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第二章 幸せな領地生活
第六話 城中の笑顔と、私の居場所
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翌朝、私はこれまでになく清々しい気分で目を覚ました。アレクシス様から「最愛の妻」として認められ、実家とも完全に決別したのだ。
(よし、今日からはもっと、このお城のために頑張らなきゃ!)
私は気合を入れ直し、昨日新しく用意してもらった動きやすい作業着に着替え、バケツを手に取った。まずは、城の心臓部ともいえる広間からお掃除を開始することにした。
「ふふーん、ふふふーん♪」
鼻歌を歌いながら、床を雑巾で撫でていく。すると、昨日のアレクシス様の言葉を思い出したせいか、私の身体から昨日よりもずっと温かくて強い光の波が溢れ出した。
シュアァァ……ッ!
光は廊下を走り、階段を駆け上がり、城の隅々まで一気に浸透していく。それはまるで、城そのものが深呼吸をしたかのようだった。
「な、なんだこの光は……!?」 「見て! 鎧のサビが落ちて、新品みたいに輝き出したわ!」
城の至る所で、使用人たちの驚きと歓喜の声が上がる。呪いの瘴気に当てられて顔色の悪かったメイドたちの頬には赤みが差し、腰を痛めていた老いた庭師は「身体が軽い!」と叫びながら踊り出している。
私が雑巾を一拭きするたびに、城全体が聖域へと塗り替えられていく。
「……おはよう、レティシア。朝から随分と張り切っているな」
背後から響いたのは、凛とした、けれどどこか甘さを含んだ低い声。振り返ると、そこには仮面を外したままのアレクシス様が立っていた。
「あ、アレクシス様! おはようございます。……あの、またお掃除しすぎちゃいましたか?」
私が不安になって首を傾げると、アレクシス様は少しだけ目を細め、愛おしそうに私の頭を撫でた。
「いや、素晴らしい目覚めだった。……見てみろ。城の外まで光が届いているぞ」
彼に促されて窓の外を見ると、城の周囲を覆っていた黒い霧が完全に晴れ、数十年ぶりに青空が広がっていた。枯れ果てていた中庭の土からは、小さな花の芽が次々と顔を出している。
「レティシア。君はただ掃除をしているつもりかもしれないが……君が歩く場所はすべて、呪いから解放される。君は、このヴォルフェン領の希望そのものだ」
「そんな……。私はただ、アレクシス様に気持ちよく過ごしてほしくて……」
本気でそう告げると、アレクシス様は不意を突かれたように目を見開き、それから片手で顔を覆った。
「……っ。無自覚にそういうことを言うのは、反則だ」 「えっ、何か悪いこと言いましたか?」 「……いや、いい。とにかく、これからは君の健康も第一だ。セバス! 彼女に専属のメイドと、最高級の茶葉を用意しろ!」
慌てたように指示を出すアレクシス様に、私はクスッと笑ってしまった。実家では「無能」と石を投げられていた私が、ここでは「希望」と呼ばれ、こんなにも大切にされている。
一方で、バーンズ伯爵家では――。 「臭いわ! どうして何度洗っても、家の中がドブ臭いのよ!」ミランダが、黒いカビが繁殖し続ける自室で、絶叫を上げていた。かつてレティシアが守っていたはずの屋敷は、今や瘴気の掃き溜めへと変わりつつある。
けれど、もう私には関係のないこと。私は、私を愛してくれるこの場所を、世界一綺麗にするんだから!
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(よし、今日からはもっと、このお城のために頑張らなきゃ!)
私は気合を入れ直し、昨日新しく用意してもらった動きやすい作業着に着替え、バケツを手に取った。まずは、城の心臓部ともいえる広間からお掃除を開始することにした。
「ふふーん、ふふふーん♪」
鼻歌を歌いながら、床を雑巾で撫でていく。すると、昨日のアレクシス様の言葉を思い出したせいか、私の身体から昨日よりもずっと温かくて強い光の波が溢れ出した。
シュアァァ……ッ!
光は廊下を走り、階段を駆け上がり、城の隅々まで一気に浸透していく。それはまるで、城そのものが深呼吸をしたかのようだった。
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「……おはよう、レティシア。朝から随分と張り切っているな」
背後から響いたのは、凛とした、けれどどこか甘さを含んだ低い声。振り返ると、そこには仮面を外したままのアレクシス様が立っていた。
「あ、アレクシス様! おはようございます。……あの、またお掃除しすぎちゃいましたか?」
私が不安になって首を傾げると、アレクシス様は少しだけ目を細め、愛おしそうに私の頭を撫でた。
「いや、素晴らしい目覚めだった。……見てみろ。城の外まで光が届いているぞ」
彼に促されて窓の外を見ると、城の周囲を覆っていた黒い霧が完全に晴れ、数十年ぶりに青空が広がっていた。枯れ果てていた中庭の土からは、小さな花の芽が次々と顔を出している。
「レティシア。君はただ掃除をしているつもりかもしれないが……君が歩く場所はすべて、呪いから解放される。君は、このヴォルフェン領の希望そのものだ」
「そんな……。私はただ、アレクシス様に気持ちよく過ごしてほしくて……」
本気でそう告げると、アレクシス様は不意を突かれたように目を見開き、それから片手で顔を覆った。
「……っ。無自覚にそういうことを言うのは、反則だ」 「えっ、何か悪いこと言いましたか?」 「……いや、いい。とにかく、これからは君の健康も第一だ。セバス! 彼女に専属のメイドと、最高級の茶葉を用意しろ!」
慌てたように指示を出すアレクシス様に、私はクスッと笑ってしまった。実家では「無能」と石を投げられていた私が、ここでは「希望」と呼ばれ、こんなにも大切にされている。
一方で、バーンズ伯爵家では――。 「臭いわ! どうして何度洗っても、家の中がドブ臭いのよ!」ミランダが、黒いカビが繁殖し続ける自室で、絶叫を上げていた。かつてレティシアが守っていたはずの屋敷は、今や瘴気の掃き溜めへと変わりつつある。
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