無関係だった私があなたの子どもを生んだ訳

キムラましゅろう

文字の大きさ
157 / 161
ミニ番外編

簡単更新 小さな主君

しおりを挟む
三年の任期を終え、近衛騎士として王宮に戻ってきたルシアン。

お粗末な嫌がらせを受けていたミシェルと共にポレットの私室へと訪った。
正式な辞令は出ているものの出仕開始日は明後日なので、今日は個人的な面会となる。

「お兄様!」

入室したルシアンを見るなり、ポレットは顔を綻ばせてルシアンの元へと飛び込む勢いで駆け寄った。
ルシアンは優しい笑みをポレットに向けながら言う。

「そんなに急いで、転んだらどうするんだ」

「転びそうになったらお兄様が助けてくれるもの。小さな頃からそうだったでしょう?」

「それはもちろん」

「ふふ」

夫であるデイビッドからの寵愛と、嫡男を産んだ事により妃の座を盤石なものとしているポレットだが、ワイズ家の家族の前ではただのポレットに、兄が大好きな妹に戻るのだ。

「そしてこれからは、シルヴェストを守ってくれるのね」

そう言ったポレットがベビーベッドで眠る我が子を見た。
ルシアンもそれに倣い生後間もない未来の君主へと視線を向けた。
これからルシアンが命を賭して守る主君であるシルヴェストへと。

「さっきお乳を飲んで眠ったばかりなの。よく眠る子だから一度眠ったらなかなか起きないのよ。雷が鳴っても平気で眠っているわ」

「豪胆な子だな。ワイズのお祖父じい様に似たんだな」

「ふふふ。側でよく顔を見てあげて」

ポレットに促され、ルシアンは静かに甥っ子の元へと歩み寄る。
その健やかな寝顔を見て、自然と顔が綻ぶ。

「可愛いな……。そして驚くほどデイビッド殿下にそっくりだ」

「そうなの。髪色も面立ちも笑っちゃうくらいにデイ様にそっくりなの。……でもね、」

そう言ったポレットの、母親の声に反応したのか、眠っているはずのシルヴェストの瞼がゆっくりと開いた。

「……わぁ……!」

生後間もない甥の瞳を見たルシアンが静かに感嘆の声を漏らす。
赤ん坊独特の、澄んだ青白い白目の真ん中に据わるその虹彩は、ワイズの血が流れる証である真緋色であった。

シルヴェストの瞳とルシアンの瞳、ふたつの赤い瞳の視線が重なり合う。
まだ視力が未熟であろうシルヴェストが一心にルシアンを見つめている。
ルシアンはそっとその小さな手に触れ、大きな両の手で包み込んだ。
そしてそのままその場に跪く。

「シルヴェスト殿下、お初にお目にかかります。
私の名はルシアン・ワイズ。貴方の伯父であり、貴方に生涯剣を捧げる者です。以後、お見知り置きを」

ルシアンが小さな主君と邂逅し、そして忠誠を誓った瞬間であった。

しおりを挟む
感想 3,580

あなたにおすすめの小説

「お前との婚約はなかったことに」と言われたので、全財産持って逃げました

ほーみ
恋愛
 その日、私は生まれて初めて「人間ってここまで自己中心的になれるんだ」と知った。 「レイナ・エルンスト。お前との婚約は、なかったことにしたい」  そう言ったのは、私の婚約者であり王太子であるエドワルド殿下だった。 「……は?」  まぬけな声が出た。無理もない。私は何の前触れもなく、突然、婚約を破棄されたのだから。

「美しい女性(ヒト)、貴女は一体、誰なのですか?」・・・って、オメエの嫁だよ

猫枕
恋愛
家の事情で12才でウェスペル家に嫁いだイリス。 当時20才だった旦那ラドヤードは子供のイリスをまったく相手にせず、田舎の領地に閉じ込めてしまった。 それから4年、イリスの実家ルーチェンス家はウェスペル家への借金を返済し、負い目のなくなったイリスは婚姻の無効を訴える準備を着々と整えていた。 そんなある日、領地に視察にやってきた形だけの夫ラドヤードとばったり出くわしてしまう。 美しく成長した妻を目にしたラドヤードは一目でイリスに恋をする。 「美しいひとよ、貴女は一体誰なのですか?」 『・・・・オメエの嫁だよ』 執着されたらかなわんと、逃げるイリスの運命は?

あの子を好きな旦那様

はるきりょう
恋愛
「クレアが好きなんだ」  目の前の男がそう言うのをただ、黙って聞いていた。目の奥に、熱い何かがあるようで、真剣な想いであることはすぐにわかった。きっと、嬉しかったはずだ。その名前が、自分の名前だったら。そう思いながらローラ・グレイは小さく頷く。 ※小説家になろうサイト様に掲載してあります。

ただずっと側にいてほしかった

アズやっこ
恋愛
ただ貴方にずっと側にいてほしかった…。 伯爵令息の彼と婚約し婚姻した。 騎士だった彼は隣国へ戦に行った。戦が終わっても帰ってこない彼。誰も消息は知らないと言う。 彼の部隊は敵に囲まれ部下の騎士達を逃がす為に囮になったと言われた。 隣国の騎士に捕まり捕虜になったのか、それとも…。 怪我をしたから、記憶を無くしたから戻って来れない、それでも良い。 貴方が生きていてくれれば。 ❈ 作者独自の世界観です。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

【完結】残酷な現実はお伽噺ではないのよ

綾雅(りょうが)今年は7冊!
恋愛
「アンジェリーナ・ナイトレイ。貴様との婚約を破棄し、我が国の聖女ミサキを害した罪で流刑に処す」 物語でよくある婚約破棄は、王族の信頼を揺るがした。婚約は王家と公爵家の契約であり、一方的な破棄はありえない。王子に腰を抱かれた聖女は、物語ではない現実の残酷さを突きつけられるのであった。 ★公爵令嬢目線 ★聖女目線、両方を掲載します。 【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう 2023/01/11……カクヨム、恋愛週間 21位 2023/01/10……小説家になろう、日間恋愛異世界転生/転移 1位 2023/01/09……アルファポリス、HOT女性向け 28位 2023/01/09……エブリスタ、恋愛トレンド 28位 2023/01/08……完結

君を愛す気はない?どうぞご自由に!あなたがいない場所へ行きます。

みみぢあん
恋愛
貧乏なタムワース男爵家令嬢のマリエルは、初恋の騎士セイン・ガルフェルト侯爵の部下、ギリス・モリダールと結婚し初夜を迎えようとするが… 夫ギリスの暴言に耐えられず、マリエルは神殿へ逃げこんだ。 マリエルは身分違いで告白をできなくても、セインを愛する自分が、他の男性と結婚するのは間違いだと、自立への道をあゆもうとする。 そんなマリエルをセインは心配し… マリエルは愛するセインの優しさに苦悩する。 ※ざまぁ系メインのお話ではありません、ご注意を😓

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。