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第九章 ライバル達
第216話: 【彩華】ヴォルガの湯煙、職人の残り香
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神域ヴォルガ――。
かつては清浄な川が流れ、極上の温泉が湧き出ていたこの地も、今はアビスの「黒い澱み」に沈んでいた。だが、その濁流を、鮮やかな「五色の布」が切り裂く。
「……ハルト、行くわよ。この濁った景色は、私の趣味じゃないわ」
「はいっ、茉莉様! ボクが必ず、茉莉様の歩く道を清めてみせます!」
そこにいるのは、特殊生産職『色彩調律師』の頂点に立つ美女、茉莉。
現実では27歳の、憂いを帯びた妖艶な染物職人である彼女は、ゲーム内でもその伝統の技を振るう。彼女が手に持つのは、自ら染め上げた魂の布を用いた扇だ。
襲い来るアビスの魔物たちを、茉莉は舞うような身のこなしで「いなし」、その扇から放たれる色彩の魔力で浄化していく。そして、彼女の傍らで懸命に呪符を操るのは、扇の武器精霊――ハルトだ。
ハルトは一度「生まれ変わった」ばかりであり、現在はまだ第一形態。
茉莉の趣味が色濃く反映された、あどけないショタ系の美少年の姿をした彼は、自分を顕現させてくれた主を「茉莉様」と呼び、慕っている。
「急急如律令! ……うぅ、茉莉様、あっちからも来ますっ!」
まだ第一形態ゆえに力は未熟だが、ハルトは懸命に陰陽道の呪印を展開し、茉莉を守る盾となる。
その健気な姿を見つめ、茉莉は艶やかに微笑んだ。
「いい子ね、ハルト。……色彩強化(カラー・ブースト)。その幼い身体に、私の色を乗せてあげるわ」
茉莉が扇を翻すと、極彩色の魔力糸がハルトを包み込む。茉莉の「色」を得たハルトの陰陽術は、第一形態とは思えぬほどの強度を見せ、ヴォルガを蝕む深淵を次々と塗り替えていく。
「(健太郎さん……貴方の創る『銀糸』なら、もっと鮮やかにこの地を縫い止めるのでしょうね……)」
茉莉は遠く離れた地にいる健太郎の、妥協を許さない職人気質を思い出す。
彼女が認めた唯一の男への想いを筆に乗せるように、彼女はヴォルガの景色を染め直していく。
浄化の光が川の底に届いた瞬間、死んでいた源泉が熱い鼓動を再開し、清らかな川のせせらぎが戻り始めた。
「ふふ……いい色になってきたわ。これなら、あの人(健太郎)に見せても恥ずかしくないわね」
浄化された温泉街に立ち上る、七色の湯煙。
ヴォルガの再生は、健太郎が進める世界の「メンテナンス」を助ける、大いなる水脈となって流れ出した。
浄化の虹がヴォルガの空に消え、あたりには本来の、しっとりと肌に吸い付くような清浄な湯煙が漂い始めていた。
「はぁ、はぁ……。茉莉様、ボク……ちゃんと、お役に立てましたか?」
第一形態の幼い身体を小刻みに震わせ、ハルトが駆け寄ってくる。
呪符を使い果たし、魔力が枯渇しかけているその瞳には、不安と、主への深い忠誠心が混じり合っていた。
「ええ、よく頑張ったわ。ハルト、こっちへいらっしゃい」
茉莉は艶やかな笑みを浮かべ、源泉が湧き出す岩場の影に腰を下ろすと、ハルトをその柔らかな膝の間へと招き入れた。
「あ……茉莉様……」
「お疲れ様。貴方のその幼い頑張りが、このヴォルガを救ったのよ。……ご褒美をあげなきゃね」
茉莉の白く細い指先が、ハルトの項から背中にかけて、ゆっくりと、そして吸い付くように滑り出した。現実の職人仕事で鍛えられた彼女の指は、精霊であるハルトの魔力回路の「滞り」を完璧に把握している。
「ひ……ぅ、あ……っ、茉莉、さま……っ」
茉莉の『色彩調律』を応用した指先が、ハルトの未熟な第一形態の「核」を優しく、だが執拗に愛撫する。
指が通るたび、ハルトの肌には極彩色の紋様が浮かび上がり、枯渇していた魔力が、甘美な痺れと共に再充填されていく。
「ふふ、可愛い声。……ハルト、貴方のこの純粋な色は、もっと深く、私で染め上げてあげないと……」
茉莉はハルトの耳元で憂いを帯びた吐息を漏らし、その幼い首筋に顔を埋めた。
健太郎という「本物の職人」を認めているからこそ、彼女は自身の精霊であるハルトを、極上の工芸品のように、自らの愛撫で完璧に「仕上げ」ようとしていた。
「あ、あぁ……っ! 茉莉様の指……熱くて、とろとろになっちゃう……っ! 茉莉様ぁ……っ!」
温泉の熱気と、茉莉の放つ妖艶な香りが混ざり合う。
ハルトは主の腕の中で、その小さな身体を弓なりに反らせ、絶頂にも似た魔力の奔流に身を委ねるのだった。
かつては清浄な川が流れ、極上の温泉が湧き出ていたこの地も、今はアビスの「黒い澱み」に沈んでいた。だが、その濁流を、鮮やかな「五色の布」が切り裂く。
「……ハルト、行くわよ。この濁った景色は、私の趣味じゃないわ」
「はいっ、茉莉様! ボクが必ず、茉莉様の歩く道を清めてみせます!」
そこにいるのは、特殊生産職『色彩調律師』の頂点に立つ美女、茉莉。
現実では27歳の、憂いを帯びた妖艶な染物職人である彼女は、ゲーム内でもその伝統の技を振るう。彼女が手に持つのは、自ら染め上げた魂の布を用いた扇だ。
襲い来るアビスの魔物たちを、茉莉は舞うような身のこなしで「いなし」、その扇から放たれる色彩の魔力で浄化していく。そして、彼女の傍らで懸命に呪符を操るのは、扇の武器精霊――ハルトだ。
ハルトは一度「生まれ変わった」ばかりであり、現在はまだ第一形態。
茉莉の趣味が色濃く反映された、あどけないショタ系の美少年の姿をした彼は、自分を顕現させてくれた主を「茉莉様」と呼び、慕っている。
「急急如律令! ……うぅ、茉莉様、あっちからも来ますっ!」
まだ第一形態ゆえに力は未熟だが、ハルトは懸命に陰陽道の呪印を展開し、茉莉を守る盾となる。
その健気な姿を見つめ、茉莉は艶やかに微笑んだ。
「いい子ね、ハルト。……色彩強化(カラー・ブースト)。その幼い身体に、私の色を乗せてあげるわ」
茉莉が扇を翻すと、極彩色の魔力糸がハルトを包み込む。茉莉の「色」を得たハルトの陰陽術は、第一形態とは思えぬほどの強度を見せ、ヴォルガを蝕む深淵を次々と塗り替えていく。
「(健太郎さん……貴方の創る『銀糸』なら、もっと鮮やかにこの地を縫い止めるのでしょうね……)」
茉莉は遠く離れた地にいる健太郎の、妥協を許さない職人気質を思い出す。
彼女が認めた唯一の男への想いを筆に乗せるように、彼女はヴォルガの景色を染め直していく。
浄化の光が川の底に届いた瞬間、死んでいた源泉が熱い鼓動を再開し、清らかな川のせせらぎが戻り始めた。
「ふふ……いい色になってきたわ。これなら、あの人(健太郎)に見せても恥ずかしくないわね」
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ヴォルガの再生は、健太郎が進める世界の「メンテナンス」を助ける、大いなる水脈となって流れ出した。
浄化の虹がヴォルガの空に消え、あたりには本来の、しっとりと肌に吸い付くような清浄な湯煙が漂い始めていた。
「はぁ、はぁ……。茉莉様、ボク……ちゃんと、お役に立てましたか?」
第一形態の幼い身体を小刻みに震わせ、ハルトが駆け寄ってくる。
呪符を使い果たし、魔力が枯渇しかけているその瞳には、不安と、主への深い忠誠心が混じり合っていた。
「ええ、よく頑張ったわ。ハルト、こっちへいらっしゃい」
茉莉は艶やかな笑みを浮かべ、源泉が湧き出す岩場の影に腰を下ろすと、ハルトをその柔らかな膝の間へと招き入れた。
「あ……茉莉様……」
「お疲れ様。貴方のその幼い頑張りが、このヴォルガを救ったのよ。……ご褒美をあげなきゃね」
茉莉の白く細い指先が、ハルトの項から背中にかけて、ゆっくりと、そして吸い付くように滑り出した。現実の職人仕事で鍛えられた彼女の指は、精霊であるハルトの魔力回路の「滞り」を完璧に把握している。
「ひ……ぅ、あ……っ、茉莉、さま……っ」
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「ふふ、可愛い声。……ハルト、貴方のこの純粋な色は、もっと深く、私で染め上げてあげないと……」
茉莉はハルトの耳元で憂いを帯びた吐息を漏らし、その幼い首筋に顔を埋めた。
健太郎という「本物の職人」を認めているからこそ、彼女は自身の精霊であるハルトを、極上の工芸品のように、自らの愛撫で完璧に「仕上げ」ようとしていた。
「あ、あぁ……っ! 茉莉様の指……熱くて、とろとろになっちゃう……っ! 茉莉様ぁ……っ!」
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