文字の大きさ
大
中
小
22 / 138
【第2章】
■第22話 : 突破口
絶望しながら、行く当てもなく歩きまわる優司。
気づくと、無意識に『シルバー』の前に立っていた。
吸い寄せられるように、ホールの正面にあるベンチに腰掛け、何度も繰り返してきた思考をまた繰り返す。
(どうすればいいんだ……どうすれば……)
生気なく、道行く人々の表情を眺める。
皆、無表情に歩を進めている。
(この中で、俺ほど苦しんでる人間がどれだけいるんだろう。
俺より不幸な人間がどれだけいるんだろう。
数日後に無理矢理パチスロ勝負をさせられて、負ければ30万円を奪われてホームレス、なんていう過酷な状況にいるような人間が……)
だんだんと何も考えられなくなり、勝負とは全く関係のないことに気が向いていく。
すでに、「なんとか勝たないと」という思いは優司の中から消えかけていた。
◇◇◇◇◇◇
茫然とすること数十分。
スロとは全く関係のない、現実逃避的なことを考え続ける優司。
ひたすら、自分の置かれた境遇を哀れみ続けていた。
そんなことをしてもどうにもならないと知りながら。
焦点の合わない視線を、辺り構わずに這わせる。
すると、ふと一枚の張り紙が目についた。
(……ホール店員のバイト募集の張り紙か。
この際、『シルバー』の店員にでもなって設定を直接覗いてやろうか。
でも、パチ屋って早番だと開店よりも1時間くらい早く来なくちゃいけないし、遅番でも閉店した後1時間くらい閉店作業で残らなきゃいけないんだよなぁ。
よく考えてみると、結構面倒くさいバイトだよなぁ。)
当然、『シルバー』で働こうかどうか本気で悩んでいるわけではない。
勝負の日まであと4日。
今からバイトの応募をしたところでどうにもならない。
あまりにテンパっているがゆえ、どうでもいいことに思考が飛んでいるのだ。
その時だった。
目の前にあるバイト募集の張り紙の「ある記述」が優司の目に飛び込んできた。
(ん? ここって遅番の勤務時間が23:30までなのか。
こんなにデカいホールなのに、たった30分で閉店作業が終わるのか?
普通のホールでも、閉店作業として1時間はやるってのに)
『シルバー』は4階建てのスロ専門店。
1フロアに100台近く入っている巨大なホールである。
(別に、そんなに店員が多い店でもないよな。
……ってことは、閉店後にコイン抜いたり台拭いたりとかはしてないのか?
まあ、コインは自動補給になってたからなんとかなるんだろうけど。
そういえば、台とかコインとか汚かったよな)
ふと気になり、早番の勤務時間もチェックしてみた。
(9:30から? 10時開店なら、普通は早番の出勤が9時だよな。早番も、通常より30分遅いのか。
30分とはいえ、これで随分人件費が浮くんだろうな。
その分、出玉に還元するのかな。確かに、そこそこ出してるホールだし)
ここで、優司にある閃きが走る。
(待てよっ?
早番も遅番も、開店作業や閉店作業が短くなるってことは……)
みるみるうちに生気が戻っていく。
(……待て待て、慌てるな俺。
まずはいろいろと確認することがある。俺の主観だけで判断しちゃダメだ)
なんとか自分を落ち着かせ、おもむろに立ち上がり近くの公衆電話へと向かった。
◇◇◇◇◇◇
「本当に間違いない?」
確認したかったことを聞き、相手に再度確かめる優司。
「ああ。俺の経験から判断するに、ほぼ確実に夏目の予想通りだと思うよ」
電話の相手は、日高のグループの一人であるヒデ。
元ホール店員である。
優司の『シルバー』への読みが、元店員から見てどうなのかを確認したかったのだ。
「そっか。わかった! ありがとう!」
「いや、全然いいよ。
日高からも、できるだけ協力してやってくれって頼まれてるし」
「そっか、助かるよ。
ホントありがとう。それじゃあ」
そう言って電話を切った。
(よし……なんとか突破口を見つけた。
でも、これで解決できたわけじゃない。まだ、あくまで糸口を見つけただけだ。
これから、いろいろと検証していかないと。
残りあと4日か。もしかしたらなんとかなるかも……
いや、なんとかなるかも、じゃ駄目だ! 絶対になんとかしないと! 俺は絶対に負けられないんだっ!)
気づくと、無意識に『シルバー』の前に立っていた。
吸い寄せられるように、ホールの正面にあるベンチに腰掛け、何度も繰り返してきた思考をまた繰り返す。
(どうすればいいんだ……どうすれば……)
生気なく、道行く人々の表情を眺める。
皆、無表情に歩を進めている。
(この中で、俺ほど苦しんでる人間がどれだけいるんだろう。
俺より不幸な人間がどれだけいるんだろう。
数日後に無理矢理パチスロ勝負をさせられて、負ければ30万円を奪われてホームレス、なんていう過酷な状況にいるような人間が……)
だんだんと何も考えられなくなり、勝負とは全く関係のないことに気が向いていく。
すでに、「なんとか勝たないと」という思いは優司の中から消えかけていた。
◇◇◇◇◇◇
茫然とすること数十分。
スロとは全く関係のない、現実逃避的なことを考え続ける優司。
ひたすら、自分の置かれた境遇を哀れみ続けていた。
そんなことをしてもどうにもならないと知りながら。
焦点の合わない視線を、辺り構わずに這わせる。
すると、ふと一枚の張り紙が目についた。
(……ホール店員のバイト募集の張り紙か。
この際、『シルバー』の店員にでもなって設定を直接覗いてやろうか。
でも、パチ屋って早番だと開店よりも1時間くらい早く来なくちゃいけないし、遅番でも閉店した後1時間くらい閉店作業で残らなきゃいけないんだよなぁ。
よく考えてみると、結構面倒くさいバイトだよなぁ。)
当然、『シルバー』で働こうかどうか本気で悩んでいるわけではない。
勝負の日まであと4日。
今からバイトの応募をしたところでどうにもならない。
あまりにテンパっているがゆえ、どうでもいいことに思考が飛んでいるのだ。
その時だった。
目の前にあるバイト募集の張り紙の「ある記述」が優司の目に飛び込んできた。
(ん? ここって遅番の勤務時間が23:30までなのか。
こんなにデカいホールなのに、たった30分で閉店作業が終わるのか?
普通のホールでも、閉店作業として1時間はやるってのに)
『シルバー』は4階建てのスロ専門店。
1フロアに100台近く入っている巨大なホールである。
(別に、そんなに店員が多い店でもないよな。
……ってことは、閉店後にコイン抜いたり台拭いたりとかはしてないのか?
まあ、コインは自動補給になってたからなんとかなるんだろうけど。
そういえば、台とかコインとか汚かったよな)
ふと気になり、早番の勤務時間もチェックしてみた。
(9:30から? 10時開店なら、普通は早番の出勤が9時だよな。早番も、通常より30分遅いのか。
30分とはいえ、これで随分人件費が浮くんだろうな。
その分、出玉に還元するのかな。確かに、そこそこ出してるホールだし)
ここで、優司にある閃きが走る。
(待てよっ?
早番も遅番も、開店作業や閉店作業が短くなるってことは……)
みるみるうちに生気が戻っていく。
(……待て待て、慌てるな俺。
まずはいろいろと確認することがある。俺の主観だけで判断しちゃダメだ)
なんとか自分を落ち着かせ、おもむろに立ち上がり近くの公衆電話へと向かった。
◇◇◇◇◇◇
「本当に間違いない?」
確認したかったことを聞き、相手に再度確かめる優司。
「ああ。俺の経験から判断するに、ほぼ確実に夏目の予想通りだと思うよ」
電話の相手は、日高のグループの一人であるヒデ。
元ホール店員である。
優司の『シルバー』への読みが、元店員から見てどうなのかを確認したかったのだ。
「そっか。わかった! ありがとう!」
「いや、全然いいよ。
日高からも、できるだけ協力してやってくれって頼まれてるし」
「そっか、助かるよ。
ホントありがとう。それじゃあ」
そう言って電話を切った。
(よし……なんとか突破口を見つけた。
でも、これで解決できたわけじゃない。まだ、あくまで糸口を見つけただけだ。
これから、いろいろと検証していかないと。
残りあと4日か。もしかしたらなんとかなるかも……
いや、なんとかなるかも、じゃ駄目だ! 絶対になんとかしないと! 俺は絶対に負けられないんだっ!)
感想 5
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)
MisakiNonagase洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。
かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。
44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。
小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。
一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。
ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
【短編集】こども病院の日常
moaここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。