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【第4章】
■第78話 : この街の深淵
「どうだった光平?」
真鍋の問いに、日高が答える。
「ダメだ、やっぱ出ないな」
「ったく、どうしたんだよ夏目のヤツ……」
「避けられてんのかもな、俺も遼介も。あまりに、乾との勝負を止めるもんだからさ」
「それもこれも、あいつのことを考えてのことだろ?
そんなことがわからないほどバカじゃないだろうに。
どうしちまったんだよ夏目……」
最近めっきり疎遠になっていた日高・真鍋の二人と優司。
そのことを気に病み、久しぶりに優司に連絡を取ろうとした二人。
ホールで開店待ちをしていたこともあり、優司を誘って連れスロでもしながらわだかまりを解消していこうと考えたのだ。
しかし、優司は電話に出なかった。
もちろん、優司が広瀬と会っていたことも、出ようと思えば電話に出れる状況だったことも二人は知らない。
携帯をポケットにしまいながら、日高が寂しそうに喋りだす。
「夏目、『エース』にも全然姿を見せなくなったよな。
完全に俺たちと距離を取ってるって感じで」
「もうさ、そんなにスロ勝負がしたいんなら、いっそ自由にやらせるか?
別に負けたって死ぬようなことはないんだしさ。
まあ、相当ショックは受けるんだろうけど」
「いや……。俺はあくまで止めるべきだと思う。
こういうのって、意外とバカにできないもんなんだぜ?
受験一筋で頑張ってた人間が受験に落ちた場合、それだけで自殺したりすることがあるだろ?
一般的には、また来年頑張りゃいいのに、って思うようなことじゃん?
でも、本人にしたらそんなに軽いことじゃないんだよ。特に、こだわりとか周囲のプレッシャーとかが強ければ強いほど。
俺は、それを心配してるんだよね。近くで夏目を見てて、あいつはそういうタイプじゃないかなぁ、ってさ。
まあ、自殺まではないだろうけど、『ショックを受ける』程度では済まなさそうなんだよな」
「……なるほどね。それは言えてるかも。
それにしても凄いな光平? そこまで読んでんだ?」
「読んでるなんて大層なもんじゃないけどな。
なんとなく、そう感じただけだよ」
「へぇ……」
「とにかく俺は、適当に勝負させて後は野となれ山となれ、ってんじゃなくて、出来ればスロ勝負なんぞにこだわるのはやめて、普通に楽しくツルんでいけるようになって欲しいんだよ」
「そうなるのが一番だよなぁ」
「そのためには、どんだけウザがっていようと、しつこく説得していくしかないと思うんだよ。
そもそも俺達には、夏目がスロ勝負をするのを勧めたっていう責任がある。
このままほっとくわけにはいかないだろ」
「まあ、それでこそ日高光平だよな!
一度仲間になったんなら、そう簡単には見捨てない、ってな。偉い!」
「うるせーよ。からかってんのか?」
「違うって。相変わらず義に厚いところがすげーなと思ってんだよ。
それに、俺だって夏目には戻ってきて欲しいしな。
一回負けたくらいでそんなにダメージ受けるなら、なんとか説得して勝負をやめさせたいもんだな」
「ああ。マジでなんとかしたいよ」
「じゃあ、探しに行くか?
電話に出ないったって、所詮この街でウロウロしてんのはわかってんだし、人使えばすぐに見つかるぜ?
よっしゃ、早速小島あたりに――」
「やめとけよ遼介。
電話にも出ないような状態なのに、こっちから無理矢理会いに行っても無駄だよ。余計意固地になるだけだ。
少しは夏目も話し合いたいと思ってないと無意味だ」
「……まあ、そっか」
「無理矢理会いに行けばいいなら、最初っからそうしてるよ」
「……」
「とりあえず、今は待つしかなさそうだ」
「……だな。しょうがねぇか」
しばらく黙り込む二人。
それぞれ、なんでこんなことになってしまったのか、どこからすれ違い始めたのかについて思い返していた。
数分の沈黙を挟んだ後、不意に真鍋がぽつりと呟いた。
「昔みたいな展開になれば、何か変わってくるかもなぁ」
「ん? 昔? なんだそれ?」
「ほら、一年くらい前さ、あったじゃん。
俺と光平がまだ仲違いしてる時にさ、違う地域から乗り込んできた――」
「……『土屋』のことか?」
「そうそう、土屋だ!
……って、そうか。わりい。お前にとっては思い出したくもないことか」
「……」
「でもよ、あの土屋の時みたいなことが起こって、それで夏目が対峙するような形になればさ、何か変わりそうな気がしねぇか?
神崎がやったようなことを夏目がやればさ」
「神崎の役目を夏目が、か……」
「まあ……ないだろうけどな。そうそう都合よく」
「それに、あんなことまで再現されても困るだろ。
土屋みたいなヤツにこの街に来られるのは二度とゴメンだぜ」
「だよな……。わりい。ちょっと思い出しただけでさ。今のは忘れてくれ」
「……」
また会話が止まり、そのまま二人はただ黙って開店待ちを続けた。
真鍋の問いに、日高が答える。
「ダメだ、やっぱ出ないな」
「ったく、どうしたんだよ夏目のヤツ……」
「避けられてんのかもな、俺も遼介も。あまりに、乾との勝負を止めるもんだからさ」
「それもこれも、あいつのことを考えてのことだろ?
そんなことがわからないほどバカじゃないだろうに。
どうしちまったんだよ夏目……」
最近めっきり疎遠になっていた日高・真鍋の二人と優司。
そのことを気に病み、久しぶりに優司に連絡を取ろうとした二人。
ホールで開店待ちをしていたこともあり、優司を誘って連れスロでもしながらわだかまりを解消していこうと考えたのだ。
しかし、優司は電話に出なかった。
もちろん、優司が広瀬と会っていたことも、出ようと思えば電話に出れる状況だったことも二人は知らない。
携帯をポケットにしまいながら、日高が寂しそうに喋りだす。
「夏目、『エース』にも全然姿を見せなくなったよな。
完全に俺たちと距離を取ってるって感じで」
「もうさ、そんなにスロ勝負がしたいんなら、いっそ自由にやらせるか?
別に負けたって死ぬようなことはないんだしさ。
まあ、相当ショックは受けるんだろうけど」
「いや……。俺はあくまで止めるべきだと思う。
こういうのって、意外とバカにできないもんなんだぜ?
受験一筋で頑張ってた人間が受験に落ちた場合、それだけで自殺したりすることがあるだろ?
一般的には、また来年頑張りゃいいのに、って思うようなことじゃん?
でも、本人にしたらそんなに軽いことじゃないんだよ。特に、こだわりとか周囲のプレッシャーとかが強ければ強いほど。
俺は、それを心配してるんだよね。近くで夏目を見てて、あいつはそういうタイプじゃないかなぁ、ってさ。
まあ、自殺まではないだろうけど、『ショックを受ける』程度では済まなさそうなんだよな」
「……なるほどね。それは言えてるかも。
それにしても凄いな光平? そこまで読んでんだ?」
「読んでるなんて大層なもんじゃないけどな。
なんとなく、そう感じただけだよ」
「へぇ……」
「とにかく俺は、適当に勝負させて後は野となれ山となれ、ってんじゃなくて、出来ればスロ勝負なんぞにこだわるのはやめて、普通に楽しくツルんでいけるようになって欲しいんだよ」
「そうなるのが一番だよなぁ」
「そのためには、どんだけウザがっていようと、しつこく説得していくしかないと思うんだよ。
そもそも俺達には、夏目がスロ勝負をするのを勧めたっていう責任がある。
このままほっとくわけにはいかないだろ」
「まあ、それでこそ日高光平だよな!
一度仲間になったんなら、そう簡単には見捨てない、ってな。偉い!」
「うるせーよ。からかってんのか?」
「違うって。相変わらず義に厚いところがすげーなと思ってんだよ。
それに、俺だって夏目には戻ってきて欲しいしな。
一回負けたくらいでそんなにダメージ受けるなら、なんとか説得して勝負をやめさせたいもんだな」
「ああ。マジでなんとかしたいよ」
「じゃあ、探しに行くか?
電話に出ないったって、所詮この街でウロウロしてんのはわかってんだし、人使えばすぐに見つかるぜ?
よっしゃ、早速小島あたりに――」
「やめとけよ遼介。
電話にも出ないような状態なのに、こっちから無理矢理会いに行っても無駄だよ。余計意固地になるだけだ。
少しは夏目も話し合いたいと思ってないと無意味だ」
「……まあ、そっか」
「無理矢理会いに行けばいいなら、最初っからそうしてるよ」
「……」
「とりあえず、今は待つしかなさそうだ」
「……だな。しょうがねぇか」
しばらく黙り込む二人。
それぞれ、なんでこんなことになってしまったのか、どこからすれ違い始めたのかについて思い返していた。
数分の沈黙を挟んだ後、不意に真鍋がぽつりと呟いた。
「昔みたいな展開になれば、何か変わってくるかもなぁ」
「ん? 昔? なんだそれ?」
「ほら、一年くらい前さ、あったじゃん。
俺と光平がまだ仲違いしてる時にさ、違う地域から乗り込んできた――」
「……『土屋』のことか?」
「そうそう、土屋だ!
……って、そうか。わりい。お前にとっては思い出したくもないことか」
「……」
「でもよ、あの土屋の時みたいなことが起こって、それで夏目が対峙するような形になればさ、何か変わりそうな気がしねぇか?
神崎がやったようなことを夏目がやればさ」
「神崎の役目を夏目が、か……」
「まあ……ないだろうけどな。そうそう都合よく」
「それに、あんなことまで再現されても困るだろ。
土屋みたいなヤツにこの街に来られるのは二度とゴメンだぜ」
「だよな……。わりい。ちょっと思い出しただけでさ。今のは忘れてくれ」
「……」
また会話が止まり、そのまま二人はただ黙って開店待ちを続けた。
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