ゴーストスロッター

クランキー

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【第2章】

■第13話 : ぬるま湯

優司が、日高と30万円を賭けてのパチスロ勝負を行なってから一週間が経った。

この一週間、優司は思うがままに金を使い、自由気ままな生活を送っていた。
ここ数ヶ月間のホームレス生活の反動が一気にきたのだ。

野宿などせず毎日マンガ喫茶に泊まり、食事も一日三食きっちりと食べた。
それどころか、毎日のように酒まで堪能してしまう始末。

だが、この散財は優司の想定の範疇。
一週間の間は、好き放題に使おうと決めていたのだ。



なお、この一週間で想定外なこともあった。
それは、日高やその周りの人間との関係。

あの勝負の後にもらった、日高の携帯番号が記された紙。
優司は、その翌日には既に電話をかけていた。 
酔っ払った勢いで、だが。

最初は、一人で飲むより二人で飲んだ方が楽しいだろう、という軽い気持ちで飲みに誘った優司だが、そこで二人はさらに意気投合し、それから毎日のように日高やそのグループの人間たちと一緒に飲むようになった。

優司にとっては、嬉しい想定外な出来事。

そんなこんなであっという間に一週間が経ち、今に至る。

勝利金+藤田から取り返した15万を合わせ、45万円の利益を1日で手にしたのだが、今手元に残っているのは35万ほどの金。
闇金への利息の支払いと散財により、たった一週間で10万円も減らしていた。

(利息の返済もあったとはいえ、一週間で10万も減らすってのはさすがにやりすぎたか……
 安居酒屋ばかりとはいえ、毎日飲んでたしなぁ。さすがに金が減るのも早いや……)

想定内の散財とはいえ、若干後悔の念に駆られた。

(はぁ……。そんなことより、これから俺はどうしていけばいいんだ……?
 日高とのスロ勝負には勝ったし、それにより多少の金も得た。
 でも、それだけだ。他は何も変わらない。
 俺のヒキの弱さは全く変わってないだろうし、家がないという状況ももちろんそのまま。
 今後、どこかから金が入ってくる見込みもない。
 このままじゃ、また一文無しになるのは時間の問題だ……)

今後どうしていくべきなのか、という点について、優司の心は激しく揺れ動いていた。

ダメモトでスロニートに戻ってみるか、今のホームレス生活を続けて様子を見るか、それともこれを機に職でも探して真っ当な生活に戻るか。

様々な考えが頭に浮かんだ。

(また今回と同じようなことをするって手もあるな。
 どっかのスロッターに勝負仕掛けてみるとか。
 で、勝ったら30万、みたいな)

だが優司は、この考えを一瞬で自分の中から追い払った。

本来、物事を慎重に進めるタイプなので、こんな大金を一度に賭けてそれを取り合うなどという勝負は性に合わないのだ。
いくら自分の読みに自信があるとはいえ。

ではなぜ、日高とは勝負したのか?

これも、自信はあったが何か特別な確信があったわけではない。

しかし、状況的・感情的に極限状態まで追い込まれていた為、やむを得ず不確定な勝負に出たのである。

だが、今は違う。
30万を超える金が手元にあるのだ。

あえてここで冒険しなくても、しばらくの間ならば人並みの生活ができる。

とはいえ、このままだと人並みの生活ができるのはあくまで『しばらくの間』だけ。
早く何らかのアクションを起こさなければならない。

(まあ、クヨクヨ悩んでてもしょうがないな。
 とりあえず、今日も日高たちとの飲みだ。その後に考えよう!)

頭を切り替え、待ち合わせをしている居酒屋へと向かった。



◇◇◇◇◇◇



「わるい! 待った?」

少し遅れて、待ち合わせの居酒屋へ訪れた優司。
日高たちは、すでに軽く飲み始めていた。

今日の飲みの参加者は、優司・日高・小島・ヒデの4人。
小島とヒデは、1年以上日高とツルんで打っている人間だった。

背が低く、やや長髪で、お調子ものの小島。歳は19歳。
優司の一つ年下となる。
スロのウデは決していい方ではなかった。

逆にヒデは、無口で場を盛り上げたりするのは苦手だが、背が高くスッキリとした顔立ちをしていて、スロの知識は日高と同レベル。
歳も日高と同じ21歳。
元ホール店員という経歴で、ホール事情にも詳しい。

優司は、日高だけでなくこの二人とも何回か一緒に飲んでおり、すっかり打ち解けていた。

「おお、やっと来たか! 先に始めちゃったよ」

早くも出来上がりつつあるのか、陽気に声を発する日高。
お調子ものの小島もすかさず口を挟む。

「遅いっスよ夏目君! とりあえずビール一気ね!」

破顔しながら、優司が答える。

「え~? そりゃないだろ小島。
 そもそも5時前から飲み始めんのは早すぎじゃない? そりゃ遅れるよ!」

優司の言葉に、日高が合の手を入れる。

「関係ねぇって!
 まだサラリーマンが働いてるような時間から飲み始めんのがたまんないんだよ。ハハハ!」

既に、優司と日高たちの間に堅苦しさはなかった。

「すいませーん! 生一つ追加で!」

席につくやいなや、優司は大きな声で自分の飲み物を注文した。

そのまま、いつもの他愛のない会話が始まり、四人の楽しい時間が始まるのであった。
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