月見里さん家の十人兄妹

冰彗

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一章

一話

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いつも通りの日曜日の朝。いつもと同じように八人の兄弟で思い思いに家の中で過ごしていた。

長男の夕吏ゆうりはリビングのソファに座って好きなライトノベルを読んでおり、二男のよむと三男のうたは昼食の片付けをしており、四男のなおは詠の書いたボーイズラブ小説を読んでおり、五男のそうは自室で漫画の勉強をしており、六男の星那せなと七男の琥珀こはくは末っ子のほたると一緒に庭で遊んでいた。

両親は仕事が忙しく、滅多に家に帰ってこない。だからなのか家の事をよくやるのは二男の詠と三男の詩だ。詠と詩は双子で容姿はとてもよく似ている。短い黒髪に碧色の瞳をしているが髪型は二人とも違う。詠は癖っ毛で前髪は目元よりも下まで伸びていて、詩は短い黒髪のボブだ。風呂上がりでもない限り見分けはつく。

刹那、ピンポーンと玄関のチャイムが家中に鳴り響いた。

「「はーい!」」

チャイムが鳴ってすぐに返事をしたのはキッチンで皿洗いをしていた詠と詩だ。詩は皿を拭いていただけなので皿を置いてすぐに玄関に向かった。

玄関のドアを開けると詩はクスッと笑みをこぼした。

「なんでチャイム鳴らしたのさ。お父さん、お母さん」

家のチャイムを鳴らしたのは兄弟の両親だったのだ。

「久しぶり、詩」

母親はにこやかに微笑んで自身より身長が高い詩の頭を優しく撫でた。詩は照れ臭そうに自身の頬を指先で掻いた。

「もう、子ども扱いしないでよ。っていうか珍しいね、お父さんたちが揃って帰ってくるなんて」

詩はそう言うと自分の頭を撫でている母親の手をやんわりと払い落とした。両親二人が揃って帰ってくるなんて少し、いやかなり珍しい為気になったらしく詩はそう問い掛けた。

「少しね、大事なお話があるから帰ってきたの。今日、みんないるかしら?」
「みんないるけど、大事な話って?」

大事な話と聞いて詩はきょとんとした表情を浮かべて首を傾げた。そんな詩を見て母親と父親はにこやかに微笑みを浮かべるだけだった。

-------❁ ❁ ❁-------

兄弟全員リビングに集まりソファに腰掛けていた。沈黙が流れる中、最初に話し始めたのは母親だった。

「今日はね、大事なお話があって帰ってきたの」

母親は笑みを浮かべたままそう言うと膝の上に乗せていた仕事用鞄からクリアファイルを二つ取り出して子どもたちに見えるようにテーブルに置いた。

兄弟全員が二つのクリアファイルを覗き込むと長男の夕吏は顔を顰め母親を見た。

「母さん、これって……」
「夕吏は分かったみたいね」

物分りが良くて助かるわ、と母親は付け加えるように言った。次いで詠と詩、雫と霜も理解したようだった。

「おかあさん、これどういうこと……?」

理解が出来なかった末っ子のほたるはきょとんとした表情を浮かべて小首を傾げた。その様子が可愛らしく母親は大事な話の最中だというのにクスクスと笑みをこぼしてほたるの頭を優しく撫でた。

「簡単に言うとね、ほたるにお兄ちゃんが一人と妹が一人増えるのよ」

母親はほたるの頭を優しく撫でながらそう言った。母親の言葉を聞いた琥珀は嬉しそうな表情を浮かべて母親に近付いた。

「ぼく、お兄ちゃんになるの?」
「そうよ」
「やったぁ!」

琥珀は嬉しそうに笑みを浮かべて母親に抱きついた。

嬉しそうな表情を浮かべる者もいれば神妙な面持ちをしている者もいた。

「お母さん、この子たちって」

詩が母親に問い掛けるとそれまでずっと黙っていた父親が口を開いた。

「そうだな。お前たちと同じような境遇の子どもたちだ」

父親の言葉を聞いて兄弟の中でも温厚な長男の夕吏が小さく舌打ちをした。

「今回はどんな理由なわけ?」

夕吏が問い掛けると父親は少し悲しそうな表情を浮かべて話し始めた。
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