身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん

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第四章:没落家族の再来と、真の幸福編

第四十九話 数年後のヴォルフェン領

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 伝説の結婚式から数年の月日が流れた。
 かつて「呪われた地」と呼ばれ、誰も寄り付かなかったヴォルフェン領は、今や大陸全土から観光客が押し寄せる「世界一美しい聖都」へと変貌を遂げていた。

 街道は塵一つなく磨き上げられ、家々の窓ガラスはダイヤモンドのように輝いている。街角にはゴミ箱の代わりに「浄化ボックス」が設置され、観光客たちは「空気が美味しい!」と感動の涙を流して帰っていくのが日常茶飯事となっていた。

 そんな平和な領都を見下ろす公爵城の庭園で、賑やかな声が響いていた。

「まてー! じいじ、もっとはやく走れー!」
「わたくしの魔法で、ピカピカにしてあげますわ!」

 芝生の上を駆け回っているのは、二人の小さな子供たちだ。
 一人は、漆黒の髪に黄金の瞳を持つ、アレクシスと瓜二つの男の子、レオン(五歳)。
 もう一人は、白銀の髪をなびかせる、レティシアそっくりの女の子、ノエル(三歳)。

 そして、彼らが「じいじ」と呼んで追い回しているのは、あろうことか伝説の聖獣・地龍であった。かつてブレスで国を滅ぼしかけた最強の龍は、今や子供たちの巨大なジャングルジム兼ペットとして、のんびりと寝そべりながら尻尾であやしている。

『……ふぁ。元気なことだ。我の背中で泥遊びをするとは、数千年生きてきて初めての経験ぞ』

「こらー! レオン、ノエル! 地龍様を困らせちゃダメでしょう!」

 バルコニーから、エプロン姿のレティシアが声を上げた。
 母親となった彼女は、以前よりも少し大人びた美しさを纏っているが、その手には変わらず愛用の「お掃除箒」が握られている。

「あ、ママだ! にげろー!」
「お兄様、作戦的撤退ですわ!」

 泥だらけになった二人が逃げようとしたその時、庭の木陰から黒い影がサッと現れ、二人を両脇に抱え上げた。

「おっと。ママから逃げ切れると思うなよ、悪ガキども」

「きゃー! パパだー! 高い高いしてー!」
「パパ、おひげがチクチクします!」

 現れたのは、執務の合間を縫って抜け出してきたアレクシスだ。
 かつての「死神公爵」の面影はどこへやら、泥んこの子供たちに頬ずりされ、目尻を下げてデレデレに甘やかしている。

「よしよし、今日も元気に汚してきたな。……だが、ママの雷が落ちる前に綺麗にしておかないと、俺まで怒られるんだぞ」

「あら、もう手遅れですけれど?」

 背後から、ニッコリと微笑む(目が笑っていない)レティシアが立っていた。

「アレクシス様? 『子供は元気が一番だ』と言って、泥遊びを推奨したのはどなたでしたっけ?」

「うっ……。い、いや、これは情操教育の一環でだな……」

「言い訳は無用です。……さあ、家族まとめてお洗濯の時間ですよ! 覚悟はいいですね?」

 レティシアが箒を構えると、先端からシャボン玉のような虹色の泡が溢れ出した。

「待てレティシア! 俺はまだ会議が……!」
「問答無用! ――聖女の母性・特別洗濯《マザー・ランドリー》!!」

 ――シュワワワワワッ!!

 庭園全体が、優しい石鹸の香りと温かな水流に包まれた。
 子供たちは「きゃっきゃっ!」と喜び、アレクシスは「ぐわぁぁ、執務服がぁぁ!」と悲鳴(という名の歓喜の声)を上げる。地龍までもが『うむ、背中が痒かったところだ』と気持ちよさそうに目を細めている。

 水流が収まると、そこには髪の毛一本一本までツヤツヤになり、服のシワ一つなく、心までサッパリした家族の姿があった。

「ふふ、はい、ピカピカになりました!」

 レティシアが満足げに頷くと、レオンとノエルが飛びついてきた。
「ママ、いい匂いー!」
「大好きー!」

 そして、少し濡れた髪をかき上げたアレクシスが、愛おしそうに三人を抱きしめた。

「……降参だ。我が家の『最高権力者』には、剣でも魔法でも敵わないな」

「あら、アレクシス様もピカピカで素敵ですよ?」

 アレクシスはレティシアの頬にキスを落とし、子供たちが「パパずるいー!」と騒ぎ出す。
 庭園には、世界で一番幸せな笑い声がいつまでも響いていた。

 そんな穏やかな日々の最中。
 ヴォルフェン城に、世界各国の代表者から「ある重大な依頼」が持ち込まれようとしていた。それは、レティシアの「お掃除人生」の集大成とも言える、壮大なプロジェクトの幕開けだった。

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 【第五十話(最終回)の予告】

ついに物語はフィナーレへ。
世界中から届いた依頼は「世界を一つに繋ぐ、大浄化魔法陣の起動」でした。
レティシアとアレクシス、そして子供たちや地龍、かつての仲間たち全員で挑む、未来へ繋ぐ最後のお掃除。
「さあ、今日もお掃除しましょうね」
感動の最終回!
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