[R18]2度目の人生でスローライフ?ハーレムだっていいじゃないか

白猫 おたこ

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第十章 未踏の地へ

第226話: 【一服】港町の賑わいと、革職人の休息

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 『翡翠の入り江』を目前にした健太郎たちだったが、本格的な拠点作りに着手する前に、物資の補充と情報の整理を兼ねて、街道沿いにある中規模の港町『カモメの止まり木』へ立ち寄ることにした。
 アイリスの隠蔽魔法で姿を変えた一行が町に足を踏み入れると、そこは再起動を祝うNPCたちと、ログインしたばかりの「第二陣」のプレイヤーたちでごった返していた。

「……すごい活気やな。神殿の周りとはまた違う、お祭り騒ぎや」

 恵梨香が物珍しそうに周囲を見渡す。健太郎はダイブギアのログを確認しながら、町の喧騒を静かに歩いた。

「ああ。世界が動き出した証拠だな。……よし、ここで一度解散して、必要な消耗品を揃えよう。その後、今日は一旦ログアウトだ。現実(あっち)の体も休めないとな」

 その言葉に、結衣が柔らかく微笑んで頷く。
「そうですね、健太郎さん。夕食は何が良いですか? 今日は私が腕を振るいますから。……あ、お風呂も先に沸かしておきますね」

 同棲生活の甘い会話が自然と漏れる。桃子と恵梨香が「いいなぁ、結衣さんばっかり!」と冗談めかして騒ぐ中、健太郎は町の共有倉庫に荷物を預け、宿屋の片隅で静かにログアウトシークエンスを開始した。

「……主(あるじ)、また明日。現実の世界でも、貴方の平穏を祈っております」

 アイリスの祈りにも似た声を見送りに、健太郎の視界はゆっくりと暗転していった。

現実世界:革の香りと結衣の温もり

 ダイブギアを外した健太郎は、48歳の男としての重みを少しだけ感じながら、使い慣れたリビングのソファで一息ついた。
 キッチンからは、トントントン、と軽快な包丁の音が響いてくる。
結衣が夕飯の支度をしているのだ。現実世界での健太郎は、長年使い込んだ道具で動物の皮に命を吹き込む革職人。
そして結衣は、彼が通い詰めた素材屋で、誰よりも真摯に「良い皮」を提案してくれた最高のパートナーだった。

「健太郎さん、お疲れ様です。すぐできますから、先にお風呂にしますか? それともご飯?」

 振り返った結衣の笑顔は、夕日のように温かい。

■ 職人の食卓:結衣の手料理と語らい
 食卓に並んだのは、健太郎の好物である肉じゃがと、旬の魚の塩焼き。

「……美味いな。結衣、お前の飯を食べると、本当に帰ってきたって実感が湧くよ」

「ふふ、良かったです。素材屋で健太郎さんを初めて見た時、あんなに真剣な目で革の一枚一枚を吟味する人に、私は恋をしたんですよ」

「……恥ずかしいな。俺はただ、自分の仕事に嘘をつきたくないだけだったんだが」

 二人は穏やかに箸を進める。結衣は健太郎の手をそっと握り、少しだけ真剣な表情で言った。

「私、健太郎さんと結婚したいって本気で思っています。……でも、桃子ちゃんや恵梨香ちゃんとの関係も、今のままでいい。みんなで健太郎さんを支えていきたいんです」

■ 湯煙の中の誓い:お風呂でのひととき

 食後、二人は一緒にお風呂へ。
湯気で上気した結衣の肌は、ゲーム内のアバターよりもさらに生々しく温かい。

「健太郎さん、背中、流しますね」

 石鹸の泡が、健太郎の鍛えられた、だが少しずつ衰えも知る背中を包んでいく。
結衣は愛おしそうに、彼の肩に自分の顔を寄せた。

「この仕事が一段落したら、ちゃんと籍を入れよう」

 健太郎の言葉に、結衣は嬉しそうに涙を零し、彼の中に深く沈み込んだ。

「……しかしな、結衣。本当に俺で良いのか?」

 湯気の中に立ち込める入浴剤の香りと、背中に伝わる結衣の柔らかな温もり。
健太郎は、自らの不器用な指先を見つめながら、心の奥底にある不安を吐露した。
 革職人として、一つ一つの工程を疎かにせず生きてきた自負はある。
だが、48歳という年齢、そして結衣のような若く輝かしい未来を持つ女性が、自分のような無骨な男に縛られていいのかという問いが、時折胸をかすめるのだ。
 健太郎の問いかけに、結衣が背中を洗っていた手を止めた。

「……健太郎さん、それ本気で言ってますか?」

 結衣は健太郎の肩に顎を乗せ、鏡越しに彼の目を見つめた。
その瞳は、冗談を許さないほど真っ直ぐで、澄んでいる。

「私は、健太郎さんのあの指先が好きなんです。良い革を求めて妥協せず、命を吹き込むように丁寧に針を通す……あの無骨で、誠実な指先。素材屋でそれを見ていた時から、私の心は決まってました。三神健太郎さん、貴方じゃないとダメなんです」

 結衣の腕が、健太郎の首筋にきつく回される。

「48歳? だから何ですか。おじさん? 最高の褒め言葉ですよ。大人の余裕があって、包容力があって、それでいてあんなに激しく……私を愛してくれる。……桃子ちゃんや恵梨香ちゃんが放っておかない理由、健太郎さん自身が一番分かってないんだから」

 結衣は少しだけ拗ねたように、彼の耳たぶを甘噛みした。

「結婚しても、彼女たちとの関係を続けるって言ってくれたこと……本当は少しだけ嫉妬しちゃいますけど。でも、それも健太郎さんの『慈愛』なんですよね。みんなを救って、みんなを幸せにしようとする……そんな欲張りで優しい健太郎さんに、私は一生ついていくって決めたんです」

 湯気の中で、健太郎は深く息を吐いた。迷いを断ち切るように、彼女の細い腕の上に自分の手を重ねる。

「……そうか。分かったよ、結衣。お前がそう言ってくれるなら、俺は俺にできる全てで、お前たちを幸せにする。……革職人として、一針一針、俺たちの人生を縫い合わせていこう」

「はい、健太郎さん。……大好きですよ」

 二人の影が、湯煙の中で重なり合う。現実世界での静かな、しかし確かな誓いが、明日の仮想世界での新たな一歩に、揺るぎない力を与えていた。

「……更に、増えたらどうする? 結衣、俺は……自分でも呆れるほど、来るものを拒めない質(たち)らしい」

 健太郎は、湯船の中で少しだけ情けない声を出し、苦笑いを浮かべた。
 世界を救い、英雄としての名声を得てしまった今、彼を慕う者は桃子や恵梨香、アイリスだけにとどまらない予感があった。48歳の革職人に惹かれる奇特な娘が、今後も現れないとは言い切れない。
 結衣は一瞬、背中を流す手を止めたが、すぐにクスクスと楽しげに笑い出した。

「ふふ、健太郎さんらしい悩みですね。……いいですよ、増えても」

「……いいのか?」

 意外な答えに、健太郎が驚いて振り返る。結衣は上気した顔で、悪戯っぽく微笑んだ。

「健太郎さんの『慈愛』が、一枚の革を丁寧に鞣(なめ)すように、どんな女性の心も解きほぐしてしまうのは分かってますから。……それにね、健太郎さん。貴方は、増えた分だけ責任を取ろうとして、もっともっと頑張っちゃう人でしょ? 職人として、一人一人の人生を完璧に仕上げようとする……そんな貴方の不器用な誠実さを、私は信じてるんです」

 結衣は健太郎の胸に顔を寄せ、その逞しい腕を抱きしめた。

「ただし、条件があります。……誰が増えても、私が『正妻』。健太郎さんが一番に帰ってくる場所は、私の隣。それさえ守ってくれるなら、私は何人だって受け入れますよ。……むしろ、賑やかな方が健太郎さんの活力になるかもしれませんしね」

「結衣……お前は、本当に強いな」

「強くさせたのは、健太郎さんですよ。……さあ、あんまり長湯してるとのぼせちゃいます。続きは、ベッドでゆっくり……聞かせてくださいね?」

 結衣の甘い誘いに、健太郎は覚悟を決めたように頷いた。
 来るべき百万人のプレイヤー、そして新たな出会い。何人が加わろうとも、この「一針」の重みは変えない。革職人としての意地と、一人の男としての愛を、彼はその身に刻みつけた。
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