身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん

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第四章:没落家族の再来と、真の幸福編

第四十六話 伝説の結婚式(前編)

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 ヴォルフェン領の夜明けは、かつてないほどの歓喜に包まれていた。
 城下町の街道には、隣国ガザリア帝国から運ばれた色とりどりの花々が敷き詰められ、空には守護龍である地龍と天龍が、祝福の咆哮を上げながら悠然と舞っている。

「見て! あれが伝説の聖女様がお住まいのヴォルフェン城よ!」
「なんて清らかな空気なんだ。ここにいるだけで、長年の病が治りそうな気がするぞ」

 世界中から集まった巡礼者や貴族たちは、塵一つ落ちていない街の美しさに驚嘆の声を上げた。レティシアがこれまでコツコツと磨き上げ、領民たちと共に整えてきたこの地は、もはや地上の楽園と化していた。

 そんな喧騒の中心、公爵城の最上階。
 そこには、大陸最高の職人たちが心血を注いで作り上げた「光のウェディングドレス」を纏ったレティシアの姿があった。

「……まあ、なんてお綺麗なのでしょう……」

 侍女たちが思わず涙を浮かべるほど、その姿は神々しかった。
 純白のシルクには、微細な魔石の粉末が織り込まれ、レティシアの動きに合わせて虹色の光を放つ。彼女が歩くたびに、床からは微かな花の香りが立ち上り、周囲の空間そのものが浄化されていくかのようだった。

 そこへ、漆黒の礼装に身を包んだアレクシスが現れた。
 呪いの消えた彼の顔立ちは、以前よりもずっと穏やかで、しかし射抜くような黄金の瞳の鋭さは健在だ。

 ――アレクシスは、部屋に入った瞬間、固まった。

「……アレクシス様?」

 レティシアが少し照れくさそうに微笑み、首を傾げる。
 数秒の沈黙の後、アレクシスは音もなく彼女の元へ歩み寄り、背後に控えていた侍女や職人たちを氷のような視線で射抜いた。

「……全員、外に出ろ」

「えっ? ですが、閣下、まだベールの調整が……」

「出ろと言っている。……さもなくば、この城を今すぐ封鎖する」

 あまりの気迫に、侍女たちは悲鳴を上げんばかりに退散していった。二人きりになった室内で、アレクシスはレティシアの肩を抱き寄せ、その耳元で呻くように呟いた。

「……取りやめだ。結婚式は中止する」

「ええっ!? どうしてですか、アレクシス様!」

「これほど美しい君を、他の男たちの目に晒すなど、正気の沙汰ではない。……今すぐ地下の奥深くに君を隠し、俺一人だけで愛でるべきだと、俺の中の理性が叫んでいるんだ」

「も、もう! アレクシス様、また独占欲が爆発しているんですか?」

 レティシアは呆れながらも、彼の胸にそっと手を置いた。アレクシスの心臓は、まるで戦場にいる時のように激しく打ち鳴らされている。それは恐怖ではなく、彼女を愛しすぎるがゆえの昂ぶりだった。

「アレクシス様、見てください。窓の外に、あんなにたくさんの人たちが私たちの幸せを祝うために集まってくれています。……私が磨いてきたこの世界を、アレクシス様と一緒に笑顔で歩きたいんです」

 レティシアの真っ直ぐな瞳に見つめられ、アレクシスは観念したように深く溜息をついた。

「……君には勝てないな、レティシア。分かった。……ただし、誓え。式の最中、他の誰にもその微笑みを向けるな。君の笑顔は、俺だけの特権だ」

「ふふ、アレクシス様には、もっと特別な笑顔を後でたくさん差し上げますから」

 二人は手を取り合い、バルコニーへと向かった。
 扉が開かれた瞬間、万雷の拍手と祝福の歌声がヴォルフェン領全体を震わせる。
 伝説の結婚式は、今、至福の幕を開けた。

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 【第四十七話の予告】

式は最高潮へ。
しかし、大勢の参列者の中には、密かに「聖女の力」を我が物にしようと企む他国の密偵たちが紛れ込んでいました。
混乱を引き起こそうとする彼らに対し、レティシアが放ったのは、史上最大規模の「広域お掃除魔法」で……!?
悪意さえも感動に変える、奇跡の瞬間が訪れます!
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