無関係だった私があなたの子どもを生んだ訳

キムラましゅろう

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ミニ番外編

挿話 クマとネコ

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北の地へと旅立って行ったルシアン。

必要最小限の荷物のみを持っていたので、彼の私室は主が不在とは思えないほど目立った変化はない。
まるで今晩も王宮での仕事を終えてここに戻ってきそうな、そんな雰囲気がある。
しかしもちろんそんなことはなく、当面は帰ってこないのだが。

それでもハノンは毎日、ルシアンの部屋の窓を開けて風を通すし、メイドに掃除も頼んでいる。

そんなある日、そのルシアンの部屋から末娘のノエルが出てきたのを偶然見かけた。
兄の部屋に何の用事だったのか、ハノンはノエルを呼び止めて尋ねた。

「ノエル、ルシアンの部屋で何を?」

「あ、ママ!」

ハノンに呼び止められ、ノエルは嬉しそうに母親の元へと駆け寄る。
屈託のない愛らしい笑顔を向けるノエルに、ハノンはもう一度尋ねた。

「お兄様のお部屋に何か用事があったの?」

「そうなの。ノエルはとってもたいせつなごようじをしていたのよ」

なぜか自慢げに言う娘を微笑ましく思いながら、ハノンはまた尋ねる。

「どんな大切なご用事だったの?」

「えっとね、」

ノエルはそう言ってハノンの手を引き、再びルシアンの部屋へと入って行く。
ハノンは娘に手を引かれたまま素直に従って室内に入ると、ノエルがルシアンのベッドのサイドボードを指差した。

「ほらみて!」

「あら?」

ノエルが指し示した方を見ると、そこには幼い頃からルシアンが大切にしているクマのぬいぐるみが置いてあった。
そしてその隣に……

「この隣に置いてあるネコのぬいぐるみって、ノエルが大切にしているミィちゃんじゃない?」

クマのぬいぐるみの隣には、白い毛並みと澄んだブルーの瞳の仔猫のぬいぐるみが置いてあった。

ノエルはクマとネコのぬいぐるみ達の側へと行き、笑顔で答えた。

「ルシにぃさまのクマさんがさびしそうだったからね、ノエルのミィちゃんをかしてあげたの。だってミィちゃんがいっしょなら、クマさんもさびしくないでしょ?」

ノエルはそう言って、クマとネコ、それぞれのぬいぐるみの頭を撫でた。

ハノンは残されたクマのぬいぐるみを可哀想に思う、ノエルの優しさに笑みを零す。

「そうね。ミィちゃんがいてくれるなら、クマさんも寂しくはないわね。お友達が出来たと喜んでいると思うわ」

「でしょう!」

「でもノエルはいいの?いつもベッドで一緒に寝ているミィちゃんが居なくて、寂しくないの?」

ハノンがそう尋ねると、ノエルは小さな顎をつんと突き出して小生意気そうな表情を浮かべた。

「ノエルはだもの!だからひとりでねられるわ!」

じつはミィちゃん以外にもベッドの上の沢山のぬいぐるみ達と眠っているノエルだが、誇らしげにすまし顔をする娘を見て、ハノンの笑みはますます深くなる。

「ふふ。熟女じゃなくてよ。でもそうね、ノエルももう立派な淑女になったのね」

自分の間違いに気付いたノエルが楽しそうにコロコロと笑う。

「ふふふ。まちがえちゃったわ。……でもねママ、」

「なぁに?」

「ノエルはしゅくじょだけれど、ときどきはママやパパといっしょにねてもいいのよ?」

「ぷっ……ふふふ、そうね。ママも時々はノエルと一緒に眠りたいわ」

「じゃあさっそくこんやね!マクラをもって、ママとパパのしんしつにうかがうからまっていらしてね?」

ちいさな舌で淑女らしく話す娘が可愛くて、ハノンはノエルを抱き寄せた。
ここにフェリックスがいたらノエルの愛らしさに悶絶していたのだろう。


その後も、ノエルは度々ルシアンの部屋へ行っては、クマのぬいぐるみが寂しくないように相手をしてあげていた。


今日はルシアンから届けられた、スノウベリーのジャムクッキーがクマの足元にちょこんと置かれている。






◇───────────────────◇




あけましておめでとうございます。
今年もどうぞ、よろしくお願いいたします。
(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)ペコリ♡...*゜
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