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【第5章(最終章)】
■第102話 : 神崎の片鱗
初対面の時に聞いた、神崎と土屋がパチスロ勝負をしていた、という事実。
この時に、どんな勝負だったのかを聞こうとしたが、その時は土屋の勢いに押し切られうやむやで終わってしまった。
二人の勝負内容については、神崎の実力を計るためにも優司としては是非とも知っておきたいこと。
しかし、この質問をぶつけた瞬間から、先ほどまでの上機嫌ぶりは吹き飛び、土屋の表情がみるみる歪んでいく。
「……もうそんなことはどうでもいいだろ」
ボソリと呟いた。
しかし、初対面の時のように、威圧感を出してそれ以上聞けない雰囲気にしようとはしていなかった。
そんな様子を見て、丸島が口を挟んできた。
「まあいいじゃねぇかよ土屋。夏目もよく頑張ってるし、それくらい話してやれよ。
今度神崎と夏目を勝負させるつもりなんだろ? その時の為にもよ。
大体、悔しがるようなことじゃないだろ? 土屋は別にパチスロ勝負なんぞで結果を出す必要はないんだからさ」
柿崎も話に入ってくる。
「そうだよ土屋君。土屋君はもっと凄いことができるじゃん。現に今も、こうやって組織として順調に売上を伸ばしてるし、神崎に勝てる人材もゲットできたし。みんな土屋君の力でしょ!」
二人からフォローされ、やや表情が緩んだ土屋。
吉田は相変わらず無言のまま。
ちなみに吉田は、この時に限らず飲み会が始まってからもほとんど無言で、たまに話を振られた時に一言二言返すだけだった。
「確かに、別に俺はパチスロ勝負なんぞで負けたって関係ないし、そもそも1年も前のことだしな」
「そうだよ土屋。話してやんなよ」
「ああ。じゃあ手短にな」
その言葉に、優司は黙って頷いた。
土屋は、手元にあった焼酎グラスを口に運び、それからおもむろに話し出した。
「まず、経緯については前に話したよな?
こっちのやってることに対して神崎が音をあげて、パチスロ勝負を仕掛けてきた、と。
その勝負に俺が勝ったら神崎は俺のグループに入る、神崎が勝ったら俺達はおとなしく街から出て行く」
「うん、そこまでは前に聞いたよ」
「で、勝負ルールは、同一機種で勝負して、『出玉』・『BIGの最高獲得枚数』・『総回転数』の3ポイントを
争う、これを3日間やる、って内容だ。つまり、合計9ポイントだな。
このポイントを俺と神崎で取り合うってわけだ。
ホールと機種は、俺が選んでいいことになってた」
「……なるほど」
「でも、神崎はこの街で立ち回って長いだろ? いくら俺の方でホールと機種が選べるからって、それでも俺の方が若干不利だ。
だからハンデとして、神崎は俺に2ポイント以上の差をつけなきゃいけない、っていう特別ルールを追加したんだ。つまり、俺が1ポイント負けての5対4、ってスコアなら俺の勝ちになるってことだな」
随分と甘いルールだな、と感じた優司。
ホールと機種を決められるだけでもだいぶハンデが与えられているようなもの。
それなのに、さらにその上2ポイント以上も差をつけないといけないなんて、と。
おそらく、土屋が無理矢理その条件をねじ込んだのだろう、と思った。
その卑怯なやり口・いさぎの悪さに嫌悪感を覚えた。
しかも、この勝負に土屋は負けているのである。
そのことを思い出し、嫌悪感だけでなく情けなさも感じた。
だが、勝負の全貌を知るためにここは無表情のままやりすごす優司。
「で、勝負したんだよね。そのルールで」
「ああ」
「で、負けた、と」
「……」
「何対何で負けたの?」
「…………9対0だ」
「えッ…………?」
思わず絶句してしまう優司。
土屋がヘボすぎるのか、神崎が凄すぎるのか。
その答えが出せずにいた。
神崎の力を計るためには、この答えを出さなければいけない。
なのでそれを探るため、苦々しい顔をしている土屋に間髪を入れず問いかけた。
「なんでそんなことになったの? 勝負ホールとか勝負機種で工夫はしなかったの?」
「したよ! するに決まってんだろ?
せっかく使えるカードを使わないのはバカだ。もちろん最大限に活用させてもらったよ。
俺は目押しに自信があったんでな。迷わず勝負機種をタコスロにした」
「タコスロ?」
「ああ。あそこまで目押しの威力が発揮される機種は他にはない。
当時、西口の『スターワン』っつー店に5台だけ入っててな。まあ、7枚交換だけどよ。
ってことで、勝負ホールが『スターワン』、勝負機種がタコスロになった」
「……」
「タコスロがどういう機種か知ってるだろ? フル攻略すりゃ、設定1でも機械割が105%くらいいっちまうバケモノ機種だ。
これなら、神崎の得意な設定読みを潰せる。7枚交換とはいえ、タコスロなんぞどこのホールも万年設定1なことが多いからな。
どうだ? しっかりルールを活用してるだろ?」
「まあ、確かに……」
この優司の言葉は本心だった。
設定予測で敵わないと知り、その能力が生かせない状況を作り上げた。
そして、自分が得意とする「目押し」に、勝負のフィールドを持ってきた。
決して悪い作戦ではない。
「これで、勝負はほぼ完全な目押し力勝負になったわけだ。
『出玉』にしても『BIG獲得枚数』にしても、ほぼ目押しオンリーの勝負になるわけだし、『総回転数』についても、いかに取りこぼしなく通常プレイを素早くこなすか、ってことがポイントになるから、イコール目押し力が問われる。
まあ、要所要所でヒキも関係してくるけどな。それはお互い様だからしょうがねぇ」
「ちなみに、土屋君の目押しレベルってどのくらい? 何か具体的な例とかない?」
目押しが得意というのは、今のところ土屋が自分で言っているだけ。
土屋の主観的な考えであって、実は大したことがないのかもしれない。
もっと客観的な事実が知りたい優司は、突っ込んで質問した。
すると、この優司の質問に対し丸島が割り込んでくる。
「おいおい、土屋の目押し力を疑ってんのかぁ?
あのなぁ、俺が言うのもなんだけどよ、土屋の目押しはマジすげぇぞ? ハンパじゃねぇ。
まず、俺が見てる限りじゃビタ押しをミスったことがねぇ」
「へぇ……ビタ押しをノーミス、か」
「おう。
タコスロを一日フル稼働しても、通常時・BIG中を通して2~3回ミスるかどうか、ってとこだよ。
なぁ吉田?」
ここで、不意に吉田に話が振られた。
あまりに喋っていなかったためか、軽く咳払いをしてから喋りだした。
「……ああ、それは確かにそうだな」
この事実に、思わず驚愕する優司。
それもそのはず、タコスロを1日回して目押しミスが2~3回というのは、かなり驚異的な数値である。
多少大げさだとしても、土屋が相当な目押し力を持っていることはわかった。
「ふーん……。それだけの目押し力があるのに神崎の全勝で終わったんだ?
神崎って、そんなに目押しが上手いの?」
この優司の質問に、引き続き丸島が答える。
「ああ、上手いなんてもんじゃねぇよ。あいつは設定読みだけじゃなく、目押しに関してもバケモンだ。
あいつは……何しろ速いんだよ、打つのが。本当にちゃんと狙って押してんのか?ってスピードで消化しやがる。
その上、目押しの正確さは土屋と同じくらいときたもんだ」
「へぇ……そんなに……」
ある程度わかっていたこととはいえ、やはり神崎は想像以上の相手だった。
自分のパチスロ勝負生活の最後にしようと思っている相手、神崎。
一筋縄では勝てそうにないな、と改めて思う優司だった。
この時に、どんな勝負だったのかを聞こうとしたが、その時は土屋の勢いに押し切られうやむやで終わってしまった。
二人の勝負内容については、神崎の実力を計るためにも優司としては是非とも知っておきたいこと。
しかし、この質問をぶつけた瞬間から、先ほどまでの上機嫌ぶりは吹き飛び、土屋の表情がみるみる歪んでいく。
「……もうそんなことはどうでもいいだろ」
ボソリと呟いた。
しかし、初対面の時のように、威圧感を出してそれ以上聞けない雰囲気にしようとはしていなかった。
そんな様子を見て、丸島が口を挟んできた。
「まあいいじゃねぇかよ土屋。夏目もよく頑張ってるし、それくらい話してやれよ。
今度神崎と夏目を勝負させるつもりなんだろ? その時の為にもよ。
大体、悔しがるようなことじゃないだろ? 土屋は別にパチスロ勝負なんぞで結果を出す必要はないんだからさ」
柿崎も話に入ってくる。
「そうだよ土屋君。土屋君はもっと凄いことができるじゃん。現に今も、こうやって組織として順調に売上を伸ばしてるし、神崎に勝てる人材もゲットできたし。みんな土屋君の力でしょ!」
二人からフォローされ、やや表情が緩んだ土屋。
吉田は相変わらず無言のまま。
ちなみに吉田は、この時に限らず飲み会が始まってからもほとんど無言で、たまに話を振られた時に一言二言返すだけだった。
「確かに、別に俺はパチスロ勝負なんぞで負けたって関係ないし、そもそも1年も前のことだしな」
「そうだよ土屋。話してやんなよ」
「ああ。じゃあ手短にな」
その言葉に、優司は黙って頷いた。
土屋は、手元にあった焼酎グラスを口に運び、それからおもむろに話し出した。
「まず、経緯については前に話したよな?
こっちのやってることに対して神崎が音をあげて、パチスロ勝負を仕掛けてきた、と。
その勝負に俺が勝ったら神崎は俺のグループに入る、神崎が勝ったら俺達はおとなしく街から出て行く」
「うん、そこまでは前に聞いたよ」
「で、勝負ルールは、同一機種で勝負して、『出玉』・『BIGの最高獲得枚数』・『総回転数』の3ポイントを
争う、これを3日間やる、って内容だ。つまり、合計9ポイントだな。
このポイントを俺と神崎で取り合うってわけだ。
ホールと機種は、俺が選んでいいことになってた」
「……なるほど」
「でも、神崎はこの街で立ち回って長いだろ? いくら俺の方でホールと機種が選べるからって、それでも俺の方が若干不利だ。
だからハンデとして、神崎は俺に2ポイント以上の差をつけなきゃいけない、っていう特別ルールを追加したんだ。つまり、俺が1ポイント負けての5対4、ってスコアなら俺の勝ちになるってことだな」
随分と甘いルールだな、と感じた優司。
ホールと機種を決められるだけでもだいぶハンデが与えられているようなもの。
それなのに、さらにその上2ポイント以上も差をつけないといけないなんて、と。
おそらく、土屋が無理矢理その条件をねじ込んだのだろう、と思った。
その卑怯なやり口・いさぎの悪さに嫌悪感を覚えた。
しかも、この勝負に土屋は負けているのである。
そのことを思い出し、嫌悪感だけでなく情けなさも感じた。
だが、勝負の全貌を知るためにここは無表情のままやりすごす優司。
「で、勝負したんだよね。そのルールで」
「ああ」
「で、負けた、と」
「……」
「何対何で負けたの?」
「…………9対0だ」
「えッ…………?」
思わず絶句してしまう優司。
土屋がヘボすぎるのか、神崎が凄すぎるのか。
その答えが出せずにいた。
神崎の力を計るためには、この答えを出さなければいけない。
なのでそれを探るため、苦々しい顔をしている土屋に間髪を入れず問いかけた。
「なんでそんなことになったの? 勝負ホールとか勝負機種で工夫はしなかったの?」
「したよ! するに決まってんだろ?
せっかく使えるカードを使わないのはバカだ。もちろん最大限に活用させてもらったよ。
俺は目押しに自信があったんでな。迷わず勝負機種をタコスロにした」
「タコスロ?」
「ああ。あそこまで目押しの威力が発揮される機種は他にはない。
当時、西口の『スターワン』っつー店に5台だけ入っててな。まあ、7枚交換だけどよ。
ってことで、勝負ホールが『スターワン』、勝負機種がタコスロになった」
「……」
「タコスロがどういう機種か知ってるだろ? フル攻略すりゃ、設定1でも機械割が105%くらいいっちまうバケモノ機種だ。
これなら、神崎の得意な設定読みを潰せる。7枚交換とはいえ、タコスロなんぞどこのホールも万年設定1なことが多いからな。
どうだ? しっかりルールを活用してるだろ?」
「まあ、確かに……」
この優司の言葉は本心だった。
設定予測で敵わないと知り、その能力が生かせない状況を作り上げた。
そして、自分が得意とする「目押し」に、勝負のフィールドを持ってきた。
決して悪い作戦ではない。
「これで、勝負はほぼ完全な目押し力勝負になったわけだ。
『出玉』にしても『BIG獲得枚数』にしても、ほぼ目押しオンリーの勝負になるわけだし、『総回転数』についても、いかに取りこぼしなく通常プレイを素早くこなすか、ってことがポイントになるから、イコール目押し力が問われる。
まあ、要所要所でヒキも関係してくるけどな。それはお互い様だからしょうがねぇ」
「ちなみに、土屋君の目押しレベルってどのくらい? 何か具体的な例とかない?」
目押しが得意というのは、今のところ土屋が自分で言っているだけ。
土屋の主観的な考えであって、実は大したことがないのかもしれない。
もっと客観的な事実が知りたい優司は、突っ込んで質問した。
すると、この優司の質問に対し丸島が割り込んでくる。
「おいおい、土屋の目押し力を疑ってんのかぁ?
あのなぁ、俺が言うのもなんだけどよ、土屋の目押しはマジすげぇぞ? ハンパじゃねぇ。
まず、俺が見てる限りじゃビタ押しをミスったことがねぇ」
「へぇ……ビタ押しをノーミス、か」
「おう。
タコスロを一日フル稼働しても、通常時・BIG中を通して2~3回ミスるかどうか、ってとこだよ。
なぁ吉田?」
ここで、不意に吉田に話が振られた。
あまりに喋っていなかったためか、軽く咳払いをしてから喋りだした。
「……ああ、それは確かにそうだな」
この事実に、思わず驚愕する優司。
それもそのはず、タコスロを1日回して目押しミスが2~3回というのは、かなり驚異的な数値である。
多少大げさだとしても、土屋が相当な目押し力を持っていることはわかった。
「ふーん……。それだけの目押し力があるのに神崎の全勝で終わったんだ?
神崎って、そんなに目押しが上手いの?」
この優司の質問に、引き続き丸島が答える。
「ああ、上手いなんてもんじゃねぇよ。あいつは設定読みだけじゃなく、目押しに関してもバケモンだ。
あいつは……何しろ速いんだよ、打つのが。本当にちゃんと狙って押してんのか?ってスピードで消化しやがる。
その上、目押しの正確さは土屋と同じくらいときたもんだ」
「へぇ……そんなに……」
ある程度わかっていたこととはいえ、やはり神崎は想像以上の相手だった。
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