[R18]2度目の人生でスローライフ?ハーレムだっていいじゃないか

白猫 おたこ

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第九章 ライバル達

第215話: 【開花】灼熱の試練、神刀・雪月花の閃光

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 神殿で健太郎が世界の脈動を整えようとしているその時、北の火山地帯『灼熱の奈落』では、師匠・村正と桜花が、噴き出す溶岩の熱風にさらされていた。
 二人が火山の深部、かつて神々が武具を打ったとされる『古の鍛冶場』へ辿り着いたその時、地響きと共に巨大な影が立ち塞がった。全身がアビスの毒素を含んだ黒曜石で構成された巨兵、『深淵のアビス・ゴーレム』である。

「ぬぅ、アビスの残滓が岩に宿ったか。……桜花、行け! 岩をも斬れぬと刃こぼれするぞ!」

「はっ……! 某(それがし)、参るっ!」

 桜花は、腰に佩いた一振りを抜き放った。村正が彼女の「姉妹刀」として、魂を分かつように鍛え上げた対の神性――『神刀・雪月花』。

 ――ガギィィィン!!

 しかし、放たれた一撃はゴーレムの黒い岩肌に火花を散らすだけで、無情にも弾き返される。

「くっ……!? 硬い……っ!」

 間髪入れず、丸太のような岩の腕が桜花を襲う。防御が間に合わず、華奢な身体が地面を転がり、溶岩の熱に焼かれた岩壁に叩きつけられた。中学生の姿をした彼女の頬を、朱い血が伝う。

「ハァ、ハァ……っ、まだ……まだでござる!」

 再び、三度。桜花は必死に刃を振るうが、アビスの魔力を帯びた黒曜石は斬るそばから増殖し、雪月花の鋭利さを拒絶する。
逆に反動で彼女の手首は悲鳴を上げ、握力は限界に近い。

「……そこまでじゃ。桜花、雪月花を貸せ。見ておれ」

 村正が静かに歩み出た。
 桜花からその姉妹刀を受け取ると、老職人は溶岩の爆ぜる音すら消えたかのような静寂を纏う。
 ゴーレムが咆哮を上げ、巨大な右拳を振り下ろしたその瞬間――。
 ――スッ……。
 音も無く、光すら置き去りにするような一閃。
 ドォォォォン!! と遅れて響く轟音と共に、ゴーレムの右腕が根元から綺麗に切り落とされ、溶岩の中へと没した。

「……こうじゃ。素材に逆らうな。硬さという『理』を、愛でるように受け流し、その隙間に刃を滑り込ませるのじゃ。健太郎の指が、お主の身体をどう『解いた』か……思い出せ」
「あ……あぁ……。……某、分かり申したっ!」

 村正から投げ返された雪月花を、桜花は今度は力ではなく「魂」で受け止める。
 健太郎に抱かれ、隅々まで『研がれた』あの夜。自分の身体の「隙間」を全て見抜かれ、快感で満たされた感覚。それを今、眼前の巨兵の岩肌に重ね合わせる。

「(健太郎殿……貴殿の指先が、某を解き放ったように……この刃で、理を断ち切るっ!)」

 桜花の瞳が、白銀の光を放つ。
 突進してくるゴーレムの懐へ、自ら吸い込まれるように潜り込む。
 
「――秘剣・雪月花、……『朔(さく)』!!」

 一閃。

 今度は弾かれること無く、岩の核を、そしてゴーレムの存在そのものを真っ二つに両断した。
 断末魔の霧散と共に、火山の汚染が急速に晴れ、本来の姿へと浄化されていく。

「見事。……おお、これは!?」

 村正の驚愕の視線の先で、桜花の肉体が光に包まれた。
 溢れ出す魔力が彼女の幼い輪郭を書き換え、瑞々しくもたわわな曲線を描き出す。
 光が収まった時、そこに立っていたのは――。

「……健太郎殿。某、少しは『器』が大きくなれましたでしょうか」

 制服の隙間を埋めるように発育した胸元、長く伸びたしなやかな四肢。
 高校生ほどの美しい少女へと第三形態への進化を遂げた桜花だった。

「ガハハハ! 見ておれ桜花、この空気、この熱量! これこそが本来の霊峰の姿よ!」

 村正が声を張り上げると同時に、黒い霧に包まれていた火山の深部は、眩いばかりの紅蓮の輝きを取り戻した。
アビス・ゴーレムが守護(あるいは阻害)していた『古の鍛冶場』が、数百年ぶりの浄化を終え、その全貌を露わにする。
 同時に、浄化の余波は周囲の岩壁をも作り替えていった。
 どろりと溶け落ちた黒汚の岩肌の奥から、七色に煌めく結晶体や、重厚な金属光沢を放つ鉱脈が、まるで芽吹くように次々と顔を出す。

「……村正殿、あれを! あんなに澄んだ魔力を持つ鉱石、某(それがし)は見たことがござらぬ!」

 進化したばかりの桜花が、驚きに瞳を輝かせ、指を差す。
そこには、火山の熱を凝縮したような最高品質の『焔霊銀(フレイム・ミスリル)』や、神の武具の芯材に使われるという『オリハルコン・ノード』が、剥き出しのまま採掘を待っていた。

「よぉし! 健太郎の奴が神殿で世界を繋いでおる間に、ワシらは最高級の素材を掻き集めるぞ! この『研ぎあがった』ばかりの山なら、伝説の神金(しんきん)すら眠っておるはずじゃ!」

 村正は腰の道具袋から、使い込まれた、だが恐ろしく鋭利な『採掘用ピック』を取り出した。それはただのツルハシではない。硬い岩肌を「斬る」のではなく、その結合部を「解く」ために村正が自ら打った逸品だ。

「桜花、お主も手伝え! 進化したその『器』で、大地の声を聴くのじゃ! 最も熱く、最も鋭い石を……健太郎に叩きつけてやるための極上の素材を掘り出すぞ!」

「御意! 某の新たな力、この採掘に捧げまする!」

 高校生姿へと成長し、溢れんばかりの魔力を湛えた桜花が、雪月花の柄を媒介にして大地の脈動を探る。
 キンッ、キンッ、という清らかな打撃音が、浄化された火山帯に響き渡る。
 それは、新たな「神話」を鍛え上げるための、職人たちの祝奏(セレブレーション)だった。
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