ゴーストスロッター

クランキー

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【第5章(最終章)】

■第118話 : 最終勝負の段取り

2005年1月3日。
時刻は13:00頃。

T駅西口にあるファミレスにて。
伊達慎也は、神崎真佐雄をこのファミレスへ呼び出していた。

「どうしたんだ慎也? 珍しいじゃん、急に呼び出すなんて。まだ正月三が日だってのに。
 グループのみんなはまだ活動してないんだろ?」

「悪い……。急に呼び出したりして。
 真佐雄が忙しい身だってことはわかってるし、本当なら手をかけさせるつもりはなかったんだけどさ。ちょっと状況が変わってきて。」

「いや、別に謝ることはないけどさ。友達なんだし、メシ食うために急に呼び出すなんて普通のことでしょ」

にこやかに語りかける神崎。
しかし、伊達の表情は暗い。

「あのさ、サトルとも話してたんだけど……。今回のことは真佐雄に言うつもりはなかったんだ。なるべく俺達だけで解決しようとしてたんだけど……」

「ん……? 今回のこと? 何の話?」

「土屋……だよ」

その名を聞き、一瞬首をかしげる神崎。
しかし、すぐに思い出した。

「土屋っ? 土屋って……あの土屋だよなっ?」

「他にどいつがいるんだよ。1年前のあの土屋だよ」

途端に、やれやれといった表情に変わり、大きくため息をつく神崎。

「マジかよぉ……。また何か仕掛けてきたのあいつ?」

「そうなんだよ。1ヶ月くらい前からまたこの街に来てさ。
 グループのみんなには、『真佐雄には言うな』って口止めしておいたから、お前の耳に入るのが遅くなっちゃったんだけど」

「……気を使わせちゃったみたいだな。
 でも、俺の事情なんか気にしなくていいよ。一応俺がリーダーとしてやってるグループだし、そこへトラブルが降りかかってくるなら、俺が解決するべきでしょ」

伊達は、少しテレくさそうに黙り込んだ。
そんな器ではないのに、勝手に全て一人で抱え込もうとしていた自分に少し恥ずかしさを感じたのだ。

神崎が言葉を続けた。

「で、土屋はなんて言ってきてんの?」

「そう! それなんだけどさ、パチスロ勝負の再試合みたいなのを申し込んできたんだよ。
 1年前にやっただろ? 土屋とのパチスロ勝負を。
 で、またかと思ってさ、それはシカトしてたんだ。
 だってキリがないだろ? 前回同じ事をやって、真佐雄が勝って、それであいつらは地元に引っ込んだのに、1年経ったらまたのうのうとこの街に来てる。ってことは、この再試合を受けて勝ったとしても、今後延々と同じことが繰り返される可能性だってあるじゃん。
 だから、真佐雄に話を通すまでもないと思ってたんだ」

「……で?」

「そしたら、昨日の夜になってさ……。またあいつらが来て催促してきたんだ。いつ勝負をするんだ、って。
 俺としては、ノラリクラリとはぐらかすつもりだったんだけど、どうやら今回の勝負に出てくるのが、あの夏目優司らしいんだ」

「夏目っ……?」

「そう。お前が気にかけてたあの夏目だよ。
 夏目とのスロ勝負なら考える、みたいなこと言ってただろ?
 だから、一応話を通しておこうと思ったんだ。どうやら、土屋の代打ちとして出てくるらしい」

「代打ち? 土屋の?」

「そう。今、夏目の奴、土屋んとこにいるんだよ」

「なんだそれ? なんで夏目が土屋となんか組んでるんだ?」

「噂ではいろいろ言われてる。金の為だとか、神崎真佐雄とのスロ勝負を成立させる為だとか。」

「……」

「はっきりしたことはわからないけど、確かなのは『土屋がパチスロ勝負を申し込んできてる』ってことと、『勝負に出てくるのは夏目優司』ってことだ」

「そうなんだ……。なんかよくわからないことになってるな」

「……だな」

「でもとにかく、今回の件に関して言えば、俺が夏目と勝負して勝てばそれでいいんだろ?」

「とりあえずはね。
 でも、土屋がこうやって勝負を仕掛けてくるのは2回目だろ? ってことは、今回勝ったってまたしばらくしたら同じことを仕掛けてくるかも……」

「まあ、そういう先のことはいいよ。
 とりあえず、俺は夏目が勝負を申し込んできたら受けるって決めてたんだ。前も言ったけど、同じゴーストスロッターとしてね」

「……」

「あとのことは……その時になったら考えればいいよ」

「……わかった。真佐雄がそう言うんなら。
 じゃあ、受けても構わないんだな? 柿崎って奴がしつこく催促に来てるんだけど、OK出しちゃっていいんだな?」

「ああ、いいよ。
 ただ……夏目とやるんなら、ちょっとこっちから条件をつけたいんだ」

「条件?」

「ああ。まず、ホールのチョイスとルールの決定は、中立な第三者にやって欲しい、ってこと」

「なるほどね。それは必須だよな。
 前回は確か、土屋側に全部決めさせてやったんだよな」

「ああ。土屋程度なら余裕だからね。
 でも、今回の相手はあの夏目優司だろ? だとしたら、全部あっち側に主導権を握られるのはキツい。
 だから、俺達側の人間でもなく、土屋側の人間でもない、中立な第三者に勝負ホールと勝負ルールを決めて欲しいんだ」

「うん、それは当然の要求だな。
 ……でもさ真佐雄、『中立な第三者』ってのは誰にするつもりなんだ? 誰か適当なのがいるか?」

「俺は……広瀬に頼もうかと思ってる」

「広瀬? あの『マルサン』を根城にしてる広瀬か?」

「そう。
 実はさ、夏目から勝負を申し込まれたら受ける、って決めてから、一人でいろいろ考えてたんだ。
 はっきり言って、俺と夏目の力は拮抗してると思う。夏目のやってきたこととか、今まで聞いた話とかを総合するとね。
 ということは、普通に立ち回りの勝負をやってもなかなか決着がつかないと思うんだ」

「それは確かに……」

「かといって、手っ取り早く勝負がつきそうな方法をこっちで考えるわけにもいかない。こっちが考えて夏目たちに提案したって、何か裏があると勘ぐられるかもしれないだろ?
 逆も同じで、あっちから手っ取り早い勝負方法を提案されたとしても、何か企んでるんじゃないかって俺たちが疑うしさ。
 ってことで、出てくるのが広瀬だ。中立な立場として、彼に全部決定してもらえば、どっちにも異存はないでしょ。
 彼に、無駄に勝負が長引かないための勝負環境を整えてもらうんだ。
 この役目は、『名前が通ってる』・『中立に徹することができる』・『この街のホール状況に精通してる』・
『パチスロに精通してる』っていう4つの条件が整った人間じゃないと出来ない。広瀬は、これにバッチリ当てはまるしね」

神崎の意見を聞き、少し考え込む伊達。

「でもさ、広瀬って、確か一度夏目とスロ勝負して負けてるよな? そんな人間が中立の立場でこの勝負に関わってくれるもんかな? 夏目への恨みで、夏目に不利なように仕組もうとするんじゃないか?
 逆に、いつの間にか夏目と仲良しになってて、夏目に有利なように動くとか」

伊達の質問に、神崎は迷いなく答える。

「いや、そのへんは大丈夫だと思うんだよね。俺の知り合いで広瀬と仲が良い奴がいてさ、そいつの話を聞いてる限り、私情にとらわれてえこひいきするような人間じゃないみたいなんだ」

「へぇ……。いつの間にかそんなことまで調べてたんだ?」

「さっきも言ったろ? 夏目との勝負についていろいろ考えてたってさ。
 その過程で、広瀬がどういう人間なのか詳しく知りたいと思って、広瀬のことを知ってる奴にいろいろ聞いてみたんだ」

「なるほどね。で、結果大丈夫そうだったってわけだ。
 ……でもさ、もう一つ心配なことがあるんだけど、聞いていいか?」

伊達は、神妙な顔つきで神崎に質問を始めた。 
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