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ミニ番外編
閑話 ちゃっかりノエル
夕方、ノエルはいつもワイズ伯爵家の玄関に置いてあるソファーに座って絵本を読んでいる。
なぜ自分の部屋やリビングではなくわざわざエントランスで読んでいるのか。
それには理由があるのだ。
この日も魔術学園から一緒に帰宅したポレットとミシェルにいち早く気付いたノエルが二人に駆け寄った。
「ポゥねぇさまとミシェルねぇさま!おかえりなさい!」
嬉しそうにポレットとミシェルにそう言うノエルの頭を撫でながらミシェルが返事をする。
「ただいまノエル。今日は何していたの?」
「きょうはねぇ、ママとカワイイふくをつくりにいったの。ノエル、せがのびたから」
ふふん、と自慢げに言うノエルを見てミシェルは笑みを浮かべる。
「すごいわノエル。服を作り直すほど大きくなったのね」
「そう!ノエルおおきくなったの」
またまた得意げになるノエルにポレットが吹き出しながら言った。
「縦にも伸びたけど横にも広がったとお母さまは言っていたわよ?私がノエルの年の頃に着ていた服が入らないって困っていたもの」
「それはね、ノエルがポークになったんじゃなくてポゥねぇさまのおふくがちぢんじゃったのよ?」
「ぷ、ふふふ。叔母さまにブタさんになったと言われたのね」
ミシェルがそう言うとノエルは頬をぷくぅと膨らませた。
「ノエルはポークじゃないもん!」
「ノエル、ポークじゃなくてブタさんでしょう?」
ポレットが優しく諭すとノエルは首をこてんと傾げて言った。
「え~、でもウシさんはビーフだしニワトリさんはチキンでブタさんはポークでしょ?」
「お肉になってからはそう呼ぶのだけれど……」
「ふふ。食いしん坊さんのノエルらしい発想ね」
「本当ね。困った可愛い食いしん坊さんだこと……ふ、ふふふ」
二人でそう言って笑い合うポレットとミシェルを他所に、ノエルは姉たち二人に顔を近付ける。
「クンクンクン……ポゥねぇさまからあま~いかおりがする……♡これはドラジェね!」
「まぁノエルったら相変わらず鼻が利くのね。お菓子の種類まで言い当てるなんて」
ポレットはそう言って鞄から愛らしい包み紙のお菓子を取り出した。
「美味しいドラジェをデイさまに戴いたのよ」
「おいしいのっ?わ~いいなぁ~ノエルもたべたい!」
「ふふ。ノエルがそういうのをわかっていて、デイさまがノエルの分もくださったわ」
「わーい!デイにぃさまだいすき!」
「良かったわねノエル」
ミシェルがそう言うと、ノエルはミシェルの方へと顔を向けた。
「ミシェルねぇさまからはキャンディのかおりがするの」
「え?キャンディ?……あ、そういえば……」
ノエルにそう告げられ、ミシェルは一瞬ぽかんとしたがすぐに思い当たる節があったのだろう、制服のポケットからレモンキャンディを一つ取り出した。
「今日、休み時間にお友達にキャンディを貰ったのを忘れていたわ」
「レモンキャンディ!」
レモンイエローの紙に包まれたキャンディを見て、ノエルは満面の笑みを浮かべる。
ミシェルはノエルの小さなお手手にそっとレモンキャンディをのせてやった。
「もうすぐお夕食だから後で食べるのよ?」
「ドラジェもね」
「はーい!ポゥねぇさまミシェルねぇさまありがとう!」
もうおわかりだろう。
ノエルは毎日こうやってエントランスで待ち構え、姉や兄が持ち帰る食べ物をチェックするのである。
そして大概がそのチェックしたお菓子を、ノエルは貰っていた。
その時、帰宅したルシアンがエントランスに入って来た。
「あ!ルシにぃさま!おかえりなさい!」
ノエルはそう言ってルシアンに駆け寄ろうとしたが、
ふいに後ろから手を掴まれて引き止められた。
自分の引き止め相手を見て、ノエルは言う。
「あ、ママ」
「ノエル~……そうやって毎日毎日、関所の門番のように待ち構えて、帰ってきた家族からお菓子を巻き上げるのはやめなさいと何度言えばわかるのかしら~?」
「まきあげるってなぁに?」
「相手から取り上げるってことよ」
「とってないもん!くれるんだもん!」
「ノエルがおねだりするからでしょう?どうするの、この頃少し体重が増えているのにこれ以上太ったら本当にブタさんになっちゃうわよ!」
「ノエルはポークにはならないもん!」
「ポークじゃなくてブタさんと呼びなさい」
「だっておいしいんだもん!」
「だからといってお肉になった名称で呼ぶのはやめなさい!」
「ラムもマトンもシェボンもダメ?」
「ダメよ。子羊さん、羊さん、ヤギさんと呼びなさい」
「じゃあジビエたちはどうよべばいいのよぅ~」
「普通に鹿さんイノシシさん山鳥さんと呼べばいいでしょ!」
「え~、おいしそうじゃない~」
「ノエル……あなたって子はホントに……!」
「ぷっ……!」
「ふ、ふふふ!」
「あははははははっ!」
母であるハノンとノエルの会話を聞いていたルシアンたちがとうとう堪えきれずに笑い出した。
大好きな兄たちが楽しそうに笑っているのを見て、ノエルも嬉しそうに笑みを輝かせる。
「えへへ」
それを見てハノンは小さくため息を吐き、子供たちに告げた。
「まったくもう毎日毎日……ぷっ、ふふ。まぁいいわ。そろそろ夕食の時間よ。みんな先に着替えてらっしゃい」
「はい」
「あぁお腹空いたなぁ……」
ルシアンたちはそう返事をして各々の部屋へと向かう。
それを見送りながらハノンはノエルを連れてキッチンに行こうとしたのだが……
「ただいま」
タイミングが良いのか悪いのか、帰宅したフェリックスにノエルが嬉しそうに駆け寄った。
「パパ!おかえりなさい!あ!ぱぱからタフィーのかおりがする!」
そしてまた、ハノンの声が屋敷に響くのであった。
「こらっノエル!いい加減にしなさいっ!」
夕方のワイズ伯爵家のエントランスは誠に賑やかなのである。
─────────────────────
五歳に近付いているノエル。
兄や姉を「にぃに」「ねぇね」とは呼ばなくなっていました。
さすがは貴族の子……。
なぜ自分の部屋やリビングではなくわざわざエントランスで読んでいるのか。
それには理由があるのだ。
この日も魔術学園から一緒に帰宅したポレットとミシェルにいち早く気付いたノエルが二人に駆け寄った。
「ポゥねぇさまとミシェルねぇさま!おかえりなさい!」
嬉しそうにポレットとミシェルにそう言うノエルの頭を撫でながらミシェルが返事をする。
「ただいまノエル。今日は何していたの?」
「きょうはねぇ、ママとカワイイふくをつくりにいったの。ノエル、せがのびたから」
ふふん、と自慢げに言うノエルを見てミシェルは笑みを浮かべる。
「すごいわノエル。服を作り直すほど大きくなったのね」
「そう!ノエルおおきくなったの」
またまた得意げになるノエルにポレットが吹き出しながら言った。
「縦にも伸びたけど横にも広がったとお母さまは言っていたわよ?私がノエルの年の頃に着ていた服が入らないって困っていたもの」
「それはね、ノエルがポークになったんじゃなくてポゥねぇさまのおふくがちぢんじゃったのよ?」
「ぷ、ふふふ。叔母さまにブタさんになったと言われたのね」
ミシェルがそう言うとノエルは頬をぷくぅと膨らませた。
「ノエルはポークじゃないもん!」
「ノエル、ポークじゃなくてブタさんでしょう?」
ポレットが優しく諭すとノエルは首をこてんと傾げて言った。
「え~、でもウシさんはビーフだしニワトリさんはチキンでブタさんはポークでしょ?」
「お肉になってからはそう呼ぶのだけれど……」
「ふふ。食いしん坊さんのノエルらしい発想ね」
「本当ね。困った可愛い食いしん坊さんだこと……ふ、ふふふ」
二人でそう言って笑い合うポレットとミシェルを他所に、ノエルは姉たち二人に顔を近付ける。
「クンクンクン……ポゥねぇさまからあま~いかおりがする……♡これはドラジェね!」
「まぁノエルったら相変わらず鼻が利くのね。お菓子の種類まで言い当てるなんて」
ポレットはそう言って鞄から愛らしい包み紙のお菓子を取り出した。
「美味しいドラジェをデイさまに戴いたのよ」
「おいしいのっ?わ~いいなぁ~ノエルもたべたい!」
「ふふ。ノエルがそういうのをわかっていて、デイさまがノエルの分もくださったわ」
「わーい!デイにぃさまだいすき!」
「良かったわねノエル」
ミシェルがそう言うと、ノエルはミシェルの方へと顔を向けた。
「ミシェルねぇさまからはキャンディのかおりがするの」
「え?キャンディ?……あ、そういえば……」
ノエルにそう告げられ、ミシェルは一瞬ぽかんとしたがすぐに思い当たる節があったのだろう、制服のポケットからレモンキャンディを一つ取り出した。
「今日、休み時間にお友達にキャンディを貰ったのを忘れていたわ」
「レモンキャンディ!」
レモンイエローの紙に包まれたキャンディを見て、ノエルは満面の笑みを浮かべる。
ミシェルはノエルの小さなお手手にそっとレモンキャンディをのせてやった。
「もうすぐお夕食だから後で食べるのよ?」
「ドラジェもね」
「はーい!ポゥねぇさまミシェルねぇさまありがとう!」
もうおわかりだろう。
ノエルは毎日こうやってエントランスで待ち構え、姉や兄が持ち帰る食べ物をチェックするのである。
そして大概がそのチェックしたお菓子を、ノエルは貰っていた。
その時、帰宅したルシアンがエントランスに入って来た。
「あ!ルシにぃさま!おかえりなさい!」
ノエルはそう言ってルシアンに駆け寄ろうとしたが、
ふいに後ろから手を掴まれて引き止められた。
自分の引き止め相手を見て、ノエルは言う。
「あ、ママ」
「ノエル~……そうやって毎日毎日、関所の門番のように待ち構えて、帰ってきた家族からお菓子を巻き上げるのはやめなさいと何度言えばわかるのかしら~?」
「まきあげるってなぁに?」
「相手から取り上げるってことよ」
「とってないもん!くれるんだもん!」
「ノエルがおねだりするからでしょう?どうするの、この頃少し体重が増えているのにこれ以上太ったら本当にブタさんになっちゃうわよ!」
「ノエルはポークにはならないもん!」
「ポークじゃなくてブタさんと呼びなさい」
「だっておいしいんだもん!」
「だからといってお肉になった名称で呼ぶのはやめなさい!」
「ラムもマトンもシェボンもダメ?」
「ダメよ。子羊さん、羊さん、ヤギさんと呼びなさい」
「じゃあジビエたちはどうよべばいいのよぅ~」
「普通に鹿さんイノシシさん山鳥さんと呼べばいいでしょ!」
「え~、おいしそうじゃない~」
「ノエル……あなたって子はホントに……!」
「ぷっ……!」
「ふ、ふふふ!」
「あははははははっ!」
母であるハノンとノエルの会話を聞いていたルシアンたちがとうとう堪えきれずに笑い出した。
大好きな兄たちが楽しそうに笑っているのを見て、ノエルも嬉しそうに笑みを輝かせる。
「えへへ」
それを見てハノンは小さくため息を吐き、子供たちに告げた。
「まったくもう毎日毎日……ぷっ、ふふ。まぁいいわ。そろそろ夕食の時間よ。みんな先に着替えてらっしゃい」
「はい」
「あぁお腹空いたなぁ……」
ルシアンたちはそう返事をして各々の部屋へと向かう。
それを見送りながらハノンはノエルを連れてキッチンに行こうとしたのだが……
「ただいま」
タイミングが良いのか悪いのか、帰宅したフェリックスにノエルが嬉しそうに駆け寄った。
「パパ!おかえりなさい!あ!ぱぱからタフィーのかおりがする!」
そしてまた、ハノンの声が屋敷に響くのであった。
「こらっノエル!いい加減にしなさいっ!」
夕方のワイズ伯爵家のエントランスは誠に賑やかなのである。
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五歳に近付いているノエル。
兄や姉を「にぃに」「ねぇね」とは呼ばなくなっていました。
さすがは貴族の子……。
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