ゴーストスロッター

クランキー

文字の大きさ
37 / 138
【第3章】

■第37話 : 友人たちの困惑

しおりを挟む
話は戻り、優司と小島と斎藤の3人が飲んでいる居酒屋『魚次郎』。

依然、優司の愚痴は続いていた。



「なぁ小島ァ……。
 なんで俺みたいな優秀なスロッターが、こんなに苦しまなきゃいけねぇんだよぉ……。
 おかしくねぇかぁ……?」

テーブルに突っ伏し、ギリギリで呂律を回しながら言葉を繰り出す。
既に優司は泥酔状態だった。

「わ、わかったッスから! なるべく早めに相手を探しますよ!
 日高さん達も動いてくれてるんだし、もう少ししたら見つかりますって」

「だといいけどなぁ……どうだかなぁ……」

「……」

もはや、小島も斉藤もついていけないといった感じだった。
たまらず斉藤が反論する。

「ちょっと待ってよ!
 日高君も真鍋君も、一生懸命勝負相手を探してくれてるんだし、そんな言い方はないんじゃないの?」

「なぁにムキになってんだよ斉藤ぉ。いちいちあつくなるなって~」

酒に染まった真っ赤な顔をしながら、半笑いで斉藤の肩に手を置く優司。

酒に弱い方ではない優司だが、今日はいつもよりも明らかに酒量が多い。
普段とは比べ物にならないくらいの酔い方だった。

ここで二人とも我慢の限界に達し、会計をして店を出ることにした。



◇◇◇◇◇◇



会計を済ませ、店の外へ出た3人。

「んじゃぁ、俺は帰るよ~。
 帰るっつっても、俺に家はないんだけどねぇ。所詮はマンガ喫茶かカプセルだよ。ハッハッハッ!」

ご陽気な優司とは裏腹に、小島も斎藤も渋面を作っている。

「じゃあなぁ~! また明日ぁ~!」

楽しそうに千鳥足で去っていく優司を見送りながら、斉藤と二人になった小島がポツリと漏らす。

「夏目君、なんか変わっちゃったッスね……」

「ああ、そうだな。
 さすがに普段はあそこまでじゃないけど」

「まあ、今日はだいぶ酒入ってたッスからねぇ」

「でも、最初会った時と比べりゃかなり変わったな。
 真鍋君に勝った人だからってんで、同い年とはいえかなり尊敬してたんだけどなぁ、俺は。
 なんか、徐々に変わってきちゃったよな。」

「鮫島に勝ったあたりからッスよね。
 アイツが、賭け金の30万をバックれようとした時に真鍋さん達が追い込みかけたじゃないッスか?
 その様子を見てた夏目君が、『まだ甘い、もっと徹底的に追い込もう』みたいなこと言ってたの見ちゃって……
 今までの夏目君なら、絶対そんなこと言わなかったのに」

「確かに、前よりは何事にも強気になったよな。
 よく言えば『自分に自信を持つようになった』、悪く言えば『傲慢になった』、って感じだな」

「そうッスね。
 自分は今でも夏目君を嫌いじゃないんスけど、やっぱり以前よりは取っ付きにくくなったッス……」

「俺もそう思うよ。
 でも、ああやって変わっちゃったのも、わからないでもないけどな。
 みじめなホームレスの立場から、スロ勝負の連勝で200万円以上の金を手にして、名前も一気に知れ渡って、っていう感じで状況が激変したんだから。
 今の自分が置かれている環境に感情がついていかなくて、おかしくなっちゃってるのかもな」

「なるほどッス……」

軽くため息をついた後、斉藤が話し出す。

「なんにせよ、夏目君の設定読みの力は本物だ。俺としては、このまま勝ち続けて欲しい。
 なんだかんだで、仲間だしさ」

「……ッスね」

「それにさ、勝ち続けることで勝つことに慣れて、精神状態も安定して、また当時の謙虚な夏目君に戻ってくれるかもしれないじゃん」

「なるほど、確かにそうッスね。
 じゃあ、とにもかくにも、まずは勝負相手を少しでも早く探すべきですか?」

「そうだな」

「多少厳しい相手でも大丈夫ッスかね?」
 北条さんとか緒方さんとか」

「ああ。広瀬君にも勝っちゃった以上、そのへんのレベルの人に挑まないと受けてくれないだろ。
 彼らが受けてくれるかどうかはわかんないけど」

斎藤の言葉を受け、小島は何かを決意したように口を開いた。

「あの……。
 それだったら、いっそここらで神崎さんに挑んでみるってのはどうッスかね……?」

斎藤の顔色が変わる。

「はっ? お前、言ってる意味わかってんのかっ?」

「い、いや、そりゃ無茶言ってんのはわかってるッスけど、是非見てみたいって感じで……」

「あのなぁ……。
 小島の神崎さん憧れが凄いのは知ってるけど、もし実現したとしてもどっちかが泣くことになるんだぜ?
 そもそも、あの神崎さんが簡単にパチスロ勝負なんて受けてくれないだろうし」

「やっぱそうッスかねぇ……」

「ああ。もし勝負してくれても、夏目君が負けるのは目に見えてるぞ。
 神崎さんは格が違うんだしさ」

「そうッスね……。確かに、神崎さんがパチスロで誰かに負けるなんて姿は想像できないッス」

「だろ?
 俺たちは、あくまで夏目君の味方なんだ。そうじゃなきゃダメなんだよ。
 あんましそういうことは言わない方がいいぞ」

「……ッスね。気を付けます」

そのまま二人とも、なんとなく曇った表情のまま黙りこくってしまった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...