ゴーストスロッター

クランキー

文字の大きさ
38 / 138
【第3章】

■第38話 : 神崎真佐雄

「すいません伊達さん! 遅くなっちゃって!」

息を切らせながら、若い二人の男が走り寄ってきた。

「おう! ノブ、安井! やっと来たか。
 最近タルんでんじゃないのか?」

「違うんですよッ!
 安井のヤツが寝坊して……」

言われた安井は、舌を出しながら照れたような笑いを浮かべている。

「違ってないじゃんよ……。要はタルんでんじゃねぇか。
 ったく、しょうがねぇなぁ。
 まあいいや、ほらコレ、いつもの紙な」

ノブがその紙を受け取った。

「どうも! 助かります伊達さん!
 いやぁ、神崎さんにはいつも助けられっぱなしで……
 神崎さんからのこの設定予想メモがないと、今頃俺たち路頭に迷ってますよ。
 早く頑張って一人で喰っていけるようにならないと」

「おいおい……。
 真佐雄まさおは、お前らにスロ生活にどっぷりハマって欲しいなんて思ってないんだぜ。
 逆に、早く一般社会に巣立っていって欲しいと思ってんだからさ」

「え~? 俺も安井もまだ19だし、あと2年くらいは大丈夫ですよ~!」

「……まあ、俺もスロ生活にどっぷりな人間だから、偉そうなこと言えた義理じゃないんだけどな」

そう言って伊達は、頭を掻きながら苦笑いを浮かべた。

「ところで、神崎さんって今日は様子見に来てくれるんですか?」

「いや、あいつは今日も夜だけだ。昼はいろいろ用事があるらしい」

「そうなんですか……。
 わかりました! とりあえず、このホールは俺たちに任せてください!」

「ああ。
 それじゃ俺は、他のヤツらんとこも回ってくるから。それじゃあな」

ノブと安井にそう告げ伊達は、足早にその場を立ち去った。

伊達を見送った後、ノブが受け取ったメモを開きながら呟く。

「それにしても、やっぱ凄いよなあ神崎さんは。
 実際に自分で打つことはほとんどないのに、朝と夜の軽いデータ取りだけでこうやって的確に出る台がわかるんだからさ」

「……まあ、ね」

安井は、やや不満げな面持ちで答えた。
その様子に気付いたノブがすぐさま問う。

「なんだよ安井。神崎さんに文句でもあるのか」

すると安井は、重々しく口を開いた。

「……いや、確かに凄いとは思うけどさぁ、なんだかうまいこと利用されてるような気もすんだよなぁ」

「利用?」

「ああ。
 今ノブも言ってたけど、神崎さんって自分ではほとんど打たないじゃん。
 俺たちみたいな人間をいっぱい集めて、打つ台をそれぞれ指示して、勝った場合は勝ち金の20%を納めさせるわけだろ?
 要は、俺たちは都合良く打ち子として利用されてんじゃないかなぁ、って思ってさ」

すぐさまノブが語気を荒めて返す。

「安井よぉ、それ本気で言ってんのか?」

「え……?」

「神崎さんが指示してくれるからこそ、俺たちはなんの苦労もなく高設定台掴めるんじゃねぇかよッ!
 おかげで、立ち回りのコツも分かってくるし。
 その授業料と思えば、20%くらい屁でもないだろ?
 神崎さんだって、霞を食って生きてるわけじゃない。無償で、何十人っている俺たちみたいな人間のために時間を使うわけにもいかないだろうが」

「そ、そりゃまあ……」

たじたじの安井。
さらにノブが畳みかける。

「しかも俺らは、無理矢理神崎さんの指示に従わされてるんじゃない。
 ついさっき伊達さんも言ってたけど、むしろ早く自立しろって言われてるよな?」

「……」

「でも俺たちには、スロで一人で立ち回って勝つほどの腕がないし、将来何がやりたいかもまだ見つかってないから、仕方なく神崎さんが面倒みてくれてんだろ?
 そんな立場の俺やお前が、神崎さんに対して不満を持つなんておこがましすぎるんだよ!」

烈火のごとく怒るノブの勢いに押され、すっかりしょげ返ってしまった安井。

「わ、悪かったよ……
 そういうつもりじゃないって……
 もちろん俺だって、神崎さんのことは尊敬してるし、感謝もしてるんだからさ……」

「じゃあ、そういうふざけたことは二度と言うな。たとえ冗談でも」

「わかったよ……」

痛いところをズバリと突かれてしまい、安井は恥ずかしそうに目を伏せた。
ノブはその様子を見て、ようやく溜飲を下げた。

と同時に、ノブの頭に一つの疑問が頭をよぎる。

(でも、確かに不思議な感じはする。
 神崎さん、なんで自分では打たないのかな?
 あのランクの人になると、もう実働するのは面倒なのかな。
 ……まあ、それでも俺たちには何にも言う権利はない。助けてもらってるのはこっちだし)

よし、と自分に気合を入れるように声を出したノブは、伊達から渡された設定予想メモを握りしめながら、今日稼働する予定のホールへと歩き出した。
安井も、慌ててノブの後を追った。
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話