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【第3章】
■第41話 : 広瀬由紀也
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(ったく、なんだったんだアイツ……)
八尾と勝負することを確約し、優司はそのまま串丸へと歩いていた。
ブツブツとボヤきながら。
終始挑発的な態度で勝負を吹っかけてきた八尾に、どうしても苛立ちを抑えられなかった。
だがその一方で、得体の知れない不気味さも感じる。
(アイツは俺のことを知っていた。負けなしで8連勝してるってことを。
なのに、なんであんなに平然と勝負を挑んでこれるんだ?
逆出玉勝負なんて言ってたけど、それじゃ俺が有利になるだけじゃないか。
何を企んでるんだ……)
いくら考えてもわからない疑問。
それもそのはず、何しろあの『八尾』という男に会ったのはさっきが初めて。
そんな男のことについてあれこれ考えたところで、なんら答えなど出てくるわけがない。
(……ま、考えてもしょうがないか。
とりあえず日高とかに八尾のことを聞いてみよう。なんか知ってるかもしれないしな!
よし、それでいこ……ん?)
とりあえず問題を保留し、日高たちのいる串丸へ急ごうと決意した矢先、優司の視線に入る一人の男。
(あ、あれは…… 広瀬っ?)
広瀬。
それは、優司のスロ勝負における8戦目の相手。
かなりレベルの高いスロッターであり、この男に勝ったことによって優司はこの街で一気に有名になった。
予想外の男との不意の遭遇に、若干うろたえる優司。
気付かないフリをして通り過ぎようとしたが……
「ん……?
あれ? もしかして夏目か? 夏目だよな?」
まんまと見つかってしまった。
知らんぷりしようとしたタイミングが遅かったようだ。
「あ、ああ。ひ、久しぶりだね……」
引きつった表情で返事をする優司とは対照的に、屈託のない笑みで喋りかけてくる広瀬。
「なんだよ~! なんか他人行儀だなぁ!
いつもみたく『広瀬ちゃん』って呼んでくれよ~!」
「い、いや……そんなふうに呼んだことないし……」
「ハッハッハ!
いちいち真面目に答えちゃうところが面白いんだよねぇ、夏目は~! 元気かぁ?」
「ま、まあ……それなりに……」
「なんだよそれなりって~!
お、そうだそうだ! すぐそこにすっげぇ面白いラーメン屋できたんだよ! 『ラーメン寿司』とかいう名前の! なんかイカしたラーメン屋だろ?」
「そ、それって『面白い寿司屋』なんじゃ……?」
「ハハハッ! まぁ、細かいことは気にすんなって。
オゴるからさぁ~、今から行こうぜ!」
大声で喋りながら、嬉しそうな顔で強引に肩を組んでくる広瀬。
実は優司、この広瀬が少々苦手だった。
決して嫌いというわけではない。
ただ、この広瀬のノリや明るさが、優司にとってはやや眩しいのだ。
広瀬は、優司よりも2つ年上の22歳。
見た目は、長身痩せ型の体型で、やや茶色がかったサラサラとした髪にオシャレな服装。
いかにも今風の男といった感じだった。
この広瀬、普段は実に陽気で、仲間達にもやたら慕われている。
しかし、勝負前も勝負中も、優司や日高や真鍋は誰一人この広瀬の性格に気付かなかった。
気付いたのは、勝負終了後である。
広瀬は、自分が敗北したことを知ると、それまではニコリともせずしかめっ面で通していたその表情が、一気に緩んだのだ。
「勝負がついた以上、もう敵じゃないんだし、ギスギスしててもつまらないじゃん』と言い放ちながら。
非常にメリハリのある男だった。
「あ、あのさぁ広瀬君。
俺、今から日高たちと飲みに行くんだよね。
だから、ラーメン寿司ってのはまた今度で……」
「うっそぉ? 断っちゃうのぉ?
なんだ、そうかぁ……。いろいろ語りたかったのに。
ウチのグループもいろいろあってさ。
まったく、面倒くさいよ」
「ん? いろいろって?」
「くだらない揉め事。
ウチのグループの一人が、伊藤にカラんだことが原因なんだけどね」
伊藤は、優司のスロ勝負7戦目の相手で、この男に勝ったことがきっかけで広瀬とも勝負することになった。
「伊藤君にカラんだ?」
「ああ。夏目との設定読み勝負に負けたことに対してさ。
伊藤に向かって散々『不甲斐ない』だの『ダサい』だのってつっかかってさぁ。
まあ、前々からいろいろトラブルはあったんだけどね」
「なんか、俺が余計なことしたから……迷惑かけちゃってスンマセン」
「いやいやいや、それは全然関係ないよ!
俺たちはお互い納得してあの勝負をしたんだし。
いろいろ勉強にもなったし、今でも心底勝負してよかったと思ってるよ」
広瀬の言葉を聞き、ホッとした表情を浮かべる優司。
とはいえ、広瀬がこんなことで逆恨みするような人間でないことはなんとなくわかっていたのだが。
「で、結局そいつはどうしたの?
そんなに揉めちゃったら、その男も広瀬君のグループに居づらいでしょ」
「ああ、結局グループから抜けてもらった。
根はいいヤツだったし、無理矢理追い出すみたいなのはイヤだったんだけどなぁ……。
まあ、いい機会だったしね。
それまでも、他の皆と噛み合ってなかったみたいだし、そろそろ独立の時期でもあったからな、あいつも。
ウチは、ある程度のレベルに達したら独立してもらうようにしてんだよね。神崎ンとこと一緒で」
「へぇ、そうなんだ」
「ああ。ダラダラとツルんでてもしょうがないしね。
ちなみにあいつ、ちょっと自信過剰っていうか、まあそういうところがあるからさ、夏目も気をつけなよ!
『俺なら夏目に勝てる』みたいなことも言ってたし。
確かに、スロの腕はそれなりに良いんだけどさ」
この言葉を聞き、優司の顔色が変わる。
「……ちょ、ちょっと待って。
そいつの名前って、もしかして……八尾……?」
「えっ? な、なんで夏目が知ってんの……?
もしかして、もう仕掛けたのかアイツっ?」
八尾の名前を聞いて、広瀬の表情もみるみるうちに変わっていった。
八尾と勝負することを確約し、優司はそのまま串丸へと歩いていた。
ブツブツとボヤきながら。
終始挑発的な態度で勝負を吹っかけてきた八尾に、どうしても苛立ちを抑えられなかった。
だがその一方で、得体の知れない不気味さも感じる。
(アイツは俺のことを知っていた。負けなしで8連勝してるってことを。
なのに、なんであんなに平然と勝負を挑んでこれるんだ?
逆出玉勝負なんて言ってたけど、それじゃ俺が有利になるだけじゃないか。
何を企んでるんだ……)
いくら考えてもわからない疑問。
それもそのはず、何しろあの『八尾』という男に会ったのはさっきが初めて。
そんな男のことについてあれこれ考えたところで、なんら答えなど出てくるわけがない。
(……ま、考えてもしょうがないか。
とりあえず日高とかに八尾のことを聞いてみよう。なんか知ってるかもしれないしな!
よし、それでいこ……ん?)
とりあえず問題を保留し、日高たちのいる串丸へ急ごうと決意した矢先、優司の視線に入る一人の男。
(あ、あれは…… 広瀬っ?)
広瀬。
それは、優司のスロ勝負における8戦目の相手。
かなりレベルの高いスロッターであり、この男に勝ったことによって優司はこの街で一気に有名になった。
予想外の男との不意の遭遇に、若干うろたえる優司。
気付かないフリをして通り過ぎようとしたが……
「ん……?
あれ? もしかして夏目か? 夏目だよな?」
まんまと見つかってしまった。
知らんぷりしようとしたタイミングが遅かったようだ。
「あ、ああ。ひ、久しぶりだね……」
引きつった表情で返事をする優司とは対照的に、屈託のない笑みで喋りかけてくる広瀬。
「なんだよ~! なんか他人行儀だなぁ!
いつもみたく『広瀬ちゃん』って呼んでくれよ~!」
「い、いや……そんなふうに呼んだことないし……」
「ハッハッハ!
いちいち真面目に答えちゃうところが面白いんだよねぇ、夏目は~! 元気かぁ?」
「ま、まあ……それなりに……」
「なんだよそれなりって~!
お、そうだそうだ! すぐそこにすっげぇ面白いラーメン屋できたんだよ! 『ラーメン寿司』とかいう名前の! なんかイカしたラーメン屋だろ?」
「そ、それって『面白い寿司屋』なんじゃ……?」
「ハハハッ! まぁ、細かいことは気にすんなって。
オゴるからさぁ~、今から行こうぜ!」
大声で喋りながら、嬉しそうな顔で強引に肩を組んでくる広瀬。
実は優司、この広瀬が少々苦手だった。
決して嫌いというわけではない。
ただ、この広瀬のノリや明るさが、優司にとってはやや眩しいのだ。
広瀬は、優司よりも2つ年上の22歳。
見た目は、長身痩せ型の体型で、やや茶色がかったサラサラとした髪にオシャレな服装。
いかにも今風の男といった感じだった。
この広瀬、普段は実に陽気で、仲間達にもやたら慕われている。
しかし、勝負前も勝負中も、優司や日高や真鍋は誰一人この広瀬の性格に気付かなかった。
気付いたのは、勝負終了後である。
広瀬は、自分が敗北したことを知ると、それまではニコリともせずしかめっ面で通していたその表情が、一気に緩んだのだ。
「勝負がついた以上、もう敵じゃないんだし、ギスギスしててもつまらないじゃん』と言い放ちながら。
非常にメリハリのある男だった。
「あ、あのさぁ広瀬君。
俺、今から日高たちと飲みに行くんだよね。
だから、ラーメン寿司ってのはまた今度で……」
「うっそぉ? 断っちゃうのぉ?
なんだ、そうかぁ……。いろいろ語りたかったのに。
ウチのグループもいろいろあってさ。
まったく、面倒くさいよ」
「ん? いろいろって?」
「くだらない揉め事。
ウチのグループの一人が、伊藤にカラんだことが原因なんだけどね」
伊藤は、優司のスロ勝負7戦目の相手で、この男に勝ったことがきっかけで広瀬とも勝負することになった。
「伊藤君にカラんだ?」
「ああ。夏目との設定読み勝負に負けたことに対してさ。
伊藤に向かって散々『不甲斐ない』だの『ダサい』だのってつっかかってさぁ。
まあ、前々からいろいろトラブルはあったんだけどね」
「なんか、俺が余計なことしたから……迷惑かけちゃってスンマセン」
「いやいやいや、それは全然関係ないよ!
俺たちはお互い納得してあの勝負をしたんだし。
いろいろ勉強にもなったし、今でも心底勝負してよかったと思ってるよ」
広瀬の言葉を聞き、ホッとした表情を浮かべる優司。
とはいえ、広瀬がこんなことで逆恨みするような人間でないことはなんとなくわかっていたのだが。
「で、結局そいつはどうしたの?
そんなに揉めちゃったら、その男も広瀬君のグループに居づらいでしょ」
「ああ、結局グループから抜けてもらった。
根はいいヤツだったし、無理矢理追い出すみたいなのはイヤだったんだけどなぁ……。
まあ、いい機会だったしね。
それまでも、他の皆と噛み合ってなかったみたいだし、そろそろ独立の時期でもあったからな、あいつも。
ウチは、ある程度のレベルに達したら独立してもらうようにしてんだよね。神崎ンとこと一緒で」
「へぇ、そうなんだ」
「ああ。ダラダラとツルんでてもしょうがないしね。
ちなみにあいつ、ちょっと自信過剰っていうか、まあそういうところがあるからさ、夏目も気をつけなよ!
『俺なら夏目に勝てる』みたいなことも言ってたし。
確かに、スロの腕はそれなりに良いんだけどさ」
この言葉を聞き、優司の顔色が変わる。
「……ちょ、ちょっと待って。
そいつの名前って、もしかして……八尾……?」
「えっ? な、なんで夏目が知ってんの……?
もしかして、もう仕掛けたのかアイツっ?」
八尾の名前を聞いて、広瀬の表情もみるみるうちに変わっていった。
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