ゴーストスロッター

クランキー

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【第4章】

■第88話 : 交渉決裂

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「あ、あなたも和弥と同じK高校……?
 東大・京大は当たり前っていう、あのK高校だよ……?」

「そうだよ。
 ちなみに俺は凡人だから、乾と違ってちゃんと卒業しちゃったけどね」

「……」

優司の皮肉に、軽く唇を噛む御子神。
そんな様子を無視し、話をまとめにかかる優司。

「とにかく、今日は話が聞けてよかったよ。
 おかげで、絶対に勝負しようって気持ちが固まったからさ」

「やめなさい、って言ってるでしょ……」

「ごめん、これだけは聞けない。
 飯島の件で御子神さんには本当に感謝してるけど、これだけはどうしても……。
 俺の気持ちもわかって欲しい」

「わかるわけないでしょ!
 なんでパチスロ勝負なんてしなくちゃ気が済まないの? なんの恨みもない相手に。絶対おかしいよっ?」

「う……」

優司は、「おかしい」という言葉に過剰に反応してしまった。

ここ最近、勝負のことになると言われる言葉。
日高や真鍋からも受けた忠告だった。

「ほ、ほっといてくれよ!
 とにかく、あとはこっちでやるから!
 乾が素直に受けてくれたら問題ないだろ?」

「だから、受けるわけないって言ってるでしょ!
 和弥に無駄な時間を使わせるだけなの!
 そもそも、この街で探したって見つからないから無駄なのよ? 」

「絶対探し出してみせるよ!
 っていうか、探すのに苦労するのは俺なんだし、別にいいじゃん。
 それに、無駄な時間を使わせるだけってなんだよ! 無駄かどうかは乾が決めることだ。
 だいたい、そっちこそおかしいって。乾に勝負を仕掛けないでなんて、そんなこと言うためにわざわざ俺のことを調べたりしてさ。何か他に理由でもあるの?」

「そ……そ、そんなのないわよ!
 ただ、あなたも無駄足になるし、和弥も煩わしい思いをして終わるだけなら、最初からそんなことなんてない方がいいと思っただけ!」

「……嘘だね。超高級クラブのナンバーワンが、大したメリットもないことに首を突っ込みたがるわけがない。
 そもそも、ただ勝負を止めたいだけなら、彼氏である乾の方に言えばいいことだしね」

「……」

「まず、乾の彼氏、って話は嘘でしょ?」

「っ!」

「俺を説得するために、そうした方が都合がいいからとでも思ったんでしょ?」

「……へぇ、大した洞察力ね。たったこれだけの会話で、嘘ってバレちゃったんだ」

「うん。本当に付き合ってるんなら、わざわざこんな方法は取らないはずだ」

「やっぱり違うのね、頭の良い人って。
 なんか納得したわ。やたら頭の良い人って、妙に変なところに強くこだわったりすることが多いもんね。和弥も、優司君も」

「……」

「とにかく、私はあくまであなたを止めるから。
 付きまとってでもね」

「えっ? な、なんでそこまでするの? 御子神さんほどの人が……。
 せめて理由を教えてよ。本当の理由を」

「……優司君には関係のないことだから。
 そっちも勝手にするなら、私も勝手にやらせてもらうわ。
 明日からよろしくね!」

「ほ、本気で……? 本当に俺についてくる気……?」

「ええ、あなたが和弥を探すのを諦めない限りね」

「……………」

この言葉を最後に、二人はしばらく沈黙に入った。



◇◇◇◇◇◇



「もうわかったよ。
 じゃあ勝手にしてくれよ。俺も俺で勝手にやるからさ」

3分ほどの静寂の後、痺れを切らした優司が言葉を発した。

「それしかないみたいね。ここまで聞き分けが悪いとは思わなかったわ」

「それはこっちも同じだよ。こんなにもわかってもらえないなんてね」

「……まあいいわ。
 じゃあ、また明日ね。それじゃ」

そう言って御子神は、振り向きもせずにスタスタと広場から出て行った。

(なんなんだよあの女……信じらんないな……。
 何が目的なんだ……?)

疑問を抱えつつも、少し離れたところで待っている広瀬のところへ向かって歩き出した。

(なんであそこまで俺と乾との勝負を止めたがる?
 勝負することで、何か御子神に不都合でもあるのか?)

そんなことを考えながら歩いていると、すぐに広瀬の待っている場所まで辿り着いた。

優司の姿を確認し、すぐに話しかけてくる広瀬。

「お? 終わったんだ。
 結構長かったね。すぐ終わると思ってたら」

「あ、うん……。
 ごめん。ちょっと長引いちゃって」

「……言えない話だったらいいんだけど、何の話だったの?」

聞いちゃ悪いかな、という雰囲気を前面に出しながら尋ねる広瀬。
御子神が絡んでいるだけに、どうにも気になる模様。

「あ……。
 いや、広瀬君が聞いてもつまらない話だよ」

「え~? そうなの~っ?」

「う、うん ごめん……」

「いや、そんなマジで謝られると困っちゃうけど。
 ……まあとにかくさ、これでひとまず解決したんだし、まだ午後10時前だしさ、どこか軽く飲みにでも行く?」

「あ、いいねぇ!
 今日のお礼もしたいしね。
 今日は広瀬君の好きなもの何でもオゴるよ! 何でも言って!」

「お! それ言っちゃった?
 じゃあ、『鳥やま』って店に行こうよ!
 『エース』の近くにある居酒屋なんだけどさ、あそこの焼き鳥、メチャウマなんだよ。
 日高たちのホームの近くだから夏目も知ってるかもしれないけどさ。そこにしない?」

「……ごめん、なるべくなら、そこじゃない方が……いいかな……」

「なんで?」

「この前軽く話したけど、日高たちとうまくいってなくてさ。
 『エース』の近くの居酒屋だと、彼らと会っちゃうかもしれないから……」

「……チラっと会うかもしれないって程度でもイヤなくらい険悪なのか?」

「いや、険悪っていうのとちょっと違うんだけど」

ここで軽く優司の肩を叩く広瀬。

「わかったよ。そのあたりも酒を飲みながらたっぷり聞こうか。
 じゃあ、俺のよく行く居酒屋でいい?
 そこなら、日高たちと遭遇する確率は皆無だからさ」

「ありがとう! 何から何まで……」

「いいっていいって! よっしゃ、行くぜ!」

広瀬は優司の肩を抱き、そのまま力強く大通りの方へ歩いていった。 
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