無関係だった私があなたの子どもを生んだ訳

キムラましゅろう

文字の大きさ
47 / 161
ミニ番外編

過去を振り返って……小さな灯火①

しおりを挟む
今回はるちあん卿爆誕に触れるお話です。
一部性表現があります。+エロディ発言に注意!
苦手な方は自衛をお願いいたします。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






卒業式の夜にフェリックス=ワイズと関係を結び、
逃げるようにハイレンに来たハノン。

勤め先の西方騎士団近くに古いアパートを借り、
必要最小限で生活用品を揃えてなんとか暮らしを整えた。

後は働きながら買い揃えてゆけばいい。

ハイレンへ移り住んだと同時に、貴族令嬢であった自分の事は忘れるのだ。

まぁ元々貴族令嬢らしからぬ生活を送っていたのでなんの感傷もないが。


そして西方騎士団の医務室勤め一日目に、
ハノンは生涯の友との出会いを果たす。

「ハァイ!アンタが新入りの魔法薬剤師?
アタシはメロディ=フレゲ。よろちくび♪
ウフ♡アンタ今、え、男?女?どっち?と思ったデショ。そんなのどっちでもイイのヨ~ン♡」

男性にしては化粧の映える華やかな顔立ち。
だけど女性にしては上背も肩幅も、骨格自体がしっかりしている体つきだ。

これが世に言う“おねぇ”か、とハノンは内心感心しながらメロディと名乗った同僚と見られる人物に挨拶を返した。


「よろしくお願いします。ハノン=ルーセルです。アデリオール王都の魔術学園を卒業したばかりで、至らない点は多々あると思いますがどうぞよろしくご指導ください」

「あらま、礼儀正しい子ネ。でもアタシ、堅苦しいのは苦手なのヨ。どうか気楽に接してちょーだい♡アタシの事はメロディって呼んでチョ」

「ではわたしの事もハノンと。よろしくねメロディさん」

「さんも要らないワ」

「そういう訳にはいかないわ。先輩だもの。ケジメよケジメ」

「いやん♡
“ケジメ”ってなんかエッチくない?陰毛で締めるの?モ~♡ハノンったらスケベ~~♡」

「エッチくないし、スケベでもないから」


これはなかなか刺激的な職場だと初日から思ったハノンであった。

そして三日後には終始こんな調子のメロディに感化されてか、ハノンはメロディに対し付けをやめていた。


今は仕事で新しく覚える事が満載だ。

慣れない作業に四苦八苦して毎日ヘトヘトだし。

おかげであの夜の事を、彼の事を思い出す機会はあまりなかった。

このまま過去の事に。
なかった事になってゆくのだろうと思っていた矢先に、ハノンは風邪のような症状に悩まされていた。

倦怠感、と片付けるには足りないくらいに体が鉛になったように重くて怠い。

寝ても寝ても寝足りなくて万年寝不足のような状態だ。

月のものとは違う感じの下腹部の張りも感じていた。

そういえば今月は月のものが遅れている。


ーーまさかね。


一瞬頭に浮かんだ事をハノンは打ち消した。

だけど、関係を持ったのだから可能性はゼロではない。

あの時、フェリックス=ワイズは熱に浮かされながらも射精は外にしてくれていたけど……

しかし避妊に絶対はない、とは以前何かの授業で医療魔術師である講師が言っていた。


「……確かめなくては」


ハノンは終業後に、産科専門の医療魔術師の診療所へと行った。


問診と検診を受け、結果は………



「おめでとうございます。妊娠8周目、おめでたですよ」


「え……」


やはりというかまさかというか。


ハノンはフェリックス=ワイズの子を身籠ったのであった。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


次回更新は木曜日です。






しおりを挟む
感想 3,580

あなたにおすすめの小説

能ある妃は身分を隠す

赤羽夕夜
恋愛
セラス・フィーは異国で勉学に励む為に、学園に通っていた。――がその卒業パーティーの日のことだった。 言われもない罪でコンペーニュ王国第三王子、アレッシオから婚約破棄を大体的に告げられる。 全てにおいて「身に覚えのない」セラスは、反論をするが、大衆を前に恥を掻かせ、利益を得ようとしか思っていないアレッシオにどうするべきかと、考えているとセラスの前に現れたのは――。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

石女を理由に離縁されましたが、実家に出戻って幸せになりました

お好み焼き
恋愛
ゼネラル侯爵家に嫁いで三年、私は子が出来ないことを理由に冷遇されていて、とうとう離縁されてしまいました。なのにその後、ゼネラル家に嫁として戻って来いと手紙と書類が届きました。息子は種無しだったと、だから石女として私に叩き付けた離縁状は無効だと。 その他にも色々ありましたが、今となっては心は落ち着いています。私には優しい弟がいて、頼れるお祖父様がいて、可愛い妹もいるのですから。

あ、すみません。私が見ていたのはあなたではなく、別の方です。

秋月一花
恋愛
「すまないね、レディ。僕には愛しい婚約者がいるんだ。そんなに見つめられても、君とデートすることすら出来ないんだ」 「え? 私、あなたのことを見つめていませんけれど……?」 「なにを言っているんだい、さっきから熱い視線をむけていたじゃないかっ」 「あ、すみません。私が見ていたのはあなたではなく、別の方です」  あなたの護衛を見つめていました。だって好きなのだもの。見つめるくらいは許して欲しい。恋人になりたいなんて身分違いのことを考えないから、それだけはどうか。 「……やっぱり今日も格好いいわ、ライナルト様」  うっとりと呟く私に、ライナルト様はぎょっとしたような表情を浮かべて――それから、 「――俺のことが怖くないのか?」  と話し掛けられちゃった! これはライナルト様とお話しするチャンスなのでは?  よーし、せめてお友達になれるようにがんばろう!

うちに待望の子供が産まれた…けど

satomi
恋愛
セント・ルミヌア王国のウェーリキン侯爵家に双子で生まれたアリサとカリナ。アリサは黒髪。黒髪が『不幸の象徴』とされているセント・ルミヌア王国では疎まれることとなる。対してカリナは金髪。家でも愛されて育つ。二人が4才になったときカリナはアリサを自分の侍女とすることに決めた(一方的に)それから、両親も家での事をすべてアリサ任せにした。 デビュタントで、カリナが皇太子に見られなかったことに腹を立てて、アリサを勘当。隣国へと国外追放した。

(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。 「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」 私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・ 異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。

心配するな、俺の本命は別にいる——冷酷王太子と籠の花嫁

柴田はつみ
恋愛
王国の公爵令嬢セレーネは、家を守るために王太子レオニスとの政略結婚を命じられる。 婚約の儀の日、彼が告げた冷酷な一言——「心配するな。俺の好きな人は別にいる」。 その言葉はセレーネの心を深く傷つけ、王宮での新たな生活は噂と誤解に満ちていく。 好きな人が別にいるはずの彼が、なぜか自分にだけ独占欲を見せる。 嫉妬、疑念、陰謀が渦巻くなかで明らかになる「真実」。 契約から始まった婚約は、やがて運命を変える愛の物語へと変わっていく——。

「お前との婚約はなかったことに」と言われたので、全財産持って逃げました

ほーみ
恋愛
 その日、私は生まれて初めて「人間ってここまで自己中心的になれるんだ」と知った。 「レイナ・エルンスト。お前との婚約は、なかったことにしたい」  そう言ったのは、私の婚約者であり王太子であるエドワルド殿下だった。 「……は?」  まぬけな声が出た。無理もない。私は何の前触れもなく、突然、婚約を破棄されたのだから。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。