文字の大きさ
大
中
小
88 / 138
【第4章】
■第88話 : 交渉決裂
「あ、あなたも和弥と同じK高校……?
東大・京大は当たり前っていう、あのK高校だよ……?」
「そうだよ。
ちなみに俺は凡人だから、乾と違ってちゃんと卒業しちゃったけどね」
「……」
優司の皮肉に、軽く唇を噛む御子神。
そんな様子を無視し、話をまとめにかかる優司。
「とにかく、今日は話が聞けてよかったよ。
おかげで、絶対に勝負しようって気持ちが固まったからさ」
「やめなさい、って言ってるでしょ……」
「ごめん、これだけは聞けない。
飯島の件で御子神さんには本当に感謝してるけど、これだけはどうしても……。
俺の気持ちもわかって欲しい」
「わかるわけないでしょ!
なんでパチスロ勝負なんてしなくちゃ気が済まないの? なんの恨みもない相手に。絶対おかしいよっ?」
「う……」
優司は、「おかしい」という言葉に過剰に反応してしまった。
ここ最近、勝負のことになると言われる言葉。
日高や真鍋からも受けた忠告だった。
「ほ、ほっといてくれよ!
とにかく、あとはこっちでやるから!
乾が素直に受けてくれたら問題ないだろ?」
「だから、受けるわけないって言ってるでしょ!
和弥に無駄な時間を使わせるだけなの!
そもそも、この街で探したって見つからないから無駄なのよ? 」
「絶対探し出してみせるよ!
っていうか、探すのに苦労するのは俺なんだし、別にいいじゃん。
それに、無駄な時間を使わせるだけってなんだよ! 無駄かどうかは乾が決めることだ。
だいたい、そっちこそおかしいって。乾に勝負を仕掛けないでなんて、そんなこと言うためにわざわざ俺のことを調べたりしてさ。何か他に理由でもあるの?」
「そ……そ、そんなのないわよ!
ただ、あなたも無駄足になるし、和弥も煩わしい思いをして終わるだけなら、最初からそんなことなんてない方がいいと思っただけ!」
「……嘘だね。超高級クラブのナンバーワンが、大したメリットもないことに首を突っ込みたがるわけがない。
そもそも、ただ勝負を止めたいだけなら、彼氏である乾の方に言えばいいことだしね」
「……」
「まず、乾の彼氏、って話は嘘でしょ?」
「っ!」
「俺を説得するために、そうした方が都合がいいからとでも思ったんでしょ?」
「……へぇ、大した洞察力ね。たったこれだけの会話で、嘘ってバレちゃったんだ」
「うん。本当に付き合ってるんなら、わざわざこんな方法は取らないはずだ」
「やっぱり違うのね、頭の良い人って。
なんか納得したわ。やたら頭の良い人って、妙に変なところに強くこだわったりすることが多いもんね。和弥も、優司君も」
「……」
「とにかく、私はあくまであなたを止めるから。
付きまとってでもね」
「えっ? な、なんでそこまでするの? 御子神さんほどの人が……。
せめて理由を教えてよ。本当の理由を」
「……優司君には関係のないことだから。
そっちも勝手にするなら、私も勝手にやらせてもらうわ。
明日からよろしくね!」
「ほ、本気で……? 本当に俺についてくる気……?」
「ええ、あなたが和弥を探すのを諦めない限りね」
「……………」
この言葉を最後に、二人はしばらく沈黙に入った。
◇◇◇◇◇◇
「もうわかったよ。
じゃあ勝手にしてくれよ。俺も俺で勝手にやるからさ」
3分ほどの静寂の後、痺れを切らした優司が言葉を発した。
「それしかないみたいね。ここまで聞き分けが悪いとは思わなかったわ」
「それはこっちも同じだよ。こんなにもわかってもらえないなんてね」
「……まあいいわ。
じゃあ、また明日ね。それじゃ」
そう言って御子神は、振り向きもせずにスタスタと広場から出て行った。
(なんなんだよあの女……信じらんないな……。
何が目的なんだ……?)
疑問を抱えつつも、少し離れたところで待っている広瀬のところへ向かって歩き出した。
(なんであそこまで俺と乾との勝負を止めたがる?
勝負することで、何か御子神に不都合でもあるのか?)
そんなことを考えながら歩いていると、すぐに広瀬の待っている場所まで辿り着いた。
優司の姿を確認し、すぐに話しかけてくる広瀬。
「お? 終わったんだ。
結構長かったね。すぐ終わると思ってたら」
「あ、うん……。
ごめん。ちょっと長引いちゃって」
「……言えない話だったらいいんだけど、何の話だったの?」
聞いちゃ悪いかな、という雰囲気を前面に出しながら尋ねる広瀬。
御子神が絡んでいるだけに、どうにも気になる模様。
「あ……。
いや、広瀬君が聞いてもつまらない話だよ」
「え~? そうなの~っ?」
「う、うん ごめん……」
「いや、そんなマジで謝られると困っちゃうけど。
……まあとにかくさ、これでひとまず解決したんだし、まだ午後10時前だしさ、どこか軽く飲みにでも行く?」
「あ、いいねぇ!
今日のお礼もしたいしね。
今日は広瀬君の好きなもの何でもオゴるよ! 何でも言って!」
「お! それ言っちゃった?
じゃあ、『鳥やま』って店に行こうよ!
『エース』の近くにある居酒屋なんだけどさ、あそこの焼き鳥、メチャウマなんだよ。
日高たちのホームの近くだから夏目も知ってるかもしれないけどさ。そこにしない?」
「……ごめん、なるべくなら、そこじゃない方が……いいかな……」
「なんで?」
「この前軽く話したけど、日高たちとうまくいってなくてさ。
『エース』の近くの居酒屋だと、彼らと会っちゃうかもしれないから……」
「……チラっと会うかもしれないって程度でもイヤなくらい険悪なのか?」
「いや、険悪っていうのとちょっと違うんだけど」
ここで軽く優司の肩を叩く広瀬。
「わかったよ。そのあたりも酒を飲みながらたっぷり聞こうか。
じゃあ、俺のよく行く居酒屋でいい?
そこなら、日高たちと遭遇する確率は皆無だからさ」
「ありがとう! 何から何まで……」
「いいっていいって! よっしゃ、行くぜ!」
広瀬は優司の肩を抱き、そのまま力強く大通りの方へ歩いていった。
東大・京大は当たり前っていう、あのK高校だよ……?」
「そうだよ。
ちなみに俺は凡人だから、乾と違ってちゃんと卒業しちゃったけどね」
「……」
優司の皮肉に、軽く唇を噛む御子神。
そんな様子を無視し、話をまとめにかかる優司。
「とにかく、今日は話が聞けてよかったよ。
おかげで、絶対に勝負しようって気持ちが固まったからさ」
「やめなさい、って言ってるでしょ……」
「ごめん、これだけは聞けない。
飯島の件で御子神さんには本当に感謝してるけど、これだけはどうしても……。
俺の気持ちもわかって欲しい」
「わかるわけないでしょ!
なんでパチスロ勝負なんてしなくちゃ気が済まないの? なんの恨みもない相手に。絶対おかしいよっ?」
「う……」
優司は、「おかしい」という言葉に過剰に反応してしまった。
ここ最近、勝負のことになると言われる言葉。
日高や真鍋からも受けた忠告だった。
「ほ、ほっといてくれよ!
とにかく、あとはこっちでやるから!
乾が素直に受けてくれたら問題ないだろ?」
「だから、受けるわけないって言ってるでしょ!
和弥に無駄な時間を使わせるだけなの!
そもそも、この街で探したって見つからないから無駄なのよ? 」
「絶対探し出してみせるよ!
っていうか、探すのに苦労するのは俺なんだし、別にいいじゃん。
それに、無駄な時間を使わせるだけってなんだよ! 無駄かどうかは乾が決めることだ。
だいたい、そっちこそおかしいって。乾に勝負を仕掛けないでなんて、そんなこと言うためにわざわざ俺のことを調べたりしてさ。何か他に理由でもあるの?」
「そ……そ、そんなのないわよ!
ただ、あなたも無駄足になるし、和弥も煩わしい思いをして終わるだけなら、最初からそんなことなんてない方がいいと思っただけ!」
「……嘘だね。超高級クラブのナンバーワンが、大したメリットもないことに首を突っ込みたがるわけがない。
そもそも、ただ勝負を止めたいだけなら、彼氏である乾の方に言えばいいことだしね」
「……」
「まず、乾の彼氏、って話は嘘でしょ?」
「っ!」
「俺を説得するために、そうした方が都合がいいからとでも思ったんでしょ?」
「……へぇ、大した洞察力ね。たったこれだけの会話で、嘘ってバレちゃったんだ」
「うん。本当に付き合ってるんなら、わざわざこんな方法は取らないはずだ」
「やっぱり違うのね、頭の良い人って。
なんか納得したわ。やたら頭の良い人って、妙に変なところに強くこだわったりすることが多いもんね。和弥も、優司君も」
「……」
「とにかく、私はあくまであなたを止めるから。
付きまとってでもね」
「えっ? な、なんでそこまでするの? 御子神さんほどの人が……。
せめて理由を教えてよ。本当の理由を」
「……優司君には関係のないことだから。
そっちも勝手にするなら、私も勝手にやらせてもらうわ。
明日からよろしくね!」
「ほ、本気で……? 本当に俺についてくる気……?」
「ええ、あなたが和弥を探すのを諦めない限りね」
「……………」
この言葉を最後に、二人はしばらく沈黙に入った。
◇◇◇◇◇◇
「もうわかったよ。
じゃあ勝手にしてくれよ。俺も俺で勝手にやるからさ」
3分ほどの静寂の後、痺れを切らした優司が言葉を発した。
「それしかないみたいね。ここまで聞き分けが悪いとは思わなかったわ」
「それはこっちも同じだよ。こんなにもわかってもらえないなんてね」
「……まあいいわ。
じゃあ、また明日ね。それじゃ」
そう言って御子神は、振り向きもせずにスタスタと広場から出て行った。
(なんなんだよあの女……信じらんないな……。
何が目的なんだ……?)
疑問を抱えつつも、少し離れたところで待っている広瀬のところへ向かって歩き出した。
(なんであそこまで俺と乾との勝負を止めたがる?
勝負することで、何か御子神に不都合でもあるのか?)
そんなことを考えながら歩いていると、すぐに広瀬の待っている場所まで辿り着いた。
優司の姿を確認し、すぐに話しかけてくる広瀬。
「お? 終わったんだ。
結構長かったね。すぐ終わると思ってたら」
「あ、うん……。
ごめん。ちょっと長引いちゃって」
「……言えない話だったらいいんだけど、何の話だったの?」
聞いちゃ悪いかな、という雰囲気を前面に出しながら尋ねる広瀬。
御子神が絡んでいるだけに、どうにも気になる模様。
「あ……。
いや、広瀬君が聞いてもつまらない話だよ」
「え~? そうなの~っ?」
「う、うん ごめん……」
「いや、そんなマジで謝られると困っちゃうけど。
……まあとにかくさ、これでひとまず解決したんだし、まだ午後10時前だしさ、どこか軽く飲みにでも行く?」
「あ、いいねぇ!
今日のお礼もしたいしね。
今日は広瀬君の好きなもの何でもオゴるよ! 何でも言って!」
「お! それ言っちゃった?
じゃあ、『鳥やま』って店に行こうよ!
『エース』の近くにある居酒屋なんだけどさ、あそこの焼き鳥、メチャウマなんだよ。
日高たちのホームの近くだから夏目も知ってるかもしれないけどさ。そこにしない?」
「……ごめん、なるべくなら、そこじゃない方が……いいかな……」
「なんで?」
「この前軽く話したけど、日高たちとうまくいってなくてさ。
『エース』の近くの居酒屋だと、彼らと会っちゃうかもしれないから……」
「……チラっと会うかもしれないって程度でもイヤなくらい険悪なのか?」
「いや、険悪っていうのとちょっと違うんだけど」
ここで軽く優司の肩を叩く広瀬。
「わかったよ。そのあたりも酒を飲みながらたっぷり聞こうか。
じゃあ、俺のよく行く居酒屋でいい?
そこなら、日高たちと遭遇する確率は皆無だからさ」
「ありがとう! 何から何まで……」
「いいっていいって! よっしゃ、行くぜ!」
広瀬は優司の肩を抱き、そのまま力強く大通りの方へ歩いていった。
感想 5
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagaseこの物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)
MisakiNonagase洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。
かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。
44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。
小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。
一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。
ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科
空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する
高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体
それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった
至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する
意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク”
消える教師
山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。