32 / 138
【第3章】
■第32話 : かけがえのないもの
いつもの生活に戻って3日が過ぎた。
優司のいつもの生活とは、近辺の各ホールを巡って情報を集めること。
ある程度の蓄えもできたため、さすがにコイン拾いまではやらなくなっていたが。
(今後、設定読みの勝負をしていく上で、ホール情報は絶対に必要だ。
今まで以上にこのノートを充実させていかないとな)
今となっては財産とも言える存在となった、優司のポケットサイズのスロノート。
日高や真鍋も一目置くこのノートには、近隣のホールについての詳細な情報が書き込まれている。
例えば、今優司が立ち寄っていた、駅の近くにある『クリーム』という店の場合。
===============
《クリーム》 駅から徒歩2分
■交換率
6枚
■客付き
平日は平均で6割程度。
駅から近いためか、夜7時くらいから稼働率が上がってくる。
土日は堂々とボッタくる為、あまり稼動はよくない。
■客層
大体、年配3割・若者7割。
若者の比率が高い上、上級者も多いため立ち回りにくい。
■朝一の台の状態
全台7揃え。
リールガックンなどの判別は使えない。
設定変更も夜に行なっていそう。
これにより、朝一デモ画面のズレによる設定変更判別も利用不可。
■イベント内容
基本的にガセはない。
しかし、サラリーマンの一般的な給料日である25日を過ぎた後のイベントは要注意。
ほとんどが単なる回収イベント。
毎月7日に行われる「ラッキー7祭り」はかなりの信頼度がある。
このイベントでは、ほとんどのシマに複数6を置いていることが確認できた。
■設定変更パターン
読みやすくはない。
だが、前日大ヘコミの台・大爆発台には高設定を入れてこない傾向あり。
あと、高設定据え置きはほとんどない。
■喰える度
3点(10段階)
■総評
上級者が多い+6枚交換ということもあり、ハイエナにも不向き。
毎月7日のイベント以外は積極的に狙うべきホールではない。
===============
以上のような感じだった。
ここに記されている内容以外でも、このホールに対して日々感じたことなどが、ノートの備考欄にびっしりと書き込まれていた。
そして、この情報はホール状況が変わるたびに細かく更新されていく。
さらに、期間を区切っての各シマの平均設定や出玉状況などについても、別ページにまとめられていた。
他にやることがなく、時間がたっぷりと余っているからこそ、ここまで徹底的にできる。
これが優司の最大の強みであった。
◇◇◇◇◇◇
「ブルルルル……」
昼過ぎ。
『クリーム』での調査を終え、近くにある公園で一休みしていると、不意にポケットに入れておいた携帯が振動を始めた。
携帯を持って以来初めてのコールだったので、少し動揺してしまう。
「も、もしもし?」
たどたどしく電話に出る優司。
「おう! 俺だよ! 日高。
今日みんなで集まるから、お前も来いよな!
とりあえず夜8時に『串丸』集合だから!」
「う、うん、わかったよ。
それにしても、また串丸なんだ?」
「あそこは安いしうまいしで最高なんだよ!
じゃあ8時に来いよ! 遅れんなよ!」
「了解!」
日高からの3日ぶりの連絡。
もしやスロ勝負の相手が見つかったのか?と、声色には出さなかったもののやや興奮していた。
興奮すると同時に、緊張感も襲ってくる。
(仮に相手が決まったのなら……絶対に負けられないぞ。初戦から負けるなんてありえない。
いや、そもそも俺は負けたら終わりなんだ)
◇◇◇◇◇◇
「そうそう! そういえば言うの忘れてたッ!
ちっと聞いてくださいよッ!」
ホール調査が長引き、待ち合わせ時間から30分ほど遅れて『串丸』へ到着した優司。
入店すると、途端に聞こえてくる騒がしい小島の声。
声のトーンから、大分出来上がっていることがうかがえる。
「遅れてごめん。
ってか、相変わらずうるさいなー、小島」
「お? やっと来たか夏目! 先に始めてたぜ!」
真鍋が大声で反応した。
今日のメンバーは日高・真鍋・小島、そして優司の4人。
4人掛けテーブル席の奥に日高と真鍋が向かい合って座り、小島は真鍋の隣りに座っている。
優司は、空いていた日高の隣りに座った。
「わるい!
そこの『マーメイド』のぞいてたら遅くなっちゃったよ。
あそこ、なんかやけに刺激的なイベントやってない?」
間髪を入れずに真鍋が返答する。
「そう! そうなんだよ!
BIG回数とREG回数がゾロ目になったら『水着ギャルが肩揉んでくれる』っつーサービスだろ?
夏らしくていいよなぁ~!
俺、ついさっきまでチャレンジしてたんだよ!
いやぁ~、なかなかうまいことゾロ目にならねぇもんだな~」
「チャ、チャレンジしてたんだ……」
真剣に悔しがる真鍋、苦笑いを浮かべる優司……。
「ちょ、ちょっとちょっとぉ~!
そんなくだらないことで俺の話を中断しないでくださいよ」
軽くふくれっ面をしながら、優司と真鍋の会話に小島が割って入る。
「あ? てめぇ、くだらないとは何事だっ?
そのイベントの為だけに、俺がいくらブッ込んだと思ってんだよ!
ボーナス回数がゾロ目に近いからって理由だけで、あのクソつまんねー『目指せ!ドキドキ島』なんぞを打ってた俺の気持ちがお前にわかんのか?」
「あ、あれはあれで面白いじゃないッスか!
パンファン激アツッスよ!」
「そういう話をしてんじゃねぇ!」
「ま、まあ落ち着けよ……」
日高が呆れ顔で止めに入る。
その様子を見ながら、優司は横で声を出して笑っていた。
いつの間にやら、先ほどまでの「勝負相手が決まったのかどうか」という緊張感はなくなっていた。
(仲間ってのはいいものなんだな。知らなかった。
……この関係は大事にしないと。ほかの何よりも……)
優司のいつもの生活とは、近辺の各ホールを巡って情報を集めること。
ある程度の蓄えもできたため、さすがにコイン拾いまではやらなくなっていたが。
(今後、設定読みの勝負をしていく上で、ホール情報は絶対に必要だ。
今まで以上にこのノートを充実させていかないとな)
今となっては財産とも言える存在となった、優司のポケットサイズのスロノート。
日高や真鍋も一目置くこのノートには、近隣のホールについての詳細な情報が書き込まれている。
例えば、今優司が立ち寄っていた、駅の近くにある『クリーム』という店の場合。
===============
《クリーム》 駅から徒歩2分
■交換率
6枚
■客付き
平日は平均で6割程度。
駅から近いためか、夜7時くらいから稼働率が上がってくる。
土日は堂々とボッタくる為、あまり稼動はよくない。
■客層
大体、年配3割・若者7割。
若者の比率が高い上、上級者も多いため立ち回りにくい。
■朝一の台の状態
全台7揃え。
リールガックンなどの判別は使えない。
設定変更も夜に行なっていそう。
これにより、朝一デモ画面のズレによる設定変更判別も利用不可。
■イベント内容
基本的にガセはない。
しかし、サラリーマンの一般的な給料日である25日を過ぎた後のイベントは要注意。
ほとんどが単なる回収イベント。
毎月7日に行われる「ラッキー7祭り」はかなりの信頼度がある。
このイベントでは、ほとんどのシマに複数6を置いていることが確認できた。
■設定変更パターン
読みやすくはない。
だが、前日大ヘコミの台・大爆発台には高設定を入れてこない傾向あり。
あと、高設定据え置きはほとんどない。
■喰える度
3点(10段階)
■総評
上級者が多い+6枚交換ということもあり、ハイエナにも不向き。
毎月7日のイベント以外は積極的に狙うべきホールではない。
===============
以上のような感じだった。
ここに記されている内容以外でも、このホールに対して日々感じたことなどが、ノートの備考欄にびっしりと書き込まれていた。
そして、この情報はホール状況が変わるたびに細かく更新されていく。
さらに、期間を区切っての各シマの平均設定や出玉状況などについても、別ページにまとめられていた。
他にやることがなく、時間がたっぷりと余っているからこそ、ここまで徹底的にできる。
これが優司の最大の強みであった。
◇◇◇◇◇◇
「ブルルルル……」
昼過ぎ。
『クリーム』での調査を終え、近くにある公園で一休みしていると、不意にポケットに入れておいた携帯が振動を始めた。
携帯を持って以来初めてのコールだったので、少し動揺してしまう。
「も、もしもし?」
たどたどしく電話に出る優司。
「おう! 俺だよ! 日高。
今日みんなで集まるから、お前も来いよな!
とりあえず夜8時に『串丸』集合だから!」
「う、うん、わかったよ。
それにしても、また串丸なんだ?」
「あそこは安いしうまいしで最高なんだよ!
じゃあ8時に来いよ! 遅れんなよ!」
「了解!」
日高からの3日ぶりの連絡。
もしやスロ勝負の相手が見つかったのか?と、声色には出さなかったもののやや興奮していた。
興奮すると同時に、緊張感も襲ってくる。
(仮に相手が決まったのなら……絶対に負けられないぞ。初戦から負けるなんてありえない。
いや、そもそも俺は負けたら終わりなんだ)
◇◇◇◇◇◇
「そうそう! そういえば言うの忘れてたッ!
ちっと聞いてくださいよッ!」
ホール調査が長引き、待ち合わせ時間から30分ほど遅れて『串丸』へ到着した優司。
入店すると、途端に聞こえてくる騒がしい小島の声。
声のトーンから、大分出来上がっていることがうかがえる。
「遅れてごめん。
ってか、相変わらずうるさいなー、小島」
「お? やっと来たか夏目! 先に始めてたぜ!」
真鍋が大声で反応した。
今日のメンバーは日高・真鍋・小島、そして優司の4人。
4人掛けテーブル席の奥に日高と真鍋が向かい合って座り、小島は真鍋の隣りに座っている。
優司は、空いていた日高の隣りに座った。
「わるい!
そこの『マーメイド』のぞいてたら遅くなっちゃったよ。
あそこ、なんかやけに刺激的なイベントやってない?」
間髪を入れずに真鍋が返答する。
「そう! そうなんだよ!
BIG回数とREG回数がゾロ目になったら『水着ギャルが肩揉んでくれる』っつーサービスだろ?
夏らしくていいよなぁ~!
俺、ついさっきまでチャレンジしてたんだよ!
いやぁ~、なかなかうまいことゾロ目にならねぇもんだな~」
「チャ、チャレンジしてたんだ……」
真剣に悔しがる真鍋、苦笑いを浮かべる優司……。
「ちょ、ちょっとちょっとぉ~!
そんなくだらないことで俺の話を中断しないでくださいよ」
軽くふくれっ面をしながら、優司と真鍋の会話に小島が割って入る。
「あ? てめぇ、くだらないとは何事だっ?
そのイベントの為だけに、俺がいくらブッ込んだと思ってんだよ!
ボーナス回数がゾロ目に近いからって理由だけで、あのクソつまんねー『目指せ!ドキドキ島』なんぞを打ってた俺の気持ちがお前にわかんのか?」
「あ、あれはあれで面白いじゃないッスか!
パンファン激アツッスよ!」
「そういう話をしてんじゃねぇ!」
「ま、まあ落ち着けよ……」
日高が呆れ顔で止めに入る。
その様子を見ながら、優司は横で声を出して笑っていた。
いつの間にやら、先ほどまでの「勝負相手が決まったのかどうか」という緊張感はなくなっていた。
(仲間ってのはいいものなんだな。知らなかった。
……この関係は大事にしないと。ほかの何よりも……)
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話