ゴーストスロッター

クランキー

文字の大きさ
103 / 138
【第5章(最終章)】

■第103話 : 哀れな末路

しおりを挟む
23:00過ぎ。
優司たち5人は『げんた』を出た。

後半は皆泥酔していたため、なんら中身のない雑談ばかりだったこの飲み会。

やれどこどこのキャバクラが良いだの、やれ誰々がムカつくから呼び出すだのと、優司にとってなんら興味のない会話が繰り広げられていた。
主に土屋・丸島・柿崎の3人の間で。

店を出た後、逃げるようにして彼らと別れ、一人マンガ喫茶へと向かう優司。
なんであんな連中とツルんでるんだ俺は……という自己嫌悪とともに。

冴えない表情のまま、やや千鳥足で家路を急ぐ優司。

季節はもうしっかりと冬。
吹きつける冷たい風を顔に浴びて酔いを醒ましつつ、フラフラと歩く。

と、その時だった。

「よ、よぉ……。げ、元気か?」

不意に後ろから声が聞こえてきた。
その声はとても弱々しく、独り言のように思えた。

振り返りもせず、そのまま千鳥足で歩く優司。

「なぁ……無視すんなよぉ……」

どうやら独り言ではなかったようだ、と気付き後ろを振り返ると、そこには、何やら小汚い風貌をした男がぽつんと立っていた。

その姿を見て一瞬怪訝そうな顔をした優司だったが、みるみるうちに驚きの顔へと変わっていった。

「ま……またお前かよ…………」

「へへ……へへへ…………」

「ホントいい加減にしてくれよな、藤田……」

「おお、良かったよ、覚えててくれたんだ」

パチスロ勝負生活を始める前に、一度だけ変則的なノリ打ちの相棒として組んだ相手である藤田。

しかし、あっさりと優司を裏切ったことがきっかけで、その下劣な人間性を日高に知られ、グループをクビにされた。
そこから金に困り、ホームレス生活へと突入した男だった。

「げ、元気かい? 小奇麗なカッコして酔っ払ってられるってことは、まだパチスロ勝負をやってるんだ?
 で、勝ってるんだよね。さすがだぁ、凄いよね」

ぎこちない笑顔を作りながら、柔らかいトーンで話しかけてくる藤田。
その姿に違和感を感じる優司。

(最後に会ったのは……八尾との勝負前くらいか。
 確かあの時、最悪な別れ方をしたはずなのに、なんなんだこの柔和な態度は……?)

しかし、その答えはすぐに出た。

優司が黙ったまま様子を窺っていると、藤田は軽く下を向きながらボソボソと喋りだした。

「あ、あのさ……。
 頼みづらいんだけど、俺、ここ3日くらい何にも食べてなくて……」

すぐにピンときた。
なるほど、金の無心か、と。

目的を知るやいなや、優司は語調を荒げて言い放った。

「お前な、前も言ったと思うけど、俺に何をしたか覚えてるか?
 よく俺にそんなこと頼めるなっ? どういう神経してんだよっ?」

「そ、そんなこと言うなよぉ。
 もう俺、恨んでないからさ。仲直りしようよ。
 その仲直りの証として……な?
 1000円でいいんだ。とりあえず1000円でいいから、俺にくれないか……? 頼むよ……」

「ふざけるなッ!
 なんで俺がお前に恵んでやらなきゃいけないんだッ?
 どれだけ余裕が生まれようと、お前を助けてやろうなんて思うことは絶対にない! 甘ったれるなよな!」

「う……うぅ……」

口ごもる藤田に対し、さらに攻め立てる。

「大体なぁ、お前みたいなクズ野郎にはとっととこの街からも出てって欲しいくらいなんだよ! お前みたいなのが近くをウロウロしてると思うと吐き気がしてくるからなっ!」

「な、なんだと……?」

「さっさとどこかでくたばっちゃえよ! お前なんて生きてる価値もないんだからさ!」

自分の置かれている境遇にやりきれなさを感じ、気持ち的に追い詰められていることに加え、酒の勢いも手伝い、普段ならば発しないようなきつい言葉を藤田に浴びせかけた優司。

「ぎっ……ぐっ……」

歯を食いしばりながら、小刻みに震えている藤田。
怒りを抑えきれない、といった様子だった。

元々はガタイがよく、威圧感もある藤田。
しかし今は、3日もロクに食べておらず、普通に歩くことすら辛い状態。

優司との約束を破って折半するはずだった金を独り占めした時に、食って掛かってきた優司を殴り悠然と去っていったあの時のような威圧感・力強さは、もうどこにもなかった。

「なんだよその態度は? またあの時みたく俺を殴ろうってのか?
 いいよ、やってみろよ。今のお前なんかにやられはしないけどな」

「ぐ……うぅ…………」

「とにかく! もう二度と俺の前に現れるなよこの蛆虫ッ! わかったかっ?」

「うぉあーーーーーッ!」

我慢の限界を迎え、藤田は動かない体に鞭打って、優司に躍りかかった。

しかし優司も、これだけ挑発すればさすがに手を出してくるかもしれないと予測していたので、この藤田の動きにすかさず反応して横へ体を交わした。

見事によけられてしまった藤田は、そのまま止まることができず、飛びかかった勢いで電柱に頭から激突してしまった。

ドゥフッ、という鈍い音がし、そのまま藤田は前のめりに倒れこんだ。

(お、おいおい……大丈夫か……? 本当に死んだんじゃないだろうな)

少し心配になった優司は、藤田の様子を窺うため覗き込んだ。

すると、藤田が額から血を流しているのが見えた。
大した量ではなかったが、これだけ弱っている人間ゆえもしかしたら……と悪い想像が膨らむ。

しかし心配をよそに、藤田はのそりと動き出し、うめくようにして言葉を捻り出した。

「うぅ……覚えてろよ……夏目ぇ……覚えてろよ……覚えてろよ…………」

うわ言のように繰り返す藤田。
優司は途端に不気味さを覚え、少し距離を取った。

そして、「とにかく、二度と近づくなよ」と告げ、その場から足早に立ち去った。

(なんなんだよ……。またあんな奴と出くわしちまうなんて。
 まだこの街をうろついてたのか。
 くそっ! 不愉快な気分の時に不愉快な奴と会っちゃったな……)

優司は大きくため息をついた後、そのまま足早にいつものマンガ喫茶を目指して歩いていった。 
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

処理中です...