身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん

文字の大きさ
6 / 56
第二章 幸せな領地生活

第六話 城中の笑顔と、私の居場所

しおりを挟む
 翌朝、私はこれまでになく清々しい気分で目を覚ました。アレクシス様から「最愛の妻」として認められ、実家とも完全に決別したのだ。

(よし、今日からはもっと、このお城のために頑張らなきゃ!)

 私は気合を入れ直し、昨日新しく用意してもらった動きやすい作業着ドレスに着替え、バケツを手に取った。まずは、城の心臓部ともいえる広間からお掃除を開始することにした。

「ふふーん、ふふふーん♪」

 鼻歌を歌いながら、床を雑巾で撫でていく。すると、昨日のアレクシス様の言葉を思い出したせいか、私の身体から昨日よりもずっと温かくて強い光の波・・が溢れ出した。

 シュアァァ……ッ!

 光は廊下を走り、階段を駆け上がり、城の隅々まで一気に浸透していく。それはまるで、城そのものが深呼吸をしたかのようだった。

「な、なんだこの光は……!?」 「見て! 鎧のサビが落ちて、新品みたいに輝き出したわ!」

 城の至る所で、使用人たちの驚きと歓喜の声が上がる。呪いの瘴気に当てられて顔色の悪かったメイドたちの頬には赤みが差し、腰を痛めていた老いた庭師は「身体が軽い!」と叫びながら踊り出している。

 私が雑巾を一拭きするたびに、城全体が聖域・・へと塗り替えられていく。

「……おはよう、レティシア。朝から随分と張り切っているな」

 背後から響いたのは、凛とした、けれどどこか甘さを含んだ低い声。振り返ると、そこには仮面を外したままのアレクシス様が立っていた。

「あ、アレクシス様! おはようございます。……あの、またお掃除しすぎちゃいましたか?」

 私が不安になって首を傾げると、アレクシス様は少しだけ目を細め、愛おしそうに私の頭を撫でた。

「いや、素晴らしい目覚めだった。……見てみろ。城の外まで光が届いているぞ」

 彼に促されて窓の外を見ると、城の周囲を覆っていた黒い霧が完全に晴れ、数十年ぶりに青空・・が広がっていた。枯れ果てていた中庭の土からは、小さな花の芽が次々と顔を出している。

「レティシア。君はただ掃除をしているつもりかもしれないが……君が歩く場所はすべて、呪いから解放される。君は、このヴォルフェン領の希望・・そのものだ」

「そんな……。私はただ、アレクシス様に気持ちよく過ごしてほしくて……」

 本気でそう告げると、アレクシス様は不意を突かれたように目を見開き、それから片手で顔を覆った。

「……っ。無自覚にそういうことを言うのは、反則だ」 「えっ、何か悪いこと言いましたか?」 「……いや、いい。とにかく、これからは君の健康も第一だ。セバス! 彼女に専属のメイドと、最高級の茶葉を用意しろ!」

 慌てたように指示を出すアレクシス様に、私はクスッと笑ってしまった。実家では「無能」と石を投げられていた私が、ここでは「希望」と呼ばれ、こんなにも大切にされている。

 一方で、バーンズ伯爵家では――。 「臭いわ! どうして何度洗っても、家の中がドブ臭いのよ!」ミランダが、黒いカビが繁殖し続ける自室で、絶叫を上げていた。かつてレティシアが守っていたはずの屋敷は、今や瘴気の掃き溜め・・へと変わりつつある。

 けれど、もう私には関係のないこと。私は、私を愛してくれるこの場所を、世界一綺麗にするんだから!


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
最後まで読んでいただきありがとうございます! 「続きが気になる!」「面白そう!」と思っていただけたら、 【お気に入り登録】と【感想やいいね】をいただけると執筆の励みになります!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました

鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」 そう言ったのは、王太子アレス。 そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。 外交も財政も軍備も―― すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。 けれど功績はすべて王太子のもの。 感謝も敬意も、ただの一度もない。 そして迎えた舞踏会の夜。 「便利だったが、飾りには向かん」 公開婚約破棄。 それならば、とレイナは微笑む。 「では業務も終了でよろしいですね?」 王太子が望んだ通り、 彼女は“確認”をやめた。 保証を外し、責任を返し、 そして最後に―― 「ご確認を」と差し出した書類に、 彼は何も読まずに署名した。 国は契約で成り立っている。 確認しない者に、王の資格はない。 働きたくない公爵令嬢と、 責任を理解しなかった王太子。 静かな契約ざまぁ劇、開幕。 ---

婚約破棄すると言われたので、これ幸いとダッシュで逃げました。殿下、すみませんが追いかけてこないでください。

桜乃
恋愛
ハイネシック王国王太子、セルビオ・エドイン・ハイネシックが舞踏会で高らかに言い放つ。 「ミュリア・メリッジ、お前とは婚約を破棄する!」 「はい、喜んで!」  ……えっ? 喜んじゃうの? ※約8000文字程度の短編です。6/17に完結いたします。 ※1ページの文字数は少な目です。 ☆番外編「出会って10秒でひっぱたかれた王太子のお話」  セルビオとミュリアの出会いの物語。 ※10/1から連載し、10/7に完結します。 ※1日おきの更新です。 ※1ページの文字数は少な目です。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年12月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、番外編を追加投稿する際に、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

地味で器量の悪い公爵令嬢は政略結婚を拒んでいたのだが

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 心優しいエヴァンズ公爵家の長女アマーリエは自ら王太子との婚約を辞退した。幼馴染でもある王太子の「ブスの癖に図々しく何時までも婚約者の座にいるんじゃない、絶世の美女である妹に婚約者の座を譲れ」という雄弁な視線に耐えられなかったのだ。それにアマーリエにも自覚があった。自分が社交界で悪口陰口を言われるほどブスであることを。だから王太子との婚約を辞退してからは、壁の花に徹していた。エヴァンズ公爵家てもつながりが欲しい貴族家からの政略結婚の申し込みも断り続けていた。このまま静かに領地に籠って暮らしていこうと思っていた。それなのに、常勝無敗、騎士の中の騎士と称えられる王弟で大将軍でもあるアラステアから結婚を申し込まれたのだ。

【完結】虐げられて自己肯定感を失った令嬢は、周囲からの愛を受け取れない

春風由実
恋愛
事情があって伯爵家で長く虐げられてきたオリヴィアは、公爵家に嫁ぐも、同じく虐げられる日々が続くものだと信じていた。 願わくば、公爵家では邪魔にならず、ひっそりと生かして貰えたら。 そんなオリヴィアの小さな願いを、夫となった公爵レオンは容赦なく打ち砕く。 ※完結まで毎日1話更新します。最終話は2/15の投稿です。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

【完結】婚約破棄、その後の話を誰も知らない

あめとおと
恋愛
奇跡によって病を癒す存在――聖女。 王国は長年、その力にすべてを委ねてきた。 だがある日、 誰の目にも明らかな「失敗」が起きる。 奇跡は、止まった。 城は動揺し、事実を隠し、 責任を聖女ひとりに押しつけようとする。 民は疑い、祈りは静かに現実へと向かっていった。 一方、かつて「悪役」として追放された令嬢は、 奇跡が失われる“その日”に備え、 治癒に頼らない世界を着々と整えていた。 聖女は象徴となり、城は主導権を失う。 奇跡に縋った者たちは、 何も奪われず、ただ立場を失った。 選ばれなかった者が、世界を救っただけの話。 ――これは、 聖女でも、英雄でもない 「悪役令嬢」が勝ち残る物語。

【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。

みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」 魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。 ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。 あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で一人の騎士と運命的な出会いをする。 【2024年3月16日完結、全58話】

完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています

オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。 ◇◇◇◇◇◇◇ 「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。 14回恋愛大賞奨励賞受賞しました! これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。 ありがとうございました! ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。 この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)

処理中です...