見つけてみせます!」

 ハルトは幼いながらも凛とした声で答え、健太郎の手に自らの小さな手を重ねた。その光景に、茉莉はハルトが失った時間を惜しむのではなく、これから始まる新しい物語に思いを馳せ、再び涙をこぼした。

「……旦那。あんたはほんまに、罪な人やね。……うちも、この子と一緒に、旦那に負けへんくらいの職人として、一からやり直してみせるわ」

 茉莉は立ち上がり、健太郎を熱烈な、しかし以前のような誘惑ではなく、真摯な尊敬の念を込めた瞳で見つめた。

「おじさん、かっこいい……! さすが私の見込んだ人だね!」

「健太郎さん、本当にお疲れ様でした。……さあ、素材も手に入りましたし、一旦拠点に戻って、皆さんの装備のメンテナンスをしましょうか?」

 桃子は惚れ直し、結衣が優しく提案する。
その横では、恵梨香が「ウチの碧雷、もっと凄くしてほしいわぁ!」とはしゃぎ、アイリスは無言で健太郎の腕を取り、己の領分を主張していた。
 未知の森での死闘と、新たな命の誕生。
一行は、極彩色の光を纏い始めた森を後にし、次なる進化へと向かうのだった。

【発覚】古都の職人と、意外な性癖

 未知の森での死闘を終え、一行は静かな湖畔に佇む健太郎の工房へと帰還した。
 道中、あれほど健太郎にしなだれかかり、扇情的な色香を振りまいていた茉莉だったが、工房に入った彼女の様子は一変していた。

「あぁ……ハルト、ほんまに堪忍なぁ。お腹空いてへん? どこか痛いとこない? うちはもう、あんたがおらんと生きていけへんわぁ……」

 茉莉は健太郎に見向きもせず、第一形態として再誕したばかりのハルトを、その豊満な胸の中へと埋めるように抱きしめていた。
 ハルトは「茉莉様、ボク大丈夫ですから、ちょっと苦しいです……」と頬を染めてもがいているが、茉莉の抱擁は解かれるどころか、さらに力を増していく。

「ふふ、ハルト。あんたのその照れた顔、最高にべっぴんさんやえ……。一生、うちの腕の中で可愛がってあげるさかいね」

 慈しむような、それでいてどこか「獲物」を愛でるような肉食獣の瞳。
 その光景を、健太郎、アイリス、結衣、恵梨香、桃子の五人は、並んで呆然と眺めていた。

「……なぁ、結衣さん」

 恵梨香が、片手剣を置くのも忘れてポツリと呟く。

「……うん、恵梨香ちゃん。私も同じこと考えてると思う」

「……健太郎さん。茉莉さん、ハルト君のこと見てる目……ちょっとヤバいよね? 桃子、ああいうのSNSで見たことある」

 桃子が引き気味に指摘する。
健太郎は、自分への誘惑がピタリと止まったことに安堵しつつも、かつての戦友の意外すぎる「本性」に、深層の鑑定眼を向けるまでもなく理解した。

「……ああ。あいつ、生粋の『ショタコン』だったのか」

 確信。

 あの大人の余裕たっぷりの色香も、健太郎への馴れ馴れしい態度も、すべてはハルトという「可愛い美少年」を復活させるための布石であり、彼女の真の愛は最初からこの小さな武器聖霊にのみ注がれていたのだ。

「あら、主。……どうやら余計なライバルは、勝手に自滅(?)してくれたようですわね」

 アイリスが、これまでの警戒心が嘘のようにスッと表情を和らげ、どこか哀れみすら含んだ笑みを浮かべる。
 工房には、茉莉のデレデレとした甘い声と、ハルトの困惑した吐息だけが響き渡り、これまでの殺伐とした女の戦いは、一瞬にして「ショタの人」という強烈なレッテルによって終結した。

「……よし。茉莉は放っておけ。俺たちはアラクネの素材を整理するぞ。結衣、手伝え」

「はいっ! 健太郎さん!」

 健太郎の声で、ようやく工房が職人の空気に戻る。
 だが、時折聞こえてくる茉莉の「あぁ、可愛いなぁハルトぉ……」という呻きに、全員が密かに「近寄らないでおこう」と誓うのだった。

【決意】染師の旅立ちと、新たな清浄

 ハルトを胸に抱き、骨抜きになったような顔をしていた茉莉だったが、ひとたび腰を上げると、その瞳には職人としての、そして「守護者」としての鋭い光が戻っていた。

「旦那、色々とおおきに。ハルトも無事に戻ったことやし、うちはこれで失礼するわ」

 茉莉は扇をパチンと閉じ、復活したばかりのハルトを傍らに立たせた。
ハルトは少し気恥ずかしそうにしながらも、その小さな手で茉莉の着物の裾をしっかりと握っている。

「帰るのか? ヴォルガはまだアビスの影響が色濃いはずだ。今のハルトを連れて行くには酷だろ」

 健太郎の言葉に、茉莉は艶やかに唇を吊り上げた。

「何言うてんの、旦那。ハルトを進化させるには、清らかな水と光が必要不可欠なんやえ。……なら、うちは決めたわ。ハルトを育てるついでに、あの汚れたヴォルガ……うちが全部、清浄化させたるわ」

「……ついで、だと?」

「そうや。旦那がこの森を塗り替えたんや。なら、西の染め師が自分の庭を綺麗にせんで、何が頂点や。ハルトの成長に合わせて、一色ずつ、あの地を塗り直してみせるさかい……楽しみにしとき」

 二十七歳の職人が見せた不敵な笑み。それは、健太郎の功績に触発され、自らも世界の理を書き換えようとする「頂点」の一人としての誇りだった。

「……そうか。なら、精々頑張れよ」

「ふふ、おおきに。ハルト、行くえ。三神の旦那に、次はもっとべっぴんな姿、見せなあかんからね」

「はい、茉莉様! 健太郎様、皆さんも、ありがとうございました!」

 ハルトが礼儀正しく頭を下げ、茉莉と共に光の粒子となって消えていく。
 嵐のような美女が去った後、工房にはいつもの静寂と、残されたアラクネの最高級素材、そして残された五人の微かな疲労感だけが漂っていた。

「……行っちゃいましたね。ヴォルガを清浄化させるなんて、凄い自信ですけど……あの人なら本当にやりそうです」

 結衣が感心したように呟くと、恵梨香が片手剣を鞘に納めながら、大きく伸びをした。

「あはは! 健太郎さん、これでようやく『ショタの人』の誘惑から解放されたな! ウチらの天下やで!」

「うん。健太郎さんの隣、空いたから、桃子の場所だよ!」

 桃子が空かさず健太郎の膝元に陣取り、アイリスがその反対側を無言でキープする。
 健太郎は溜息を吐きながらも、作業台の上の素材――アラクネの「生体糸袋」と「アビス・ネオン」に視線を落とした。

「……さて。あいつがヴォルガを塗り替えるってんなら、俺もこの場所をもっと頑丈にするだけだ。結衣、メンテナンスを始めるぞ。お前たちの装備、次の段階へ引き上げる」

「はい! よろしくお願いします、健太郎さん!」

 外の世界では第二陣のプレイヤーたちが押し寄せ、茉莉がヴォルガを塗り替えようとしている。
 そのうねりを感じながら、健太郎は再び、工房の火を強く燃え上がらせた。
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