身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん

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第四章:没落家族の再来と、真の幸福編

第五十話 世界をピカピカにしましょう

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 ヴォルフェン公爵領の中央広場には、歴史上類を見ない光景が広がっていた。
 各国の王族、聖職者、かつて敵対した者たち、そして数えきれないほどの領民たちが、一つの巨大な魔法陣を囲んでいる。その魔法陣の幾何学模様は、レティシアが数年かけて領地中を掃除し、整えてきた「清浄な龍脈」の結節点であった。

「レティシア、準備はいいか。……君が望むなら、俺の魔力のすべてを君に捧げよう」

 アレクシスが、レティシアの手を強く握りしめた。彼の瞳には、かつての孤独や絶望の影は微塵もなく、ただ愛する妻と、自分たちが守るべき未来への誇りだけが宿っている。

「はい、アレクシス様。……一人で掃除をするのは大変ですけれど、皆さんと一緒なら、どんな大きな汚れも怖くありません」

 レティシアは微笑み、足元でそわそわしているレオンとノエルの頭を優しく撫でた。

「レオン、ノエル。パパとママ、そして世界中のみんなと力を合わせるのよ。心のなかの『ピカピカ』を、遠くの街まで届けるイメージでね?」

「うん! ボク、パパの剣みたいに、悪いモヤモヤを全部やっつけるよ!」
「わたくしも、ママみたいにお花をいっぱい咲かせますわ!」

 小さな二人が魔法の箒と小さな木剣を掲げると、その無垢な心に呼応するように、魔法陣が淡く輝き始めた。

『……我ら龍族も、この歴史的瞬間の証人となろう』

 空を埋め尽くすほどの龍たちが、一斉に祝福の咆哮を上げる。地龍が大地を鳴らし、天龍が雲を払い、世界中の魔力がこの一点に集束していく。

 かつて、この大陸は争いと憎しみの「汚れ」に満ちていた。
 人々の心にこびりついた偏見、癒えない傷、そして放置された魔力の淀み。
 だが今、一人の「お掃除聖女」が蒔いた種が、大陸全土に希望という名の芽を吹かせようとしていた。

「いきます……! ――世界規模超弩級浄化――『悠久の光輝・大清掃エターナル・シャイニング・クリーニング』!!」

 レティシアが箒を天に突き上げた瞬間、ヴォルフェン領から巨大な光の柱が立ち昇った。
 それは空を突き抜け、成層圏で弾けると、七色のオーロラとなって大陸全域へと降り注いだ。

 その光が触れる場所すべてで、奇跡が起きた。
 不毛の砂漠には清らかな泉が湧き、戦火で焼けた跡地には色鮮やかな花々が咲き乱れる。
 そして何より、人々の心の中にあった「淀み」が洗われていった。

 かつてレティシアを虐げたエルフォート家の人々がいた荒野でさえも、一筋の清風が吹き抜け、彼らの荒んだ心に一滴の涙を落とさせた。
「……ああ、なんて……なんて綺麗な空なんだろう」
 誰かの呟きが、世界中に共鳴していく。

 光の渦の中で、レティシアはアレクシスの胸に抱かれていた。
 二人の周囲には、レオンとノエルがキラキラと光る粒を追いかけてはしゃいでいる。

「……終わったのか、レティシア」

「いいえ、アレクシス様。お掃除に『終わり』はありません」

 レティシアはアレクシスを見上げ、慈愛に満ちた瞳で首を振った。

「毎日少しずつ汚れて、それを毎日少しずつ綺麗にしていく……。そうやって愛を込めて磨き続けるのが、生きていくということなんです。だから、明日も、明後日も、ずっとずっとお掃除は続きます」

 アレクシスは感銘を受けたように目を見開き、そして優しく微笑んだ。

「そうだな。……次は、俺たちの家を掃除しよう。そして、その後はまたこの領地を。……君の隣で、一生俺も箒を持とう」

「ふふ、アレクシス様は、まずその『過保護すぎる心配性』をお掃除しないといけませんね?」

「……それは、君を愛している限り、取れない汚れのようだ」

 二人は、光に包まれた世界の中で、深く、深く口づけを交わした。
 
 やがて光が収まり、新しい朝が訪れる。
 世界はかつてないほどに澄み渡り、空気は甘く、人々の笑顔が街中に溢れている。

 ヴォルフェン公爵城の玄関。
 レティシアは、いつものように玄関先を箒で掃きながら、昇る太陽に向かって声を上げた。

「さあ、皆さん! 今日もお掃除しましょうね!」

 その声は、風に乗って世界中に響き渡る。
 泥だらけの令嬢が、死神と呼ばれた公爵と手を取り合い、世界を磨き上げた物語。
 それは、これからもずっと、ピカピカに輝き続ける伝説となるだろう。

 ――お掃除聖女の物語・完――

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最後まで読んでいただきありがとうございます!
最後に番外編を投稿して終わりにしたいと思います。
二日に一度更新、五話構成、5000字程度のボリュームでお送りします!
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