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【第3章】
■第42話 : 驚嘆
(まさか、広瀬君のグループの人間だったとは……)
串丸へ向かいながら、先ほどの広瀬との会話を思い出す。
あれから、八尾のことについて少しだけ、広瀬の口から聞いた。
妙な劣等感を持っていて、特に勝負の勝ち負けや、人としての優劣には異常にこだわる男だということ。
年齢は広瀬と同じ22歳であること。
八尾と出会ったのは2年前で、その頃はパチスロで借金まみれだったということ。
その後広瀬のグループに入り、メキメキと力をつけていったこと、などなど。
そして、最大の特徴が「ヒキ強」。
とにかくヒキが強く、読みをハズして低設定台に座ってしまっても勝ってしまうことが多い。
なので、しっかりと立ち回って好収支を残しているのに、周りからはなかなか認めてもらえないことが多く、「アイツは低設定に座っても出すからな……」と陰口を叩かれてしまうらしかった。
それが、仲間達と対立していった最大の原因でもあるとのこと。
パチスロの腕というものは、必ずしも収支(勝ち金)の多さとは比例しない。
その収支に至る過程、つまりどれだけ多くの高設定台や高期待値台に座ってきたか、どれだけ高設定台や高期待値台での稼動時間が多いかが最重要ポイントなのだ。
例えば、以下の2つのパターン。
①設定6を10日連続でツモり、トータル収支がマイナス5万円
②一度も設定6をツモれなかったが、トータル収支はプラス5万円
以上のような場合、パチスロを知らない人から見れば「①が下手、②が上手」と判断するだろう。
どんなジャンルにおいても、素人は結果しか見ないもの。
サッカーの素人が、その試合内容などは全く関係がなく、ラッキーだろうとなんだろうと点数を多く取った方のチームを強いと判断するように。
しかし、パチスロを熟知している人ならば、全く逆の判定を下す。
そう、「①が上手、②が下手」となるのだ。
パチスロの腕と収支の多寡は、完全リンクするものではない。
もちろん、高設定台・高期待値台の稼動時間が長ければ、必然的に収支も上向くことが通常だが。
「ヒキ強」が原因で、仲間たちから正当に評価されずにいた八尾。
そこそこ良い立ち回りをするのに、読みをハズしても勝ってしまうイメージが強いことと、「ヒキも実力のうちだ」と言い切ってしまうその特異な自論のため、段々周囲と対立していったとのことだった。
(ヒキも実力なんて言ってるようじゃ、そりゃ仲間から浮いちゃうよな……)
優司としても、当然八尾の理論は受け入れられない。
ヒキなどという不確定な要素まで、パチスロの実力に数えられてはたまったものではない。
(まあいいさ。俺としては、ただ勝負に勝つだけだ。それしかないんだからな)
軽く拳を握り締めながら、改めて勝ちへの決意を固め、見慣れた看板『串丸』を横目に店の中へと入っていった。
◇◇◇◇◇◇
「わるい、遅くなった」
既に始まっている飲み会。
メンバーは、日高・真鍋・小島・斉藤・ヒデ。
優司を入れて合計6人だった。
遅れて到着した優司の言葉に真鍋が答える。
「よぉ、やっと来たかよ!」
「ああ、ホントはもっと早く来れたんだけどさ、ちょっといろいろあって」
「ん? いろいろ?」
「ああ。
実はさ……唐突なんだけども……。
ついに決まったんだよ、勝負の相手が!
しかも、向こうから仕掛けてきてさ」
そう言いながら真鍋の隣りの席へと座る優司。
この優司の報告を受け、日高が真っ先に反応する。
「マジかよ?
あんだけいろんなヤツに断られまくってたのに、わざわざ向こうから挑んできたって?」
「そうなんだよ。俺もびっくりしちゃったんだけどさ。
でも……ちょっと『いわくつき』なんだよね」
「ん? いわくつき?」
「なんか、元々は広瀬君のグループにいたヤツらしくてさ。
名前は八尾っていうんだけど。
えらく自分に自信を持ってるヤツで、凄まじく負けず嫌いなんだってさ」
引き続き日高が答える。
「へぇ、広瀬のグループにいたのか。
でもよ、そんくらいなら別にいいんじゃないか?
別に『いわくつき』ってほどでもないだろ。
負けず嫌いなんてのは、俺もそうだし」
「ところがさ、さっきばったりと広瀬君に会って、いろいろと八尾のことを聞いたんだよ。
あんまし良くない話ばっかだったもんで、ちょっとね……」
「良くない話?」
「うん。勝負に勝つ為には手段を選ばないとかなんとか……。
とにかく、異常なまでに『勝敗』ってもんにこだわる男らしいんだよ」
食い入るように優司と日高の会話を聞いている他の4人。
ここで真鍋が口をはさむ。
「なるほど……。それはちっと面倒くさいかもな。
相手がどこまでやってくんのかがわかんねぇし。
卑怯な手段やら小賢しい作戦やら、疑い出したらキリがないぜ」
「そうなんだよ。
でも現実には、俺も相手が決まらなくて困ってる状態でしょ?
選り好みできないなとも思ってさ、ついつい勢いで受けちゃったんだよね。」
ここでしばらくの間沈黙が続いた。
「で、でも、何してこようと『設定読み』で夏目君が負けるとは思えないッスよ!
大丈夫ですって!」
数十秒の沈黙の後、小島が大きな声で皆に向かって喋りだした。
しかし、そんな小島のトーンとは裏腹の小さな声で、優司がボソリと呟く。
「それがさ、今回は『設定読み』じゃないんだよね……」
「えッ?」
この優司の呟きには、ついつい全員が驚嘆の声を上げた。
あれだけ頑なに『設定読み』にこだわってきた優司。
皆、そのこだわりを知っていたがために、勝負形式が変わっていることに驚きを隠せなかったのだ。
ここから優司は、八尾とのやりとりで『逆出玉勝負』となった経緯を語っていった。
串丸へ向かいながら、先ほどの広瀬との会話を思い出す。
あれから、八尾のことについて少しだけ、広瀬の口から聞いた。
妙な劣等感を持っていて、特に勝負の勝ち負けや、人としての優劣には異常にこだわる男だということ。
年齢は広瀬と同じ22歳であること。
八尾と出会ったのは2年前で、その頃はパチスロで借金まみれだったということ。
その後広瀬のグループに入り、メキメキと力をつけていったこと、などなど。
そして、最大の特徴が「ヒキ強」。
とにかくヒキが強く、読みをハズして低設定台に座ってしまっても勝ってしまうことが多い。
なので、しっかりと立ち回って好収支を残しているのに、周りからはなかなか認めてもらえないことが多く、「アイツは低設定に座っても出すからな……」と陰口を叩かれてしまうらしかった。
それが、仲間達と対立していった最大の原因でもあるとのこと。
パチスロの腕というものは、必ずしも収支(勝ち金)の多さとは比例しない。
その収支に至る過程、つまりどれだけ多くの高設定台や高期待値台に座ってきたか、どれだけ高設定台や高期待値台での稼動時間が多いかが最重要ポイントなのだ。
例えば、以下の2つのパターン。
①設定6を10日連続でツモり、トータル収支がマイナス5万円
②一度も設定6をツモれなかったが、トータル収支はプラス5万円
以上のような場合、パチスロを知らない人から見れば「①が下手、②が上手」と判断するだろう。
どんなジャンルにおいても、素人は結果しか見ないもの。
サッカーの素人が、その試合内容などは全く関係がなく、ラッキーだろうとなんだろうと点数を多く取った方のチームを強いと判断するように。
しかし、パチスロを熟知している人ならば、全く逆の判定を下す。
そう、「①が上手、②が下手」となるのだ。
パチスロの腕と収支の多寡は、完全リンクするものではない。
もちろん、高設定台・高期待値台の稼動時間が長ければ、必然的に収支も上向くことが通常だが。
「ヒキ強」が原因で、仲間たちから正当に評価されずにいた八尾。
そこそこ良い立ち回りをするのに、読みをハズしても勝ってしまうイメージが強いことと、「ヒキも実力のうちだ」と言い切ってしまうその特異な自論のため、段々周囲と対立していったとのことだった。
(ヒキも実力なんて言ってるようじゃ、そりゃ仲間から浮いちゃうよな……)
優司としても、当然八尾の理論は受け入れられない。
ヒキなどという不確定な要素まで、パチスロの実力に数えられてはたまったものではない。
(まあいいさ。俺としては、ただ勝負に勝つだけだ。それしかないんだからな)
軽く拳を握り締めながら、改めて勝ちへの決意を固め、見慣れた看板『串丸』を横目に店の中へと入っていった。
◇◇◇◇◇◇
「わるい、遅くなった」
既に始まっている飲み会。
メンバーは、日高・真鍋・小島・斉藤・ヒデ。
優司を入れて合計6人だった。
遅れて到着した優司の言葉に真鍋が答える。
「よぉ、やっと来たかよ!」
「ああ、ホントはもっと早く来れたんだけどさ、ちょっといろいろあって」
「ん? いろいろ?」
「ああ。
実はさ……唐突なんだけども……。
ついに決まったんだよ、勝負の相手が!
しかも、向こうから仕掛けてきてさ」
そう言いながら真鍋の隣りの席へと座る優司。
この優司の報告を受け、日高が真っ先に反応する。
「マジかよ?
あんだけいろんなヤツに断られまくってたのに、わざわざ向こうから挑んできたって?」
「そうなんだよ。俺もびっくりしちゃったんだけどさ。
でも……ちょっと『いわくつき』なんだよね」
「ん? いわくつき?」
「なんか、元々は広瀬君のグループにいたヤツらしくてさ。
名前は八尾っていうんだけど。
えらく自分に自信を持ってるヤツで、凄まじく負けず嫌いなんだってさ」
引き続き日高が答える。
「へぇ、広瀬のグループにいたのか。
でもよ、そんくらいなら別にいいんじゃないか?
別に『いわくつき』ってほどでもないだろ。
負けず嫌いなんてのは、俺もそうだし」
「ところがさ、さっきばったりと広瀬君に会って、いろいろと八尾のことを聞いたんだよ。
あんまし良くない話ばっかだったもんで、ちょっとね……」
「良くない話?」
「うん。勝負に勝つ為には手段を選ばないとかなんとか……。
とにかく、異常なまでに『勝敗』ってもんにこだわる男らしいんだよ」
食い入るように優司と日高の会話を聞いている他の4人。
ここで真鍋が口をはさむ。
「なるほど……。それはちっと面倒くさいかもな。
相手がどこまでやってくんのかがわかんねぇし。
卑怯な手段やら小賢しい作戦やら、疑い出したらキリがないぜ」
「そうなんだよ。
でも現実には、俺も相手が決まらなくて困ってる状態でしょ?
選り好みできないなとも思ってさ、ついつい勢いで受けちゃったんだよね。」
ここでしばらくの間沈黙が続いた。
「で、でも、何してこようと『設定読み』で夏目君が負けるとは思えないッスよ!
大丈夫ですって!」
数十秒の沈黙の後、小島が大きな声で皆に向かって喋りだした。
しかし、そんな小島のトーンとは裏腹の小さな声で、優司がボソリと呟く。
「それがさ、今回は『設定読み』じゃないんだよね……」
「えッ?」
この優司の呟きには、ついつい全員が驚嘆の声を上げた。
あれだけ頑なに『設定読み』にこだわってきた優司。
皆、そのこだわりを知っていたがために、勝負形式が変わっていることに驚きを隠せなかったのだ。
ここから優司は、八尾とのやりとりで『逆出玉勝負』となった経緯を語っていった。
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