ゴーストスロッター

クランキー

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【第4章】

■第87話 : 御子神のお願い

「俺に話って……どんなことですか?」

御子神からの不意の問いかけに、不審そうな表情を浮かべる優司。

「それはここで言うことでもないから、ちょっと二人きりで話せない?」

「……悪いけど、今はそういう気分じゃないんですよね。
 今回のことでは感謝してるけど、込み入った話ならまた今度――」

「大丈夫。すぐ済むから」

御子神は、厳しい口調で優司に同意を促した。

「そうだぞ夏目!
 せっかく助けてくれたんだから、少し話聞くくらい全然いいじゃん?」

御子神に同調し続ける広瀬へ、優司が小声で話しかける。

「広瀬君、さっきからさ、妙に御子神に甘くない……?
 助けてもらったのはわかるけど……もしかして、御子神のことを狙ってるの?」

「狙っ……バ、バカ! 狙えるわけないだろ、あんな人!
 そりゃそうしたいのは山々……ってそんなのいいからさっ!
 とにかく、少し話すくらいなら協力してあげろって」

「まあ……広瀬君がそんなに言うなら別にいいけど……」

渋々、承諾することにした。

「わかったよ御子神さん。
 じゃあ、そのへんでパパっと済ませましょうよ」

「ええ、それでいいわ。
 この先を50mくらい行ったところに小さい公園があったから、そこにしましょう」

「……了解」

話が決まると、優司は一旦広瀬達の方を向いた。

「広瀬君、すぐ済むと思うから待っててもらっていい? お礼もしたいし。
 あと、ユミさんに真紀子さん……だったよね?
 今日は来てくれて本当にありがとう! 助かりました!」

「いえ……。私達はあんまり役に立たなかったみたいだし……」

「そんなことないですって!
 あなた方が鴻上を追い詰めてくれたことも、ボディブローみたいに効いてたと思うし」

この言葉を聞き、終始浮かない顔をしていたユミたち二人だが、段々と晴れやかな表情へと変わっていった。

「ありがとう、そう言ってもらえると救われる! ね、真紀子ちゃん?」

「ええ、少しでもお役に立てたなら嬉しいわ」

「もちろん! 役に立ちまくりですよ!
 近いうちに何かお礼もさせてもらいますんで! あ、多分大したことはできないと思うけど」

「ふふっ、わかった。
 期待しないで待ってますね。
 それじゃ、私たちはこれで」

「うん、それじゃあ」

「わざわざ悪かったね。
 俺も夏目も本当に助かったよ! じゃあ、また」

こうして、ユミと真紀子の二人は帰っていった。

「さて、と……。じゃあちょっと行ってくるね広瀬君」

広瀬は顔を寄せ、小声でつぶやいた。

「ああ。頑張ってこいよ。
 隙あらば、俺のことをどう思ってるかとか聞いてくれてもいいんだぞ」

「……」

「あ、あれ……?
 なんだよ……? 何ニヤけてんだよ」

「いや、別に。
 なんか、ここにきて広瀬君らしさが出てきたなぁ、と思ってさ」

「なんだそりゃ」

飯島とのことでかなりヘコんでいた優司だが、広瀬のおとぼけに少し救われていた。



◇◇◇◇◇◇



「仲良さそうね」

「え?」

御子神の指定した公園へ着くと、開口一番、御子神が広瀬と優司の仲のことについて触れてきた。

「あなたたち、前に勝負かなんかしたのよね?
 つまり敵同士だったんでしょ?
 広瀬君に限らず、他のお友達も最初は敵だったらしいじゃない? 凄いわね」

今日初めて会った女が、不気味なくらいに自分のことを知っていることに対し、軽く不快感を感じる優司。

「……やけに詳しいですね。
 なんで俺のことなんかをそんなに知ってるんですか?」

「決まってるじゃない。調べたからよ」

「調べた……?
 な、なんでそんなこと……」

「調べる必要があったから」

「調べる必要……?」

「そう。
 宣言通り簡単に済ませるわ。用件は一つ、乾和弥に勝負を吹っ掛けるのはやめて、ってこと」

「乾……っ? し、知り合いなの……?」

「知り合いも何も、ほぼ付き合ってるような関係……かな」

「マ、マジでっ?」

みるみるうちに表情が明るくなってくる優司。

「じゃ、じゃあ、俺、今乾君のことを凄い探してたんだけど、なんとか会わせてもらえないですか?」

「あなたねぇ……。今の私の話聞いてた? それをやめて、って言ってるの。
 パチスロで決闘、みたいな面倒くさいことを和弥に仕掛けようとしてるんでしょ?
 和弥は、そういう煩わしいことが大嫌いなんだから」

「え……?
 ま、まさか、乾が君に依頼して断ってきたとか……?」

「全然違うわ。
 和弥はあなたのことなんか知らないはずよ。
 もちろん、勝負を挑もうとしてるってことも」

「俺のことを知らない?
 そんなことないでしょ!
 乾だって、一応この街でスロ打ってる人間なんだから、知らないはずは――」

「だから、そこよ。
 和弥はもうほとんどパチスロなんて打ってないの。
 この街にだって滅多に来ない。
 あれは、半年くらい前まで暇つぶし兼生活費稼ぎのためにやってただけ」

「う、うそ……」

「嘘じゃないわよ。
 もう何ヶ月も打ってないんじゃないかな。
 そんな人相手に勝負なんて成り立たないでしょ?
 それでも和弥が勝負事で負けるとは思わないけど」

「なんでだよ!
 そんなブランクのあるやつに、俺が負けるはずないだろ?」

「和弥が何かで人に負けるところなんて想像つかないもの。
 ましてや年下相手にね」

「そ、そんなに凄いやつなの……? 乾って……?」

「私と和弥は幼なじみでね。彼のことは良く知ってるつもりよ。
 彼は子供の頃から神童って呼ばれてたわ。
 運動でも勉強でも、ちょっと頑張るとすぐに学年トップ。
 中学の時にやってた空手なんて、県大会で優勝したからね。
 勉強面でも、彼の行った高校は関東で偏差値トップのK高校だし。
 でも、『ここで学ぶべきことはない』って言ってすぐ中退しちゃったけど」

「K高校を、中退……?」

「そう。あんな超名門校でも、惜しげもなく中退しちゃうの。
 私たちとは、考えているレベルが違うのね。
 それだけの天才だから、自分探しも複雑で時間がかかるのよ。
 その間、和弥はいろんなことしていたわ。
 パチスロを含め、そんなことまでしなくてもいいんじゃないの?ってことまで」

「……」

「で、最近ようやく和弥のやりたいことが固まってきたみたいで、動き出してるの。
 わかる? だからそんな彼に、次元の低いパチスロ勝負なんて仕掛けて邪魔をしたりはしてほしくないわけ。
 こんなにダラダラと和弥の過去を喋ったのも、ちゃんと理解してほしかったから。
 ただ『勝負するのはやめて』って言っても、聞いてくれはしないでしょうからね」

「それを聞いて、なおさら引けなくなったよ」

「え……?」

「もう力も衰えてて、勝負しても仕方のないような相手ならそれまでだけど、そんな実力ある人間なら、是非相手をしてもらいたいね」

「ちょっと……いい加減にしてよね?
 なんでそんな自分勝手なことが言えるの? 何の縁もゆかりもない人間相手に」

「ところが、縁もゆかりもないわけじゃないんだな、これが」

「は……?」

「俺もK高校出身なんだ。
 つまり、先輩後輩の仲だってこと。一応ね」

何を言われても何が起こっても、基本冷静な態度を崩さなかった御子神が、ここで初めて大きな動揺を見せた。
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