57 / 161
ミニ番外編
過去を振り返って……るちあん王都へ移り住む④ ハノン親子のお買い物風景
しおりを挟む
「ルシー。市場にお買い物に行きましょう」
「うん!」
フェリックスが非番の日。
ルシアンが午睡から覚めて少しした時にハノンがそう言った。
お絵描きをするルシアンをこれ以上ないほど目尻を垂らして眺めていたフェリックスがハノンに言う。
「ルシーは俺が見てるから気楽に買い物してきてもいいよ?」
それ聞き、ハノンは悪戯っぽい表情を浮かべて答えた。
「ルシーを連れて行くとね、色々とお得なのよ」
「お得?」
「あなたも一緒に市場に行く?ルシーが行くとお得な理由がわかるわよ?」
「?」
ハノンの言葉に首を傾げながらも、そういえば荷物持ちも必要だなと思ったフェリックスが二人の買い物に同行した。
フェリックスは侯爵家の令息だが、魔術学園時代や王宮騎士の仲間とこういった市井に出る事も多く、庶民の台所と呼べる市場を訪れても物怖じはしていない様子だ。
ここは王都の中でも比較的大きな市場で、あちこちから賑やかな掛け声が響き渡っている。
その中で明らかに甘くなった声がこちらに向かって聞こえてきた。
「いらっしゃいルシアンちゃん!きゃ~今日も可愛いわねぇ!林檎、もう2個オマケしとくからお母さんにアップルパイでも作ってもらいな~」
「うん!」
「可愛い坊ちゃんハムは好きかい?」
「しゅき!」
「じゃあハムをオマケに入れておくからな、沢山食べて大きくなるんだぞ」
「ありがとおじしゃん!」
「ルシーちゃん飴あげるよ」
「ルシアンくんが来てくれたから割引きしておくわね♡」
「……………」
市場でのルシアンの待遇が凄い事にフェリックスは目を丸くしていた。
「ふふ。分かったでしょう?ハイレンにいる時もそうだったけど、ルシーと買い物に行くとオマケやら値引きやらでとにかくお得なの」
「な、なるほど……」
「二人で暮らしていた時は、ホント家計の助けになったわ」
「なるほどね」
買った食材を代わりに持ちながらフェリックスは感心していた。
どうやらルシアンの愛らしさに虜にされているのはワイズの家族だけではないようだ。
その時、花屋の若い店員がハノンに声を掛けた。
「そこの美しいご婦人、色味の良い薔薇が入ってるんですよ良かったら如何ですか。いや、どうか僕にプレゼントさせてください!」
「え?わたしに?」
「以前からお見かけしていて、綺麗な人だなぁと思っていたんです。もし良かったら今度お茶でも……ヒィィッ!?」
うっとりと熱のこもった眼差しでハノンに薔薇を差し出しながら言っていた花屋の店員が、ハノンの後ろにゆらりと立ったフェリックスの姿を見て悲鳴を上げた。
フェリックスは視線だけで人を射殺せそうな、お得意の絶対零度の眼差しで店員を睨み付ける。
「白昼堂々、人の妻を口説くとはいい度胸だな……?」
「ひぃぃっ……!?く、口説くなんてとんでもないっ……!」
「“よろしかったら今度お茶でも”だと?そんな日は絶対に来ない。来る訳がない。妻はそんな誘いにはのらない。第一俺が許さない。ついでにお前の事も絶対に許さない。二度と妻に話し掛けるな。わかったな?」
まるで呪いの文言のように告げるフェリックスの迫力に気押されて、店員は半泣きになりながら慌てて逃げ去った。
それをポカンとして見送るハノン。
フェリックスは唾でも吐き捨てそうな勢いで忌々しげに言った。
「ったく、油断も隙もない。やはり女性騎士を一人、ハノンの護衛に付けるか」
「バカな事言わないで。こんな事滅多にないから大丈夫よ」
「滅多にっ!?という事はたまにはあるんだなっ!?駄目だハノン。市場は危険だ。もう二度と来るな」
「何を言ってるのフェリックス……」
まさかこんな面倒くさい事になるなんて……。
ルシアンが市場の人に可愛がられている姿を見せてあげようと思っただけなのに……。
その後もフェリックスは買い物は外商を家に呼べだとかあり得ない事を言い続けたが、
もちろんそれに従うつもりはハノンにはない。
結局週に二回、フェリックスが早めに上がれる日に一緒に市場へ行く、という落とし所を見つけてこの問題は解決した。
まぁ結局ハノンはすぐにポレットを妊娠して、雇い入れたメイドが買い物に行ってくれる事になったので、その取り決めも早々になくなったのだが。
「うん!」
フェリックスが非番の日。
ルシアンが午睡から覚めて少しした時にハノンがそう言った。
お絵描きをするルシアンをこれ以上ないほど目尻を垂らして眺めていたフェリックスがハノンに言う。
「ルシーは俺が見てるから気楽に買い物してきてもいいよ?」
それ聞き、ハノンは悪戯っぽい表情を浮かべて答えた。
「ルシーを連れて行くとね、色々とお得なのよ」
「お得?」
「あなたも一緒に市場に行く?ルシーが行くとお得な理由がわかるわよ?」
「?」
ハノンの言葉に首を傾げながらも、そういえば荷物持ちも必要だなと思ったフェリックスが二人の買い物に同行した。
フェリックスは侯爵家の令息だが、魔術学園時代や王宮騎士の仲間とこういった市井に出る事も多く、庶民の台所と呼べる市場を訪れても物怖じはしていない様子だ。
ここは王都の中でも比較的大きな市場で、あちこちから賑やかな掛け声が響き渡っている。
その中で明らかに甘くなった声がこちらに向かって聞こえてきた。
「いらっしゃいルシアンちゃん!きゃ~今日も可愛いわねぇ!林檎、もう2個オマケしとくからお母さんにアップルパイでも作ってもらいな~」
「うん!」
「可愛い坊ちゃんハムは好きかい?」
「しゅき!」
「じゃあハムをオマケに入れておくからな、沢山食べて大きくなるんだぞ」
「ありがとおじしゃん!」
「ルシーちゃん飴あげるよ」
「ルシアンくんが来てくれたから割引きしておくわね♡」
「……………」
市場でのルシアンの待遇が凄い事にフェリックスは目を丸くしていた。
「ふふ。分かったでしょう?ハイレンにいる時もそうだったけど、ルシーと買い物に行くとオマケやら値引きやらでとにかくお得なの」
「な、なるほど……」
「二人で暮らしていた時は、ホント家計の助けになったわ」
「なるほどね」
買った食材を代わりに持ちながらフェリックスは感心していた。
どうやらルシアンの愛らしさに虜にされているのはワイズの家族だけではないようだ。
その時、花屋の若い店員がハノンに声を掛けた。
「そこの美しいご婦人、色味の良い薔薇が入ってるんですよ良かったら如何ですか。いや、どうか僕にプレゼントさせてください!」
「え?わたしに?」
「以前からお見かけしていて、綺麗な人だなぁと思っていたんです。もし良かったら今度お茶でも……ヒィィッ!?」
うっとりと熱のこもった眼差しでハノンに薔薇を差し出しながら言っていた花屋の店員が、ハノンの後ろにゆらりと立ったフェリックスの姿を見て悲鳴を上げた。
フェリックスは視線だけで人を射殺せそうな、お得意の絶対零度の眼差しで店員を睨み付ける。
「白昼堂々、人の妻を口説くとはいい度胸だな……?」
「ひぃぃっ……!?く、口説くなんてとんでもないっ……!」
「“よろしかったら今度お茶でも”だと?そんな日は絶対に来ない。来る訳がない。妻はそんな誘いにはのらない。第一俺が許さない。ついでにお前の事も絶対に許さない。二度と妻に話し掛けるな。わかったな?」
まるで呪いの文言のように告げるフェリックスの迫力に気押されて、店員は半泣きになりながら慌てて逃げ去った。
それをポカンとして見送るハノン。
フェリックスは唾でも吐き捨てそうな勢いで忌々しげに言った。
「ったく、油断も隙もない。やはり女性騎士を一人、ハノンの護衛に付けるか」
「バカな事言わないで。こんな事滅多にないから大丈夫よ」
「滅多にっ!?という事はたまにはあるんだなっ!?駄目だハノン。市場は危険だ。もう二度と来るな」
「何を言ってるのフェリックス……」
まさかこんな面倒くさい事になるなんて……。
ルシアンが市場の人に可愛がられている姿を見せてあげようと思っただけなのに……。
その後もフェリックスは買い物は外商を家に呼べだとかあり得ない事を言い続けたが、
もちろんそれに従うつもりはハノンにはない。
結局週に二回、フェリックスが早めに上がれる日に一緒に市場へ行く、という落とし所を見つけてこの問題は解決した。
まぁ結局ハノンはすぐにポレットを妊娠して、雇い入れたメイドが買い物に行ってくれる事になったので、その取り決めも早々になくなったのだが。
560
あなたにおすすめの小説
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
私の婚約者でも無いのに、婚約破棄とか何事ですか?
狼狼3
恋愛
「お前のような冷たくて愛想の無い女などと結婚出来るものか。もうお前とは絶交……そして、婚約破棄だ。じゃあな、グラッセマロン。」
「いやいや。私もう結婚してますし、貴方誰ですか?」
「俺を知らないだと………?冗談はよしてくれ。お前の愛するカーナトリエだぞ?」
「知らないですよ。……もしかして、夫の友達ですか?夫が帰ってくるまで家使いますか?……」
「だから、お前の夫が俺だって──」
少しずつ日差しが強くなっている頃。
昼食を作ろうと材料を買いに行こうとしたら、婚約者と名乗る人が居ました。
……誰コイツ。
【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」
「恩? 私と君は初対面だったはず」
「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」
「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」
奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。
彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?
今日結婚した夫から2年経ったら出ていけと言われました
四折 柊
恋愛
子爵令嬢であるコーデリアは高位貴族である公爵家から是非にと望まれ結婚した。美しくもなく身分の低い自分が何故? 理由は分からないが自分にひどい扱いをする実家を出て幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱く。ところがそこには思惑があり……。公爵は本当に愛する女性を妻にするためにコーデリアを利用したのだ。夫となった男は言った。「お前と本当の夫婦になるつもりはない。2年後には公爵邸から国外へ出ていってもらう。そして二度と戻ってくるな」と。(いいんですか? それは私にとって……ご褒美です!)
(完結)あなたの愛は諦めました (全5話)
青空一夏
恋愛
私はライラ・エト伯爵夫人と呼ばれるようになって3年経つ。子供は女の子が一人いる。子育てをナニーに任せっきりにする貴族も多いけれど、私は違う。はじめての子育ては夫と協力してしたかった。けれど、夫のエト伯爵は私の相談には全く乗ってくれない。彼は他人の相談に乗るので忙しいからよ。
これは自分の家庭を顧みず、他人にいい顔だけをしようとする男の末路を描いた作品です。
ショートショートの予定。
ゆるふわ設定。ご都合主義です。タグが増えるかもしれません。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】
白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語
※他サイトでも投稿中
結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。
佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。
結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。
アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。
アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。
婚約者に妹を紹介したら、美人な妹の方と婚約したかったと言われたので、譲ってあげることにいたしました
奏音 美都
恋愛
「こちら、妹のマリアンヌですわ」
妹を紹介した途端、私のご婚約者であるジェイコブ様の顔つきが変わったのを感じました。
「マリアンヌですわ。どうぞよろしくお願いいたします、お義兄様」
「ど、どうも……」
ジェイコブ様が瞳を大きくし、マリアンヌに見惚れています。ジェイコブ様が私をチラッと見て、おっしゃいました。
「リリーにこんな美しい妹がいたなんて、知らなかったよ。婚約するなら妹君の方としたかったなぁ、なんて……」
「分かりましたわ」
こうして私のご婚約者は、妹のご婚約者となったのでした。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。