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【第4章】
■第67話 : 無為
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(眠い……
やっぱ1時間睡眠じゃキツいな……
久しぶりだな、緊張してなかなか寝付けなかったなんて)
朝9時にマンガ喫茶を後にし、フラフラと歩きながら繁華街へと向かう優司。
(今まで散々脅かされてきたもんな。乾と神崎だけはやめとけ、みたいな感じで。
そりゃ緊張もするって。ったく……)
心の中でブツブツと呟きながらも、予定通り乾を探すために徘徊を始めた。
◇◇◇◇◇◇
14:00。
朝から休みなくいろいろなホールを渡り歩いていた優司。
しかし、実際はただフラフラと歩き回っているだけで、なんの実りもない時間だった。
何しろ、優司は乾の顔を知らないのだから。
(くそ……
そのへんのヤツにいろいろ聞けたら楽なんだけどなぁ……)
顔を知らないので、それっぽい人間に手当たり次第話しかけ、乾を知っているようであれば用件を伝えてもらう、という方法しかないのだが、なかなか声をかけられずにいた。
理由は、日高たちに知られたくないから。
もしそのへんのスロッターに「乾を見てないか?」などと聞きまわれば、自然と「あの夏目優司が、ついに乾に勝負を吹っかけるのか」と話題になることは明白。
となると、当然その話は日高たちに伝わってしまう。
優司にとって、それはなるべく避けたい事態だった。
小島にも一応諦めたフリをしておいたし、これ以上日高たちとも揉めたくない。
そんな感情から、とにかく一人でコトを進め、詳しい経過は事後報告でいいだろうと考えたのだ。
勝負の段取りを決め、こっそりと勝負し、そしていきなり勝利報告をすれば、さすがにみんなにも認めてもらえる、自分が正しかったと証明できる、こう考えていたのだ。
どうしようかと悩みながら、必死で歩き回る優司。
しかし、誰にどう声をかけてよいのかわからない。
変に声をかければ、日高たちにあっさりと知られてしまうかもしれない。
それだけはなんとしても避けたい。
そんなジレンマに苛まれながら、虚しい徘徊が続く。
そのうち、段々とこの徘徊がバカバカしい徒労に思えてきてしまった。
(そういえば誰か、『乾は最近じゃほとんどこの街には来ない』なんて言ってたっけ。
いくら歩き回ったって無駄なんじゃ……?
大体、なんなんだよ……。スロで喰ってるわけでもなく、遊びで打ってるような人間が、俺よりも上だっていうのか……?
そんなバカな! ふざけるなってんだよ!)
◇◇◇◇◇◇
18:30。
(はぁ。 もう今日はやめよう。
ただブラブラしてたってなんの意味もない……)
結局、なんの収穫もないまま終わった一日。
最後にチェックしたホール「マーメイド」の近くにある公園で、一人缶コーヒーを飲みながら落ち込む。
一日中歩き回ったせいか、日頃の運動不足も祟り、足がパンパンになっていた。
疲労感が余計に虚しさを増長させる。
しばらく呆けた後、生気なく立ち上がる。
そして、軽くうつむきながらフラフラと公園を出て、宿泊先のマンガ喫茶へと歩いていく優司。
その時だった。
「えっ……? う、嘘っ……?」
不意に前方から、若い女の声が聞こえてきた。
伏し目がちだった優司だが、思わずその声に反応し顔を上げると、そこには、驚いた表情のまま固まっている若い女と、その連れの男がいた。
女は目線をはずさないまま、何かを言いたそうに優司を見つめている。
あまりにまじまじと自分を見つめたまま固まっているので、足を止め、女の顔をじっくりと覗き込む優司。
すると女は、意を決したのか、か細い声で呟くように優司に向かって語りかけた。
「ゆ、優司君……? だよね……?」
やっぱ1時間睡眠じゃキツいな……
久しぶりだな、緊張してなかなか寝付けなかったなんて)
朝9時にマンガ喫茶を後にし、フラフラと歩きながら繁華街へと向かう優司。
(今まで散々脅かされてきたもんな。乾と神崎だけはやめとけ、みたいな感じで。
そりゃ緊張もするって。ったく……)
心の中でブツブツと呟きながらも、予定通り乾を探すために徘徊を始めた。
◇◇◇◇◇◇
14:00。
朝から休みなくいろいろなホールを渡り歩いていた優司。
しかし、実際はただフラフラと歩き回っているだけで、なんの実りもない時間だった。
何しろ、優司は乾の顔を知らないのだから。
(くそ……
そのへんのヤツにいろいろ聞けたら楽なんだけどなぁ……)
顔を知らないので、それっぽい人間に手当たり次第話しかけ、乾を知っているようであれば用件を伝えてもらう、という方法しかないのだが、なかなか声をかけられずにいた。
理由は、日高たちに知られたくないから。
もしそのへんのスロッターに「乾を見てないか?」などと聞きまわれば、自然と「あの夏目優司が、ついに乾に勝負を吹っかけるのか」と話題になることは明白。
となると、当然その話は日高たちに伝わってしまう。
優司にとって、それはなるべく避けたい事態だった。
小島にも一応諦めたフリをしておいたし、これ以上日高たちとも揉めたくない。
そんな感情から、とにかく一人でコトを進め、詳しい経過は事後報告でいいだろうと考えたのだ。
勝負の段取りを決め、こっそりと勝負し、そしていきなり勝利報告をすれば、さすがにみんなにも認めてもらえる、自分が正しかったと証明できる、こう考えていたのだ。
どうしようかと悩みながら、必死で歩き回る優司。
しかし、誰にどう声をかけてよいのかわからない。
変に声をかければ、日高たちにあっさりと知られてしまうかもしれない。
それだけはなんとしても避けたい。
そんなジレンマに苛まれながら、虚しい徘徊が続く。
そのうち、段々とこの徘徊がバカバカしい徒労に思えてきてしまった。
(そういえば誰か、『乾は最近じゃほとんどこの街には来ない』なんて言ってたっけ。
いくら歩き回ったって無駄なんじゃ……?
大体、なんなんだよ……。スロで喰ってるわけでもなく、遊びで打ってるような人間が、俺よりも上だっていうのか……?
そんなバカな! ふざけるなってんだよ!)
◇◇◇◇◇◇
18:30。
(はぁ。 もう今日はやめよう。
ただブラブラしてたってなんの意味もない……)
結局、なんの収穫もないまま終わった一日。
最後にチェックしたホール「マーメイド」の近くにある公園で、一人缶コーヒーを飲みながら落ち込む。
一日中歩き回ったせいか、日頃の運動不足も祟り、足がパンパンになっていた。
疲労感が余計に虚しさを増長させる。
しばらく呆けた後、生気なく立ち上がる。
そして、軽くうつむきながらフラフラと公園を出て、宿泊先のマンガ喫茶へと歩いていく優司。
その時だった。
「えっ……? う、嘘っ……?」
不意に前方から、若い女の声が聞こえてきた。
伏し目がちだった優司だが、思わずその声に反応し顔を上げると、そこには、驚いた表情のまま固まっている若い女と、その連れの男がいた。
女は目線をはずさないまま、何かを言いたそうに優司を見つめている。
あまりにまじまじと自分を見つめたまま固まっているので、足を止め、女の顔をじっくりと覗き込む優司。
すると女は、意を決したのか、か細い声で呟くように優司に向かって語りかけた。
「ゆ、優司君……? だよね……?」
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