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いわくつき旅館

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「ハァ~…。大変な役割を任されることになってしまったもんだよ、全く。」
俺は旅行カタログのページをめくりながら1人頭を抱えていた。

俺の名前は平野豪。とある会社で働く会社員だ。
なぜ俺が頭を抱えることようなことになっているのかというと今度行われる旅行の件で悩んでいるからだ。
うちの会社は年に一回、社員旅行というものがある。
旅行の行き先はその年の旅行担当の役員が決めることになっているんだが、今回その役員に俺が当たってしまったって訳だ。
「こういうの決めるの苦手なんだよなぁ…。カタログなんか見てもよく分からないし…。」
こういう計画を立てることがもともと得意ではない俺にとって今回の役割は荷が重かった。しかし、決まってしまった以上は仕方がない。
何気なしにカタログのページをペラペラとめくっていた。
「うーん…。どこも似たような…、ん?ここは?」
とある1ページに掲載されていた旅館の写真が俺の目に留まった。
外観はあまり目立つような感じではないが、旅館周りに広がる自然がゆっくりと落ち着けそうな環境だと感じた。
とりあえず、概要欄を読んでみる。
一人当たりの料金も安く、社員旅行には十分な内容で、場所もここからそんなに遠く離れていないところのようだった。
「ここはなかなかいいんじゃないか!ん?まだ何か書いてるな…。なになに…?…
へぇ~!事前にどんな旅行になるのかお試しの宿泊ができるのか!」
なかなかサービスがいい旅館だな。
「みんなで行ったあと、あまりよくなかったって言われるの嫌だしなぁ……。まだ社員旅行に行くまで期間もあるし、今度1人で行ってみようかな!」
数日後に取っていた連休を使って旅館の下見に行ってこようと考え、予約の電話をする。
プルルルル ガチャ
「は~い♡こちら、♢♢旅館で~す♡ご予約ですかぁ?」
電話から甘ったるい声が聞こえてくる。
「あの、平野と言うのですが…。〇〇日の17時ごろから1人で予約したいんですけど…」
「平野様ですね♡かしこまりましたぁ~♡それでは当日、お待ちしておりま~す♡」
電話を切る。
さっきの電話の対応…。
なんか不安になってきたな…。でも予約しちゃったし、良くなかったのならまた他の場所を考え直せばいいか。
この時の俺はどこか楽観的だった。

しかし、このお試し宿泊が俺の人生を変えてしまう出来事になるとは思ってもいなかった。

数日後の連休初日。
俺は宿泊用の荷物をまとめ、♢♢旅館を目指して家を出た。
お試し旅行と言っても旅行の下見という立派な仕事であるため、仕事着で移動だ。
どうやら電車で1時間半、そこからバスで1時間程度で目的の旅館の最寄りバス停に着くらしい。
電話で話した時は、心配だったがいざ行くとなるとちょっと楽しみでもあった。
電車からバスに乗り換え、かれこれ考えている内に最寄りのバス停に着いたようだ。
降りようとする俺に不意にバスの運転手が声を掛けてきた。
「あの…、このあたりは民家しかないですけれどここで降りられるんですか?」
民家しかない?でも旅館はこのあたりにあるはずだけど…。
「いえ。ここであってるはずですので。お声かけ、ありがとうございます。」
そう言って俺はバスから降りた。
持ってきたカタログに旅館までの地図も載っているしこのバス停であっているはずだ。
地図によるとここから徒歩で旅館へ向かわなくてはいけないようだ。

少し歩くと目的の旅館が見えてきた。
なんで運転手は民家しかないなんて嘘を言ってたんだろう?まあ、いいか。
思っていた通りの自然豊かな環境で木々に囲まれたマイナスイオンあふれるような場所だった。
周りの景色を見ながら歩いていると、旅館の中から着物を着た小さな女の子が歩いてきて声をかけてきた。
「いらっしゃいませ♡お客様がご予約されました平野様ですかぁ?」
声を掛けてきたこの子が予約の時に電話越しで話をした子だったようだ。
「あ、はい。予約した平野です。えっと…君もここで働いている人なのかな?」
「あはっ♡何を言ってるんですかぁ♡私がここの女将ですよぉ♡」
こんな子供が女将だって!?
ますます不安になってきた。大丈夫なのか?
「まぁまぁ♡せっかく来られたのですから♡さあどうぞ、こちらへ♡」
言われるがまま旅館内へ案内される。

「どちらから来られたんですかぁ?」
「〇〇市からですけど…」
「近いじゃないですかぁ♡どうしてうちの旅館にぃ?」
「いや、社員旅行で使わせてもらおうかと思って…」
「そうなんですねぇ~♡」
お、落ち着かない…。
「ここが本日のお部屋になります♡それでは、お食事ができましたらお持ちいたしますねぇ♡」
なんだかんだで泊まる部屋まで着いたみたいだ。
ふーっと息を吐く。
まさか女将があんなに小さな子だったとは…。
それには驚いたが、改めて用意された部屋を見てみる。
低価格だったというのにとても綺麗だ。
コンコンッ
あたりを見回していると部屋をノックされた。さっきの女将だ。
「平野様。お食事までもう少しお時間がかかりそうですぅ♡お先に入浴されてきてはいかがですか?うちの露天風呂はすごいんですよぉ~♡」
「へぇ、それは楽しみだ。じゃあ、入ってこようかな。」
「あと、1時間ほどでお食事が出来上がりますので♡それまでごゆっくり~♡」
さて、どんな風呂なんだろう。
浴場へと足を運ぶ。
そこには、絶景が広がっていた。
「こ、これは凄い!」
是非ともゆっくり入りたいが食事のこともある。後でゆっくり入りなおすことにしよう。
さっと風呂から出るとちょうどご飯が出来上がっていた。
「あ!ちょうどいいところに♡今、ご飯ができたところですよぉ~♡」
出来上がった食事を見てみると、それはもう豪華なものだった。
「凄いっ!」
「でしょお♡心を込めて作りましたぁ♡どうぞ、召し上がってください♡」
俺はいい匂いに誘われて早速、食事を食べる。
「う、美味い!」
食べることをやめることができない。
それほどまでに出された食事は美味しかった。
あっという間にたいらげてしまった。
「美味しかった…」
「それは良かったです♡」
「あれ?」
食べ終わると同時に一気に眠気が襲ってきた。思っていたよりも居心地が良すぎて当初の不安はどこにも無くなっていた。
「お布団、お敷きしましたよ~♡ゆっくり休んでくださいね♡そう、ゆっくりと♡」
意識が混濁する。
俺は何も考えず布団に潜り込む。
そこで意識が途切れた。


「うーーん…。よく眠った、なぁ?」
目覚めてすぐに思った。何かがおかしい。
まず、寝ていた部屋と違う。
もぞもぞと身体を起こす。
座ってみるとまた違和感。
なんか目線が低い。
「あれ?」
ん?俺の声か?なんか高い気が…。それにどこかで聞いたような…。
ふと、自分の手を見てみた。小さい。
「え゛?」
俺は近くに鏡はないか探した。枕元に小さな手鏡が置かれてあった。
恐る恐る鏡を覗き込んでみると、そこに写っていたのは女将少女の姿だった。
手鏡と一緒に一枚の手紙が置かれている。
慌てて手紙を読む。
(この手紙を私が読んでいないってことはどうやら成功したみたいですね♡実は、貴方の身体、いただいちゃいました~♡まさか、こんなに上手くいくなんてぇ♡ながぁ~い間、カタログに気付く人がいなくて困ってたんですよぉ~♡なんたってここ、現実には存在しない場所なんですもん♡でも、貴方は気づいてくれたし♡ほんと感謝です♡貴方のこれからの生活は私に任せてくださいね♡代わりに私の身体での生活、よろしくお願いしますね♡)
は?
どういうことだ?身体をいただいた?ここは存在しない場所?
何を言ってる?
もう一つ枕元に置かれているものがあった。
俺が持ってきたものと同じ旅行のカタログだ。
急いでこの旅館が載っていたページを開く。
だが、この旅館が載っていたページはカタログをどんなにめくっても見つからなかった。
「そ、そんな…。確かにこのページに載っていたのに!」

社員旅行を楽しむためにわざわざお試し旅行の実施までした。
結果として、食事も美味しく、風呂も最高だった。
なのに最後の最後にこんなことになるなんて…。
だが…
これが最後だなんて甘かった。
俺の地獄は今、始まったばかりだということを思い知らされる出来事が起きた。

ガンガンッ!!
呆然としていたら部屋の扉を激しく叩く音が響いてきた。
「おい!いるんだろ!早く出てこい!」
なにやら男の声が聞こえる。初めて聞いたはずの声なのに身体が嫌でも反応してしまう。
おずおずと扉を開けるとそこには1人の男が立っていた。
「えっと…どちら様で?」
「ふざけているのか?」
腕を掴まれ部屋から連れ出される。
「まったく手のかかる。お前は俺がいないと存在できないんだろ?」
男が声をあげる。
「え?存在できない?」
「何言ってやがる!男の精液がないとお前は生きられないんだろ?全く、めんどくさい呪いなんかをかけてくれやがって…!」
頭が追いつかない。
「まだ寝ぼけてんのか?まあいい。早く服を脱げ。今日も使ってやるから。」
「ちょっとまて!何を言っているんだ!?」
バタバタともがいてみる。だが、びくともしない。
男がギロリと俺を睨む。
「いい加減にしろ!人が親身になってやってるっていうのに!霊感のある俺がここに来なければとうの昔にお前は消えていたんだぞ!」
この男が何を言っているのかまったくわからない。だけど…!
「待ってくれ!よくわからないが、俺はあの女の子に身体を入れ替えられたみたいなんだ!信じてくれ!」
必死で男へ説明する。
「はぁ?なにを…。いや、待てよ?そういえば前にここに来た時にそんな感じのことを言っていたような…。」
「やっぱり!だから「だが俺には関係ない。」ッ!?」
「俺はお前が誰であろうと関係ない。俺の役目はお前を犯すことだけだ。お前が何者だったとしてもその身体と結んだ契約は消えてないようなんでな。」
男は右腕に刻まれた印を忌々しく睨んでいた。
「それは?」
「入れ替えられたのが本当だとすると、何にも知らないようだな。わかった、この際教えてやる。お前のその身体は淫魔のものだ。それも落ちこぼれのな。本来ならば自分で男を選び、精を搾取する存在だがそれができないみたいでな。死に物狂いでなんとか見つけ出したというこの旅館に住み着き、死を待つばかりだったところに俺がたどり着いたってわけだ。で、訳もわからないまま契約を結ばれた。精を与え続けるというな。この印はその証だ。」
「なら、なぜ俺は入れ替えられたんだ?」
「知るかよ、そんなこと。だが、俺だって毎日ここにくる訳じゃないからな。奴も他の手段を考えていたんだろう。そこにあんたが来た。おそらくチャンスだと思った奴は何かしらの能力でお前と身体を入れ替えたんだろうよ。」
「なぜ、俺が選ばれたんだ…?」
「俺が奴と出会った時は飢餓寸前だったからな。そこまで頭が働かなかったんだろう。ま、俺がわかるのはそこまでだ。」
「そんな…それじゃ俺はどうすれば…」
「知らねえよ。だが、奴が言うにはその身体は定期的に男の精を受け入れなければ消滅してしまうらしいぞ?」
「そんなの嫌だ!こんなところで死ぬなんて…」
「まぁ、でもすぐには死なないだろうよ。俺がいるんだからな。」
「どう言うことだ?」
「さっきも言っただろ?この印だよ。この印はお前の身体が消えそうになる前に反応して俺をこの場所へ呼べるようになっている。一種の防衛装置ってやつだ。俺が生きている間はそのような仕組みって訳だ。」
「でも、と言うことは…」
「そうだ。お前は俺とセックスをしなければ死ぬ。」
「い、嫌だ!そんなの!俺は男だ!」
「まあ、俺は別にいいんだぜ?あんたのことよく知らないし、あんたが死ねばこの呪いからも解放される。俺にとっては不利なことなんて何もないからな。」
「うっ…」
「あまり考えてる時間はないと思うぞ?自分の体を見てみろ。」
男が言う通りに、俺は自分の身体を見下ろす。
微かだがさっきよりも身体の影が薄くなっているように感じた。
「あぁ…!?いやっ!なんでこんなことにぃ!!」
刻一刻と身体は薄くなっていく。
「潮時かもな。最後にもう一度だけ聞いてやろう。ヤるのか?ヤらないのか?」
自分が男か女かなんて今起きていることにしては些細な問題だった。
「いやだ!消えたくない!助けてっ!何してもいいから!」
「わかった。俺も見殺しなんて後味悪いからな。助けてやる。だが、あまり時間もなさそうだな。おい!襟下を捲れ。そこから挿れてやる。」
言われるままに襟下をたくし上げる。
「下着はつけてなかったんだな。ちょうどいい!」
男は俺の足をM字に開くと一気に一物を突き込んできた。

ずにゅぅぅぅっ!!
小さくなった身体で成人男の性器を突き入れられる。膣は一気に男の性器を飲み込み、奥底の子宮まで強くノックされる。
刺激が強く、肺の中の空気が押し出され、頭がチカチカとクラッシュする。
「あひゃぁぁぁ!!だめぇ!しぬぅぅ!」
それでも男は腰を止めず、ピストンを繰り返す。
ズンッ ズンッ ズンッ
「あっ♡あっ♡あぁっ♡」
身体は小さいが身体は淫魔。何度かこの男とセックスをしていることもあって彼のチンコはこの身体に馴染んでいるようだ。
気持ちよさが体全体を駆け抜ける。
「そろそろ出すぞっ!受け取れっ!」
ピストンが早くなり彼が射精間近であると悟った。膣でチンコが膨張するのを感じる。

そして火花が散った。

ドピュッルルルル ビューーッ!!
「ああぁぁぁぁっ!イクゥっ♡イッちゃうぅぅ♡♡!!!」
プシャァァーーーッ!!
潮を撒き散らし激しく絶頂する。
膣内に精液が染み込んでいく。
快感に意識を失いそうになっていく中、自分の身体が実体を保っていくのが見えた。
「ふぅ、なんとか間に合ったようだな。とりあえず少し休むといい。」
男の声が聞こえる。
俺はそのまま眠るように意識を失った。


数刻後、再び目を覚ます。
起き上がると股の間からドロリと何かが伝うのが感じられた。
やっぱり戻ってはないか…。
「目が覚めたか?」
男から声をかけられる。
「目が覚めたようでなにより。それより、これからのことを考えた方がいいと思うぞ?
役目を終えた俺は直に元の世界へ戻される。
そうなるとあんたと次会うのもまた先の話になるからな。」
「そうは言っても、俺、どうしたらいいのか…」
「奴だっておそらく始めからこんな能力を持っていた訳じゃないだろう。この旅館のどこかに何か隠しているのかもしれないぞ。それを探すことから始めてはどうだ?
おっと、もう時間のようだ。次に会うときはアンタじゃないことを祈ってるよ。」
男はそう言うと、霧となって消えてしまった。
「そうだな…。あの男の命だって無限じゃない…。早く元に戻る方法を探さないと!」
こうして、俺は元の身体に戻るための方法を探し始めるのだった。
いつか、この行動が実を結ぶと信じて……。


「いらっしゃいませぇ♡ご予約の〇〇様でしょうかぁ♡?」
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