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【第5章(最終章)】
■第134話 : 悪の終焉
「あーあっ! ったくよぉ! 湿っぽいったらありゃしねぇな! もういいかぁ?」
今まで状況を静観していた土屋だが、優司が完全に敗れたということを知ると、不意に大声で騒ぎ出した。
しかし、広瀬が淡々と返答をする。
「見ての通り、この勝負は神崎君の勝ちだ。これはもうわかってるよな?」
「そりゃな。こんだけ長々と聞かされりゃわかるよ。夏目本人が無様にしょげてるのでも丸分かりだしな。イヤってほど伝わってきてるから安心しなよ」
「……じゃあ、約束は守ってもらおうか」
広瀬の言葉に対し、待ってましたとばかりに土屋がとぼけだす。
「約束ぅ? おう丸島、約束ってなんだったっけか?」
「さぁ、俺バカだから覚えてねぇや!」
「俺もだ。こりゃ困ったなぁ?」
この言葉に、広瀬をはじめ土屋側以外の人間全員が顔色を変えた。
そして神崎は、二人のこのあまりにナメきった態度に、思わず声を荒げた。
「お前ら……それでも男かっ? 恥ずかしくないのかよっ? よく平然とそんなことが言えるなっ!」
「へ! なんとでも言えよ。
とにかく、この勝負に負けたのは夏目だ。俺が負けたわけじゃない。だから、俺がお前の言うことを聞く謂れはないんだよ」
「今更何言ってんだッ! 夏目はお前の代打ちだろ? 代打ちってことは、お前の代わりに打ったってことだ。
んな簡単な日本語の意味もわかんないのか?」
「うるせぇよ神崎。
夏目が代打ちだと、お前にはっきり告げた覚えはないね。だから、俺がケツ拭いてやる義理なんてどこにもねぇんだよ。
まあでも、俺の組織の人間である夏目が負けたんだ。金ぐらい払おうじゃないか。それでチャラってことにしようぜ。
おい柿崎! いくらか適当に神崎に渡せ」
「つ、土屋ッ……てめぇッ……」
普段温厚な神崎も、この土屋の態度にはいい加減我慢ができなくなっていた。
神崎だけでなく、伊達たちや広瀬たちも我慢の限界を超えそうになっている。
だが、その時だった。
「もうそのへんでいいだろ土屋。いい加減やめようぜこんなこと」
不意に土屋の後方から聞こえてきた声。
土屋は、その声の主を承知しつつ、ゆっくりと振り返った。
「今なんつった、吉田……?」
「だから……もうやめようぜって言ってんだよ。神崎の言うとおり、みっともなさすぎる」
「誰に言ってんのかわかってんのか……? たかが金持ちのボンボンが、この俺に対して偉そうに説教かまそうってのか? あっ?」
「……やっぱりダメなんだな。今の俺の言葉なんか、聞く耳持たないんだな……。
わかってたとはいえ、やっぱりキツいなぁ……」
吉田は、声を詰まらせながらそう言った。
だが、土屋の様子は一向に変わらない。
「はぁ? 何を気持ちわりいこと言ってんだお前は? アツい友情ごっこでもやりてぇのかぁ?」
「もういい。それ以上余計なことは言わないでくれ」
吉田はそう言うやいなや、クルリと後ろを向いた。
「もういいです! お願いします!」
大きな声でそう言ったかと思うと、20mくらい離れたところから見知らぬ大人7~8人が現れ近づいてきた。
「あん……? おい吉田、誰だよあいつら?」
「……所轄の刑事さんたちだよ」
この言葉を聞き、余裕ぶっていた態度が一変する土屋。
「はぁッ……? け、刑事……?」
「ああ。 取引して融通利かせてもらったんだ。絶対逃げたりしないし、全部素直に喋るから、合図するまで待っててくれって」
吉田は、抑揚の無い声でそう言い放った。
吉田のこの行動を見て、土屋と同じくふてぶてしい態度をとり続けていた丸島と柿崎にも一気に動揺が走った。
だが、特に何を言えるでもなく、その場に立ち尽くしたまま。
土屋たちだけではない。
神崎や広瀬たちも何が起こったのか理解できずに、固まってしまっている。
当然優司も。
7~8人の大人たちは、迷いもせずにつかつかと土屋のところへ歩み寄った。
そして、そのうちの一人が何かの紙を提示しながらこう言った。
「土屋章雄だな? 傷害の容疑で逮捕状が出てる。この街の人間を無差別で襲ってたらしいな? まあ、とりあえずおとなしくついて来い」
「え……? た、逮捕状……?」
「あと、そっちにいるのが丸島純也と柿崎成二だな。お前達にも逮捕状が出てる」
「はっ……?」
土屋・丸島・柿崎の3人とも、身動き一つできないでいる。
「とりあえず、向こうの方へ行こうか。車が置いてあるから」
そう言って、土屋たちの肩や腕を掴む刑事達。
ここでようやく状況が飲み込めたのか、土屋は急に喚きだした。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ刑事さん! 何がなんだかわかんねぇって! 俺に傷害容疑? そんなモン嘘っぱちだよ! 離してくれって!」
「そうはいかない。裁判所からこうして逮捕状が出てる以上、俺達としては無理矢理にでも引っ張ってくしかないんだからよ。諦めな。詳しいことは署で聞く」
「ぐッ……そ、そんな…………」
その場で足に力を入れ、連行されないように踏ん張る土屋。
丸島と柿崎は、まだ何が起こっているのか把握しきれず、ぼーっとしながらおとなしく連れられている。
「おい、いい加減にしろ土屋章雄。悪あがきはよせ。何か言いたいことがあるなら署で聞いてやるから、とにかく一旦踏ん張るのはやめて素直についてこい」
「うぅ……く、くそ…………」
観念したのか、ようやく足に込めていた力を抜き、刑事に従った。
だが、直後にまた足を止め、吉田の方を向き大声を出した。
「け、刑事さんよ! 吉田から何を聞いたか知らないけど、主犯は吉田なんだぜ? 全部こいつが計画したことなんだ! で、俺達はみんな、吉田の指示で動いてたんだよ! こいつ、一人だけ助かろうとしやがって! そうはいかねぇぞッ!」
刑事は冷静に返答する。
「……ああ、そうだな。知ってるよ」
「本当なんだって! そんな簡単にあしらうなよ刑事さん! 俺達は手伝わされただけなんだ! 信じてくれよっ!」
「だから、それは知ってるって言っただろ? 吉田から全部聞いたよ」
「…………え?」
「今日の午前中に吉田が自首してきて、その時に聞いたよ。今お前が言ったようなことをな」
目を見開いたまま固まる土屋。
つい混乱してしまい、咄嗟に吉田に全部罪をかぶせようとして言ったデタラメなのに、なぜか刑事はそれをあっさり認めた。
適当に聞き流しているようには思えない。
一瞬、何が起こっているのか理解できずに混乱する土屋。
そんな土屋の様子を不審に思い、土屋の腕を掴んでいる刑事が問いただした。
「どうしたんだ土屋? 吉田が主犯、お前らは共犯、そうなんだろ? ただ手伝わされただけなんだろ? 吉田からはそう聞いてるんだが」
「…………」
「あん? 違うのか?」
返答に詰まっていると、そこへ吉田がゆっくりと歩み寄ってきた。
「何を困ってるんだよ土屋。その通りだろ? 俺が主犯でお前らが共犯。何にも間違ってるところなんかないじゃんよ」
「吉田……お前…………」
今まで、常にふてぶてしく余裕ある態度を取り続けていた土屋だが、この時ばかりはさすがに激しい動揺を見せた。
そして、そんな土屋の様子を見た吉田は、少し逡巡した後、軽く俯きながらつぶやくように言葉を漏らした。
「ごめん、土屋……。もう、これしか思いつかなかったんだ。土屋に元に戻ってもらう方法として、これしか……」
「お前……全部……被る気で……。そこまでして…………」
吉田の目から、静かに涙がこぼれ落ちる。
「これで……これで少しは、俺の言葉を真剣に聞いてくれるかな……? 少しはまともに取り合ってくれるかな……?」
「…………」
土屋は、何かを堪えるように必死で下唇を噛みながら、ただただ俯いていた。
今まで状況を静観していた土屋だが、優司が完全に敗れたということを知ると、不意に大声で騒ぎ出した。
しかし、広瀬が淡々と返答をする。
「見ての通り、この勝負は神崎君の勝ちだ。これはもうわかってるよな?」
「そりゃな。こんだけ長々と聞かされりゃわかるよ。夏目本人が無様にしょげてるのでも丸分かりだしな。イヤってほど伝わってきてるから安心しなよ」
「……じゃあ、約束は守ってもらおうか」
広瀬の言葉に対し、待ってましたとばかりに土屋がとぼけだす。
「約束ぅ? おう丸島、約束ってなんだったっけか?」
「さぁ、俺バカだから覚えてねぇや!」
「俺もだ。こりゃ困ったなぁ?」
この言葉に、広瀬をはじめ土屋側以外の人間全員が顔色を変えた。
そして神崎は、二人のこのあまりにナメきった態度に、思わず声を荒げた。
「お前ら……それでも男かっ? 恥ずかしくないのかよっ? よく平然とそんなことが言えるなっ!」
「へ! なんとでも言えよ。
とにかく、この勝負に負けたのは夏目だ。俺が負けたわけじゃない。だから、俺がお前の言うことを聞く謂れはないんだよ」
「今更何言ってんだッ! 夏目はお前の代打ちだろ? 代打ちってことは、お前の代わりに打ったってことだ。
んな簡単な日本語の意味もわかんないのか?」
「うるせぇよ神崎。
夏目が代打ちだと、お前にはっきり告げた覚えはないね。だから、俺がケツ拭いてやる義理なんてどこにもねぇんだよ。
まあでも、俺の組織の人間である夏目が負けたんだ。金ぐらい払おうじゃないか。それでチャラってことにしようぜ。
おい柿崎! いくらか適当に神崎に渡せ」
「つ、土屋ッ……てめぇッ……」
普段温厚な神崎も、この土屋の態度にはいい加減我慢ができなくなっていた。
神崎だけでなく、伊達たちや広瀬たちも我慢の限界を超えそうになっている。
だが、その時だった。
「もうそのへんでいいだろ土屋。いい加減やめようぜこんなこと」
不意に土屋の後方から聞こえてきた声。
土屋は、その声の主を承知しつつ、ゆっくりと振り返った。
「今なんつった、吉田……?」
「だから……もうやめようぜって言ってんだよ。神崎の言うとおり、みっともなさすぎる」
「誰に言ってんのかわかってんのか……? たかが金持ちのボンボンが、この俺に対して偉そうに説教かまそうってのか? あっ?」
「……やっぱりダメなんだな。今の俺の言葉なんか、聞く耳持たないんだな……。
わかってたとはいえ、やっぱりキツいなぁ……」
吉田は、声を詰まらせながらそう言った。
だが、土屋の様子は一向に変わらない。
「はぁ? 何を気持ちわりいこと言ってんだお前は? アツい友情ごっこでもやりてぇのかぁ?」
「もういい。それ以上余計なことは言わないでくれ」
吉田はそう言うやいなや、クルリと後ろを向いた。
「もういいです! お願いします!」
大きな声でそう言ったかと思うと、20mくらい離れたところから見知らぬ大人7~8人が現れ近づいてきた。
「あん……? おい吉田、誰だよあいつら?」
「……所轄の刑事さんたちだよ」
この言葉を聞き、余裕ぶっていた態度が一変する土屋。
「はぁッ……? け、刑事……?」
「ああ。 取引して融通利かせてもらったんだ。絶対逃げたりしないし、全部素直に喋るから、合図するまで待っててくれって」
吉田は、抑揚の無い声でそう言い放った。
吉田のこの行動を見て、土屋と同じくふてぶてしい態度をとり続けていた丸島と柿崎にも一気に動揺が走った。
だが、特に何を言えるでもなく、その場に立ち尽くしたまま。
土屋たちだけではない。
神崎や広瀬たちも何が起こったのか理解できずに、固まってしまっている。
当然優司も。
7~8人の大人たちは、迷いもせずにつかつかと土屋のところへ歩み寄った。
そして、そのうちの一人が何かの紙を提示しながらこう言った。
「土屋章雄だな? 傷害の容疑で逮捕状が出てる。この街の人間を無差別で襲ってたらしいな? まあ、とりあえずおとなしくついて来い」
「え……? た、逮捕状……?」
「あと、そっちにいるのが丸島純也と柿崎成二だな。お前達にも逮捕状が出てる」
「はっ……?」
土屋・丸島・柿崎の3人とも、身動き一つできないでいる。
「とりあえず、向こうの方へ行こうか。車が置いてあるから」
そう言って、土屋たちの肩や腕を掴む刑事達。
ここでようやく状況が飲み込めたのか、土屋は急に喚きだした。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ刑事さん! 何がなんだかわかんねぇって! 俺に傷害容疑? そんなモン嘘っぱちだよ! 離してくれって!」
「そうはいかない。裁判所からこうして逮捕状が出てる以上、俺達としては無理矢理にでも引っ張ってくしかないんだからよ。諦めな。詳しいことは署で聞く」
「ぐッ……そ、そんな…………」
その場で足に力を入れ、連行されないように踏ん張る土屋。
丸島と柿崎は、まだ何が起こっているのか把握しきれず、ぼーっとしながらおとなしく連れられている。
「おい、いい加減にしろ土屋章雄。悪あがきはよせ。何か言いたいことがあるなら署で聞いてやるから、とにかく一旦踏ん張るのはやめて素直についてこい」
「うぅ……く、くそ…………」
観念したのか、ようやく足に込めていた力を抜き、刑事に従った。
だが、直後にまた足を止め、吉田の方を向き大声を出した。
「け、刑事さんよ! 吉田から何を聞いたか知らないけど、主犯は吉田なんだぜ? 全部こいつが計画したことなんだ! で、俺達はみんな、吉田の指示で動いてたんだよ! こいつ、一人だけ助かろうとしやがって! そうはいかねぇぞッ!」
刑事は冷静に返答する。
「……ああ、そうだな。知ってるよ」
「本当なんだって! そんな簡単にあしらうなよ刑事さん! 俺達は手伝わされただけなんだ! 信じてくれよっ!」
「だから、それは知ってるって言っただろ? 吉田から全部聞いたよ」
「…………え?」
「今日の午前中に吉田が自首してきて、その時に聞いたよ。今お前が言ったようなことをな」
目を見開いたまま固まる土屋。
つい混乱してしまい、咄嗟に吉田に全部罪をかぶせようとして言ったデタラメなのに、なぜか刑事はそれをあっさり認めた。
適当に聞き流しているようには思えない。
一瞬、何が起こっているのか理解できずに混乱する土屋。
そんな土屋の様子を不審に思い、土屋の腕を掴んでいる刑事が問いただした。
「どうしたんだ土屋? 吉田が主犯、お前らは共犯、そうなんだろ? ただ手伝わされただけなんだろ? 吉田からはそう聞いてるんだが」
「…………」
「あん? 違うのか?」
返答に詰まっていると、そこへ吉田がゆっくりと歩み寄ってきた。
「何を困ってるんだよ土屋。その通りだろ? 俺が主犯でお前らが共犯。何にも間違ってるところなんかないじゃんよ」
「吉田……お前…………」
今まで、常にふてぶてしく余裕ある態度を取り続けていた土屋だが、この時ばかりはさすがに激しい動揺を見せた。
そして、そんな土屋の様子を見た吉田は、少し逡巡した後、軽く俯きながらつぶやくように言葉を漏らした。
「ごめん、土屋……。もう、これしか思いつかなかったんだ。土屋に元に戻ってもらう方法として、これしか……」
「お前……全部……被る気で……。そこまでして…………」
吉田の目から、静かに涙がこぼれ落ちる。
「これで……これで少しは、俺の言葉を真剣に聞いてくれるかな……? 少しはまともに取り合ってくれるかな……?」
「…………」
土屋は、何かを堪えるように必死で下唇を噛みながら、ただただ俯いていた。
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