ゴーストスロッター

クランキー

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【第5章(最終章)】

■第132話 : 最終勝負、完全決着

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「それでは最後に、カイジコーナーの設定発表を行なわせていただきますっ!」

吉宗コーナーの設定発表が終わり、いよいよ最後の発表となるカイジのシマとなった。
2シマある吉宗にて発表された6は、各シマ2台ずつの合計4台。

茫然自失のまま固まっていた優司だが、カイジにて設定発表があるというマイク放送が耳に入ってくるやいなやすぐに気を取り直し、急いでカイジのシマへ向かった。

(そうだ! 落ち込むのはまだ早い。神崎が6を掴めてなければ、引き分け再勝負なんだ。神崎のあの台が6かどうかはまだわからない。落ち込むのはまだ早いんだ。まだ終わってない!)

だが、優司がカイジのシマへ到着した数秒後に、その淡い期待はあっさりと打ち砕かれた。

「カイジコーナー、本日の設定6は……161番台ですっ! おめでとうございますっ!
 これにて、本日の設定発表は終了となります!」

店員はマイクに向かってそう喋りながら、躊躇なく神崎の座る161番台へ設定6確定の札を刺した。

優司はその瞬間、ガクっとヒザが落ち、思わず近くにあった柱に寄りかかった。
柱に寄りかかっていないと立っていられないような状態だった。

(う……そ……だろ……?
 なんで…………なんで神崎はあの台が6だってわかったんだよ…………。
 ありえない…………ありえない…………)

呆然としながら柱に寄りかかっている優司。
淡々とカイジを打っていた神崎だが、ふと優司のその様子に気付き、スクっと立ち上がった。

そして、つかつかと優司の方へ歩み寄っていった。

「夏目、もう勝負はついたよな?」

「…………」

「外、行こっか。俺のカイジならもういいから。せっかくの設定6だけど、今日は打ち切りたい気分でもないし、あの6は開放するよ」

「あ……うぅ…………」

「じゃ、行こう」

そう言って神崎は、下皿にあるわずかなコインをドル箱へ移し、それからジェットカウンターへ向かった。

コインを流している時に神崎が広瀬たちに声をかけ、勝負が終わったことを告げた。
当然発表を見届けていた広瀬と伊藤も、勝敗についてはわかっていた。

神崎に声をかけられ、一緒に外へ行く準備をする広瀬と伊藤。

「やっぱり、広瀬さんの直感どおりでしたね」

神崎がコインを流し終えるのを待つ間、伊藤が広瀬に話しかけた。

「なんでわかったんですか? あの時点では、まだ二人とも右往左往してたのに」

「いや、別に何か根拠があったわけじゃないよ。
 ただ……何か大義を背負って大きく構えてる人間と、必要以上に何かにこだわりすぎて追い詰められてる人間とじゃ、纏ってる雰囲気みたいなもんが違うからさ。
 朝会った時の互いの雰囲気を見て、ああ、神崎が勝つだろうな、って思っただけだよ」

「ふーん……なるほど、そういうもんですか」

広瀬は、黙ったまま神崎と優司の二人をじっと見据えていた。

しばらくしてから神崎に促され、広瀬と伊藤が一緒にホールの外へ出て行った。
優司も、コインを流し終えレシートを受け取った後、覚束ない足取りで必死に3人の後をついていった。



◇◇◇◇◇◇



「神崎君! あのカイジの6は、ちゃんと確信があって選んだのッ?」

階段を降り、ホールの外へ出ると同時に、優司が神崎に向かって喰い下がるように質問をした。
もう我慢できない、といった様子で。

しかし、神崎は冷静にかわす。

「まあ、落ち着こうよ。こんなところで話しだしても中途半端でしょ。みんなも集まってないし。
 まずは、土屋たちを呼びなよ。俺も今から慎也たちを呼ぶから」

そう言って神崎は、ポケットから携帯を取り出した。
一刻も早く根拠を聞きたかった優司だが、なんとか抑えて素直に携帯を取り出し、土屋に電話をかけた。



◇◇◇◇◇◇



『ミラクル』から少し離れたところにあるコインパーキング。
5台ほど駐車できるスペースがあるのだが、立地が悪いためかほとんど利用されておらず、この日も1台しか駐車していなかった。

広さ的にも丁度よく人通りも少ないということで、神崎の提案でこの場所に一旦皆が集まることになった。

そして、優司・神崎がそれぞれ電話をして各々の側の人間を呼び出してから15分ほどが経った頃。
開店前に『ミラクル』に集まった11人全員が、この場に集まった。

「よぉ、悪いな、待ったか? 吉田が遅れやがってよ」

最後に到着した土屋・丸島・柿崎・吉田の4人。
到着するなり、土屋がふてぶてしい態度で既に集まっている人間たちに言い放った。

神崎は、気にしない素振りで話を進めた。

「よし、これで全員集まったことだし、締めにかかろうか。
 広瀬君、いいかな? 中立な立場として、最後も仕切ってもらいたいんだけど」

広瀬は笑顔で即答する。

「オッケー。そのつもりだから大丈夫だよ。じゃあ、始めよっか」

土屋がとげとげしい声を出す。

「おい広瀬、ダラダラしてねぇで早く結果を教えてくれよ。こっちはまだ聞いてないんだぜ? 先に結果だけ教えろって電話越しに何度も迫ったんだけどよ、夏目のやつ、全然言わなくてよ。
 まあ、電話での夏目の声で、大体予想つくけどな」

「そっか。
 予想通り、神崎君の勝ちだ。神崎君はきっちり6を掴み、夏目はハズした。なんら文句無く、神崎君の完全勝利だ」

「ちょ、ちょっと待ってよ広瀬君! 勝敗をはっきり言う前に、早く神崎に根拠を聞かせてよ! あのカイジを選んだ根拠を!」

優司が激しく突っかかる。
優司としては、完全勝利を宣言される前に、神崎がなぜ6を掴めたのかをなんとしてでも知りたかった。

この疑問の前に、勝負前から勝負中にかけて感じていた広瀬への気まずさなど、既に吹き飛んでいた。

軽く戸惑いながら、広瀬が答える。

「夏目……。そう焦るなよ。
 もちろん、根拠は俺も気になるし、是非聞かせてもらいたいところだけど、何にせよ神崎君が勝ったってことには変わらないんだ」

思わず黙り込んでしまう優司。
すかさず、神崎が入ってきた。

「いいよ、広瀬君。
 夏目としては、一番気になる部分だろうし」

そう言って、視線を優司の方へ移した。

「なんだったら、俺がカイジの6をツモったのは偶然、くらいに思ってるだろ?」

「え……?
 ってことは、今日のあのヒントが完全にわかったってこと? 昨日の設定据え置き、っていうあのヒントの意味が?」

「まあね。それがわかったから、ほとんど稼動がないような状況でもあのカイジに自信を持って座れたんだ」

「な、なんだったのっ? あのヒントの意味ってっ?」

思わず神崎の方へにじり寄ってしまう優司。

「……最初に違和感を覚えたのは、夏目が台を選び終わってからだ。台の『ある部分』を見て、強烈に引っ掛かったんだ」

ゆっくりとした口調で、神崎は優司に向かって説明を始めた。 
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