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【第2章】
■第21話 : 軽慮浅謀
勝負ホールを変更させるため、真鍋が打っていそうなホールを歩きまわる優司。
(まずは真鍋を見つけださないと。
見つけさえすれば、うまく言いくるめる自信がある。必ず説得してやる!)
なんの考えもなしに、ただ「店を変えてくれ」などと言うつもりはない。
優司は、何事に対しても、やり遂げる自信がなければ行動を起こさない性格だった。
ぐるぐるとホールを渡り歩き、5店舗目に達した時、ようやく真鍋を発見することができた。
北斗に座り、まだ昼の12時を少し回ったくらいの時間なのにもかかわらず、すでに2箱積んでいる。
真鍋の後ろへ回り、肩を軽く叩く優司。
真鍋はすぐに振り向き、少しびっくりした顔でこう言った。
「おお! 夏目じゃん。
どうしたんだよ。勝負はまだだろ?」
「ああ。今日は少し話があってきたんだ。ちょっと外に出てもらっていいかな?」
「ん? ……まあ、いいけどよ」
ゆっくりと腰を上げた真鍋は、優司と一緒にホールの外へと出た。
「で、なんの用なんだ?」
ホールを出た直後に、急かすように用件を聞く真鍋。
「ああ、あのさ。
いきなりで悪いんだけど、ちょっと相談があるんだ」
「相談?」
「うん。
勝負ホールについてなんだけど、やっぱ『シルバー』はやめにしない?」
「はぁ? なんでだよ? 一旦受けただろ?」
「そうだけど……やっぱあそこじゃ勝負にならないと思うんだ」
「……理由は?」
「いや、真鍋君も知ってると思うけど、あのホールは設定の入れ方がバラバラだよね。つまり、完全な運勝負になっちゃうんだよ。
君は、俺と実力で勝負して勝ちたいんでしょ?
あんなホールで勝負して勝ったって、実力で勝ったことにはならないよ?
それじゃ意味ないでしょ?」
これが、優司の考えていた説得のための材料だった。
真鍋は、日高に勝った夏目優司に勝てば、結果的に日高にも勝ったことになると考えている。
でも、こんな運勝負で勝っても、実力でもなんでもないぞ、とアピールすることで、真鍋の心変わりを誘おうと考えたのだ。
我ながらなかなかの説得だと思っていた。
この時までは。
しかし、この優司の言葉を受け、すぐさま真鍋が言葉を返す。
「お前なァ、本気でそんなこと言ってんのか? だとしたらかなりガッカリだぜ」
「え?」
「じゃあ、あれか? お前は、自分が読みきれないホールでの勝負で負けても、そんなもんは実力でもなんでもないって言いたいのか?
お前は、自分が設定を読めると自信があるホールじゃなきゃ勝負できないのか?」
「あ……いや……」
「そんなのはなぁ、自分勝手なガキの理論なんだよ!
一旦受けたくせに、やっぱ勝てそうにないからヤメますってか? ふざけんなよ!
設定を読みづらいのはこっちだって一緒だ! 同じ条件だろうがっ!
そこをなんとかして、少しでも勝つ確率が高くなるように努力すんのが勝負ってもんだろっ?
甘ったれたこと言ってんじゃねぇぞッ!」
真鍋のこの言葉に対し全く反論できず、ただうつむき黙ってしまう優司。
それもそのはず、今言われたことはすべて、攻め入るスキのない正論だった。
自分の言い分が、いかに甘ったれていたものかに気づいた優司。
ついさっきまでの「絶対に説得できる」という自信が、逆に恥ずかしいものに感じられた。
「ま、まあ……言われてみればその通りだね……」
「わかりゃいいよ。
俺だって、別に勝つ為の確信があるわけじゃないんだ。あんなホールだしな。
でも、勝つ為の努力はする。
設定6を掴める可能性が1%でも高くなるようにな」
「う、うん……。わかった……。悪かったよ……」
一言謝罪の言葉を口にし、そのまま優司はその場を離れていった。
真鍋は、その姿を黙って見送った。
◇◇◇◇◇◇
(クソッ! クソッ!
俺はなんてバカなんだ……大バカだ……)
あてもなく歩きながら、優司は激しい自己嫌悪に陥った。
絶対に負けたくない一心から、冷静な判断力を欠き、言い訳がましいホール変更を申し出たりしてしまった自分に激しい怒りを覚えた。
(よく考えればわかることじゃないか。
なんで俺は、あんなバカげた提案をしちゃったんだ)
なぜここまで落ち込むのか?
それは、普段の優司が、こういう身勝手な発想をする人間が大嫌いだからである。
自分の都合のいいようにしか考えない愚かな人間こそ、優司にとって最も嫌悪すべき人間だった。
その、自分が最も嫌う人間に、一瞬とはいえなってしまい、しかもそれを人に指摘されてしまったのだ。
それも敵に。
変にプライドの高い優司にとって、これ以上の屈辱はなかった。
(もうやるしかない……。なんとか『シルバー』で勝てる方法を探すしか……)
どう考えても厳しい『シルバー』での必勝。
しかし、今の優司にはそれを達成するしかない。
設定の入れ方が読めない『シルバー』で、必ず設定6を掴む方法を見つけるしかないのだ。
(負ければ、また文無しホームレスか……
また、あの苦しい生活を強いられるのか……)
あまりのプレッシャーから、自然と吐き気がこみ上げてきた。
(まずは真鍋を見つけださないと。
見つけさえすれば、うまく言いくるめる自信がある。必ず説得してやる!)
なんの考えもなしに、ただ「店を変えてくれ」などと言うつもりはない。
優司は、何事に対しても、やり遂げる自信がなければ行動を起こさない性格だった。
ぐるぐるとホールを渡り歩き、5店舗目に達した時、ようやく真鍋を発見することができた。
北斗に座り、まだ昼の12時を少し回ったくらいの時間なのにもかかわらず、すでに2箱積んでいる。
真鍋の後ろへ回り、肩を軽く叩く優司。
真鍋はすぐに振り向き、少しびっくりした顔でこう言った。
「おお! 夏目じゃん。
どうしたんだよ。勝負はまだだろ?」
「ああ。今日は少し話があってきたんだ。ちょっと外に出てもらっていいかな?」
「ん? ……まあ、いいけどよ」
ゆっくりと腰を上げた真鍋は、優司と一緒にホールの外へと出た。
「で、なんの用なんだ?」
ホールを出た直後に、急かすように用件を聞く真鍋。
「ああ、あのさ。
いきなりで悪いんだけど、ちょっと相談があるんだ」
「相談?」
「うん。
勝負ホールについてなんだけど、やっぱ『シルバー』はやめにしない?」
「はぁ? なんでだよ? 一旦受けただろ?」
「そうだけど……やっぱあそこじゃ勝負にならないと思うんだ」
「……理由は?」
「いや、真鍋君も知ってると思うけど、あのホールは設定の入れ方がバラバラだよね。つまり、完全な運勝負になっちゃうんだよ。
君は、俺と実力で勝負して勝ちたいんでしょ?
あんなホールで勝負して勝ったって、実力で勝ったことにはならないよ?
それじゃ意味ないでしょ?」
これが、優司の考えていた説得のための材料だった。
真鍋は、日高に勝った夏目優司に勝てば、結果的に日高にも勝ったことになると考えている。
でも、こんな運勝負で勝っても、実力でもなんでもないぞ、とアピールすることで、真鍋の心変わりを誘おうと考えたのだ。
我ながらなかなかの説得だと思っていた。
この時までは。
しかし、この優司の言葉を受け、すぐさま真鍋が言葉を返す。
「お前なァ、本気でそんなこと言ってんのか? だとしたらかなりガッカリだぜ」
「え?」
「じゃあ、あれか? お前は、自分が読みきれないホールでの勝負で負けても、そんなもんは実力でもなんでもないって言いたいのか?
お前は、自分が設定を読めると自信があるホールじゃなきゃ勝負できないのか?」
「あ……いや……」
「そんなのはなぁ、自分勝手なガキの理論なんだよ!
一旦受けたくせに、やっぱ勝てそうにないからヤメますってか? ふざけんなよ!
設定を読みづらいのはこっちだって一緒だ! 同じ条件だろうがっ!
そこをなんとかして、少しでも勝つ確率が高くなるように努力すんのが勝負ってもんだろっ?
甘ったれたこと言ってんじゃねぇぞッ!」
真鍋のこの言葉に対し全く反論できず、ただうつむき黙ってしまう優司。
それもそのはず、今言われたことはすべて、攻め入るスキのない正論だった。
自分の言い分が、いかに甘ったれていたものかに気づいた優司。
ついさっきまでの「絶対に説得できる」という自信が、逆に恥ずかしいものに感じられた。
「ま、まあ……言われてみればその通りだね……」
「わかりゃいいよ。
俺だって、別に勝つ為の確信があるわけじゃないんだ。あんなホールだしな。
でも、勝つ為の努力はする。
設定6を掴める可能性が1%でも高くなるようにな」
「う、うん……。わかった……。悪かったよ……」
一言謝罪の言葉を口にし、そのまま優司はその場を離れていった。
真鍋は、その姿を黙って見送った。
◇◇◇◇◇◇
(クソッ! クソッ!
俺はなんてバカなんだ……大バカだ……)
あてもなく歩きながら、優司は激しい自己嫌悪に陥った。
絶対に負けたくない一心から、冷静な判断力を欠き、言い訳がましいホール変更を申し出たりしてしまった自分に激しい怒りを覚えた。
(よく考えればわかることじゃないか。
なんで俺は、あんなバカげた提案をしちゃったんだ)
なぜここまで落ち込むのか?
それは、普段の優司が、こういう身勝手な発想をする人間が大嫌いだからである。
自分の都合のいいようにしか考えない愚かな人間こそ、優司にとって最も嫌悪すべき人間だった。
その、自分が最も嫌う人間に、一瞬とはいえなってしまい、しかもそれを人に指摘されてしまったのだ。
それも敵に。
変にプライドの高い優司にとって、これ以上の屈辱はなかった。
(もうやるしかない……。なんとか『シルバー』で勝てる方法を探すしか……)
どう考えても厳しい『シルバー』での必勝。
しかし、今の優司にはそれを達成するしかない。
設定の入れ方が読めない『シルバー』で、必ず設定6を掴む方法を見つけるしかないのだ。
(負ければ、また文無しホームレスか……
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あまりのプレッシャーから、自然と吐き気がこみ上げてきた。
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